4、凶戦士が喰らう
がつがつがつがつがつがつ・・・
『なんだこいつ・・・』
刀を鞘に納めながらシューゴがつぶやく。シューゴの目の前では猫の耳が生えた少女が先程真っ二つに切り裂いた魔物をまさに獣の如く喰らっている。
『リア・・・こいつは一体・・・?』
『まぁ・・・このナリからして、獣人族でしょうね。耳も尻尾も生えてるし』
『それなら聞いたことあるな。って言っても言葉通りの意味だろうが・・・。で、どうするんだ?さっきの魔物が倒されてなんか拍子抜けしちまったんだが』
うーん・・・とリアが考え込む。その間も獣人族の少女はひたすら獲物を喰らう。あんなに巨大だった魔物の肉はもう3分の1ほど無くなってしまっている。物凄い勢いだ。このまま食べ終わってシューゴたちにどんな反応を示すかわからない。
ポン。っと考え込んでいたリアが手を打つ。どうやらなにか思いついたらしく、どこからかトランペットのような楽器らしきものを取り出した。それのマウスピースを口にあて、演奏を始める。だがシューゴの耳には何の音色も聴こえず、ただ「スー」っと息の通る音しか聴こえなかった。
『んにゃ~・・・』
しばらく演奏を続けるうちに、少女の猫耳がピクリと反応し、動きが大人しくなる。そしてさらにその場にうずくまり、眠り込んでしまったのだ。シューゴは何が起こったのかまるで把握できなかった。
『リア、その楽器みたいなの何だ?』
『これは祖符羅乃っていって、獣笛の一種よ』
『獣笛?』
『魔物をなだめたり、眠らせたり、あやつったりする道具。例外で攻撃できるようなのもあるらしいわ。あたしは祖符羅乃を愛用してて、これは主に眠らせる効果ね。このあとが肝心なんだけど』
リアは首輪を取り出し、眠っている少女の首に巻きつけた。すると少女は目を覚まし、とろんとした目でキョロキョロしだした。まるでだれかを探しているようだ。
『シューゴ。声かけて、彼女を呼んで。』
『あ、おう。・・・おーいそこの子?』
『!』
少女はこちらに気付き、こう言った。
『キミがあたいのマスターかにゃ?』
『え、マスター?俺がか?!お、おいリア、どういうことなんだ??』
リアはやっと詳しいことを話してた。リアの話によればどうやらさっき取り付けた首輪には魔物を従わせる力があるらしく、首輪をつけてから最初に声をかけた人間がそのマスターになる、ということだそう。
『よろしくにゃん!』
『あ・・・うん。やべえ猫耳とかリアルに見るの初めてだー。あげぽよー。そういえば、さっきの笛とかもなんかのジョブ能力なのか?』
『そうよ。魔獣使いの基本スキル』
『あ、基本なんだ・・・』
シューゴは弱すぎる自分の力に自信をなくすのみだった。そうは言っても転職してから間もないのだからある程度はしかたないし、何より初心冒険家だから基礎能力が低いのが一番の要因だ。
『キミさ、名前とか能力とか教えてくれないか?』
『あたいは野生だったから名前がないんだにゃ。マスターが付けてくれると嬉しいにゃん!』
『じゃあミズにゃんで』
『即答?!なんかマスターの趣味が入ってる気がするけど・・・まあいいにゃん』
その通り。シューゴが好きなアニメにでてくるキャラクターのニックネームである。野生のワリにはミズにゃんは鋭い猫だった。シューゴは次に能力を把握するために質問を重ねる。
『あたいは獣人族でヒトじゃないけどジョブはもってるにゃ!あたいの種族では皆バーサーカーになるのが掟なのにゃ。武器は元から持ってるこの爪だけど、めいどいんヒトの武器も使いこなせるにゃ!長斧とか大好きにゃ!まっぷたつに叩き割るのにゃん♪』
『おぉぅ・・・。バーサーカーってなんか特殊な能力があるのか?』
『バーサーカーは凶戦士だから基本的には作戦なしで全滅させるまで戦うのみにゃ』
ジョブの性質上、首輪の能力がほとんど意味をなさないような気がしないでもない。しかしさっき魔物を切り裂いた事実を踏まえると実力は確かだし、なによりシューゴが戦いに慣れてない分、勝手に動いてくれるのは好都合といったところだろう。
『ところでマスターたちはなんでこんなジャングルの奥にいるの?』
『ああ。それはな・・・ぐぼっ!』
『それがねー、シューゴが道もわからないくせして勝手にずんずん進むから迷い込んじゃったのよー』
ほんとはリアが先導して迷ったのだが、なぜかシューゴのせいにされてしまう。しかしこのジャングルに住んでいるミズにゃんがいるならじきにここからでられるだろう。
『なんだーマスターは方向音痴なのかー。じゃあ、あたいが出口まで連れてってやるにゃん!』
そう言ってミズにゃんは風のような速さで駆け出した。




