3、侍が迷子
『なあ、リア・・・ここは一体どこなんだ?』
『おかしいわね・・・ジャングルなんて通るはずないのに・・・とりあえず一旦戻って地図を見直しましょ』
『戻るって・・・、どっち・・・?』
シューゴたちは道に迷っていた。360度見渡すと全てがジャングルで、その先は木々が密集していて全くと言っていいほど見えない。
『もしかしてリアって方向音痴?』
『ちょっ・・・!そんなわけないでしょ!』
リアは明らかに焦っていた。どうやら図星のようだ。
『とにかく、ここから抜けないと――』
そのとき、シューゴの身体は宙に浮いていた。
『・・・!!?』
シューゴは空中で数百にも及ぶたくさんの足のようなものを見た。それはウネウネとばらばらな方向にうごめき、気持ち悪い動き方である。
シューゴは地面にたたき付けられたが、地面が柔らかいおかげで衝撃はあまりなかった。しかし自分を跳ね上げた原因を見上げた瞬間、シューゴは思わず叫んだ。
『うわっ!!?でっけえムカデ!!!??』
それはシューゴのいた世界にいるムカデが巨大化したような化け物だった。真っ黒なそれは地面に大穴を開け、そびえたっている。そこはさっきまでシューゴが立っていた場所だった。
『魔物?!こんなところに現れるなんて!でもちょうどいいわ。シューゴ、あの魔物を一人で討伐するのよ!』
『えっ?!あんなにでっかいのを一人でやれっての??無理無理無理!!加勢してくれよ!』
『甘ったれるんじゃないわよ!初心冒険家はこの魔物を狩ることからスタートするのよ!いわばこいつは一番ザコなのよ!』
確かに、どんなRPGでも一番最初は最弱のモンスターがでてくるものだ。シューゴがよくやっていたゲームもそうだった。それに、今はコントローラーじゃなく、実際に刀という武器を持っているのだ。
『よし・・・やってやる・・・!』
『あ。ちなみに今目の前にいるやつは通常の5倍のサイズよ』
『俺の決意を返せええええええ!!!!っ!!』
突然、ムカデの魔物が穴からはいでてシューゴに突進してきた。シューゴはサイドステップでかわし、振り向きざまに胴へ刀を振り下ろした!
ガキンッ!!
シューゴが懇親の力で振り下ろした刀は容易に弾かれ、不快な金属音と共に後ずさる。
『くぁっ!って、うわぁ!』
シューゴは魔物が放った追撃を身を屈めて間一髪かわした。
魔物の身体は黒い甲冑のような堅硬さを持っていた。シューゴは突進をかわしつつ繰り返し刀を振るい、金属のような甲殻にダメージを与えるが、少し傷が付くだけで効果的な攻撃とは言えなかった。
『くそっ・・・。硬いな・・・どうすれば・・・?』
『シューゴ!!』
木の上からリアが叫ぶ。
『よく見るのよ!そいつの甲殻は硬くてもところどころ節があるの。そこを狙いなさい!甲殻の下の肉質自体は大したことないわ!』
『そうか・・・!』
シューゴは再び突進してきたムカデをかわし、身体の節を狙って刀を思い切り振り下ろした!
『ここかぁっ!!』
切り落とされた尻尾近くの節からはムカデの体液がふきだし、のた打ち回る。だが、やはり致命傷ではなかった。真ん中か、頭近くを狙わなければダメージは薄い。じきにムカデは勢いを取り戻し、怒りをあらわにして暴れ回りながらシューゴに襲い掛かる。
『うわっ・・・!』
激しく身体をうねらせるムカデの節を狙うのは至難の技だった。
シューゴは節を狙った攻撃を試みるが、いずれも硬い甲殻に邪魔をされる。
やがて身体に疲労が積み重なり、思うように動けなくなってくる。
『やばいわね・・・。いくらザコとはいえボス級のサイズ・・・。ジョブを持ってるシューゴでもきつかったようね』
リアは戦況を観察し、そろそろ加勢すべきかどうかの検討を始める。しかし、シューゴにはほとんど余裕がなく、リアの選択はあまりにも遅すぎた。
ムカデは巨体を立たせ、今まさにシューゴを押し潰そうとしていた。
『シューゴっ、危ない!!』
『くっ、やられるっ!』
――スパッ
突然、一陣の風が吹き、ムカデはその場に倒れて動かなくなった。見ると、胴は甲殻ごと真っ二つに切り裂かれていた。
『ウソだろ・・・あれだけやって傷しか付かなかったのに、真っ二つだなんて・・・』
あまり出来事にあっけに取られていると、木の上から飛び降りた影が目の前に着地した。
魔物をいとも簡単に切り裂いたその影はリアではなく、頭に獣の耳が生えた一人(一匹?)の少女だった。




