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第十二話 徹し

 冒険者達との諍いを片付けてから三日、旅程を順調に消化して何事もなく進めた。今、俺は馬車の幅位の山道を登って山越えをしようとしている。俺の故郷の村から目的地である領都ボイドまで、本来なら山を避けて遠回りするルートで進むのが普通なのだが、困難なルートを敢えて進み少しでも戦闘経験を積もうと云う訳だ。それと今まで進んで来た道の事を街道とか言っていたが、精々土が踏み固められた道でしかない。


 そして、脳地図に示されたチェックポイントに差し掛かった。これは双子が予め地図に記してくれた物だ。俺は山道を逸れて繁みを掻き分けて、10メルド程の所で穴を掘る。暫く掘ると、ヘタった皮袋を見つけた。皮袋の中には帝国金銀銅貨幣や宝石類などがあり、おそらく1000万ゴルド位あるだろう。思わず口元を歪めて笑ってしまう。


 これらは双子達が発掘した財宝を、予め俺の為に隠しておいてくれた物だ。そして双子達が脳地図でマーキングしてくれた場所から、俺が発掘したのだ。以前の遺跡から手に入れた金額は1000万ゴルド程度であり、半分は村の為に寄付して残りは双子に渡したのだ。従って俺は殆どスッカラカンだったが、双子達が首尾よく手付かず遺跡の宝を見つけてくれたので、こうして旅の資金にする事が出来たのである。仲間にして良かった、双子様々だ。


 実際、今居るような山岳地帯の方が手付かず遺跡は沢山ある。逆に平原なんかは見つけ易いからか、殆んど発見済みの遺跡ばかりだ。しかし俺が壁や床を触る事で発見出来る隠された部屋などは、手付かずで放置されている筈だ。


 あと現段階では、分け前については厳密には決めていない。これは儲けの予想が付かない為だ。取り敢えず活動資金に当てて、合流してから調整する事にしている。


 俺は、皮袋ごと倉庫箱に入れて先へ進んだ。この辺りの山や森は兎にも角にも化物が多く、魂石目当ての冒険者達には狙い目だ。ハグナムさんの店がある伯爵領都ボイドに居る冒険者達の、生活を支える場所でもある。


 そろそろ、夕暮れになる。街道に所々ある野営地に着く筈だ。大体旅路の毎夕に着く位の場所を昔から旅人達が切り開き、野営地に作り変えている。


 ん? 何か聴こえる。


「グギャギャップ」


「誰か助けてくれ! ぎゃっ」


 遠くから叫び声が聴こえて、唐突に途絶える。気配を消して声の方へ繁みを掻き分け回り込み、辺りを伺うと野営地が広がっていた。


 更に近付くと20メルド四方位のポッカリ空いた空間があり、大毛人が5匹程居て襲撃したであろう人間の死体の後始末をしている様だ。どうやら先程の声の主が人間側の最後の一人だった様で、全滅したらしい。若い冒険者らしき、五体の死体が転がっている。


 化物と人とはやはり相容れない生き物だと、深く実感する光景だ。だが実の処、便宜上コイツらを化物とは呼んでいるが、俺はコイツらは化物ではないと踏んでいる。ひょっとするとだが、コイツらは原人なのでは無かろうか?


 俺達が新人類へと進化して、コイツらは出来なかっただけの事ではないかと思っている。何故なら余りにも人に似ているし、人型の毛むくじゃらではあるが喚いて仲間とコミュニケーションを取っているからだ。


 前世でも旧人類と新人類が争って、新人類が勝った時の様な争いをしているのかも知れない。それはつまり、この世界において奴等との生存を賭けた戦争をしているという事だ。


 それを何故と考えるのは学者の仕事であって、冒険者の仕事ではない。冒険者の仕事は、少しずつでも奴らを減らす事なんだろう。自分が新人類に属するというのなら、減らせる時には減らすべきか。世迷い言を言っても、何も変わらないしな。


 訓練と実戦の感覚を擦り合わせる事は、今後の冒険者稼業を考えると幾らでも必要だ。基本的に炎剣は森だと危ないので荷物と一緒にその場に置いて、特注の手甲を着けた拳を胸の前でぶつけて足甲の踵を撃ち合わせ気合を入れる。


 繁みから広場に出ると、大毛人達が呆然とこちらを眺めて俺の種族を認識した。


「ギャンゴ、ギャンゴ」


 五匹は困惑して俺を見ている。何故この人間は弱い筈なのにわざわざ一人で出てきたのかと思案するも所詮は獣なのか、結局は棍棒を振りかざし一斉に突撃して来た。


 2メルドの身長に130グルドの体重の奴らが5匹も突撃してくると、凄い迫力を醸し出す。しかし巨躯を誇る為に、動きが鈍重すぎる。


 高速でステップを踏み左回りで奴らの周りを回り、時折瞬間的に踏み込み左ジャブ(刻み突き)を入れた。


 全くジャブが見えない様で、面白い位に喰らってくれる。


 ジャブで激昂したのか何とか俺に追い縋ろうと、棍棒を俺の移動先へ渾身の力で振ってくる。


「ブルガ!」


 だが俺も左構え、つまり左手足が前の状態から右足を一歩踏み出して逆向きの右構えにスイッチし躱した。今度は奴らの周りを右回りに回る。



 急に逆回転移動をした俺に反応出来ず、戸惑う奴らに更に右ジャブを入れた。


 暫くするとやはり巨体故に持久力が無いのか、動きが更に鈍重になった。一匹ずつ離れてきた奴らにジャブを更に叩きつける。


 化物にも個性があって持久力や気合に差があり、一匹などは離れた場所で座り込んでしまっていた。


 頑丈さで知られる化物だが、鉄の手甲で殴られて随分と奴らの顔は腫れてきた。このまま腫れさせて目を塞げば俺の勝ちだが、ソレもなんだ。


 頑強な奴らに、ジャブでは決定的なダメージを与えられないのはもう分かった。しかし個々に離れて疲労して貰うという目的は達成している。


 一番近い大毛人が降り下ろす棍棒に右フックを横から当て軌道を逸らし躱す。闘牛士に成った気がするな。即座にスイッチし踏み込んで、左ジャブを顔面に当てて怯ませた。


 スイッチした分踏み込んだ大毛人の懐で、波打つ様に腰を振るい勁力を発生させる。


 右掌を大毛人の胸に叩きつけると、鈍い音と共に大毛人が俯せに倒れた。すかさず蹴りを首に入れて折る。


 勁の打撃を使うと必殺は無理でも良くて昏倒、悪くても結構なダメージは期待出来る様だ。


 でもアレなら一撃必殺かも知れない。



 すぐさま次の大毛人が迫って来ている。奴は両手で握った棍棒を、真上から降り下ろした。


 右に半身になり躱しながら背後に回り込むと、勢い余って地面を叩く奴の延髄に右掌を叩きつけた。


 流石に急所に勁で打撃を入れると、一撃で絶命する。


 残りの三匹、例の怠け者は仲間の死に様に怯んで固まっている。だが残りの二匹は俺の左右から迫って来た。


 二匹は俺の頭を狙っている。俺の顔面と後頭部を棍棒で狙い、左右から横薙ぎに振って来た。棍棒で俺の頭をサンドイッチにする積もりだろう。


 俺は棍棒が当たる寸前で膝を曲げて腰を落とした。頭の上で棍棒同士が当たる音を聞きながら、左右の大毛人の太鼓腹に左右の掌を添えて勁力を発生させる。


 鞭の如く撓る身体から両腕へ勁を送り、捻りながら真っ直ぐに突き込む。


『破!』


 相手の体内を掻き混ぜる手応えを両掌に感じ、その刹那に反発の感覚が両掌へと返って来た。


「徹った」


 大毛人達は口から血反吐を吐きながら、膝から崩れ落ち絶命した。


 今やったのは徹しだ。これは浸透勁の一種で、相手の体内で貫通螺旋運動を発生させる浸透勁だ。


 物で例えると洗濯機の底の丸い回転板が俺の掌、大量の水と服が相手の体内だ。


 一般の洗濯機の底板が回ると、それだけの切っ掛けで螺旋運動が全てを巻き込み回転する。これは当然、封じ込められた状態での内気圧などは無い状態での話だ。それでもかなりの勢いがある。


 どこぞの掃除機は、密閉された真空気圧とサイクロンを利用して最強だそうだ。化物の体内気圧も利用した洗濯機だと考えれば、威力の程が想像出来るだろう。洗濯物は水と一緒に回れるが、体内の臓器とかは回れずに捻れて壊れるだけだ。


 一瞬で強力な螺旋運動を相手の体内に作ると、気圧の関係で発生させた場所の反対側に気圧の負荷を掛ける。この場合は背中に赤い跡を残す。その後で圧の戻る力が働いて掌に反発が返ってくる。その反発力により徹ったかが分かるのだ。


 さて最後の怠け者の一匹だが、今の攻撃を見て逃げてしまっていた。四匹の魂石と冒険者達の金目の物を回収して、その場を後にする。化物が血の匂いで寄ってくるから、この夜営場所では安心して休めない。幾分離れた場所を夜営地に定め、夜空を眺めながら次第に浅い仮眠を取る。この世界は月が無い為に、月を楽しみながら寝れないのが残念だ。




 それから四日掛かって、やっと領都ボイドにたどり着いた。領都ボイドは、南部有数の四角い形の城塞都市だ。冒険者も数多く居てとても栄えている。


 最初は双子に、この街で仲間を探して貰う気だったが、エルヘイブンの方が街の規模が大きい為に情報量的に双子がそっちにしたのだ。


 検問を待つ人々の最後尾に並ぶ。門番の衛兵達が一人づつ確認を取り、犯罪者などを街に入れない様にしている。俺は銅貨3枚、3000ゴルドを支払った。当然犯罪者でも無いので検問を簡単に通過した。これで二週間の短期滞在許可証が手に入った。毎二週間ごとに再検査を受けて、銭を支払う制度になっている。実際の処は、検問も怪しい奴を探ってるだけのザルだが無いよりは良いか。


 街の市民に成りたければ有力者からの紹介状から始まり、金貨三枚を支払う。過去の素性を可能な限り洗われ、領主側の役人面談を経てからやっと許可が降りると云う難攻不落の代物だ。




 さて、この街で俺は仲間を見つける事が出来るだろうか?

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