魔の手 ー1ー
『どう?君も思い出したかな』
青い炎はユラユラと揺れている。
顔がないのに笑って見えるのが、腹立たしい。
(思い出したかって……?)
ええ、思い出したわよ。
あんたの喋り方ってセレナにそっくり。
だからこんなに腹立つのね。
『そういえばさぁ……さっき自分でも語ってて思い出したんだけど、なんで君はミラたちのことを知っていたの?』
“………………?”
『君はこの世界の魂じゃないよね。それなのに、もとからミラのことを知っていた。この世界のことも知っていた。……一体どうして?』
それって、ゲームの知識のこと言ってるの?それは転生してきたから……ってこれは理由になるのかな?
『君たち異世界の魂が、この世界にやってきたのも不思議だ。君の知識にある“転生”とやらはこのことを言うんだよね?そんな知識があるってことは、君が元いた世界ではよくあることなのかな』
いや、そういうのは深く考えてはいけないものだから何故って言われても私が困るんだけど……。まぁ、実際に起こると不思議ではあるけどさ。
『でも、君がこの世界に来てくれて助かったのも事実なんだ。ミラの魂の継ぎ足しが簡単に見つかったからね』
“さっきから人のことを詰め替え用みたいに言ってますけど、それやめてくれませんか?”
こいつの言ってること正直言って全く理解できていないけれど、これだけはわかる。私の魂は、欠けたミラの魂の補完用にされているんだ。
……いいや、さっきこいつは“残り滓”って私のことを言っていた。もしかしたら、私の魂のカケラもこいつに取られてるのかもしれない。
(そう考えるとめっちゃ腹立つんだけど?!)
なに人の魂を勝手に奪ってるんだ!ていうかこいつが長々と語った話って、ミラが悪魔の契約に踊らされたってことじゃない!で、その悪魔がコイツってことでしょ?
そんな話を聞かせて、よく私が協力すると思ったわね!
フフフフ、と目の前から笑い声が聞こえる。
“何……?!”
『いやぁ、ね?君って初めて会ったときと印象がだいぶ違うなって思ってさ。幼い頃のタカハシナナって、こんなに感情的な人だったんだね。それが君が持つ魂の核部分なんだね』
“は?訳のわからないこと言って、一人で笑わないで”
『ミラと真逆だね。もともと無気力で怒りを抱くことによって感情的になったミラと、もともと感情的だったが、他者に求めることを諦め無気力になった君。だから君たちは融合できたのかな』
全く意味がわからない……コイツ、人と会話する気があるの?
『今回の件でまた一つ学ぶことができたよ、ありがとね。それじゃあ、後は僕に任せてくれていいから』
ぬうっと手がこちらへ伸びてくる。
手?
“…………ッ?!”
身体の中央が、ガッと何かに掴まれたように熱くなる。
何?、痛い?!
『魂の核……生命を司る凄まじいエネルギーは、普段は層によって覆われている。だからこれを取り出すには魂を徐々に砕いていく必要があったんだ。でも、ミラの魂は早急に壊しすぎた。だから、君の魂を一時的に纏わせて回復するまで待っていたんだ』
青い炎が轟々と燃え上がって、うっすらと人の形が浮かび上がっている。それが青く熱い腕を伸ばして、私の心臓を引きちぎろうとグイグイ引っ張ってくるのだ。
何か喋っているようだけど、まともに聞くことができない!
『でも、君がミラの魂を乗っ取るだなんて思わなかったよ。いや、ミラが君に明け渡したのかな?』
“何、言って……”
『知ってる?強い感情には力が宿るんだ。普段なら成し得ないことも、成し遂げられるほどのエネルギーがね。でもそれって誰しもが宿せる者じゃないんだ。人の一生は短いし、何よりずっと同じ感情を保ち続けるのが難しい』
ほら、見て?聞いて?と“それ”は私に語りかけてくる。
それと同時に、ミラの怨みがましい声が聞こえてくるのだ。
目の前には、火刑に処される彼女の姿が。
『確か、君はこの刑が一番嫌だったんだよね?ミラの魂が欠けて、たまに君が出てきちゃった時のことだよ。覚えてない?すっごく辛そうにしてたんだよ』
さぁ、思い出してよ。




