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隠されていた事実 ー2ー

 先生の質問の意味が私にはよくわからなかった。

 しかし私のことで驚くことがあったとするなら、それは間違いなくホワイトウルフと戦うときに放った魔法のことではないだろうか。


「え、っと、ホワイトウルフとの戦闘のことですか?私も驚いてます。まさかあんな強力な魔法が使えたなんて」

「……………………。うーん、それにも関係しているけど、私が言いたいことは君の体調かな。私の見立てでは、君が倒れた原因は強大な魔法を使用したことではなく、栄養失調だよ」

「……ん?」


 えいようしっちょう?それに私がなっているって?


「今回君が倒れた理由は、君の体力に対して大きすぎる負荷がかかったせいだけど、まず負荷に対してそれを耐えられる体力が、君の場合他の人と比べて全くない。細すぎる身体は栄養失調によるものだろう。全く、驚いたよ。長くこの学園に努めているけど公爵令嬢が栄養失調なんて一度も聞いたことがない。確かに君は一年生のころから数回ほど保健室に来ていたけど、そこまで状態が悪いと思っていなかったから余計にね。気が付けなかった私にも責任があるけど、何で言ってくれなかったんだい?」

「あ、あの待ってください。本当にそうなんですか?実感があまりないんですけど」

「まさか無自覚とは……毎日きちんとご飯を食べてるかい?」


 のほほんとした物言いに思わず気が抜けたが、この先生が冗談でこんなことを言っているのではないとは思った。

 学食はぺーシュと一緒に食べているから問題はない。

 そのぺーシュにもそんな量で足りるのかと聞かれることはあるが、お腹いっぱいにはなってたし……。それに、魔法の練習をしているときはぺーシュが持ってきてくれるお菓子をよくつまんでいる。そこまで心配されるようなことは何もないけど……。

 あ、でも朝とか夜はあんまり意識していなかった。

 いやでも、お腹がすかないんだもん。


「…………」

「あまりよくない反応だね。カプール殿下から話を聞いたよ。君は常に緑魔法を使用して自分の体力を補強し続けていたようだね。それで今回、ホワイトウルフを討伐するために緑魔法を解除したところ、体力を補っていたものがなくなって、君は倒れたんだよ。もう一度聞くね、なんでそんなことをしたんだい?」


 そんなこと、それが意味するのは緑魔法を日常で使用してまで自身の体力を偽っていたことだろう。確かに、着替えるときとか結構痩せているなって思ったけど、栄養失調と言われるまでとは思わなかった。

 え、というか待って。ゲーム内でミラが学園編でさんざん魔力が少ないって言われていたのはこの身体強化魔法を使っていたからじゃない?これ使ってなかったらあんな強力な魔法を使えていたってことだったんだよね?もったいなくない?




(そういえば、なんでアルノーは私が緑魔法を使っていたということに気が付いたのだろうか)






「んーー答えたくないなら、無理に答えなくてもいいんだけどね」


 考え事していて先生の質問に答えずにいたら、先生はこちらに何かしらの事情があると感じたらしく、それ以上質問を投げかけるのをやめてしまった。


 しまった、何か言うべきだったか。

 でも正直言って、理由を問われても自分でもよくわからないから相手から引き下がってくれるのはありがたい。


「しばらく入院だね。ここじゃなくてもっとちゃんとしたところで治療を受けないと」

「え、それってどこですか?!っていうか私なら全然大丈夫です!」

「だめだよ。自覚ないかもしれないけど、さっきまで結構危なかったんだ。応急手当てでどうにかなるものでもないし」

「ご飯をちゃんと食べてればいいんですよね?それだったら別に大したことではないと思うんですけど」

「身体をきちんと休めなきゃいけない。それ今後の食事は、今の君の体調に合わせたものの方がいい。そうでないと逆に負荷がかかってしまう」

「ッ~~~、…………本当に駄目ですか?」

「駄目。……何か事情があるのかい?」


 事情――そんなの魔法を使いたいからに決まっている!まさに私にとって幸運にも思える今回の出来事。まさか全く使えないと思っていた超強力魔法が使えるかもしれないなんて、心が躍らないはずがない!

 どこにいつまで隔離されるかもわからないのに、わかりましたと素直に従うことはできない!今にもここから出て、魔法を使いたいというのに!


「あ!今回のこと、公爵家にも話しましたか?」

「……まだだよ。君が運ばれてきてから2時間も経ってないからね。朝になったら学園長が報告をすると思うよ」


 逆にたった2時間で良くここまで事の状況が掴めていたなと感心してしまう。しかしそれなら好都合だ。


「それなら、公爵家にはこの話をしないでほしいんです。お願いします!」


 正直言って、現お父様もといスカーレットレイク公爵家の当主についてよく知らないけど、もし私の魔力量が膨大だったなんて知られたら、何かしらの政治の道具として使おうと考えるかもしれないよね。今までは使えない娘としての認識が、突然利用価値があるなんて考えられるようになったら……身震いする。


「……わかった。学園長には、そう伝えてみるよ」

「ありがとうございます!」


 先生は私の態度に苦笑いをした。こんな時間に保健室に運ばれて、その上無茶なことを言っているから呆れてしまったのだろう。でも仕方がない、私は将来のことを考えて行動をしているのだ。


「その願い事は叶えるけど、君が入院することは決定事項だよ」

「え」

「まあでも、外ではなくて学園内にある救護棟での入院だから、安心していい。学園の外には出ないよ」


 私が考えていることとはちょっと違ったが、まぁこの先生にはとてもお世話になっているからこれ以上わがままを言うのはやめよう。


 「とりあえず今は休みなさい」と言われたので、またベットの中に戻る。先生は部屋の明かりを消して、保健室から静かに部屋から出ていく音が聞こえた。


 そのときの私は、これからの可能性に思いを馳せて、口を緩ませていたから気が付かなかった。保健室を出た先生の顔が、妙に険しくなっていたことにーー。

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