巨大な女性の像 ー1ー
耳をつんざくような轟音が近くで聞こえた。
身を屈めるとか、できなかった。
「…………、?」
音が鳴っても体のどこかに痛みが走ることはなく、ただ心臓がバクバクと動いて「私は生きているぞ」と言っていた。
どうやら弾は私に当たらず、全く別の場所に飛んでいってしまったらしい。……近くで誰かが倒れるような音もしないし、奇跡的に人間を避けていったようだ。
銃を外した彼は舌打ちをして、もう一度引き金に指を置いた。今度は外さないというように、じっと私のことを睨みつけている。
それを見て、反射的に私の体が動いた。
さっきまで全く動かなかったのが嘘のように、できる限りの猛ダッシュで間合いを詰めて彼の腕にしがみついた。
——こういうときに、咄嗟に魔法を放てるようになればなぁ!
遠距離魔法も知っているし、私がミラになってから半年以上経っているのに、まだ咄嗟の判断で魔法を使うってことに慣れてないんだから!
「放せ!」
「い、やです!」
取っ組み合い……と言っても、体格差があり過ぎて私では彼の力には到底敵いそうにもない。私の腕よゴリラになれ!という思いで緑魔法の強化魔法を使っているのだが、塩内さんはそれに拮抗してくる。
せめて彼の銃を持つ腕にさえしがみついていれば、自分は撃たれることはないと思い、銃口の前に立たないようにと必死になる。塩内さんは左手で私の髪を引っ張ってくるので、めちゃくちゃ痛い。
そうして見るに堪えない取っ組み合いを続けていると、突然真横からドンッと音がした。
キーンという耳鳴りが頭の中で響いて、一瞬他の音が何も聞こえなくなった。
あまりの衝撃に、絶対に離すもんかとしがみついていた塩内さんの腕を離してしまった。
というか今の音、絶対に銃声だよな……。取っ組み合いになった後に不意の銃弾が放たれるって、やばいフラグなんじゃ……。
すぐに確認できたのは、塩内さんの無事。
次に周囲の人たちに当たっていないかも確認した。
弾が放たれる前、塩内さんは腕をどこに向けていた?
なんとなしに上を見る。
石像の女性と目があった。
「……!」
ピシッ、と小さな音が聞こえた。
この距離で聞こえるのだろうか?
いやでも、確かに聞こえた。
ピシ、ピシッと小さなヒビが女性の額に広がり、蜘蛛の糸が張られたような小さな傷ができた。
っていうか物理攻撃効くんだ……、本当に石像みたい……。
思わず呆けてその像を見上げていると、その口元に目がいった。……なんか今、動かなかった?
「くそ、今度こそ……!」
「いや待ってください!今あの像動きませんでした?!」
自分の見たものが信じられなくて、諦めずに銃を構える塩内さんに思わず話しかけてしまう。塩内さんは私の指差す方向をチラリと見て、ギョッとした表情になった。
……まさか、気付いてなかったの?
「な、何だあれ……嬢ちゃんにそっくりじゃねぇか……」
(あ、やっぱり似てるんだ)
「……ってことはやっぱり、お前が元凶ってことなんだな?」
「違います!何でそうなるんですか?!」
「あんなにそっくりで他に何があるっていうんだ!」
「すぐには信じられないかもしれませんけど、あれは私ではないっていうか、関係なくはないんですけど!」
塩内さんは激昂しながら、銃の引き金をガチャガチャと引いた。それを見た私の心臓が凍りつきそうになったが、弾は全く出ず、彼はただ銃を握りしめただけになっていた。
——弾切れ?二発分しか入ってなかったの?
「クソッ!」




