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その道をひらくのは ー1ー

 セレナが言っていた場所にみんなで移動する。

 中庭の一角は、壁が崩れてなだらかな山を作っていた。その山がちょうど2階のテラスにつながっていて、確かにそこから部屋の中へ入れそうだ。


 ペーシュとマルリーがこの山を登れるだろうかと不安を溢したが、二手に分かれるのは危険だと判断され、皆んなで行くことになった。


 そうしてなんとか全員がガレキを登り切った後、私たちは休む暇もなく2階を探索し始める。

 幸いなのは、この階は一階より広くないということ。


(ここで手掛かりを何も見つけられなかったら……、絶望するかも……。流石にそろそろ休憩を挟みたいし……)


 手掛かりが完全にないっていうのは問題だけど、要はアルノーが気にしている魔力とやらが、アメシティーオーズ学園で発生している異変と関係があるか無いかが分かればいい。

 私たちには彼のように魔力のオーラなんてものを視ることはできないから、彼のような能力を持たない一般人でもわかるような証拠が見つかってくれれば上々だ。

 そうすればアルノーも学園長とかに相談するだろうし、ここにセレナがいるから皇室も動いてくれるかもしれない。


 仮に、もし関係なかったとしてもそれで終わりだ。

 そしたらアルノーは一人でここに来るということもしなくなるだろうし、どちらにしても安心できる。


 しかしそれにしたって、我々は少々無鉄砲すぎる。

 だって夜の森——しかも冬の季節——に入り込み、魔物が出るかもしれないと言われていたのに軽装備で、もしかしたらのもしかしたらで学園で異変を起こしているかもしれない敵の本拠地に乗り込むなんて……。

 塩内さんのことを自殺願望者だなんて思っていたけど、それはここにいる全員に当てはまるな……。

 

 まぁ、いいんだ、いいんだよ……とにかく何かがわかりさえすればさ……。


(はぁ、やっぱり疲れた……)



「わー、この部屋だけ随分と雰囲気が違うね」


 適当に開いた部屋の中は、他と同じで物が倒れていたり一部壁が崩れていたりしていたけれど……確かに他の部屋とは雰囲気が違った。


 なんていうか……置かれている家具がゴージャス?って表現したらいいのかな。


「見たところ、ここは教皇が使っていた部屋みたいだね」

「…………その、こんなことを言ったら失礼なのかもしれませんが……」

「いえ、ペーシュ。あなたの言いたいことはわかるわ」


 この廃教会は全体的に質素だが、精錬された雰囲気を纏っている。言い方は悪いが、礼拝者にここは神聖な場所だと知らしめるための“設計”が至る所にされていた。

 

 しかし、この部屋だけはそんなレイアウトを全て無視したような構造になっている。

 そうだなぁ……一言で表現すると、成金部屋みたいな……。


「この教会にどのくらいの歴史があったのかはわからないけど、少なくとも廃れた理由はここにあるね」


 皆んなは呆れたような表情をしていたが、セレナだけは興味深そうに室内を見渡している。

 

 なんだかこの部屋、寒気がする。

 さっきまでは廃教会とはいえども、その神聖さに“別世界みたいだ”なんて思っていたけど、こうも人間の欲が分かりやすく見えると現実に戻される。やっぱり、神職者でも富に飢える人はいるんだなぁって。


 例えばこれが、もう少し他の部屋より綺麗だとか、見るからにここの家具だけ新調されているとかだったら、侵入者の存在が疑われて当時の教皇に対していくらかの弁明余地があったと思う。

 

 でもこの部屋の家具も他と同じくらい風化してるし……、流石にね……。


「見て、ここだけあからさまに怪しい物があるよ」


 セレナはとある壁を指差した。あからさま、だとは言っていたが、一目見ただけでは何が怪しいのかわからなかった。


(…………ん?いや、あれは…………)


「あそこだけ、色が違う……?」


 白く塗られたレンガの壁の一部が、他の色より暗い色になっている。

 はじめは見間違いか、汚れてそう見えるだけだろうと思っていたけど……というか今もそうじゃないかと疑っているが、同時に私のゲーム脳があそこは怪しいと言っている。


「良かった、今回は君にもわかってもらえた」


 こちらに笑顔を向けるセレナにイラっとしつつ、自分の発言が間違っていなかったことに少しだけホッとする。

 ここで全然違うこと言って、セレナから「聴覚だけじゃなくて、視覚にも問題があるのかな?」とか言われていたら、仲間割れを起こしていただろう。


「どうするの、それ……。押すの?」

「それしかなくない?」


 特になんの心構えもなく、セレナはその壁を押した。

 するとその壁は、ズズズ……と静かに奥の方へ押し込まれていく。私が想像したイメージと全く一緒で、内心テンションが上がった。




 ピタリと、壁を押し込むセレナの腕が止まった。

 どうやらこれ以上奥までいかないらしい。

 それでも何かが動いた様子はなかった。



 なんだ、特に何もなかったのかと落胆したその瞬間、床がドンッと大きく揺れた。そしてその衝撃は壁を伝って天井に向かっていき、四方でギギギギ……と音が鳴り始まる。


「な、何?!」

「皆んな!姿勢を低くして!」


 マルリーが困惑した声を出し、アルノーが揺れに備えるように指示を出す。

 

 やがてその揺れが収まったとき、頭上から全ての空気を揺らすような大きな音が鳴った。




 ——————鐘だ、大きな鐘の音が聴こえる。



 やがてその音も収まり、私たちも動き出す。


「流石に驚いたね、まさかこの壁を押して教会の鐘が鳴るだなんて思いもしなかったよ」

「あ、頭に響く音でしたわ……ちょっと眩暈が……」

「マルリー様、大丈夫ですか?」


 先ほどの音に対して、皆はそれぞれの反応を示す。

 というか、ここの教会って鐘鳴らすのが隠しボタンなの?面倒くさくない?しかも建物全体が揺れる仕組みってどうなってるの?


 …………というか、こんなに音が響き渡っちゃったら、私たち危なくない?

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