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胸を貫くその言葉 ー2ー(セレナ視点)

『殿下にお目にかかれるなんて、光栄でございます!』

『なぜ殿下はあまり社交界にお出になられないのです?殿下ほど麗しい方なら、皆はきっと称賛されますのに!』

『そういえば、殿下はどのような魔法をお使いになられるのですか?殿下ならば、きっと他を圧倒するほどのお力を持っておられるのでしょう?』


 あぁ……うるさいなぁ。

 どうして皆んな口を揃えて言うことは、こんなことばかりなのだろうか。どうしてその目に映るのは、皇太子という権力だけなのだろうか。

 どうして、魔力で権力が決まるのだろうか。


 魔法が治世に何の役に立つ。

 魔法が何の証明になる。


 これで僕が魔法を使えないと皆が知ったとき、その態度が変わることなどわかりきっている。

 そして魔力のことしか頭にない連中が、使えないものばかりだということも知っている。


 けれど、いやだからこそ僕には必要だ。

 そういった連中を騙すための魔法の力が。

 

 暫くして、ミラが目覚めたとの報告があった。

 救護棟で療養ができなくなった彼女は学生寮に運ばれることになったそうだが、事情を知らない彼女は起き上がるなり学園内を歩き回っているそうだ。

 それならちょうどいい、彼女の容態を確認するためにも一度会いに行こうか。


 ミラは僕のことを見つけるなり、嫌そうな表情を隠しもしなかった。一体何がどうして、こんなに嫌われてしまったのか皆目見当もつかない。


 人を探しに来ていたであろう彼女は、見つけたのが僕だったのがずいぶん不服そうだ。しかし他に人がいなかったせいか、諦めて僕に事情を聴こうとその口を開いた。


『信じてたのに』


(……………ッ!)


 彼女の声に重なって、ま(・)た(・)あの声が聞こえた。

 それと同時に、胸に痛みがはしる。


 しかしそれを顔に出すことはせず、表面上は何もないように取り繕う。


 意外なことにも、ミラは現状をいくらか知っていた。それでも教師を探して学園を歩き回っているのだから、事情は知っているが、事の重大さはいまいち理解できていないというところかな。

 まぁ、彼女が意識を失っていた間にいろんなことが変わったから仕方がないけどね。


「ルナってどうなりました?」


 次に彼女が尋ねたことは、ルナのことだった。

 彼女の表情には、怒りなどは読み取れない。普通の令嬢だったら、顔を真っ赤にして自分をこんな目に遭わせた犯人に重い刑を科せと言うものなのにどうしてそんなに平然としているのだろうか。

 自分に執着する理由を知りたいだけか、慈悲深いのか。

 

 ここまでくるとルナもルナだが、ミラもミラだ。

 ことごとく二人の関係性がわからない。


「ルナに会うことはできますか?」

「会うことはできても、話をするのは難しいだろうね」

「ど、どうして……?」

「彼女は今、まさにその原因不明な病魔に侵されて生死を彷徨っている。……彷徨っているように見えるっていう方が正しいかな。とにかく会話ができるような状態じゃない」


 そう、ルナはここ数日の間に倒れてしまった。

 目を固く瞑り、眉間には皺を寄せて悪夢にうなされ続けるように呻き声をあげている。どこかの生徒より、一番容態が悪い。つくづく、あのとき話を聞いておいて良かったと思っている。

 

「そんな!それじゃあジ、ジークさんは?!」

 

 ジーク……あぁ、ルナの妄言に賛同したジーク・ギルシリか。

 そういえば、何のつながりかはわからないけどミラは彼とも交流があったらしい。報告によれば、彼とミラの間に上下関係などはなかったそうだ。

 ………………が。


「君に対して、毎日懺悔しているよ」


 これは嘘だった。

 彼はまだルナの口車に乗せられ続けているのか、ミラのことを恨むかのようなことを言い続けている。


(正直言って彼にはあまり興味はなかったけど、一度話を聞いてみてもいいかもしれないなぁ)


 そうと決まれば、一度ミラをここから遠ざけようか。

 ルナは救護棟にいるが、ジーク・ギルシリは校舎内にいる。

 とりあえずハルメートの方に流しておけばいいかな。


「詳しい話は、ハルメート・シュルビア卿から聞くといいよ。僕のこの憶測も、彼から聞いた話なんだ」


 僕の思惑通り、彼女は男子生徒寮へ行く気になったようだ。

 最後にダメ押しとして、彼女に軽い冗談を言っておこうかな。


「それより、あなたも休んだほうがいいと思います。先ほどより顔色が悪くなっているので」


 おや……驚いた。

 さっきから彼女が口にしていた僕への気遣いは、どうやら本当だったみたいだ。嫌いな相手の体調を気遣うなんて、よくそんなことができるね。

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