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胸を貫くその言葉 ー4ー

 昔、興味深い話を聞いたことがある。

 目隠しをした人に、人の体内からどのくらいの血液が失われると死に至るのか話をする。そのあとその人に、小さな傷をつけて水滴が落ちる音を聴かせる。いくらか時間が経ったあと、「これほどの血が流れていたら死んでしまうな」と伝えると、その人はショックか何かで死んでしまうらしい。


 実際には血は流れていないのに、そう思い込むことによって……いや、そうだと信じてしまった結果、その人は死んでしまった。

 

 それならば、その反対ってあり得るのだろうか。


 本当に血を流していても、その血が落ちる音が水が落ちる音だと信じれば、たとえ本来なら死んでいる血の量であってもその人は生き残れるのだろうか。


(いや……血が流れ続ければ人は死ぬか)


「アツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ!!アツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ!!!!!!くるしい!クルシイ!私の身体が燃えてるわ!!!」


 救護棟のいたるところから、生徒たちの呻き声が聞こえてくる。その中でも、一際大きく叫び声をあげているその女子生徒は、これまで何度も水の中に飛び込もうとして看護師から止められていた。

 こんな季節に、噴水に飛び込んだら凍死するだろうね。


「落ち着いて!貴方の体は燃えていません!熱くもありません!お願いだから、暴れないで!!」


 今日は、二人がかりか……。

 看護師達は必死に彼女を抑えているけど、その顔には疲労が溜まりきっている。

 そろそろ、限界も近いかな。


 皇帝陛下……僕の父上は、学園の事態には知らん振りだ。

 どちらかというと手を貸したくても貸せないという方が正しい。それに、皇室が救護棟を支援するだけでは、問題の根本的解決にはならないだろう。

 

 しかし、時間があまりに無さすぎる。

 僕の見立てではあと一週間。その間に事態を解決しなければ、ここにいる人間は持たないだろう。


 今夜、僕はミラ達と一緒に森へ行く。

 そこに、カプール第二王子が怪しいと睨んだ場所があるのだという。

 

 もしルナ達の話が正しいのならば、全ての元凶はミラであって、彼女を倒さなければ世界は破滅を迎えるのだという。もしそこで、彼女が原因だというものがあったら、僕は即座に彼女を斬る。

 最悪違ったとしても、そこはジーク・ギルシリに任せる。

 スカーレットレイク公爵家と敵対する気はないからね。


(あーあ、彼女は逸材だったんだけどな……)


 まだ彼女を斬ると決まっているわけでもないのに、なぜが心の中でそう呟いた。こんなことを考えるのが、一度目ではない気がする。



————————————

——————


 洞窟への入り口を見つけて、怖気付いていた彼らを引き留めるために咄嗟にでまかせを吐いたけど、なんだか僕の仮説があってそうで思わず笑みが溢れてしまいそうだ。


「まいったなぁ……、まさか本当にここが誰かの記憶の中だったなんて」


 僕の呟きに気がついたらミラが、僕に話しかけてくる。

 その彼女の口の動きに合わせて、またあの声が聞こえてくるのだ。


『信じてたのに』

『許さない』

『どうして』


 …………この洞窟空間に入ってから、ずっと胸を刺されているような感覚がする。ぴりぴりとした、殺気のようなものを肌で感じている。


 しかし、他の人間はそんな様子を一切見せない。

 つまり僕だけということかな?


 そんな場所が多く続く中、一つだけおかしな空間があった。

 こんなに殺気を放つ空間の中、たった一つだけ僕に愛を囁いてくる場所だ。


 その場所は、地下にふさわしくない青空が広がる場所。

 そこに咲いている花達は、小さく可憐なものばかり。

 この場所を壊したら、僕はこの声が誰なのかわかるだろうか。かつてのように、カノジョをキずつけてしまうだろうか。


 そうして僕は剣を持ち、この美しき庭園を壊すことに決めたのだった。

 

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