第八十五章 戦利品の仕分け
正直、いきなりそんな知らせを聞かされて気分は沈んだが、まあ長くは続かなかった。この2週間で、何事も思い通りにいかないことには慣れっこになっていたからな。
少し考えてから、俺は繋がりを開いた。アキルズも皇女も生きている。ただ残念なことに、詳しいステータス情報は何もない。もしかして捕まってるのか? それとも怪我でもしてるのか? それとも女王様とお茶でも飲みながら結婚話でも進めてるとか……まあ、息子があれだけ献身的で責任感も強いことを考えれば、そんな軽率な真似はしないと思うが、関係改善のためなら例外もあり得るか。ここは単純に信じて、慌てて動かない方がいいんじゃないか? 今すぐ二人を殺して基地に戻したところで、向こうはもう目的地近くまで来てるんだし。
ため息をついて、俺はもう少し待つことにした。最悪、何の連絡もなければテスラ歩兵が回復するまで待って、おおよそのルートを辿って飛んでみるか。まあ、無駄な期待だろうけどな。見知らぬ街で、入ったかどうかも分からない二人をどうやって探すんだ? 余計な騒ぎを起こすだけだろう。
狼娘が他の連中を呼びに行ってる間に、俺は自分の考えをエンディスに話した。朝と似たような光景が繰り返されたが、今回はみんな喜んでくれた。それにしても、俺はもっとずっと長い間留守にしてた気がするんだが。
みんなが集まってる間に、ウルカストが地下から上がってきて固まった。何に驚いたのか判断しづらい。家族の人数なのか、それとも獣耳としっぽの生えた娘たちなのか。奴の故郷にどんな連中が来てたのか、俺は知らないからな。
当然、他の連中も彼に気づいて、疑問の視線を俺に向けてきた。
「ああ、紹介するよ。こちらウルカスト、異世界から召喚されたんだ。今は協力し合うことになってる。うまくやっていけるといいな」
兵士が素っ気なく挨拶を返してきた。俺も礼儀正しい人間として全員を紹介すべきなんだろうが、メモ帳でも見ない限り誰も覚えきれないだろうと察して、やめておいた。
ちょっと待っててくれと言って、ウルカストを呼んで居住棟まで案内した。建物自体が拡張されたこともあって、まだ空き部屋はあったし、センターや兵舎で寝泊まりする連中も多かった。明日は朝早くから攻撃があるかもしれないからな、とりあえず休んでくれと伝え、トイレや食堂の場所を教えた。腹が減ったら適当に食ってくれ、と。
別に全面的に信用したわけじゃない。無意識とはいえフレムテックにいたやつだし。ただ、繋がりのボタン一つで全部止められるって安心感があった。
おやすみと告げて急いで戻りながら、部隊強化の通知をざっと流し読みした。
自己犠牲を俺にも適用する強化も自動で習得された。キルハイヴの強化も発注しとかないとな。そう思って、呆気に取られてる女子たちを横目に地下へ駆け込んだ。クリスタリット100だ。
ソファに腰を下ろして包みを広げた。セフィーナとジェシーが皿を持ってきてくれて、全員が食卓に集まったところで話し始めた。いつも通りアイリーンはいない。ケイトはテクガンの基地の方にいるらしい。それとアキルズもいなかった。当たり前だが。くそ。あいつ、大丈夫かな?
まずは当然、アルヴァー派閥との顔合わせから始めた。シアディンに対する反応は、彼女のステータスにしては薄かったが、マルコについては即座にいくつも声が上がった。
「で、彼ってかっこいいの?」と、普段は落ち着いているアルビが尋ねてきた。金髪だってことに興味を持ったのか?
「で、彼って強いの?」と、マハが神経質に翼を震わせながら訊いてきた。いったいどこに突っ走ろうとしてるんだ、俺たちには繭も卵も手に入れる場所さえないってのに……
彼女たちの気持ちが分からないわけじゃないし、あの少年を連れてくるのも簡単だ。だが、それは後で話し合った方がいいだろう。曖昧な返事でごまかして、俺は続けた。
「あ、ブラッドバロネス? 彼女のギルドは強力よ、同盟を結ぶ価値はあるかもね」とジェシーが言った。「もっとも、ペインの方がもちろん強いけど、彼と比べられる人なんてほとんどいないわ。もしマディを通じて彼につながれたら、それもいいんじゃない」
これは興味深い。強力なテクガン派閥の連中の助けを得られれば、襲撃を止められるかもしれないな?
実を言うと、今の段階では俺は王を責める気にもなれず、むしろよく理解している。俺の現状を見ても、すでに51年分の余裕がある。もちろん、ネクロマンサーモデルの罠にかからなければもっと良かったが、それでも。のんびり暮らせばいい。人口の大半は首都の城壁に守られ、定期的に死ぬのは冒険者の一握りだけ、攻撃してくるのもたった一つの派閥だけだ。派閥の視点から見れば、競技会やランキングで名誉を守るという建前(上位の報酬が何なのか俺にはまだ分からないが)を除けば、平和と静寂が支配し、犠牲者は最小限だ。ただ、俺は――彼じゃない。
ワイとキューはフレムテックについて新しい情報を提供してくれなかった。
「問題があるんだ。あたしたちが下級クローンだからさ」ワイが二人を代表して言った。「誰もあたしたちにそんな情報へのアクセスなんてくれないから、教えてあげたくても何も知らないんだよね……」
彼女は明らかに落ち込んでいた。思うに、ここに来てから何一つまともなことをしていないからだろう。キューには趣味があったし、母親にもなった。まあ、役立たずではあるが、父親と同じようにな。一方ワイは、前回の襲撃以来一度もメックの操縦席に座っていない。ただ日々を無為に過ごしているだけだ。彼女たちの価値観を考えると、このせいで俺が「交配」をさらに先延ばしにすると思っているんだろう。
シャドマーについての話には驚いていたが、ステラにどう対処したかについてはあまり詳しく話さなかった。誇れることじゃないからな。その後の話はみんな熱心に聞いていた。特にケルは、俺がレギと結婚したという話になると真剣だった。
他の女の子たちはかなり冷静に反応した。まあ当然だ。今ここにいるのは彼女たちで、その娘ははるか遠くにいるんだからな。
従者の試練について部分的に話しながら、俺は分かったことを頭の中で反芻した。他の大陸のことが頭から離れない。なぜ俺はここにいるんだ? あっちではどんな生活が営まれているんだろう? それとも全部同じで、向こうと比べたら俺たちは砂場で木の剣を振り回しているだけなのか?
話を終えると、俺は明日の準備を少ししようと思った。だが、上の階へ上がろうとしたとき、クリオシタが追いかけてきた。
「ねえニコ、すごくいろんなこと話してくれたじゃない。あたしもお返ししなきゃね」少女は顎に指を当てて明るく言った。
「もう話し合っただろ、俺には結婚が必要なんだ。お前は同意するか?」
あまりロマンチックじゃないが、彼女も評価しないだろうことは明らかだ。
首を傾げて、彼女は答えた。
「ねえ、ニコ。私たちの体の唾液交換を感じてみたいし、私の粘膜での摩擦も体験したいから、イエス。やったー、セックスだ!」
彼女が固まったところを見ると、まだ何かあるらしい。躊躇いながら、列挙されたすべてのことへの好奇心に駆られて、彼女は不安そうに言った。
「ただ、リビがまだ落下から立ち直ってなくて、彼女なしでは最終的な返事ができないの。ごめんね」
「ああ、大丈夫、気にすんな。ゆっくり落ち着いてくれ」
俺は繋がりを確認した。彼女の役割もまだ現れていない。どうやら人格の不完全さのせいらしい。実際、とても残念だ。戦闘前に新しいロートクを設置して、もう一つの心臓を使って繋がりを強化したかったんだが。ステラを呼ぶか? でも結婚式が早いか簡単かは分からないし、基地でイカれたテレパスの監視をする羽目になるだけかもしれない。
上階に駆け上がって、俺はフロルガの結婚指輪にヘルパーの石材を入れた。帰還の石材……重要なアイテムだ。タイガーのブレスレットに入れよう。石材を押すと帰還用のチェックポイントを作成するボタンが現れた。ここが一番いいかもしれないな? 必要なら移動させよう。
外に出ると、夜の冷気に身を縮めたが、すぐに中央ターミナルまで駆け出し、錬金術の石材と建設加速の石材を放り込んだ。木を金とクリスタリットに交換してから、空いている区画へと向かった。おっと。ゴリアテ像じゃないか、しかも建設は無料で、時間だけが必要、丸一日。うーん。やはり鍛冶場を加速して、新しいランク4モデルの製作に取り掛かる方が良さそうだ。明日、そんな力が必要にならないことを祈るが。
像を発注してから、高品質鋼300、加工石材400、道具100、クリスタリット100を支払って希少金属の鍛冶場を建て、加速ボタンを押した。
ナノロボットが目の前で慌ただしく動き出し、ほんの数瞬で建物を建て上げた。よし、これで戻って新モデルを試し、それから仲間たちのもアップグレードできるな。
もう女の子たちが散った後の死すべき者の館まで走り戻り、俺は上の階へ上がった。
新しいヘルパー、いやヘルパーさんか。石材の説明文の一つが気になって仕方なかった。契約による生命力補充。扉を閉めてから、俺は指輪を回した。
目の前に、巨大な革の翼を持つ生き物が現れた。翼の下部には無数の穴が開いている。おそらく、かなり痩せた男だろう。貴族風の服を着て、豪華なジャボをつけている。コウモリのような長くて大きな耳、赤く光る小さな目が、じっと俺を観察している。手の指は不自然な色をしていて、やけに長く、先端には鉤爪のような爪がついていた。
ギル・ド・レマン――もしそう呼んだのが正しいなら――長い牙を剥き出しにして、天井近くの空中でホバリングしながら、芝居がかった仕草で胸に手を当てて一礼し、しゃがれ声で言った。
「死すべき者様、このような光栄、まことに恐縮至極でございます。つまらぬギルが、どのようにお役に立てますでしょうか?」
「俺が興味あるのは契約だ」
ギルは頬を両手で押さえながら大笑いした。
「ああ、素晴らしい、あなたが気に入りましたよ! こんなに真っ直ぐな男、自分の欲しいものを分かっている、実に素晴らしい!」
俺は黙って「賛辞」を聞き、続きを待った。
「さて、契約契約と。そうですね、状況を考慮して、こんな感じでどうでしょう――あなたが私に取るに足らない人間を一人くれる、私がそいつをガブリ! そしてあなたには二年分の命を差し上げます、あなたの本物の、若々しい、発見と信じられないような性的冒険に満ちた人生をね! 毎日こんな感じで」
ギルは期待するような目で俺を見た。
「お前が必要なのは繋がりで縛られた人間か、それとも敵でもいいのか?」
契約が近づいているのを感じて、ギルは焦れったそうに翼を震わせた。
「もちろんだよ、友よ、繋がりの下でね。食べ頃の人間たちを、いつでも使える状態で用意してあげるよ!」
まあ、一方では、捕虜を殺すという発想自体が俺には気に食わなかった。俺は言い訳を探している。ケルや他の奴らが、俺が命令しなくてもどうせ殺しただろう、みたいな。でもそんなのは弱い慰めだ。結局のところ、全員を救うことはできないという現実を受け入れるべきなんだろう。そして、俺の大切な仲間たちと一緒にいたいなら、あらゆる機会を利用すべきなんだ。
天井でよだれを垂らしている生き物を見上げて、俺は言った。
「了承した」
「素晴らしい、実に素晴らしいよ、友よ! 協力するなら、僕も繋がりで契約しなきゃね」と、天井に寝そべったまま、ヘルパーが嬉しそうに声を上げた。
「そうなのか? ヘルパーも契約できるのか?」
ギルが俺のところへ飛んできて、手をじっと見つめた。匂いを嗅いでから、こう言った。
「イビスとアイヴィか。永遠の秘密主義者と商売人、教えてくれなかったのも無理はないね! でももう彼女たちを問い詰められるよ、逃げられないからね!」ギルは笑い声を上げると、鉤爪のついた大きな手を俺に差し出した。
俺はチップを押し当ててみた。すると、ちゃんと作動した。
「市民ステータス:+1(167)」
目を細めて、俺はステータスを確認した。
「繋がり:市民の統計情報。
名前:ギル・ド・レマン。
種族:ヴァンパイア。
年齢:45(2150)。
役割:神々の交換執行者
兵科モデル:マツェッロ一族の上級ヴァンパイア。
婚姻状況:既婚
派閥:ダークアルヴァー(セクンダ大陸)、アルヴァー(プリマ大陸)」
◇◇◇
ラミが最初に目を覚ました。寒さのせいか、それともアキルズより少ししか雑炊を食べなかったせいか。周囲を見回すと、どこかの納屋の中にいるようだった。暗くて、湿気とカビの臭いがする。だが最悪なのは、自分が全裸だということだ。けれど感覚から察するに、何もされていないようで、少しだけ安心した。
扉の向こうから声が聞こえてきた。どちらも男の声だ。
「ほらほら、ビビるなって。指輪、明らかに高そうだろ!」
「お前、宝飾品の専門家かよ? 見た目は――クソみたいに、ただの鉄くずだぜ」
「おいおい、頼むよ。あんな美人連れてる奴が、ガラクタなんて身に着けるわけないだろ。絶対何か価値があるって」
二人目が躊躇し、ぐずぐずと言い訳を始めた。
「いや、でも指を切るってのは……さすがにやり過ぎじゃねえか」
殴る音が響き、扉が開いた。納屋に二人の男が入ってきた。ラミは目を細め、通りを松明を持った誰かが通り過ぎたのを利用して、気づかれないように周囲を確認しようとした。いた! 少年は近くに横たわっていた。無防備で、服を剥ぎ取られて。
誘拐犯の一人がアキルズに近づき、その手を取った。微かな光の中で兵科モデルの指輪が光った。まさかこの馬鹿どもは、これが外れないことを知らないのか!?
狼娘は自分の正体がばれないよう、必死に耳と尻尾を抑えようとした。二人目の誘拐犯がナイフを取り出し、どんな代償を払ってでも指輪を外すという明確な意図を持って少年に近づいた。
少女は慎重に両手を動かし始め、明らかに以前より力が強くなっていることに気づいた。これも全部死すべき者のせいなんだろう? ロープが緩み始め、クズどもの一人がもう少年に手を伸ばそうとした瞬間、少女はバキッという音とともにロープを引き千切り、吠え声を上げながら襲撃者に飛びかかり、伸びた牙でナイフを持つ腕に噛みついた。
「この牙持ちのクソ女が!」と外道が叫び、空いた手で少女を殴ろうとしたが、ラミはすでに誘拐犯を投げ飛ばし、壁に叩きつけていた。素早く自分の指輪を探し当て、石材を回すと、再び白い衣服を身にまとった。
二人目の誘拐犯は驚きで口を開けたが、やがて先に殺してから考えた方がいいと判断したのか、短剣を握りしめて少女に突進してきた。
少女の周りで砂が渦を巻き、その身体を包み込んだ。武器は無意味に砂の層に突き刺さり、何のダメージも与えずに弾き返された。ラミは襲撃者を憎々しげに睨みつけ、両腕を振るった。大きな砂の筋が空中に舞い上がり、呆然とした大男に向かって飛んでいき、その目に砂を浴びせかけ、さらに口と鼻に入り込んでいった。
「やめ、ぐふっ、うぇっ」敵は叫ぼうとしたが、砂はどんどん増えていき、息をさせてくれない。よろめいて、誘拐犯は倒れ、咳き込み始めたが、やがて顔を青くして動かなくなった。
剣を抜いた少女は、意識を取り戻しかけていたもう一人に飛びかかり、その喉を掻き切った。
息を整えた皇女はアキルズに近づき、彼を調べた。どうやら眠っている間に殴られたようだが、睡眠薬のせいで目を覚ますことができなかったらしい。
少女は膝をつき、擦り傷に触れないよう気をつけながら、優しく彼の頬を撫でた。少女の視線が彼の筋肉質な身体を滑り、そしてそれだけでは済まなかった――彼は完全に裸だったのだ。顔を赤らめながら、ラミは彼の手を探り当て、指輪を回してアキルズに服を戻してやった。
そうして彼が目を覚ますまで、彼の頭を抱きかかえたまま座り続けた。
◇◇◇
現在の残存寿命――51+(167)。能力発動用ボーナス年数:66(6)(係数0.4)(捕虜――8)




