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取り戻すために ー1ー

 目が覚めたとき、私はアメシティーオーズ学園の校庭のど真ん中で立っていた。生身で行動していた最後の記憶を辿っても、学園に戻ってきた記憶などないから、ミラから話を聞いていなければこれも幻覚かどうか迷っていたかもしれない。


 “今の私たちは、一人の人間の体を奪い合いっている状態。魂の核を持っているほうに主導権があるみたいね”


 どうやらあの火の玉は、ミラの体を使って何かしようと企んでいるらしい。私から無理に魂の核とやらを抜き出そうとしてきたから、いくら力があっても勝手に人の体に乗り移ることはどうやらできないようだ。


 “でも、力の差では相手の方が圧倒的に強いわ。火の玉は論外だけど、分裂した私(・)た(・)ち(・)もね”


 世界を恨んでいるミラと私(夢)を排除したかった私。

 相手が私たちのように手を組んでいるのかはわからないけど、火の玉が私たちの魂をいいように使っているならやっぱり相手の力量は計り知れない。だって、私たちの魂はほとんど彼方に手渡ってしまっているから。

 というかそもそも、魂が持つエネルギーってどれくらいの力なんだろうか。それって生身の人間のときと、魂だけのときで違うものなの?

 それに、魂の力=魔法の力ってわけでもなさそうだし……。


 …………いや、やめよう。

 わからないことにずっと頭を悩ませ続けるのはよくない。

 とにかく今は、ミラの言う通りに行動するべきだ。

 ラッキーなことに、すでに学園に戻ってきていたということで目的はすぐに達成できそうだ。

 

 私はミラの指示をもう一度頭の中で思い起こした。


 “あなたが集めてくれた私の魂のカケラ、あれをもう一度あなたの中に取り込んで”

 “え?私がいつミラの魂を集めていたの?”

 “あなたがガラスの破片だと勘違いして、ご丁寧に瓶に詰めていたあの黄色い破片のことよ”


 それを聞いたとき、魂のカケラってあんな可視化できるものなんだ……とちょっと驚いた。

 ……そういえば、取り込むって一体どうしたらいいんだろうか。口の中に入れて飲み込めばいいの?

 

 疑問は尽きないが、とにかく急ぐ。

 ミラは油断するなと言っていた。だって、私の記憶がないのに体が勝手に学園まで戻ってきたということは、少し前までは主導権があっちに握られていたということ。

 今の状況では意識を乗っ取られてしまえば、簡単に体の主導権はあちらに握られてしまうらしい。

 

 魂の核は私たちにあるけれど、それは少しだけ欠けている。

 もし魂の核がこのまま壊れたら、私たちの自我は完全に無くなるらしい。人は死んでも、魂がある限り何回でも転生を繰り返す。でも、魂がなくなったらそれまで。

 地球のように生物が多い星には、周りに次の生を待ち望んでいる魂たちがぐるぐる回っているんだって。


(その魂が異世界に来ることは殆どないらしいけど、次元の歪みとやらでたまに異世界に来ちゃうんだとか)


 ミラがあの火の玉からそう聞いたと言っていた。


 正直言ってスケールがデカすぎてあんまり理解もできないけど、少しだけロマンがあって気分が高揚しているのも事実だ。

 その度に、今はそんなことを考えている状況ではないと自分に喝を入れる。


 周囲は霧が出ているように、ボヤッとしている。

 空がゴロゴロと鳴っていて、時折ピカッと光るのだ。

 これで冷たい風が吹けば、雰囲気はバッチリだ。


 寮の階段を駆け上がり、自室へ。

 こんなに走り回って目の前が真っ暗にならないなんて、私ってば体力が人並みになってるじゃん、と肩で息をしながら小瓶が置いてある机に向かう。

 そして机の上の端っこに置かれていた小瓶を見て、ふと思い出した。


 そうだ……、この前小瓶の中身を取り出そうとしたら、中身が大きくなっていて取り出せなくなっていたんだった。

 私が拾ったときは小さなカケラたちだったのに、いつの間にか一つにまとまっていたなんて、本当に魂って不思議。


 小瓶を傾ければ、カランカランと心地のいい音が鳴る。


 …………大丈夫、かな?

 中身を取り出すためには、瓶を割らなくてはいけないけどハンマーとかで割ってみたり、床に叩きつけたりとかして中身まで粉々になっちゃったらどうしよう。


 力加減さえ間違えなければ……とグッと瓶を掴む手に力を込める。この部屋の中に、瓶を割ることができそうな道具はない。


 覚悟を決めて、腕を振り上げる。


「……!……ッ?!、?」


 その手を振り下ろそうとしたのに、振り下ろせない。

 私の右腕は、上空に振り上げられたままピタリと動かせなくなってしまったのだ。

 

 

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