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第二十話 遺跡

 朝霧が漂う街中を抜けて、クシャラルとの待ち合わせ場所に到着した。まだ彼女は来てない様だ。俺の装備は買ったばかりの安物のメイスや盾だ。炎剣や短弓は宿に置いてきた。なにせポムは冒険者の初心者でなおかつ貧乏だとクシャラルに説明している。齟齬が出てしまうので仕方ない。


 服装は厚手の茶色の皮で出来た上下と木靴、倉庫箱リュックだ。リュックの中に今回の準備した物を詰めた事にしているが、実際はリュックの中身は異次元倉庫内へ転送済みだ。


 街角からクシャラルが現れ、微笑みながら手を振って挨拶してきた。


「ポムさん、お早う。いよいよだね」


「まあ、儂らのいわば冒険者新人戦じゃからな。気合を入れんといかん」


 まあ、今回の俺の目標は、遺跡に隠された秘密の部屋を探し出す事なんだがな。勿論彼女には内緒だ。まだ俺の秘密は教えるつもりはない。


 二人で南門へ向かい衛兵の職質に応えて、街道筋をロマ方面へと歩いていく。遺跡辺りまでは化物は出ないが、危険がない訳ではない。街道筋は流石に危険率は低いが、街中と比べれば油断大敵な環境だ。更に本番は街道筋を離れて、人外達の領域である森に侵入してからだろう。


 ただの猪とか熊なんかの野生の肉食獣でも、充分に脅威になり得る。毒蛇や毒虫もいない訳ではないのだ。いくら戦闘能力の高い冒険者でも、環境や補給を疎かにする事で呆気なく命を落とすのが人外領域だ。


 俺やクシャラルは、脳プロで普通の人間の十倍もの防御力や回復力を随時使用中だ。まだ内緒にしたい関係で、彼女にはチャイルドロック脳プロを使用している。魂力も俺から、彼女には随時送信されている。


 二人で黙々と街道筋を進み、遂に人外領域に突入する地点に辿り着いた。当然、手荷物の地図から割り出した地点だと彼女には見せ掛けている。だが本当は脳プロ地図から割り出した物で、精度は折り紙つきの物だ。


「クシャラルや、地図のこの地点に到着した様じゃ」


 指で地図の一点を指し示す。


「ポムさん、あたしらなら出来るさ。だよね?」


 彼女は、またもや紅唇を舌で舐めている。艶っぽく見えるのは良いのだが、緊張しているのかも知れない。


「愚問じゃな。自分の力を信じられないなら、ここから二人で大人しく帰ってもいいんじゃよ? 丸っきり餓鬼の使いじゃがな」


 ニヤニヤと笑ってやると、クシャラルの目が吊り上がった。


「ハッ、上等だね! 訓練の時はあたしに攻められて怯んでたってのに、随分と強気じゃないかい。行こう! ポムさん」


 ちょっとは緊張がほぐれたかな? ヤッパリ彼女は凛々しく、そして毅然としていた方がいい。


 気合いを入れて進んだ割には障害らしい障害に出逢わずに、遺跡の少し手前にある野営地に夕方には辿り着いた。野営地には、小さな沢もあって水にも困らない。俺達はそこいらの木の葉やらで寝床を作ると布で覆い、持って来ていた一人用テントを地面に設置した。


 そして薪を集めて焚き火を起こす。保存食を湯で戻した飯を食い、後片付けを済ませた。後は何もする事はない。精々雑談くらいか。食後の茶を飲みながら胡座を掻いたクシャラルは、俺から微妙に視線を外しながら訊いてきた。


「ねえ、ポムさん。答えたくないなら答えなくても良いけどさ、ポムさんは所帯を持った事あんのかい? 」


「無いの。儂の様な冴えない男の嫁に来てくれる、奇特な婦人にはとんと逢えなんだの。何じゃ儂に嫁に来てくれるのかの、クシャラルや」


 結婚には前世も含めて憧れるな。


「フフツ、いいかもね。貰い手が何処にもなけりぁ貰ってくれるかい? じゃじゃ馬な女だけどさ」


 クシャラルが笑う。そんな顔で言われると、本気に取るぞ。


「期待しておくかの。クシャラル程の器量良しが嫁に来てくれるのなら、文句なんぞないしの」


「器量良しなんて呼ぶのはやめとくれよ。あたしの父親が物心付く頃にはいなかったからか、ポムさんと居るとなんか落ち着くね。ひょっとしたら悪くないのかもよ、あたしらの相性」


 クシャラルが紅唇を歪めて微笑する。そして照れ隠しなのか茶を啜る。


「さて、冗談はこのくらいにして暗くなってきた様じゃ、交代で見張りをせねばの。前と後でどっちからがいいのじゃクシャラル。儂はどちらでも構わんぞい」


 髭をしごいて話の打ち切りを宣言した。冷めてきた茶を一息で飲み干した。


「じゃあ、あたしからお先に寝させて貰うさ。いいかい?」


「構わんぞい」


「お休み、ポムさん」


「たんと休むといい、クシャラルや」


 クシャラルは寝床を弄り毛布に潜り込んだ。暫くすると寝付きが良いのか寝息が聴こえる。まあ、枯れたオッサンと思われているとしても随分と信用してくれたものだ。助かりはするが、他の奴にもこんな調子なのか分からん分、少し心配にはなる。


 さて、今回の遺跡には既に何もない事になってはいるが、壁や床を俺が魂力ありきで触れば秘密の部屋が起動する筈だと思う。いや思いたい。もしも起動しなければ、誰かが発見済みの遺跡は全滅だと云う事になる。盗掘計画を大幅に軌道修整しなければならない事になるだろう。


 未発見の遺跡のみしか狙えなくなるという事なのだから、大幅な変更を覚悟しないといけなくなる。そういう意味では、今回の遺跡行きは結構な試金石なのだ。昨夜にも定時連絡で双子達にもメッセージを送ったが、結構心配していた。当然の反応だ。俺も凄く気になる。なにしろ遺跡から得る総金額に直結する事柄なのだから。


 適当な時間にだが、深夜遅くにクシャラルを起こして今度は俺が寝さして貰った。起きるとクシャラルが薬缶でお湯を沸かしてくれていた。白湯を淹れてくれたのを飲んで保存食を食べ出発した。


 警戒しつつも進み1アルド程経ち、遂に遺跡を俯瞰出来る丘の上に辿り着いた。遺跡の外観はまあ言ってみれば普通の村を石造りで作ったら、こんな風になりましたって感じの物だな。帝国遺跡特有の滑らかな岩を使って組んだ家々が、森の中に忽然と姿を現している。悠久ともいえる千年の月日の間に植物に浸食され蔦が絡まり、雑草の楽園といった風情だ。


「見事な物じゃのう。帝国遺跡というのは儂は初めて見たが、どこもこんな感じなのかのう」


 俺達は二人共腕を組んで、遺跡を眺めて感想を述べる。


「あたしも初めて見るから何とも言えないね。しかし大した物だねぇ、帝国とやらがなんで神の力とやらを失くして滅んだのか知れないけど、どうやってこれだけの岩を運んだのかが分かんないね」


「ま、儂らには計り知れん事情があるかも知れんのじゃろうが、何時までも感心してられんぞい。今更何かしら残っておるとは思わんが、探索して悪い訳ではないじゃろう。何時か儂らが手付かずの遺跡を見つけた時の予行練習じゃと思ってやるのみじゃわい」


「だね! 手付かずの遺跡かあ……凄いらしいよね。見つけたら遊んで暮らせる程の宝の山らしいじゃないか。あたしら程度じゃ学もないから無理だろうけど、考古学者とかいう奴らを抱き込んで探してる連中もいるとかお袋が昔言ってたね」


 ほう、考古学者ね覚えておこう。兎も角、手前から順番に探索していく事にして、俺は秘かに壁や床を触りながら徐々に村全体を網羅していった。


「流石に何にもないね。当たり前か」


「じゃの」


 不味いな。壁やらにも反応がない、後は……


「ポムさん、後はあそこの一番でかい家……なのかい? あれだけだね」


 俺の感覚だと公民館かと思う様な建物が、最後の希望らしい。


「後ひと息じゃ、気を抜かずに行くかの」


 頼む! 何もないのは流石に不味い。






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