目覚め ー2ー
なんとか思い出した以前の記憶を頼りに、学園にある寮内の自室に戻ると、すぐに机に向かった。まだ何も書かれていない用紙を発見したのでそれに今わかる限りの情報を書き込んだ。
まず、この世界は先ほど言ったようにゲームの世界である。
中世ヨーロッパ風の世界観に、よくある学園もの恋愛ストーリ、そして魔法を使って魔物を倒しつつ冒険に出るという王道中の王道ゲームであった。
私がこのゲームをやりこんでいた理由は、戦闘と冒険要素が楽しくてプレイしていたのであり、恋愛要素についてはあまり興味がなかった。ゲーム自体はどちらの要素も結構作り込まれていて、当時は人気がそこそこあった。
このゲームは二部構成となっていて、第一部の学園編では、主人公のヒロインが学園で自身の魔法や学力を磨きながら攻略対象を落としていくというストーリー。
第二部の冒険編では、晴れて恋人関係となった攻略対象の自国に異変が起きるので、留学という体でその地へと赴いて異変を解決するというストーリーだった。
第一部でも二部でも、ヒロインに立ちふさがるキャラがいるのだが、それがミラ・スカーレットレイク。
ミラは学園で主人公に数々の嫌がらせをし、そして最終的には傷害事件を起こしたため、罪に問われた。
その結果、公爵家からも追い出され国外追放となり、逆恨みの結果、主人公が愛する人の故郷を壊してやろうと目論むのだ。
つまり彼女こそが国家を揺るがす異変を起こした張本人であり、ストーリーにおけるラスボスである。
うーん……。こう考えると、すごい傍迷惑ね。
(なんだか……前世の“私“を思い出したせいかな。すごく他人事のように思えるんだよね)
ここまでゲームの話をまとめてみて思ったことは、ようは主人公に近づかなければいいってこと。それで解決!
それより、私はもっと重大なことに気がついてしまった。
この世界では魔法が使える。
1人1つの属性魔法があり、赤、青、緑、紫、白魔法に分かれている。
王道のゲームだったら炎とか水じゃないの?って思うところかもしれないが、この世界の魔法はそれぞれの特色がある。
例えば赤魔法が使える人は、攻撃特化型だと言える。強い魔法で敵を一掃することができるため、個人的には一番ロマンがあると思ってる。
青は防御力が優れている。相手の攻撃から身を守る結界や守備力などを強化できるため、戦闘がとても楽になる。
その他にもそれぞれの特徴があり、これを駆使して冒険編は攻略をしていくのだ。
ちなみに主人公は回復が得意な白魔法を扱い、攻略対象は他4つの属性魔法をそれぞれ持っている。つまり攻略対象者は4人いるということだ。
冒険編では主人公と攻略対象以外の属性魔法は、冒険の地で出会った新たなキャラが仲間となり、他属性を補う形となる。残念ながら前世の私はカタカナの名前を覚えるのが苦手で、登場キャラクターの名前などはよく憶えてない。
まぁ、そんなことはどうでもいい。ここで注目したいのは私の属性魔法。
主人公は類まれなる魔力量を有していることで特別な存在としてゲーム内に君臨するが、それを相手にするラスボスとなれば同じように稀有な存在になるのだ。
なんと、ミラもとい私は、5つの属性全ての魔法が使えるのだ。自分を強化すること、守備力を高めること、傷ついたら回復することなど一人二役どころか、五役もできる。
これはきわめて特殊なことだが、反対に問題もあった。
それは、ミラの魔力量がたいして多くはないことだ。
主人公の魔力量をC~Sランクで格付けすると、SSくらいある。これは皇族の中でも一握りくらいの次元である。
対して私は、頑張ってもBランクに匹敵するかしないかといったところ。
Bランクレベルの魔力量は、平民の中では多い方だがこの魔法学園に入学する者はたいていAランクくらいはある。
魔力量は一度に使える魔法の数と、その威力に関わってくる。
一度にたくさんの魔法を唱えることができない、そして威力も大したことがないとなると、この学園で下に見られるのも必然ともいえる。
椅子から降りて、部屋にあった姿見の前に立ってみる。
くすんだ黄色の髪色で、前髪は伸びて目元を少し隠している。そこから覗く深い紫の瞳に低い背。まるで呪われた人形のようだと言われた記憶がある。
(くだらない容姿いじりに加え、魔力の低さをバカにされてきたってわけね……)
――あれ?でも確か、ゲーム内でミラがラスボスとして登場したときは、むしろバンバン魔法を使っていて、その威力も凄まじかった記憶がある。
そうなると、本当にミラの魔力量が少なかったのか疑問がでてくるな。
最終的に怒りで覚醒でもしたのだろうか。
「まぁでも、望みはあるってことね。まずは魔法の勉強をしてみないと!」
せっかく私の、誰よりも強すぎる強みを知ったのだ。この能力を育てないでどうする!!
もうすっかり外は暗くなっている。
今までの記憶通りなら、明日も授業がある。
人間関係がクソだってことはとりあえず理解できたから、自ら火の中に飛び込まないように、出来る限り人とは関わらずに行こう。
授業中、視界が悪いと困るので前髪はなんとなくで切っておくことにした。
そしてワクワクしながら急いで寝る準備をする。
魔法が使えるという素晴らしさに気が付いた私にとって、明日が楽しみという言葉以外が出てこない。
さぁ!夢の魔法学園生活が始まるぞ!




