取り戻すために ー3ー
咄嗟に口を覆う。
それと同時に、右腕がだらんと下がった。
どうやらあの火の玉による、変な支配からは逃れられたらしい。けれど、このタイミングで解放されたことによって状況を説明するのがもっと難しくなってしまった。
というか、なんで人がここに来るの?!
「スカーレットレイク嬢!今なんと仰っていましたか?!」
私の背後にいる人は、焦りながらも咎めるように私に問いかける。先ほどの私の発言——厳密には私ではないが——をはっきりと聞いていたようだった。
恐る恐る後ろを振り返る。
せめて発言を聞いていたのが一人だけだったら……と思ったのだが、パッと見でも三人はそこに立っていた。
「あなたが自分の部屋に駆け込んでいく姿を見て、何かあったんじゃないかと思って様子を伺いに来たの……。でも、あなたがさっき言っていたことは……」
ロープを纏った女性が、恐る恐る声を出す。
そうか、この人たちは見回りをしていた教員なのか……!
「スカーレットレイク令嬢……あなたが昨晩この部屋から姿を消していたことを私たちは知っています。救護棟での知らせによれば、意識を戻った後もすぐに出歩いていたそうですね」
おろおろする女性教員に代わって、男性教員が私を睨みつけながら前に立つ。
「意識を取り戻したばかりの貴方はなんの情報もなく部屋に一人寝かされていたのですから、色々と歩き回ることは当然のことだと思っていました。ですが、昨晩は一体どうしてですか?話によれば、他数名の生徒の姿も消えています」
それって、ペーシュとかアルノーとかのこと?!
どうしよう、まずそこから説明するべきなのか?
ど、どこから…………?!
「ここ数日で、病と思われた生徒たちの症状は、魔法によるものだと断定されました。そしてその力は、昨晩を境目に激化しています」
やばい……、やっぱりこれ完全に疑われているよね?
だって今学園に起こっている異常事態は、世界に恨みを抱いたミラ・スカーレットレイクが引き起こしたもの。その怨念ミラに力に協力しているのも、私という魂のカケラ……。私たちではないけど、そんなの他人からしたら意味わからないことだ。
今私の魂は分裂していて、片方の魂がこの異常事態を引き起こしています!でもこの私は関係ありません!……って言って、誰が信じてくれるというのだ。
それに、もともとミラ・スカーレットレイクはよくわからん火の玉にいいように利用されていた。ミラが世界を恨むようになったのも、アイツのせいだって言っても過言ではない。だから、元凶は他にいるのって言いたい!
(いやだから無理でしょ!こんなのでどうやって……、)
あまりの詰みに頭を掻いていると、突然女性教員が私にガバッと抱きついてくる。
本当に突然すぎて、私の脳内が一気に真っ白になった。
「大丈夫よ、落ち着いて!貴方が見ていたものは全て悪い夢よ!私たちがついてる!決して惑わされないで!」
「え、え……?」
女性教員は、私の背中をさすりながらそう呼びかけた。彼女は、私がパニックになっていると思い込んでいるらしい。
…………これはもしや、私の行動が違う意味で彼らに勘違いされているのか?
「あの、」
「スカーレットレイク嬢が何を見たのかは、私にはわからない。でも貴方の顔を見ていればわかるわ……とっても恐ろしい夢だったんでしょう……。大丈夫、私が貴方を守ってあげますからね」
「その、」
「あぁ、可哀想に。突然知らぬ罪を着せられ刺されてしまった挙句、目が覚めたら周囲は不測の事態で……さぞや混乱したことでしょう……。しかし、私は貴方に伝えたいのです。ルナさんも被害者であったことを、彼女は貴方に対して決して許される行いをしてしまいましたが、彼女もまた別の被害者ではあったのです。ですから、」
どうしようこの人、全く話を聞いてくれない。
何を話そうとしても止まらぬこの人のマシンガントークに、後ろにいた男性教員に救いを求めた。
彼らは私の様子を観察しながら何かをヒソヒソと話し合っていたが、私の視線に気がつくと女性教員を止めた。
止められた女性教員は、私から一歩離れたところでスンスンと涙を拭いている。
……なんだか、情熱的?な人だなぁ。
「落ち着きましたか?」
男性教員は、私の目を見ながらそう尋ねた。
え、その言葉って私に対してなの?
「お、落ち着いてます……最初から……」
「……そうですか」
男性教員はギロリとした目つきで私を見ているが、特にこれ以上言及してくることはなかった。
「貴方には色々とお聞きしたいことがあります。まずはどうして昨晩ここを抜け出したのですか?」
「そ、それは……」
「私にはわかっていますよ!きっと魔法のせいなのでしょう?それか恐ろしい夢を見て、ここから抜け出したいと思って、」
女性教員がワッと発言する。
全く違うけど、これを否定したら詳しく説明しなくてはいけないよね……。それに、夢ってさっきから言っているけどそれはどういうことなんだろう。
「あの、夢って……」
「ええ、ええ!まさか私たちのとった方法が、生徒たちを余計苦しめることになるとは思っていませんでした……!」
いまいち何を言っているのかよくわからない彼女には、説明を求めても無駄だとこのとき直感した。なので、私はまた男性教員に視線を送る。
彼は、ため息を漏らした後に私と向かい合った。
【お知らせ】
前話のエピソード内を少し改変しています。
改変場所は、エピソード内の中間あたりに文章の付け加えていることと最後のセリフの変えています。
申し訳ございません。




