↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/172

復讐のミラ ー1ー

 声を上げた彼の視線の先には、何かがたくさんうごめいていた。壁から出てきたものと同じ灰色の人型の何かだ。


「あの光景、ずっと見ていると正気度が減りそうです……」

「なんかあいつら、制服を着てないか?」


 塩内さんの一言に引っ掛かりを覚え、対象をじっと見つめる。服を着ているのかすらも最初はわからなかったけれど、確かに制服っぽい何かを着ているようにも見える。


「まさか、一緒に取り込まれた生徒たちですか?」

「かもしれないな。よく見たら違う服装の奴もいるが……」


 生徒らしき人型は、校庭で見た景色同様におぼつかない足取りでどこかに向かっていた。私たちから見て、それは中央に向かっているように見えた。


「……追ってみますか?もしかしたらまた別の場所に連れて行かれてしまうかもしれませんが」

「まあ、それしか手掛かりはなさそうだしな……」


 意味は無いかもしれないが、息を殺して慎重にその群れに近付いた。今度は巻き込まれないように、一定の距離を保ちながら最後尾で様子を見てみる。

 だいたい、ミラはどうしてこの生徒たちを集めたのだろう。


「お、なんか見えたぞ……。何だ、ありゃ……?」

「?!」


 生徒たちの行先が判明したとき、私は塩内さんの腕を掴んでここから離れようとした。塩内さんは私の突然の行動に驚いていたが、それに構わずに彼をグイグイと引っ張って来た道を引き返していく。

 塩内さんが抵抗せずに、私について来てくれたことが何よりも幸運だった。


「おいおい、どうしたんだよ突然」

「…………」


 逆に聞きたいんだけど、塩内さんはあれが見えていなかったの?!見えてたら見えてたでこんなに冷静でいられるのもおかしいって思っちゃうけど……。


「あっちは行かないようにしましょう。何なさそうでしたし」

「そうか?まあ、それならいいけどよ」


 何か他に手掛かりはないかと探すふりをしながら、ほっと胸を撫で下ろす。

 …………本とか絵でしか見たことなかったけど、あれって大昔に西洋とかで罪人を処刑するための道具だったよね……。何であんなところにあったんだろう……。


 何より怖かったのは、あの人型の何人が刑に処されていたこと。いくら見た目が不気味だからって、人の形をしていたらやっぱり………、………もう二度と見たくない。


『何処に行くの?』

「……!」

「ん?何か言ったか?」

「違います!私じゃないです!」


 耳元で女の子の声がした。

 塩内さんにもその声が聞こえたらしいが、私の声だと勘違いしたらしいので慌てて彼に声がした場所を指さした。

 けど、そこには誰もいない。


『こっちよ、こっち』


 今度は背後からその声が聞こえて、振り返った。

 下に目線をやれば、小さな女の子が立っている。その姿はあの不気味な人型とは違い、普通の人間と同じだった。

 どう見ても、その姿には見覚えしかなかった。


「ミラ……、スカーレットレイク」


 あの白い浜辺で出会ったぼんやり儚げミラとは違い、ここにいる立っている彼女は雰囲気が全く違う。それでも、間違いなく目の前にいる相手はミラ・スカーレットレイクだ。


『同じ姿なのに、こんなにも違って見えるのね。今のあなたを見ていると無性に腹が立って仕方がないわ』


 ミラは「腹が立つ」と言いながら、不敵に笑っていた。

 彼女が着ているブカブカの制服は、今の私にはぴったりだ。


「おお、こうして見るとなんで奇怪な光景なんだ……」


 隣にいた塩内さんは、目の前で起こっていることに驚いているのか変なことを呟いていた。呆然としている彼の腕を引っ張り、正気に戻ってもらう。

 もしかしたら、ミラはここで私たちを始末するのかもしれない。塩内さんはおそらくまだ魔法の使い方を知らないだろうから、ここは私だけで応戦しないと……!


『安心して。今はあなたたちに危害を加えるつもりはないから』


 そう話すミラの手には、剣が握られている。

 恐らく普通の剣なのだろうけど、ミラが持つことでそれが大剣に見えてしまう。大きさも長さも彼女には向いていないのに、ミラはその剣を余裕そうに持っていた。


『今から、この剣であの人を刺すわ。かつてあの人が私のことを殺したときと同じようにね』


 その人って、もしかしなくてもセレナのことだろうか。

 

「その人のことを刺したら、あなたの気は少し晴れるの?」

『ええ、多少はね』


 じゃあ……結構最低な考えだけど、セレナを犠牲に捧げたらミラの復讐も終わりってことでこの事態も収束しないかな。あの火の玉のことは一旦置いておいて、今はミラさえ落ち着いてくれたらどうにかなるかもしれないから……いや、ダメか。


『ええ、ダメね。あの人に復讐したって、私の気は少ししか晴れないんだもの。私はね、私のことを苦しめた人間全てを苦しめたいの。……私の死を望んだ人間全てをね』


 まさか、それって“鐘”に出てきた各国の国民や王族も含めて言っているの?!


『手始めにこの学園の人たちから、次にオルデナ帝国全土。その次はどこがいいかしらね?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。