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6、召喚士はケンカ好き?(2)

ボロボロ宿での騒ぎが収まったのは5分後だった。リアにとって男十数人くらい大したことはないようで、シューゴとミズにゃんが加勢したとはいえほとんどの敵を一人で倒してしまっていた。時には3人から同時に攻撃される場面もあったが、そんなことも関係なく腕力に任せてなぎ倒していた。



『なんだ、見た目程じゃなかったわね』


『それはリアが見た目によらず強すぎるだけだと思うけどな。あ、ミズにゃん、そいつらは食べちゃダメ。お腹壊すよ』


『突っ込みどころが違うでしょ』



ミズにゃんに関しては動きが変則的かつ速すぎるのでよくわからないのである。今回は人間相手だったからか、あの魔物をいとも簡単に切り裂いた鋭利な爪は使わなかったようだ(使っていたら今頃血みどろ旅館である)。



シューゴに関しては・・・相変わらずおぼつかない手つきで刀を振るい奮闘した。しかし慣れないみねうちを使った割には上手くいったようだ。まだまだ修行が必要ではある。



『あ・・・あのぉ~・・・』



物陰からそぉ~っと出てきたのはさっき男達に脅されていた青年である。どうやら隠れていたようだ。



『お。大丈夫だったか?』


『はい・・・おかげさまで。この宿も守ることができましたし』


『そう。それはよかったわ。それよりここに泊まりたいんだけどいいかしら?』



リアがそう言うと青年はパッと顔を明るくして言う。



『ええ!それはもちろん!どうぞお泊りになってください!ちょうど部屋が空いていたんですよ』



それはやはり繁盛していないということだった。この宿のボロボロさ加減からしてお世辞にも繁盛してますねとは言い難いのは明らかである。



青年はこの宿の主人ということだった。まだ若いのに主人をしている訳を聞くと、この青年の父親、つまり先代の主人が若くして病死し、祖父母に支えられながらも経営を続けていたが祖父母も亡くなり、今は一人で宿をやりくりしているらしい。

従業員もどんどん辞めていき、宿に泊まる人もずんずん減っていき、売り上げもがんがん落ちていった。故に宿はボロボロである。



まあそんな設定はどうでもいいのだ。

シューゴ達は宿に泊まり、一夜を過ごした(変な意味ではない)。

だが寝るまでにどうしてもさっきの連中のことが気になったシューゴ達は町にでて情報をあつめた。すると、男達の正体はこの町に居座っているギャング(シューゴの世界の表現であるが)であることがわかった。



ということで(どういうわけだか)、この町のギャングを掃討することになった。

唐突に決まったことだが、情報はたんまりある。ミズにゃんの情報収集能力は大したもので、ギャングのアジトや推測メンバー数、アジトの場所、警備体制まで調べてきていた。おかげでシューゴ達の作戦会議はサクサクと進み、手順を細かく決めることができた。



『じゃあシューゴはここで煙幕爆弾を使って・・・にゃんはその隙にボスをふん捕まえてきて!』



「にゃん」というのはリアがミズにゃんを呼称するときのニックネームである。本人曰く、長ったらしくて面倒くさいからだそうだ。

作戦と言ってもそんなに難しいものでもなかった為シューゴもすぐに憶えることができた。



『で、リアはどうするんだ?』


『あたしは適当に陽動。雑魚共は気にせずにちゃちゃっとやっちゃえばいいよ』


『捕まえたあとはどうするにゃん?』


『そのあとは・・・あたしがちょちょっとね♪じゃあ作戦会議おしまいっ!』



意味ありげな間を置いて会議を締めると、一人に一つずつ用意してもらった部屋に引っ込んでしまった。シューゴとミズにゃんも部屋に入って準備を始める。


―――――――――――――――


ごそごそ・・・



――『今度しくじったらどうなるか分かっておるだろうな?』


――『へ・・・へい・・・次こそは失敗しねぇです・・・』



天井裏。シューゴは作戦通りに潜入していた。後は煙幕爆弾を投下するだけだ。

下の部屋ではギャングのボスと思われる恰幅の良い中年男と、昨日の夜に宿を襲った男達のリーダーが話している。



――『いいか?あの土地は絶対に押さえろ。何ならいっそ焼き払っても構わん』


『なんてやつだ・・・!』



シューゴは怒りに奮えていた。ミズにゃんも同様だ。



『じゃあマスター、煙幕お願いにゃん』


『オッケー。それ!』



シューゴは天井にこっそり空けた穴から小さなボールを投げ入れる。煙幕爆弾は地面に着くと同時に爆発し、一瞬にして視界を奪う。



『うぉっ!!な、何だ!何が起こった!!』



ミズにゃんは周りが見えなくても問題無い。騒ぐ声と臭いを頼りに瞬時に人の位置を把握し、音も無くボスに近づく。



『だ、誰か!おらんのか!!ええい、使えん奴らめ!!』


『無駄だにゃん。大人しく捕まるのにゃん・・・』


『っ!!!?』



キョロキョロとしていたボスの喉元にミズにゃんの自慢の爪が突き立てられる。

当然、この部屋には誰も来るはずが無い。外にいる手下達は全てリアが気絶させているし、さっき会話していた男はミズにゃんと共に飛び降りてきたシューゴが拘束していた。



『くそっ、お前ら一体何者だ!!?』


『俺達か?――ただのお人好しな冒険家さ』


―――――――――――――――


『ったくよ、ちょっとくらい休んでってもよかったんじゃねえか?』



かくしてギャングを町から追い払ったシューゴ達はそのあとすぐに町を出発したのだった。シューゴには明らかに疲労の色が見えているがリアとミズにゃんは余裕の表情である。



『いいのよ。もともとあの町には用は無かったんだし、長居する理由も無いよ』


『いや、もう一晩くらいいいとおもうが・・・』



シューゴの一泊するという提案はリアが主導権を行使したことによって強制的に却下されたのだった。



『あたいはあんまり室内で寝るのは慣れないにゃん。ほんとは野宿がいいのにゃん』


『早く目的地に着かないといけないしね。それよりシューゴ、あの台詞なに?勿体無いくらいキザでいかにもチャラかったんだけど』


『しょうがないだろ・・・活躍できなかったんだからちょっとくらいかっこつけてもいいだろーがよ』



シューゴは元居た世界にあったものの影響を受けてしまったようだ。本人にとってファンタジーとも言えるこの世界ならあのような痛い台詞も言ってみたくなるものだろう。



『そういえばあいつらのボスで何してたにゃん?』


『ん?ああ、あれね。ちょっと拷問したら金の隠し場所吐いたから少しだけもらったの。ほらね』



そう言ってパンパンになったお金の袋を掲げるリア。



『ちゃっかりしてんなぁ・・・』



それはさておき、シューゴ達は次の町を目指し(来た道を戻ることになるのだが)、西へと向かい歩いて行く。


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