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合宿訓練 ー2ー

「お兄様ッ!そんなことを言わないでください!私は……お兄様を心配してッ……」

「お前も、カルゼインお兄様の方が王太子として相応しいと思っているんだろう!?僕だってそうだ、そう思っている!だけどお兄様が勝手にどこかへ行ってしまったから……!こうして僕が!その尻拭いをしているんじゃないか!!」


 2人の様子を見に近づいていくと、彼らの言い争っている声が聞こえてきた。その会話の内容を聞いて、そういえばアルノーにはそんなキャラ設定があったなと思った。


 アルノーは第二王子だが、王太子である。

 その理由は彼の兄、第一王子の失踪だった。

 誘拐などではない、第一王子自ら王太子という立場を放棄したと言っても過言ではなかった。

 アルノーの兄は一言で表すと才色兼備な人だったらしい。

 何でもできて、どんな問題も解決する、まさに王として相応しい素質が大いにあったとされている。

 

 しかし、アルノーが14才の時、彼は自室に置手紙を残して姿を消した。

 置手紙には、「アルノーの方が王に相応しい」とだけ書いてあった。

 もちろん国総出で第一王子の捜索がされたが、彼は見つからない。そこで王は、第一王子は病にかかったということにして第二王子のアルノーを王太子にと選んだ。


 アルノーは、勉学は人並み以上にできるが剣術など体を動かすことが苦手である。それゆえか、使用人や側近などの人たちからは兄と比べられて肩身の狭い思いをしていた。そのことに加えて、妹のマルリーは第一王子の生き写しと呼ばれるほどの偉才を放つようになる。そう考えると、彼が兄妹に対して複雑な思いを抱えているのも無理ないと思う。


「彼女は……、ル、ルナはそのままの僕でもいいと言ってくれたんだ!そんな優しい言葉をかけてくれたのは、彼女だけだ」

「こちらの事情をよく知らない人から出た慰めの言葉なんて、無責任な発言です。全てを鵜呑みにしないでくださいませ」

「……し、知らなくなんか、ない……彼女は全部知ってる……」

「……ッ、まさかお話になったのですか!カ、カルゼインお兄様のことも……!」

「……………………」


 えぇ……?そんなことありえないと思うのだが……。

 確かにゲーム内でも、彼は主人公に自分の身の上話を話していた。でもそれは、冒険編で異変調査するため自国へ帰省したときにだった。

 第一王子の気ままな失踪は、王族として恥ずべきことだ。それは他人に易々と話していいものではない。国家の威信にも関わる。


 だからゲーム内では、2人が恋仲になったあと、アルノーはしっかりとした覚悟の上で主人公に話していたのに……。


 学園でも、例え話を使って悩みを打ち明けるシーンがあったが、それはもっともっと先の時期だった。

 やはり、今のルナの攻略スピードは尋常じゃない。

 それどころか、ゲームならありえない展開にもになってきてる。


 マルリーは兄の行動があまりにも衝撃だったのか、絶句している。アルノーも自身の行動に思うところがあり、後ろめたさを感じているのか妹から目を逸らしている。


(どちらかというと弟気質なんだろうな、あの人……)

 

 なんだかマルリーのほうが姉のように感じる。

 1番上の兄とは結構歳が離れていたみたいだし、頼れる兄だったらしい。

 そんな人が急にいなくなって、自分が王太子に突然なったとしたら、重圧に耐えられないのも、まぁ無理はない。


 耐えられないのなら耐えられないわりに、工夫してやりくりしたり、息抜きの仕方を見つけたりする必要がある。王太子という立場では、その重圧から逃げることなどできないだろうから。

 そんな中、優しい言葉をかけてくれた人が現れたら、頼りたくなるのもわかる。だからといって国が秘密にしていることを易々と話してもいいわけじゃないけど。

 

「……もう、マルリーが僕の代わりに国を治めたらいいんじゃないか……」

「……い、いまなんと……?」

「そうだよッ!マルリー、君の方が僕より優秀じゃないか!カルゼインお兄様の生き写しのようだっていろんな人から言われているし……きっとマルリーの方が王として相応しい!」


 人が変わったようにまくしたてる彼に唖然としている様子のマルリーは、やがて意味を理解したのか、身体をブルブルと震わせ始めた。

 そして腕を勢いよく振り上げて、アルノーの頬を打った。


「…………?」

「お、お兄様は……それを私に言うのですか……?あなたが、あなたが私にその言葉を……」


 マルリーがどんな表情をしているのかは、こちらから見えないが声からして泣いている。

 そのまま彼女は明かりの無い森の方へ走ってしまった。


 アルノーは頬を叩かれた衝動か、何が起こったのかわからないというような感じで、彼女を追いかけようとしなかった。

 ただマルリーの背中に向けて伸ばした手を伸ばしたまま、少し固まっていた。

 

 とんでもないことになってしまった……。

 いくら安全だからと言われていた場所でも、夜の森は危険だろう。

 早くマルリーを連れ戻した方がよさそうだが……。


 アルノーは全身の力が抜けたように座り込み、うなだれている。

 そして頭を抱えてブツブツと文句を垂れ流している。彼がこんな状態で、ここにマルリーを連れ戻しても、同じようなことが繰り返されそうだ。


(普段はこういうことに首を突っ込みたくないけど……)




 マルリーがどれだけ兄に対して心配しているのか、私は前にそれを聞いてしまったから、無視する訳にもいかないだろう。


 

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