様子がおかしい彼 ー2ー
最終的に、塩内さんは私の提案を断った。
曰く、そんな余裕は何処にもないだろうとのことだった。彼は本当に己の身一つで闘うつもりらしい。
さっきホワイトウルフ遭遇したとき、状況理解ができなくて棒立ちしていたのにと心配な気持ちにはなるが、本人にやる気がないのなら仕方がない。
私たちの会話はそこで終わってしまい、また静かに探索を開始するのだった。
————————————
——————
「一通り見て回った中で、ここが一番怪しいね」
セレナが立ち止まり、天使像を見上げながらそう言った。
私たちが今いる場所は、礼拝堂。
天井が吹き抜けとなっていて、どの部屋よりも肌寒い。
そして、その部屋の奥には穏やかな微笑みを浮かべる天使像が置かれていた。その像の下にいると、天使様から微笑みを向けられているように見えるのだ。
「怪しいって、その像が?」
「いや、像というより……」
セレナは、周囲をグルグルと歩き始めた。
彼はわざと足音を大きく立て、私たちにその音を聴かせているようだった。
「…………何しているんですか?」
「あれ、気が付かない?」
私は首を傾げた。
内心では、何を言っているんだこの人と思っている。
「音……。そこの中央の部分だけ、音が違いますね」
「正解。良かった〜、カルティエ嬢が気付いてくれなかったら、ただ僕が地団駄踏んでるみたいになるところだった」
フッ、とその姿を想像して笑う。
しかし、音……音か。全くわからなかった。
アルノーやマルリーも言われてみれば、といった表情になったが私一人だけピンときていない。
セレナはもう一度、音が違う場所とやらを大きく踏み鳴す。
ダァン、と大きな音が礼拝堂に響き渡った。
「ちょうど、この天使様が見つめている場所だ。音の響き方からして下に何かしらの空洞があるようだね」
「たまたまなんじゃねえのか?ここって随分古い建物なんだろ?よくわからないが、地盤が緩んでるとかそんなんじゃないのか?」
どうやら塩内さんもピンときていなかったようで、首を傾げていた。
「こういう状況では、こういう違和感を無視しないことが大切なんだ。とにかく、この部屋をくまなく調べてみようか」
セレナがそう言うと、私たちは礼拝堂の中を手分けして調べ始めた。たくさん並べられた椅子の下や壊れて音が出ないオルガン、壁に貼り付けられた十字架……けれど目ぼしいものは何一つなかった。
「何もないぞ。やっぱり、気のせいなんじゃないのか?」
塩内さんの言葉には何も答えず、セレナはじっと静かに考え込んでいる。つまり彼は、この床の下に隠し部屋みたいなものがあると疑っていて、その扉を開く鍵を見つけたいってことなんだよね?
そう考えて、私も気合い入れて探し回った。床が動いて階段とかが現れたら、それはもうゲームだ。ゲームのお決まりってやつ。是非この目で見てみたい。
でも、5人で手分けして探し回ったのに何も見つからない。
私のゲーム知識を用いても、現実では『あるある』というものは通用しないらしい。
「この部屋に必ずしもあるってわけじゃなさそうだなぁ……」
「……まさか、またこの教会内を探し回るの?流石に体力的にも時間的にも厳しいわ」
露骨に嫌だという表情になったマルリーに対して、セレナが首を振る。
「この際、上の階に行ってみよう。確かに僕たちが何かを見落とした可能性もあるけど、それならまだ探索していないところから探したほうがいいかな」
「でも、上に行くための階段は崩れていたわ。あのガレキを撤去するなんて、私たちだけでは到底無理よ」
「それなら、中庭から行ってみないかい?さっき見たとき、上に行くのにちょうど良さそうだなって思った場所があったんだ」




