短い入院生活
それから、私は学園にある救護棟と呼ばれる場所に運ばれた。そこは一面真っ白で、清潔感が保たれた場所だった。こんな病院みたいなところがあるなんて今まで知らなかったし、ゲームの知識としても知らなかった。
やっぱりこの学園って、他国の王族とかも通っているから医療面にも力を入れないといけないのかもしれない。
「でも学校にこんな場所があるなんて、さすが金持ちが通う場所なだけある……」
自分一人を入院させるために、だいぶ広い病室が用意された。これから暇になるだろうけど、テレビなどの電子機器などはこの世界にはないので、本を数冊許可を得て持ってきてもらった。
医者の診察など受けた後、その医者は笑顔で栄養が足りてませんね!と私に告げた。それに加えて、私の胃は同世代の子と比べて小さいのかもしれないと言われた。
実感は全くない。へぇーそんなことまでわかるんだ、と他人事のように感じてしまう。
「私って栄養失調なんですか……?」
「まぁ、それに近いようなものだね。今回は緑魔法を解除したせいで、今までの魔法疲労が一気に身体にきて倒れたと思うんだけど、あと一年くらいこんなこと続けてたら限界が来てたかもね。……なになに?もしかしてモーリスにそう言われたの?」
「モーリスって誰ですか?」
「保健室の先生の名前だよ。彼がモーリス。あの人、結構大げさだからさぁ〜。ここに来る子って、大体今の君みたい彼の推奨で入院するから自分の体調について怖がる子が多いんだよねー」
私からしたら、生徒が体調に気をつけてくれるようになるのは嬉しいんだけどね。と目の前の医者は楽しそうに笑っている。
私は笑えないけど。
しかし彼の言う通りだったのか、保健室の先生にはあんなに脅されたにも関わらず食事に関しては意外と普通のご飯が配膳された。ただ食事をするとき、私がちゃんと食べているか監視をする人がいるのだが、それが少し怖い。ずーーっとニコニコしながら横に立っている。私が料理を食べ終わるまでずーーっと。
(食べ辛い…………)
そんな生活を続けて数日経った。救護棟には基本的病人である生徒以外は立ち入ることができない。ぺーシュにも会えないし、決められた時間以外は自由に歩き回ることもできないから大分暇だった。
この身体が、医者から健康体であると太鼓判を押されるには長期入院が必要になってくる、らしい。そうすると、当然魔法の勉強することもお預けされてしまうだろうから、それは頑固拒否した。
医者と私で押し問答を繰り返したのち、折れたのは最終的に医者の方だった。どちらにせよ、救護棟にいるあいだも緑魔法の低級身体強化魔法を付けていたので、このくらい元気ならここにいても仕方がないだろうと判断したようだった。しばらくはその魔法をずっと発動させていて、徐々に効果を弱め、最終的には魔法に頼らずとも生きていけるような体にしていこうと言われたのだ。
逆に今魔法を止めてしまうと、身体が追い付けなくて危ないだろうからと、すっかり顔なじみになった医者が苦笑いで言った。
そして退院は3日後になった。全期間合わせて約2週間くらいの入院生活だった。その期間はただ食べて寝るだけではなく、適度な運動と称して身体を動かすこともしていたため一番初めにここに来た時よりも、全体的に身体が軽い気がする。
バランスの良い食事と適度な運動って本当に大切なんだなと改めて感じた瞬間だった。
退院する日が近づくと、再三にわたり定期的に救護棟へ診察に来ること、と念を押された。食事も絶対に抜くな、夜遅くまで起きているな、無理をするななどの説教を毎度のごとく言い聞かされ、耳には多分タコができたと思う。
恐ろしいのは、先生が「もし次の検診で体調の悪化が見られたら、問答無用で健康体になるまで入院だからね」と笑顔で告げてきたことだ。
それはほんとに嫌だったので、肝に銘じますと答えた。
ようやく退院する日、次に診察に来てほしい日を伝えられて肩を優しく叩かれた。どことなくまだ心配しているその眼差しに、無理を言ってしまったなと少し反省をする。
長いようで短い入院生活だった。




