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第三十三話 勘

 これで俺達の距離も少しは縮まったかな。クシャラルの俺への気持ちは只の友愛である可能性もあるだろう。兎に角俺の感じた事は言えた。時間が経てば彼女が俺に感じた事も伝えてくれるだろう。後はお互いに相手を見極めて絆を強くしていこうか。ドズンを仲間に誘う事をクシャラルに伝えたんだが、当然の疑問が返って来た。


「山脈のドズンって、確か闇試合であんたと闘った奴だよね。確かにあいつは強かった。これからの遺跡探索には人手が必要になるのは分かるけどさ。あいつとあんたって前からの知り合いだったのかい?」


「いんや。ドズンに初めて会ったのは闇試合が初めてだ。それからは一度も会ってないな。だからドズンがどんな奴なのか、ある意味全然知らないと言っていい」


 俺は両手を挙げて肩を竦めた。


「なら、何でドズンをわざわざ指名して誘うのか聞かせておくれよ。やっぱり強いからかい? でもあたしの時みたいに、試す為に騙すんだろうね。騙されたと知ったドズンが怒って暴れだしたらどうすんのさ。あんたでも結構苦戦した様な奴だよ」


 クシャラルは眉根を寄せて心配そうに訊く。


「ドズンを試す必要はないな。それと闇試合の時に俺が苦戦した様に見えたのは全部演技だよ。本当は瞬時に倒せる相手だから安心しろ」


 クシャラルは、今度は訝しげに眉根を寄せる。信じられないみたいだな、無理も無いとは思うが。わが社の美人社長秘書は、社長である俺の発言をお疑いの様だ。由々しき事態である。


「瞬時に? 幾らあんたでもそりゃ無理だね。ドズンはあんなに大きくて力だってそこらの冒険者じゃ歯が立たないよ。それにあんたがあんなにぶん殴って蹴飛ばしても、かなりの時間耐えてたじゃないのさ。あたしの前だからって、格好付けたいのは分かるけどね。今なら、聞かなかった事にしてあげるよ」


 むむ。ちょっと勘違いさせてしまった様だ。これは、直ぐに認識を改めさせないと。一応は俺がチームリーダーを張る予定にしている。古代帝国のシステムは俺の魂力が必要不可欠だ。それに今でも皆の脳プロに必要な魂力を遠隔送信中なのだ。こんな世界で冒険者チームを創るのならば強さを基準に考えるのは当たり前で、皆に腕が立つ事を納得させられる俺がやるべきだろう。統率力なんてのが俺に有るかは知らん。だから結果を積んでから統率力云々は喚くべき物なのだろう。実績の乏しい現在は、俺に付いてくれば良い事があると思わせているだけだからだ。結果を示して皆から付いてきてくれる位にならなきゃ駄目だろう。


「クシャラル、吐いた唾呑むなよ」


 クシャラルは生意気な顔で笑った。


「誰がさ! あんたこそね」


 紅唇を歪めて挑発して来た。後でドズンを瞬時に倒せば済むか。


「後さぁ、なんでドズンには試しの必要が無いんだい? あんたが試さなきゃ分からないって言って、あたしを試しといてさ。あんたの事だから何か考えが有るのかも知れないけどね」


 やはり俺を信じてくれてはいるが、不満そうに紅唇を尖らせている。


「只の勘だ」


 意外だったのだろう、クシャラルは少し首を傾げた。


「あんたらしく無くて適当に聞こえる答えだとは思うよ。大体さ、勘って言ってもその勘をあんたが感じた瞬間だって有るんだよね? 相手の顔を見たら思った訳じゃ無いだろうし、そこん処を話してくんないとね」


「そうだな……俺とドズンが闘った時に俺はこれ以上やると死ぬかも知れないと忠告したんだ。お前なら金もそれなりに手に入るってな。だがドズンは長く退屈する位なら、闘いで死んでも構わないとまで言った。馬鹿な考えだとは思う。だがな、俺はそんな馬鹿は嫌いじゃない」


「戦闘馬鹿なんだね」


 呆れた顔でクシャラルが言った。


「いや、俺が感じたのはそれだけじゃなくて別の物もある。ドズンは消極的な自殺をしたがってるんじゃないのかってな」


「自殺?! ドズンがかい? あたしにはドズンはとてもそんな風には見えやしないね。あんたの勘違いじゃないのかい?」


「う~ん……言葉で説明を出来る事じゃないな。勿論だが俺はドズンの人柄も知らん。その辺も合わせて勧誘がてら話を聞きたいとは思っているがな。お前が勘違いだと疑う気持ちは分かるが、こればっかりは拳を交えた男同士だから伝わって来たとしか言えん」


 このまま闘いの最中に散ったなら開放されると思ってる様な感覚を、ドズンから感じた。勿論、消極的な自殺だから常に死にたいとか思ってる訳じゃないだろう。飽くまでもあの状況ゆえに無意識に選んだ、己の抱える懊悩から脱する事が出来る手段としてのだ。


「シグマ、御免ね。今のが一番分かんないよ。男同士は拳を交えると何かが伝わる様に出来てんのかい?」


 結構真面目に質問してるんだろうが、何だか俺が凄く恥ずかしい事を言ってる気がする。


「出来てんだよ!」


 と言って誤魔化した。


「まあ兎に角、これがドズンを誘う理由だ。金に興味が無くて自殺を考えているかも知れない戦闘狂、世間様には危なっかしい人物だがある意味裏切る動機に乏しいとも言える。怨恨やら痴情の縺れだとかの線も有るが、そればっかりは話をしないと分からないしな。でも俺の勘じゃ、あんな馬鹿だからこそ誘うべきだ。だから明日の朝から昼までドズンに関する噂を集めて、昼からはドズンに会って話をする。話によっては即座に仲間候補からは外れるが、場合によっては誘ってみる。いいよな?」


「ま、あんたがそう言うならドズンから話を聞いてみようじゃないかい。でもあたしが話を聞いて納得出来なきゃどうすんだい? あんたが納得出来て仲間にしたくっても、あたしは納得出来る保証はないじゃないのさ」


「大丈夫だ。その為にお前を試した。お前が納得出来なきゃ、多分俺も納得出来ない。俺はお前を信じてるからな」


 俺は笑ってやった。


「ドズンがいい奴だといいねぇ」


 クシャラルは照れ臭いのか、天井を眺めて紅唇から言葉を溢した。





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