第八十八章 ワイワイ、なんて不器用な
部屋に入ると、俺は彼女を先に通して扉を閉めた。ワイはベッドまで歩いていき、端に腰を下ろした。
俺は近づいて横に立ち、問いかけるように見下ろした。
「で、何を待ってるんだ? あんなに急かしたくせに」
ワイはためらったが、やがてつなぎの留め具を外し、布を上にずらして胸をあらわにした。ところが、彼女はそこでぴたりと止まってしまった。
俺は面食らって彼女を見た。
「なあ、俺、何か勘違いしてるのか……?」
ワイは慌てて説明した。
「だから、私がちょっと脱いで、あなたが自分で処理して、遺伝子を渡してくれるのかなって思ったの」
思わず吹き出して、俺は出口に向かい、扉を開けた。
「わかった、じゃあまた明日な。カップは後で返す。お前が想像してるのは『本物』とはだいぶ違うぞ。セフィーナにでも聞いてみろよ。それか、お前がさんざん見下してるキューにな」
しょんぼりした彼女は、やがて決意の目で俺を見据えると、いきなり飛びついてきて俺のズボンを引きずり下ろした。俺はもう一度扉を閉め、この先どうなるのか眺めることにした。
ワイは床に膝をつき、おそるおそる俺のモノを見つめてから、指先でそっと触れた。俺がまるで反応しないのを見ると、今度は手のひら全体で握り込み、ぎこちなく手を動かし始める。ゆっくり、ひたすらゆっくりと。
「もういいって、ワイ。できないもんはできないんだ。くだらないことで自分を追い詰めるなよ」
なだめながらズボンを引き上げようとしたが、彼女が止めた。
「だめ、諦めない!」ワイは俺の袖をつかんで引き留めながら、もごもごと言った。「お願い、行かないで。もしあなたが死んじゃったら、全部終わりなの! 今のうちにやらなきゃ!」
「つまり、俺が死のうが生きようが、お前にはどうでもいいってことだな?」
彼女は渋々うなずいた。頭の中ではもう、派閥間の子供のおかげで下級クローンの自分の地位が上がる光景を思い描いているんだろう。正直、こういう態度にはうんざりだった。キューのほうが、癖はあっても、よっぽど人間らしかった。
「もういい、出てけ」
苛立ちながら言い放ち、俺は彼女の手から袖を引き抜いた。
「やだ、ニコ、待って、お願い! 好きなように私と交尾して! 何でも言うこと聞くから!」ワイは膝をついたまま、泣きつくように俺のあとを這ってくる。最悪だ……。
俺は彼女を立たせ、部屋を見回して使っていないシーツを見つけると、引き裂いて布切れにした。そのまま彼女の背後に回り、両手を後ろ手に縛りながら耳元でささやいた。
「頼んでもないのに押しかけてきた嫁が、こんなみっともない真似をするとはな。この後どうなるか、わかってるのか?」
ワイは怯えて首を横に振った。俺は続けた。
「お仕置きだ」
つなぎの内側の部分を外し、彼女を下着とストッキングだけの姿にした。後ろから抱きかかえるようにして、俺は彼女の肩に手を回した。
「ご、ごめんね、ニコ。本当に私の……ひゃっ、ああ。そんなところ、触る必要あるの? それに……ひゃんっ!」
手を縛られているせいで俺を止められず、ワイはうわごとのように口走った。まあ、繋がりを使えばこんな縄くらい簡単に引きちぎれるはずだが、そうしたら全部終わってしまうのが怖くて、やらないんだろう。
「気にするな。好きにしろって言ったのはお前だろ」
俺は彼女をベッドに押し倒した。
......
ワイはその場でほとんど踊るように身をよじり、俺の動きに合わせて腰を揺らし始めた。
「あっ、こんなに気持ちいいなんて、ニコ、これがお仕置きなら、私……」
......
やがて彼女はシーツに顔を埋めて、喘ぎ声を上げるようになった。そろそろ十分だろうと区切りをつけると、彼女は不満そうに振り返った。
「どうした、気に入ったか?」
「うん! どうしてやめるの?」
「いや、まさかこれで終わりだと思ってないよな? こっちを向け」
戸惑う彼女を仰向けにひっくり返し、俺は顔の横に腰を下ろした。
......
しばらくして、俺はまた彼女を元の体勢に戻した。
......
「待って、それはやりすぎ! だめ、ニコ、だめ!」
必死に抗う彼女だったが、俺は手を緩めなかった。ワイの細い腰をがっちりつかみ、ゆっくりと進めていく。
抗議が止まり、彼女はまた感覚に身を任せた。休むことなく喘ぎ続け、その声はどんどん大きくなる。
......
俺は生意気な尻をぴしゃりと叩き、ペースを上げた。数分後、いきなり区切りをつける。
「いや、お願い、まだなの! ニコ、何でもするから!」
ワイに身を寄せ、耳元でささやく。
「だったら、毎日俺たちの子供の面倒を見て、ちゃんと育てろ。わかったな? サボったらただじゃおかないぞ」
彼女は何度もうなずいた。
......
やがて俺はベッドに仰向けになった。ワイはすぐさま跳ね起き、縛られたままの手を器用に使いながら、自分から上にまたがって、快感の続きを求めてきた。支えがなければきついだろうから、俺は彼女の腰を支え、ペースを任せることにした。彼女は自分でリズムを刻み、少しでも快楽を足そうと夢中になっている。
……とうとう我慢できなくなったのか、ワイは縄を引きちぎって俺に飛びかかり、体を密着させて、狂ったように腰を打ちつけ始めた。呼吸がどんどん荒くなる。喘ぎ声はもう途切れない一つの叫びに溶け、指は俺の肌に食い込み、普段は落ち着いているその顔には、獣のような欲情しか浮かんでいなかった。
甲高い悲鳴を上げて、ワイは何度か腰を落とすと、ぴたりと動きを止め、全身をがくがくと震わせた。俺もあと何度か動いて、そのまま彼女を抱き寄せた。
ワイは目を見開き、不安げに自分の下腹部をさぐった。やがて満足そうに微笑んで、俺の上から降り、隣に横たわった。
「忘れるなよ、俺たちが約束したこと」
「わかった、ニコ」
ワイは早口で答え、一瞬だけ真剣な顔になった。
服を着ると、俺は寝室を出て、図々しいわがまま娘をひとり残していった。
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