第780話 アイテムボックス探索隊10 ――謎の扉の謎
「今回もよろしくお願いしますミコトさん」
「うん、任された」
というわけで、ナナさんと一緒にダンジョンまでやってきた。アレクハウスのミコトルームである。
ナナさんとの話で、何かもうひとつくらい次回予告を達成しようという流れになり、そこで僕が選んだのが――アイテムボックス検証であった。
「それで――あの扉か」
「そういうことですミコトさん。何やらここまで無駄に長かったですが、いよいよあの扉を開ける時が来たのです」
初めてアイテムボックス内に突入したときから気になっていた謎の扉。気になっていたはずなのに、何故かここまで放置してしまった謎の扉。
そんな謎の扉の謎を、いよいよ今日解き明かす! その謎の解明を以てして、ひとまずはアイテムボックス検証を完了とさせていただこう!
「頑張ろうねナナさん。一緒に頑張って謎を解き明かそう」
「あ、それについてなのですが」
「うん?」
「申し訳ありませんマスター、今回私はアイテムボックス内には入らないつもりです」
「え、そうなの?」
えぇ、そうなのか……。てっきり今回も二人でアイテムボックス探索隊かと思いきや、まさかの単独調査を命じられるとは……。
「今回の探索は、本当に何が起こるかわかりません。あの扉の先はなんなのか、あの扉を開けたらどうなるのか、まったくもって予想がつきません。だとすると、二人が一箇所に固まって行動するのは避けるべきでしょう。二手に分かれて行動し、一人が内部を探索し、一人は外で不測の事態に備える。それこそが最も合理的な布陣だと判断しました」
「なるほど」
そうなのか。ナナさんの合理的な判断によると、そういう結論が――
うん? いや、でもどうなの? なんかそれっぽいことを言われて納得してしまったけど、結局のところ『危険なのでマスターだけで行ってください』ってだけなのでは……?
いや、別にいいんだけどさ……。そこまで無理に付き合わせようとは思っていないし、いいんだけどさ……。
とはいえ、それをナナさんが自分から言い出すのはどうなのか。『危ないからお前だけ行け』ってのはどうなのか……。
「……あー、でもそう考えると、むしろ僕から言うべきだったのかな?」
むしろ僕から、『危ないからナナさんは外で待機していて』と、そう言った方が良かった? そう言えたら格好良かったかもしれない?
「そうだね。今回の探索は極めてリスキーなミッションだ。ナナさんまで巻き込むわけにはいかない。――危ないからナナさんは外で待機していてほしい」
「申し訳ありません。ありがとうございますマスター」
「いいんだよナナさん」
遅ればせながら、一応僕からも言っておいた。僕の格好良さを少しだけ上げておいた。
「さすがだなアレク君。さすがは勇者セルジャンの息子。さすがの勇気だ」
「いえいえ」
でもまぁ、そんな危険な探索を一人でこなすのかと思うと、やっぱりちょっと怖くて……。
やっぱり他に誰か探索に付き合ってくれる人を探してこようかという考えが頭をよぎったりもしたけれど、でもそれを言うと、せっかく上がった格好良さが、上がった分以上に急落してしまいそうだし……。
「よし、それじゃあさっそく移送しよう。準備はいいかな?」
「ええはい、お願いします……」
「5、4、3、2、1――」
カウントダウン怖いなぁ……。
まだ慣れてなくて、単純にアイテムボックスに移送されるだけでも少し怖かったりする。ミコトさんからは勇気を褒め称えてもらったばかりだけれど、実際にはいろんなことにビビってばかりの僕だったりもした。
◇
「着いたー」
なんやかんやありつつも無事に到着。
アイテムボックス内に入るのは、わりと久々な気がする。
「で、ここは――いつもの始まりの部屋。ペナントの部屋」
移送で必ず送られるいつもの部屋。
壁には僕が用意したペナントが掛けられていて、前方には保管庫へと繋がる通路が伸びていて、そして後方には――
「この扉だ」
四つの扉。謎に満ち満ちている四つの扉。
「ふむ。扉自体はもうすぐ目の前で、検証自体はすぐに進められるんだよね」
このまま真っ直ぐ扉に向かって、扉を開けたら検証終了だ。
「……いやでも、さすがに心の準備が出来ていないのだけど、どうしたものかな」
できたらもうちょっとだけ待ってほしい。せめて一息ついてから検証を始めたいところ。
とはいえ、あんまりまごまごしているわけにもいかない。あんまり時間を掛けると、僕が怖くてまごまごしているとナナさんに見破られてしまう。
というわけで、とりあえず行動を開始する。
「『ダンジョンメニュー』」
ひとまずナナさん達にDメールを送ろう。
そうすることで時間を稼ぐ。心の準備をする時間を確保するのだ。
『無事にアイテムボックス内に到着』
『では扉を開けてください』
「…………」
少しの時間稼ぎも許してくれないとは……。
――いや、でももうちょっとだけ粘れそうな気もする。
『そうは言うけどナナさん、扉は4つあるんだ。どの扉を開けたら良いものかな?』
そんなメッセージを送ってみた。これも時間稼ぎではあるのだけれど――でも実際に迷うところではあるよね。
どれも見た目は同じで、どれを選んでも変わりはないような気もするが、それゆえ逆に迷ってしまう。果たしてどの扉にしたものか。
そんなことを考えていると、ナナさんからの返信が――
『せっかくなので、赤い扉を選んではどうでしょう』
赤い扉はないよナナさん……。
全部白い扉だ。白い部屋に合わせたように、扉も全部白い。
『じゃあ左から順に、1番2番3番4番と番号を振っておこう。何番の扉にする?』
『7番で』
ねぇんだわ。4番までしかねぇんだわ。
『では、3番で』
『ん、3番目の扉だね』
『7番がないとのことで、もう一周してみました』
うん? あぁ、4まで数えて、もう一周して7まで数えたのか。それで3番目の扉だと。
『よし、それじゃあ3番目の扉を開いてみるよ』
『ご武運を』
『うん、ありがとうナナさん』
ナナさんとのやり取りが終わり、ダンジョンメニューから謎の扉へと視線を移す。
いつもの取り留めのないナナさんとの会話を経て、なんだか少しだけ心に余裕が生まれた気がする。ありがとうナナさん。
「……よし、じゃあいくぞ」
3番目の扉へ向かい、扉のノブを掴み、ゆっくりと回す。
いよいよだ。さぁどうなる。鬼が出るか蛇が出るか。まぁどっちも出て来てほしくはないけれど、そのくらい何が起こるかわからない謎の扉だ。この扉が開かれたとき、果たして何がどうなるのか。
いざ――
「……あれ? 開かない?」
ドアノブを回して、力いっぱい扉を押すが、びくともしない。
え、そうなの? ここまでお膳立てして挑んだのに、結局は開かないの? そんな開かずの扉ってパターンだったりするの?
そんなことを思いながら、扉をガチャガチャして――
「あ、引くのか」
引いたら扉が動いた。
「……すごく地味な小ボケを挟んでしまった」
いやでも、仕方なくない? 初めて触れる扉なんだから、それはそういうこともあるよね?
「では、気を取り直して……」
なんやかんやあったけど、いよいよ謎の扉の謎が解き明かされる時が来た。
緊張の一瞬だ。僕はゆっくりと扉を引き、扉を開ける。
すると、そこには――
next chapter:アイテムボックス探索隊11 ――女湯に転げ落ちてラッキースケベを堪能するアレク君




