表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/47

第十四話 運命

 次のテーブルに行くと、挨拶もそこそこに冒険者達にポムられる。彼ら曰く、さっきの一幕を見ていたそうだ。彼等を脳内登録する為には仕方がないという気持ちで臨んだんだが、何故か釈然としない。俺の作戦通りだが、何だかな……。


 そうして12個のテーブル全て回り、幾人もの漢が俺の身体を通り過ぎていった。夜の蝶みたいな台詞だが、単純に奴等にポムられただけの話だ。奴等の俺に対する扱いは、御当地ゆるキャラみたいな扱いである。


 新しい扉を開きそうな俺は、新型受動式マッサージ店でも開けばいいのか。そんな訳ないわな。取り敢えず、広間に居る冒険者達全員をチャイルドロックする事が出来た。


 俺は、達成感に溢れながら辺りを見渡してみる。すると、自分の様に挨拶回りをしている奴が居るのに気が付いた。俺と同年位の冒険者の女だ。推測だが身長は155メル位の88、55、80って処か。


 服装は、便利な植物樹脂であるゼリムを加工した糸で編んだ黒のチューブトップを身に付けている。チューブトップから覗く2つの膨らみが扇情的だ。その上から胸元を大きく開けた長袖の白いジャケットを羽織り、赤のフレアスカートにはスリットが2つ側面に入っていて踊り子さんの様。


 俺と同じ金髪碧眼で白い肌。髪は肩口よりも少しだけ長くてカールが軽く掛かり、後頭部へと流れている。あと日焼けして健康的に見えるが、何日間か喰ってないのか頬が痩け青白い。だが眼差しだけは、気迫に満ちている。実力は兎も角として、既に覚悟は完了してますって感じだな。そういう意味では、実家の村では見ないタイプの女性だとは思うが。


 顔は綺麗な卵形で、瞳は切れ長、鼻筋もスッと通り、小さく可愛い唇でとても美人だ。ただし、唇は生まれつきだと思うが真っ赤な色をしていて所謂、紅色って奴だ。色素と毛細血管の関係で、そんな色合いなのだろう。


 口紅なんかは高級品で、ハンナ母さん達でもお祭りの時位しか塗れない物なのだ。そう考えれば、この女は生まれつき得をしていると言っても良い。


 冒険者の女は未だに若い美人なのだが、紅唇が妖艶な雰囲気を醸し出して大人の色気すら感じさせる。漏れ聞こえる会話も、冒険者達の方から仲間として誘ってはいるが下心が丸見えだ。女性にもそれが分かるのか誘いを断っていて、ただ単に挨拶して次のテーブルへと移動する。


 色々と興味深い女性だが、今は壁に貼られた依頼紙を見る事にした。依頼には単なるドブ浚いなどの雑用から、討伐などの依頼もあり多種多様だ。ひとつ位受けてみるかとは思うが金に困っている訳でも無し、双子達からの情報の確認と実際の現場の擦り合わせが先だな。


 そんな事を考えていると、いつの間にか隣に紅唇の彼女が立っている。


「オッサンはなんで依頼書見てんのさ? あんた男娼だよね? そもそも字が読めんのかい?」


 鮮やかな紅唇から、酷く誤解に満ちた言葉を吐かれた。地味に酷い。それに物怖じしない性格なのか蓮っ葉な言葉使いなんだな、この女。



「違うんじゃ、儂は男娼なんかじゃ無いのじゃよ。冒険者になる為にこの街に来たんじゃ」


 切れ長の眼を見開き、驚いた表情を女が見せた。変装のオッサン設定に、少しだが無理が有ったかもな。年寄りが冒険者じゃ無理もないか。


「冒険者? オッサンがかい? それにさっき漢達に身体を弄られてなかったかい?」


 うっ、確かに端から見たらそんな風に見えるか、誤解なのに。


「身体を弄られてたのはの、儂の腹の触り心地がちょっとだけ気になったらしくての。そんだけじゃ。あとの冒険者になりに、南部の村から出て来たのも本当じゃよ。皆にゃ嗤われたがの。あと字は読めるぞい。昔に勉強したんじゃが読めて書けるだけで、難しい職業なんかに就ける程じゃないがの」


 そんな設定なんだよ、このオッサンはよ。


「へえ、じゃあさ、あたしに読んでやってくんないかい? さっきアイツに聞いたらさ、石貨1枚で5枚しか依頼書を読んじゃくんないらしくて馬鹿馬鹿しくなってね。だから男娼な筈なのに依頼書を読んでる風の、あんたに声を掛けて見たのさ。どうだい?」


 美貌を更に引き立てる眩しい笑顔の、上目遣いで頼んで来た。女が願い事をする時の基本を押さえた良い動きだ。中々に強かな嬢ちゃんだ。


 ん? でも随分とぎこちないな。笑顔が引き攣っている感じがする。ああ、精一杯の社交性を発揮して無理してるだけだなこりゃ。可愛いもんだ。


 視線を部屋の隅に向けると、暇そうにしてる奴が居る。あれが多分だが代読屋か? 100ゴルドで5枚だけとかチョイ割高だが、読めない奴だけしか頼まないと考えるとそんなもんか。基本的には、小遣い稼ぎ程度の暇潰し商売だろう。しかし今の彼女の様子だと、その代金すらも結構な負担に成るのだろう。美人に頼み事されるのも悪い気分じゃないしな。御安いご用だ。


「まあ、いいがのう。若い娘さんなのに、冒険者になるのは珍しいのう。儂が言うのもなんじゃが」


 興味が湧くから訊いてみた。仲間に誘えるかも知れんしな。



 実は仲間に入れる奴の性別はあまり気にしていない。信用性の方が遥かに大事だと思っている。そりゃあ力強い男の方が沢山の宝を運べるし、戦闘での体力や威力を考えると良さそうだ。だが裏切られた時には、それらが全てリスクに変わるのだ。なら、人柄重視の方が良いと云う考えだ。


 あと双子が既に仲間にしたと云うカップルの女性の方の為にも、女性を誘って欲しいと要望も双子から来ている。確かにメンバーの中で女性が独りだと、色々と不都合がある。女性は細かい事にも色々気が回るし、野郎だけじゃ行き詰まる展開だって無いとは言えない。幸い紅唇の彼女はソロっぽいし、実力は分からんが気合い入った目付きしていて有望そうだ。勧誘する条件も満たしている。


 それに俺の脳内プログラムを利用させれば、普通の女性冒険者が頑丈な女性冒険者に早変わりだ。更に脳内プログラムを追加で見つけられれば、其処らの雑魚冒険者を無双して蹴散らせる存在にすら成れるだろう。


「ハハッ! 確かにあんたに訊かれるのも何だね。

 あたしも何でまた冒険者なのか、あんたに訊きたくなるもんね。お互い様か」


 そりゃそうか、今は鈍そうなオッサンの見た目だしな。


「儂は単に村の農業が不作で食えなくなっての、簡単な話じゃよ。での、前から気になっとった冒険者に鞍替えしただけの話じゃよ。特別な事は何もありゃあせんよ」


 これもオッサンの姿の時の設定なのだ。


「そっか大変だね、あんたも。その年で今更冒険者かい。あたしの方は母親が冒険者だったから、元々抵抗が無くてね。南部の村に居たんだけど色々あってさ、居辛くなってね。良くある話さ」


 成る程な確かにありふれてる話だな、若者が窮屈な村から飛び出して冒険者か。それよりも、彼女が何日か食ってない様子の方が気になるんだけどな。


「確かにの、娘さんがなっちゃあいかん訳でもないしの。しかし訊いて良いのか分からんが随分と痩せておるようじゃが、そんなに遠くから来たんかの」


 勧誘したいし飯でも奢ってやれば、もう少し素性を探れるかも知れん。


「まあね、だからちょいと懐が寂しくてさ。とっとと依頼をこなさないと、飯の食い上げなんだよ。だから、あんたが代わりに依頼を読んでくれるなら大助かりさ」


 成る程な。村が遠いだけじゃなくて、金も無いか。


「よし何か依頼の種類に要望はあるかの? 全部だと流石に骨じゃしの」


「そうだね、早く支払ってくれたら助かるよ。今日明日の当座を凌げれば、人を募って討伐系の依頼も請けれるしね」


 普通に考えると俺の様にソロで複数のモンスターに挑むのは、馬鹿のする事なんだろう。そりゃそうだ。


 依頼の札を幾つか読んでみると、丁度良い依頼が見つかった。


「ちょっと待つんじゃ……丁度いいのがあるぞい。南門の馬車溜りで麻袋の荷降ろしの依頼じゃ、何時もより忙しくしとるそうじゃよ。馬車単位で荷降ろし毎に、交渉した分の報酬が支払われる様じゃの。早い支払いを求めるんなら、これじゃな」


 一人じゃあ厳しい依頼かも知れない。が、かといって人を増やせば稼ぎが少ない。二人なら何とか……そんな依頼だ。


「一人じゃ、ちょっと厳しいんじゃないのかい。その辺の男には負けないつもりだけど流石にね」


 よし、上手く誘導してみるか。


「儂も依頼を探しておったのは知っとるじゃろう。農作業で力仕事には自信があるし一緒にやるかの? 一回だけの街中だとはいえ、見も知らんオッサンとだと不安を覚えるかもしれんがの」


「馬鹿にしないでおくれよ。んな事に不安を覚えるんなら、女だてらに冒険者なんかしやしないさ。一緒にやろうじゃないかい。あ、まだ名乗ってなかったね。あたしはクシャラル。

オッサンは確かポムさんて呼ばれてたかい。宜しく頼むよポムさん」


 ポムさんにされてしまった。聴こえてたか。設定した名前もあったのに、これも運命か。


「こちらこそ頼むぞい。クシャラルとそのまま呼んで良いかの?」


 本当は俺と変わらない年だろうな。でもオッサン設定的には、この呼び方の方が自然だ。


「成人したばっかりの娘に、ポムさんからさん付けなんて要らないさ。クシャラルでいいよ」


 やはり同い年か。


「早速じゃが、行くかのクシャラルや」


 第一段階終了だ。ゆっくり取り込んでくれる。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援してもいいと思ったら押して下さい。私がこの場所に貼り付けたタグです。なろうの関連サイトですので安全な筈です。日間ランキングが表だどすると裏ランキングでしょうか。2週間で裏ポイントはリセットされてまた最初からよーいドンですので、表とは違う順位の隠れた名作に出会えるかもです。このタグでインしてくれたら私に裏ポイントが入ります。なんだったら表ポイントでもいいんですよ→ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ