ここからでるために ー1ー
“ま、まさか……これがミラ様……?”
信じられない、とでも言いたげに目を見開いてそう呟くペーシュを私は見ていた。そしてそんな彼女に、私は声を大にして伝えたい。
いいえ、それは私ではありませんってね!!
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なす術もなく像に飲み込まれてしまった私は、そのまま意識が暗闇の中に堕ちていった…………なんてことはなく。
ただ像の内側に入り込みましたって感じで、そのまま取り残されていた。今の私は、透明なガラス瓶の中に入れられたような状態に近いのかもしれない。
かといって出られるというわけでもなく、外の様子はわかるけど、ペーシュたちから中の様子は見えないようだし私の声も届いていないようだ。
ペーシュたちが無事でいてくれたことは嬉しいけれど、あの像が私だって勘違いされるのは嫌だ。
……まあ、他者からしたら“私”なのかもしれないけど。
しかしとても不思議なことに、私の他にもこの像の中に入ってしまった人たちがたくさんいたのに、この不思議な空間には私と……あと近くで倒れている塩内さんしかいなかった。
他の生徒たちは一体どこへ行ってしまったのだろうか。
周囲を見渡しても、一人の姿も見えない。
とても広い空間のようにも思えるけれど、狭い空間のようにも思える。
「いてぇ……、遠慮なく人の体を押しやがってよ……」
塩内さんは微かに目に涙を滲ませながら、痛む箇所を摩っている。チラッとその部位をしてみると、結構赤く腫れていた。うっすらと足跡のようなものも見えるし、踏まれたのかもしれない。
「……そこ、踏まれたんですか?腕ですけど……」
話しかけてもいいのか少し迷ったのだが、あまりにも痛そうなので声をかけてしまった。塩内さんは私が気まずいと感じていることに気が付いていないのか、いつもの調子で答える。
「勢いに負けて転んじまったんだよ……。そしたらそのまま踏まれちまって……」
「………………」
そのまま放っておいてもいいけど……。
私は、あまり動作が不自然にならない程度に彼のことを警戒しながら、塩内さんの腕にそっと手をかざした。塩内さんは驚いて声を上げていたが、その前に私の方からスッと遠ざかる。
「何をす、…………?あ、治してくれたのか……?」
唖然とした表情で見つめてくる彼の視線から、少し顔を逸らす。咄嗟の治療みたいなものだから、そんなに治せたわけじゃないけど……。
(ここでも魔法は使える……)
自分の手のひらを握ったり開いたりして、その感触を確かめた。あの森の中で見た廃教会とこの空間、同じ気もするし違う雰囲気もする。
ここまでずっと幻覚とか見せられているから、正直いって何が本当なのかはわからなくなってきてるけど、まあ魔法が使えるなら……。
「……ぁ、その、」
状況を少しでも把握したいと考えている私に、塩内さんがズイッと近付いてきたので、思わず身構える。
何だ?余計なことをするなとか、俺に何をしたとか怒鳴ってくるのか?
「…………何ですか?」
「………………あ、いや……その、どうしてそんなに俺を守ってくれるんだ?」
「守っているつもりはないですけど……」
「怪我とか治してくれるだろ!前もそうだったし……お、俺が殺そうとした後の……今も……」
「…………前は塩内さんのこと、戦友のようなものだと思っていたので、当然です。……さっきのは、その名残りのようなものですね」
「…………怒ってないのか?」
塩内さんはやけに目をキラキラさせながら、そんな質問を投げかけてくる。
その瞳には、先ほどまであった敵意の“て”の字もない。
「………………そんなの怒っているに決まっているでしょう?!よく知らんうちにルナと協力して私に濡れ衣着せようとするし、なんかあなたの苦悩を突然ぶつけられた挙句に撃たれそうになりましたからね?これ怒らずにいてどうしていろと???」
怒ってないのか、と呑気に尋ねてくる塩内さんに腹を立てながら捲し立てれば、彼は目を白黒にさせながら口を吃らせた。さっきまであんなに人が変わったようにしていたのに、当然おとなしくなりやがって……。
「大体、何ですかあれ??」
「いや、それは……ルナが……」
「その話、まずは簡潔でもいいんで聞かせてくれません??それを聞いた後に、あなたが私を敵視した理由が妥当かどうか判断するんで」
いつの間にか塩内さんは正座になり、項垂れていた。
そしてポツポツとルナから聞いた話とやらを私に説明し出すのだった。
【お知らせとお詫び】
いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、明日の投稿はお休みさせていただきます。
大変申し訳ございません。
9/16追記
大変申し訳ございません。
本日の投稿もお休みいたします。
迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません。
明日は投稿いたしますので、お待ちいただけたら幸いです。




