第779話 恒例の次回予告リストチェック
「というわけで、恒例の次回予告リストチェックです。メモを見せていただけますか?」
「お、おう……」
ナナさんが部屋に現れるなり、そんなことを告げられた。
確かに同様のチェックをされたことは以前にもあったが、いつの間にか恒例になっていたのか……。
まぁいいや。別に見せることに不満はない。
なんか良い意見を聞けるかもしれないし、ナナさんが見たいと言うなら見てもらおう。
というわけでリストを取り出し、ナナさんに手渡した。
そしてナナさんは、じっくり吟味するようにリストを眺めて……。
「……でも、なんだか落ち着かないと言うか、ちょっとだけ居心地が悪いね。そうもじっくりリストを見られていると、まるでプロジェクトの進捗状況を上司にチェックされているようだ」
「プロジェクトの進捗状況を、上司がチェックしているのです」
「……そうなのか」
その通りだったのか。進捗状況のチェックはさておき、ナナさんが上司だったとは……。
なんなら僕がナナさんのマスターだったはずなのに、いつのまにか下剋上が起こっていた。
「冗談はさておき、それぞれの項目について確認していきましょうか。まずは完了項目について」
「ふむ」
次回予告リストの完了項目、現在の状況は――
『父へのお土産』――完了
『ミコトさんディースさん顕現』――完了
『世界樹様の迷宮、新エリア視察』――完了
『世界樹の酒(仮)開封パーティ』――完了
――こんな感じである。
「以前と変わったところで言うと、『世界樹の酒(仮)開封パーティ』が完了ですか」
「そうだね。無事に完了したね。パーティは大盛況で幕を閉じたと言っていいと思う。この件に関しては、全部ナナさんのおかげだよ。ありがとうナナさん」
「いえいえ、マスターのお役に立てて良かったです。マスターに尽くすこと、それこそが私――ナナ・アンブロティーヴィ・フォン・ラートリウス・D・マクミラン・テテステテス・ヴァネッサ・アコ・マーセリット・エル・ローズマリー・山田の喜びであります」
「そうか、ありがとうナナさん」
「ええはい、ナナ・アンブロティーヴィ――」
「ダメだってナナさん。二度はダメだよ」
「ええはい、ナナ山田の喜びであります」
ナナさんには本当に助けてもらったので、露骨な文字数稼ぎも一度は見逃したけれど、さすがに二度目は見逃すことができない。
というか、ナナ山田でいいのか。ナナさん的に、ナナ山田って略称は認めているんだね……。
「では続いて、進行中の項目を見ていきましょう」
「ふむ」
進行中の項目、現在の状況は――
『アイテムボックス検証』――進行中
『鑑定』――進行中
『温泉エリア改築』――進行中
『セルジャンパン』――進行中
『20倍大シマリス像』――進行中
『ミニ大シマリスキーホルダー』――進行中
『新人力車』――進行中
――こんな感じである。
「ふと気になったのですが、『温泉エリア改築』は完了項目ではないのですね」
「あー、それなぁ……」
そうなんだよねぇ。湯口も無事に設置できたし、完了項目に移動させることも考えたんだけどねぇ。
「ヘズラト君湯口も、そこそこ好評のようですが」
「そうみたいだね」
「……まぁ最初のリアルなヘズラト君湯口は、あまりにもシュールで賛否が分かれる状態だった気もしますが、今はそこそこ好評なようで」
「そうだねぇ」
リアルな生首の雰囲気を消すため、リアル系ニスを除去して石材っぽいニスを塗布してみた。そうしたところ、今は概ね好評な模様。
というか、最初の状態でも賛否が分かれたこと自体がすごいと思う。むしろあれでも賛否が分かれる状態まで持っていったヘズラト君の底力を僕としては称賛したい。
「まぁそんな感じで、湯口は完了したんだけれど――実はもうちょっと改良したいところがあるんだよね」
「おや、そうなのですか」
「なので一応は進行中ということで」
「なるほど」
……とはいえ、この判断も難しいところだ。
それで言うと、完了項目に移した『世界樹の酒(仮)開封パーティ』に関しての判断も怪しい。パーティ自体は来年も予定しているし、それを考えると完了と言っていいのかどうなのか。この温泉エリア改築も、どこまでやったら完了と言うべきなのか……。
「それから『ミニ大シマリスキーホルダー』ですが――名前が変わりましたね」
「ああ、前は『ぶら下がり大シマリス』とかだったかな? 一応今は『ミニ大シマリスキーホルダー』が正式名称ということで」
「いつの間にか村の人達もそう呼んでいますね。そもそもキーホルダーという名称自体、この世界にはなかったような気もしますが、しかしいつの間にやら……」
「そうだねぇ……」
うっかり僕が口にしてしまったもので……。何度か口にして、そのうちだんだんとキーホルダーという名称が広まってしまって……。
「とりあえずこれは現在絶賛進行中。……見ての通り、進行中なんだよナナさん」
普通にナナさんが来るまで作業中だった。今も目の前のテーブルにはたくさんのミニ大シマリスキーホルダーが並んでいる。
「なんなら『木工』スキルを所持しているナナさんが手伝ってくれても――」
「それから、『新人力車』が進行中に変わりましたね」
「…………」
なんて露骨な話題そらし……。あまりにも露骨で強引な話題そらし……。
「それでマスター、新人力車ですが」
「……ああ、うん、一応ジェレパパさんとも話し合って、作っていこうって決まったから、ひとまず進行中の項目に移したんだ」
まぁ具体的な計画は決まってないんだけどね。デザインすら今はまだ未定な状態だ。
なにせそのジェレパパさんも、今はミニ大シマリスキーホルダーで大変な状態だから……。
「そして最後に、未進行の項目ですか」
「ふむ」
未進行の項目、現在の状況は――
『世界樹様の迷宮、大改装』
『牧場エリア改築』
『次の魔法スキル修行』
『第九回世界旅行』
『ミコトさんに喜んでもらえること』
――こんな感じである。
「ちょっと減りましたね」
「そうだね。気付けばあと5項目か」
こう見ると、わりと進んでいるような気がしてきて――
「しかし実際には、ほぼほぼ進んでないのでは?」
「…………」
いきなり全否定されてしまった……。僕の心の声が全否定……。
「いやでも、あと5項目なのよ? 最初は全部未進行だったのに、今はもう残り5項目で、他もしっかり進行中で……」
「私が協力することで、なんとか開封パーティだけは完了しましたが、他は体裁を繕うように進行中項目に移動させただけで、実際には遅々として進んでいませんよね?」
「むぅ……」
「進行中と言えば聞こえは良いものの、そのほとんどが遅々として進まず、もはや進行中と言うよりも――停滞中」
「停滞中……」
「まるでマスターの歩みのようです」
「言葉がすぎるぞナナさん」
さすがに停滞はしていない。百歩譲って僕がゆっくりなのは認めるけれど、一応は動いている。
「というわけで、何かもうひとつくらいは完了までもっていきませんか?」
「なるほど……」
確かにそうかもねぇ。ここ最近で完了したのが、ナナさんに手取り足取り協力してもらった開封パーティだけというのも少し情けない。ちょっと頑張ってみようか? 進行中で満足するのではなく、何かもうひとつくらいは完了まで頑張ってみようか。
「とはいえ、どうしたものかな。何をしてみよう? やっぱり完了まで進めるとしたら――」
「『ミニ大シマリスキーホルダー』の項目を終わらせますか?」
「それは終わらんのよ……」
その項目は本当に一生懸命頑張っているのだけれど、全然終わらん項目なのよ……。
「では、『20倍大シマリス像』を」
「それも終わらんのよ……」
それも無理なのよ。ちょっと頑張ってみようで終わらせられるような、そんな甘っちょろい項目ではないのよ……。
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