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新たな関係性 ー2ー

 前世の記憶を取り戻してから、2ヶ月以上の時が過ぎた。

 あまりにも怒涛の日々だったため、逆にそれしか経っていなかったのか驚いてしまうくらいには、大変だけど充実した生活を送っている。


(“前“の私は、毎日が楽しいと思う日が来るなんて思わなかっただろうな……)

 

 学園生活では、主にぺーシュ、マルリーと一緒に過ごしている。マルリーとは学年が違うし、ぺーシュはクラスが違うから基本的に昼休みや放課後の時間を共にしているが、2人といる時間はとても楽しい。


 アルノーとも度々会っている。彼はこの学園の4年生なので、私たちと違っていろいろとやらなくてはいけないこともあるから高頻度ってわけではないけど。


 一度、私が救護棟から学園に戻って少し経った後、彼に誘われて会話をすることがあった。



ーーーーーーーーーー

ーーーーー



「君から言われたことをよく考えて、もっと周囲を見てみるようにしたよ」

「それは素晴らしいことです」

「それで、今はルナ……と距離を置くようにしてるんだ」


 アルノーは少し言いよどんで、最近彼女について気が付いたことをぽつぽつと話し始めた。

 前から、別の男性にルナが話しているのを見たことがあるらしい。アルノーの時と同じように、一時的に言い寄って、また別の人に行くというのを繰り返しているらしいと分かったようだ。ここ最近はまた別の人。


「本当は……気が付いていたことなんだ。それを認めたくなくて、マルリーの話も聞かないようにしていた」


 アルノーは少し悲しそうな表情をしたが、すぐに私に向き合って背筋を正したあと、頭を下げた。


「合宿訓練の時、僕は君にとても酷いことを言ってしまったね。心より謝罪する。本当に申し訳なかった。……それと、妹のことを助けてくれて本当にありがとう」

「あ、それは、…………私の方こそ、乱暴に揺さぶったりして申し訳ございません」

「はは、あれは効いたよ」


 アルノーは憑き物が落ちたかのように爽やかに笑った。こんな風に笑うこともできるんだなと少し思う。

 ゲーム内の彼は基本仏頂面で、好感度が最大近くまで上がると主人公に対して甘えるような表情をよくしていた。


 個人的には、今の表情の方が好きだ。


「あ、そうだ。アルノー様にお聞きしたいことがあったんです。ホワイトウルフと戦っているとき、私が緑魔法を常時使用していたと指摘していましたよね。私自身気が付かなかったのに、なんでアルノー様はわかったんですか?」

「あぁ、それは僕が他人が待つ魔力を感知できるからだよ」

「え?!なんですかそれ!」


 私の驚いた様子を見て、苦笑いをする目の前の彼は今なんて言った?魔力を感知できる人がいるって、聞いたことがないんだけど。そんな設定ゲームあったっけ?


「あはは、そんなに珍しい能力でもないんだよ。特に僕の祖国であるサラヴァン王国では、他者の魔力を観測できる人はそこそこいるんだ。頻繁にはないけど、他国にだってそういう人たちがいるっていうことを聞いたことがあるよ」

「それって、どんな感じに見えるんですか?」

「うーん、その人の周りに属性魔法に沿った色が淡く光っているように見える感じかな、オーラみたいな……。でも魔法を使っているときは、その人の魔力量や練度によって光の強さが違うんだ。だから、僕が前に一度だけ大魔導士と呼ばれる人が魔法を使っているところを見たんだけど、そのときはもうオーラの光り方が凄まじかったよ」

「えぇ!すごいですね……!」


 それなら私のことをすぐ見抜いたのも頷ける。

 オーラって実際に見たときはどんな感じに見えるんだろう。彼が言った通り属性魔法の色で光って見えるなら、ルナのことは白く光り輝いているように見えたのかな。



 

 

「…………………………」


 会話が途切れ、お互いに黙り込んでしまった。

 なんか気まずいなと思ったとき、アルノーが口を開いた。


「もともと僕、人前に立つのも、何か起こったとき機転を効かせるのも得意じゃないんだ。そういうのは、兄上とマルリーの方がずっと上手でね。合宿訓練のときも、僕はずっと黙っていただろう?マルリーの方が僕よりみんなをよくまとめていた」


 確かにアルノーは上級生として引率役をしていたが、主に他生徒に声かけをしていたのはマルリーだった。アルノーも指示出しとかしていたけど、口数はずっと少なかった。


「言い訳にしかならないけど、今までは自分が何を言っても、みんな話を聞いてくれないだろうって思ってたんだ。兄上の人を統べる能力は僕なんかじゃ真似出来なくて、僕が王太子になってからはよくそう言われたよ」

「でも、私が倒れた後、みんなをまとめたのは貴方なんですよね?マルリーから聞きましたよ」

「あれは、学園から指示を仰いでその通りに行動しただけだよ。僕が考えて行動したわけじゃない」

「大切なのは、それをきちんと遂行できたかじゃありませんか?さなおかげで私の命は助かりました。学園からの指示だって、そんなに細かく言われたわけじゃないでしょう?」

「うーん、そうだけど……」

「アルノー様。国を統べる王様だって、自分一人で考えて国を守っているんじゃないと思いますよ。王が自ら信頼できる人たちと一緒に考えて、国をより良くする運営をしているんだと思います」


 こんなこと、アルノーからしたら今更って感じかもしれないけど……口に出して話したほうがきっとより実感すると思う。


「……昔、父上からそんなことを言われたよ。どうして忘れていたんだろうね」


 アルノーは、眉を下げて軽く微笑んだ。

 マルリーの時も思ったけど、この2人は安心したように笑った表情がよく似ている。


「本当にありがとう、ミラ・スカーレットレイク嬢」




ーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー




 と、まぁこんな感じの会話をした。

 彼が前向きになってくれたのは良かったけど、会話の中で気になることも言っていた。

 

 それはルナの行動についてだ。

 最近のルナは、アルノーが自分と距離をとっていることにも気が付かずに他の攻略対象のところにアプローチしに行っているらしい。

 

(”鐘”には逆ハーレムルートなんてないのに……)


 

「ミラ様、どうされました?」

「せめてこれくらいは食べ切りなさいよ」


 少し物思いに耽っていたら、ぺーシュとマルリーから声をかけられた。


 最近は私たち3人で昼食を食べるようになった。

 私が退院してから、2人は私の食事に関してよく口を出すようになったのだ。

 特にマルリーは、私の皿の上に野菜や果物をよく乗せてくる。バランスよく食べなさいと説教をするし、ぺーシュは私が少しでも残そうとすると、具合が悪くなったのかと不安そうな表情で見てくるので、この2人の前ではいろんな意味で食事中に気が抜けなくなった。

 

 それに放課後の魔法の練習にも付き合ってもらっている。マルリーが友人になってくれたおかげで、紫魔法について教わることができるのでついつい没頭してしまうのだ。

 しかしその代わりに、前よりは練習時間を取れなくなった。少し練習したら、すぐに休憩するようにと保健室の先生からこの前注意されたのだ。この人を通じて、救護棟の医者に話がいくだろうからあまり無視をすることができない。


 だからと言って何か不便だと思うことはない。

 むしろ人からこんなに気にかけてくれることがくすぐったくも嬉しいと思うくらいに、やっぱりこの日々は楽しかった。

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