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7、竜騎士の個人教育(1)

『おぉー!今回は大きい町だな!』



西へと向かうシューゴ達は再びジャングルを抜け、その際傷だらけになった身体を休ませるために一番近い町「セドナ」を訪れた。シューゴのいた世界のアメリカにも同じ地名があるのだが、当人は地理は苦手で全く気づく様子もない。



町は活気づいていて、今度はギャングなどの心配もないのでしばらくはゆっくりとできるだろう。中央には市場が広がり、色んな物が売買されている。外からくる行商人も多くいるらしく、貿易も盛んなようだ。



『じゃとりあえずここね』



シューゴ達がまず訪れたのは、町唯一のパブ、つまり居酒屋である。一つしか無いが故、その規模の大きさはかなりのものだった。


『なぁリア、俺未成年だから酒飲めないぜ?』


『何よそれ。未成年とか関係ないじゃん。飲めないんだったらオレンジジュースでも飲んどけば』


『あたいはまたたびジュースがいいにゃん!』



3人は手分けして空いている席を探し、ようやく見つけて席に着き、各々が所望する品を注文した。施設が広い上にほぼ満席だったので時間がかかってしまった。



『で、これからどうするんだ?俺はもうしばらくは町からでて歩きたくないぜ』


『そうね・・・服もボロボロだし、食糧の調達とかもしたいから、しばらくはこの町にいてもいいね』


『何日くらい居座るにゃん?』


『そうね・・・一週間くらいかな』



そこまで言い終わり、残りの所持金残高を確認しようとしたとき、リアが悲鳴にも近いような叫び声を上げた。



『どうした??』


『お、お金を入れてた袋が・・・無いの・・・』



シューゴは一瞬何を言われたかわからず困惑していたが、すぐに状況を理解して焦りだす。

3人で荷物の隅から隅まで探すものの、持っている荷物は大した量でもなかったため捜索はすぐに終わり、シューゴとリアはダラダラと脂汗をかく。

しかし少し不審な点もあった。荷物を纏めていた袋に穴が空いた様子はなく、落としたとは考えづらい。そうなると考えられる可能性は自然と少なくなっていく。



『あぁ、それは多分スリですね。こういう大きな町ではざらにあることです』



不意に後ろから声がして驚き、振り返る二人。振り返ったところには鎧を纏った女性が立っていた。その女性は色白で枝毛一つない綺麗な金髪、明るい緑色の瞳を持ち、動作や立ち振る舞いは端正でおしとやかな雰囲気があり、高貴な美しさがあった。しかも、本来ドレスを着るようなその容姿に似合わないだろうと思われる鎧は、見事にマッチしていた。

普通の鎧はゴツゴツとした印象のある無骨なものだ。

しかし彼女の鎧は、鮮やかなブルーで、ところどころが尖ったデザインで鋭いイメージのあるものだった。しかも、身体全体を覆うものではなく、いくらか肌が露出する部分がある。



『あなたは・・・?』


『おっと、申し遅れましたわ。私、ラミアール・カナリエと言う者でございます。長ったらしいので、ラマと呼んでください』



透き通るような声でラミアールと名乗った彼女は背中に身の丈ほどの槍を背負っており、騎士を思わせる格好だ。どこを見ても目を奪われるような美しさではあったが、シューゴが気を取られていたのは彼女の長く尖った耳だった。



『ラマさん・・・もしかしてエルフ?!』


『ええ、純血のエルフです。このあたりにはあまりエルフは来ないようですから、私のような者は珍しいかも知れませんね』



シューゴはRPGゲームでよく出てくるエルフの本物に会えて感激していた。



『(やっぱり背高いんだなー。思ってたイメージとそっくりだ)』


『あんた、冒険家なの?その鎧からして騎士団員っぽいけど、ここは城下町でもないからね』



一人感慨に浸るシューゴを無視してリアが話しかける。だが話しかけながらもリアの視線はラマの顔より下に向けられている。自分とは違って豊満な・・・胸へと。



『はい、冒険家ですよ、一応はね。皆さんと同じく、各地を旅して回っています』



一応は、という言葉にリアは引っ掛かったようだが、それよりも現在の状況の悪さを思い出しそれどころではなくなった。

なにしろ一銭もお金がないのだ。もちろんパブで注文した分は払わないといけない。



『ここは私がお支払いします。お気になさらないでくださいね、困ったときはお互い様ですから』


『そ、そう・・・?』


―――――――――――――――


ラマのおかげで事なきを得たシューゴ達だが、これからしなくてはならないことがある。バイト探しだ。

冒険家を職とする人はもちろん雇われているわけではない。故に給料を貰えるわけがないのだ。だから、冒険家は自らの実力を傭兵という形で売り込み、報酬を貰うのだ。

だが傭兵の仕事もピンからキリまであり、よっぽど大きな仕事でない限り大した報酬は貰えない。しかも、最近ではそのような依頼が少ないのだ。だから今の冒険家は荷物の運搬などを主として働いている。いい方でも護衛程度で、それでもそんなに貰えない。



『なんかいい仕事ないかなぁ・・・。荷物運びみたいな小さいやつじゃ、次に出発するのは一ヶ月後くらいになりそうだよ・・・』



リアがため息をつく。あまり準備せずに町をでてしまうと、次の町に着くまでに食糧や薬が先に底をついてしまう恐れがあるのだ。それでは元も子もない。



『なぁリア、どんなのが報酬が高いんだ?』


『護衛でも国王レベルの人とか、囚人護送、あと特に高いのは魔物の討伐ね』


『あら、それならいい仕事がありますよ』



最後にこう言ったのはパブからずっとついて来ていたラマだ。

ラマが言うには、最近この町のはずれで集団のゴブリンが発見されたらしく、それの討伐だ。町を上げて訪れる冒険家達に声をかけて協力を要請しているようだが、ゴブリンの値段自体はそこまで高いわけではない。



『しかし、そのときはゴブリンが陣形をとっていたという話ですよ。普通、ゴブリンは頭が悪いためそんな行動を起こすわけがないんですが・・・どうやら大量の人数を統率できるリーダーがいるようです』


『でもゴブリンって弱いんだろ?そんなに危惧するようなことでもないような・・・』



シューゴがそう言うとラマは首を小さく振りながら応える。



『いいえ、そうではないんです。確かに弱いですが、あの種は繁殖力が強く、放っておけば一国に値する数になります。そうなれば戦争です。この町など、すぐに飲み込まれてしまうでしょうね』



シューゴはごくりと生唾を飲む。






と、そこで何かが起きた。



いつの間にか周囲は逃げ惑う人々でいっぱいになり、辺りには悲鳴や怒号が飛び交う。

何が起こったのか把握しようと見渡すと、ちらっと小さな人間が見えた――いや、角が生えているから人ではない、おそらくゴブリンだ。



『あれがゴブリン?!』


『そのようです、どうやら思ったより向こうの戦力は増えていたようですね・・・!』


『シューゴ!とりあえず退治しにいくわよ!』



リアの声を合図に全員が散開する。シューゴがさっきのゴブリンに近づくとこちらに気づいたそいつが振り向く。

シューゴが腰に挿した刀を抜き、両手で構えると同時にゴブリンが手にした武器を振りかざし、攻撃をくりだす!



ガキンッ!!



と音が響く。シューゴは刀身でゴブリンの持っていたこん棒をガードした。

しかし、シューゴの後ろには知らぬ間にもう一匹のゴブリンがいたのだ。シューゴは身動き取れない状況だ。



『くっ!う、後ろだと!』



瞬間、閃光が走り、後ろのゴブリンは真っ二つになった。



『マスター!大丈夫かにゃ?!』



ミズにゃんの出現にうろたえたゴブリンは一瞬だけ力を弱めた。その隙にシューゴは武器を押し返し、ゴブリンを両断した。



『ふぅ・・・死ぬかと思った』


『じゃあ他のやつも片付けるにゃん。今度は後ろにも気をつけて』



シューゴとミズにゃんは多く戦っていると思われる中央の市場へと向かった。

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