ここが誰かの記憶なら ー3ー
右に曲がってまっすぐ進んだあと、大きな岩でできたトンネルをくぐると水晶が沈んだ地底湖が現れる。次に左を曲がって岩と岩の間を進むと、直径3メートルほどの高さがある鍾乳石を見つけた。
(やっぱりそうだ……!)
残響の洞——。
アルノーたちの故郷、サラヴァン王国はマリディア大陸というところにある。アルノールートで冒険編に進んだ場合、物語の舞台はこの大陸になる。
マリディア大陸にはいくつものダンジョンとなる洞窟があるが、その代表となるのがこの残響の洞。
海につながるこの洞窟は、人魚の魔物セイレムがよく出現する。この魔物の声が洞窟内によく響き渡っているので、残響の洞と呼ばれるらしい。
「ちょっと、ミラ?突然先に進み出してどうしたの?」
おっと……テンションが上がりすぎて、皆んなを置いて行ってしまったみたい。
「もしかしたら自分の知ってる場所かと思って、ソワソワしちゃって……」
「訳のわからないこと言ってないで、もう少し用心なさい。一人で進み出すなんて、危険すぎるわ」
「自分の知っている場所って、どういうこと?」
セレナは私の発言にすかさず反応してくる。
しまった、こんなおかしな空間でこの場所知ってるかもなんて言ったら、怪しく思われるに決まってる。
でも、この記憶があったら洞窟内を迷わなくなる。
ここのマップは、自分の頭の中で思い起こすことができる。
できることなら私がナビゲーションしたいが、その前に何で道筋を知っているか皆んなに説明しないと信用してくれないかも。……しかし、何と言ったらいいのだろうか。
“ゲームで見たことあるから!”
……却下、意味がわからないって思われるし
“私って、すごく勘がいいから!”
駄目、余計怪しまれる。
「えっと……どこかの本に書いてあるのを見たことがあるんです。ほら、世界絶景スペシャルみたいな……」
「ああ、それを聞いて思い出したよ。ここは残響の洞っていう場所とそっくりなんだ。ほら、マルリー覚えてないかい?昔、僕たち三人で冒険しようって勝手に入って怒られた場所だよ」
「あ、思い出しましたわ!確か、カルゼインお兄様が水晶を取ろうと壁によじ登って、」
……なんか兄妹が思い出話で盛り上がり始めた。
とにかく綺麗な洞窟だから、ちょっとした観光スポットになってたりしないかなって考えで適当に言ったけど、当たってたのかな。魔物が出る超危険な場所なのに。
「二人の思い出話はそれくらいにしてもらって、いくつか疑問点があるね。何でこんな場所に、残響の洞とやらにそっくりな洞窟があるのか。そして本で読んだだけの君が、実際に入ったことのある二人より先に気が付いたこと」
いや、前者は私も思ったけど、後者は気にしなくてもいいでしょ。本で読んだだけって、もしかしたら入ったことがあるかもしれないじゃない。その可能性を考慮しなさいよ!公爵令嬢だからといって、洞窟に入らないなんて………………ないかもしれないじゃない!
「そ、そんなに気になりますか?」
「いや、そんなには気にしてないよ。随分詳しいなとは思ったけど」
それはどっちなのよ……!
「まぁでも、この景色も所詮は幻覚。きっとこの幻想を生み出した人は、この洞窟に何かしらの関わりがあったんだろうね」




