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第七十二章 ゴーストヴィル

一時間かそこらで、俺たちはほぼ街に近づいた。いや、街って言うのはちょっと大げさだな。町って感じだ。一見するとロートクより大きく見えるが、実際には建物が密集してないだけで、そう見えるだけだ。


町の周りには薄っぺらい石壁があって、その上に弓兵が何人か配置されている。どうやら兵力の大半は砦にいるらしい。ちなみにその砦は、丘の上にあるおかげでここからもよく見える。まあ、砦って呼ぶのもどうかと思うが。どっちかというと、やたらでかい石の塔って感じだな。いずれにせよ、ゆっくり歩いても二十分ってところだから、何かあれば援軍はすぐ来る。守備が薄いって話だったが、できればそんな事態は避けたいもんだ。


見張りは俺たちが誰なのか気づいたらしく、ざわつき始めた。門まで百メートルってところで、何人かの兵士が出迎えに来た。


中央を歩いてきたのは四十歳くらいの男で、小ぶりで整った顎鬚を生やしている。顔中の傷跡が、歴戦の戦士であることを物語っていた。銀色に輝く重装鎧を身に纏い、背中にはかなり大きめの盾が見える。腰には宝石で飾られた鞘に収まった長剣。兜を肘の内側に抱えながら、見知らぬその男は急いで、しかし堂々とこちらに近づいてくる。困ったことに、あの装備がどんなモデルなのか俺には判別できないが、明らかにランク3以上だ。


彼の両脇には二人の近衛兵、少し後ろには速射武器を構えた弩兵たち。行列の最後尾には粗末なローブを纏った二人の魔術師――おそらく弟子だろう。


さて、ここが分岐点だ。ポータルが広く使われているこの世界なら、女王が徒歩で乗り込んできても驚かれないはずだと願いたい。


男はロランから数歩離れた位置に立ち止まった。彼の従者たちは一斉に片膝をつき、恭しく目を伏せる。だがリーダー本人は深々と頭を下げただけで、視線を地面に落としながら大きく明瞭な声で告げた。


「お帰りなさいませ、女王陛下!」


沈黙が降りた。俺は慎重にロランを一瞥すると、彼女がかすかに震えているのが見えた。そっと脇腹を小突いて、クリオシタを呆然状態から引き戻す。


女王は出迎えの者たちを蔑むような目で見下ろし、歯を食いしばったまま吐き捨てた。


「貴様ら、忠誠が足りぬか? もっと低く頭を下げよ」


何を言ってるんだこいつは?


どうやら、これが初めてではないらしい。護衛たちは慌てて両膝をつき、額を地面に押し付けた。リーダーだけは片膝をついたものの、女王を見上げる勇気はなかったようだ。


「ロラン」は指を顎に当てて考え込んでしまったので、俺はまた脇腹を小突いてやった。何かを思い出したように、彼女は前に出て、下品に腰を揺らしながら歩いていく。リーダーの前で立ち止まると、足を上げて彼の膝の上に置いた。どうやら覚悟していたらしく、男は熱心にブーツに口づけし始めた。


「そうよ、分かってるじゃない」満足げな声でロランが言い、臣下から足を引っ込めた。「五分以内に私の居室を用意しなさい」


慌てて頷くと、迎えの者たちはリーダーを除いて急いで戻っていった。俺はその間、クリオシタに一発ぶん殴ってやりたい衝動を必死に抑えていた。自分から頼んだくせにな。まさかあのエルフがこんなにも性悪だとは誰が知ってただろうか。


俺たちはゆっくりと街の方へ歩き始めた。リーダーは女王の近くに、俺は反対側に位置取った。他の連中は少し離れたところだ。


「恐れながら、今回の軍事作戦も相変わらず大成功だったのでは、と推察いたしますが、陛下?」同行者が嬉しそうで媚びへつらった声で尋ねた。


クリオシタはただ視線で男を値踏みし、鼻を鳴らした。


「お前の質問で私を煩わせるな、ローランド。疲れているのだ」


男は慌てて頭を下げ、怯えた様子でまくし立てた。


「もちろんでございます、陛下、お許しください!」


クリオシタは疑問の眼差しを俺に向け、俺は会話に加わった。


「どんな件でも俺を通してくれ」


ローランドは驚いたように俺を見つめた。まるで今初めて見たかのように。それから視線を女王に移すと、彼女は頷いた。何か言おうとしたところで、俺は首を横に振り、指を唇に当てた。目立たないように顎でロランを示す。ローランドは納得したように頷いて、落ち着いたようだった。


ゴーストヴィルに入った。きちんと敷かれた石畳の道が、どうやら中央通りを貫いているらしい。脇道は普通に泥だらけだった。


小さな家が立ち並んでいる。二階建ても多い。ほとんどが木造で、ここはロートクみたいに画一的に作ろうとはしていないようだ。看板を見る限り、交易所と道具工房があった。鍛冶屋も射撃職人の工房も、他の専門店もない。どうやらこんな小さな集落じゃ、装備を自前で作るのは難しすぎるらしい。おそらく首都から運んでくるんだろう。じゃあここでは何をやってるんだ、ただの資源採掘か?


残りの看板は色んな飲み屋のものだった。そういえばロートクには今も酒を造る建物がない。ファリンとゲフールが買ってきた在庫で食いつないでる。


全体的に、建物は新しく見えなかった。薄暗くて、くたびれている。人々からも同じ印象を受けた。窓や戸口、あるいは路地からこちらを警戒するように覗いている。ラヴクラフトのあの町、インスマスだったか……あそこと同じ陰鬱な雰囲気だと思う。ここで夜を過ごさなくて良かったよ。


無言の行列を成して、俺たちは街で唯一の三階建ての建物まで歩いた。以前見た旗がはためいている。ローランドが中へ駆け込むと、大きくて聞き取れない声が響いてきた。それから案内人が戻ってきて、俺たちの前で扉を開けた。


とはいえ、中に入ったのは俺とロランだけだった。他の連中は横の入り口へ連れて行かれたようだ――聞こえた範囲ではそうだった。デリオが慌てずにみんなをまとめてくれるといいんだが。


まあ、ここは確かにきちんと片付いていた。床には高価な絨毯が敷かれ、壁にはタペストリーや毛皮が飾られている。センスはちょっと微妙だが、まあどうでもいい。


女王は自室に案内され、料理が山盛りになった大きなトレイも一緒に運ばれていった。ローランドは俺を食堂へと案内し、そこですぐに豪華な昼食が用意された。甘酸っぱいソースのかかった柔らかい肉、フルーツの盛り合わせ、ピリ辛ドレッシングのサラダが二種類。そこで俺は朝食を食べてなかったことを思い出し、喜んで食事に取りかかった。ローランドは控えめに食べていた。どうやら付き合いで食べているだけらしい。全身から「早く食べ終わって話してくれ」というオーラが溢れ出ていたが、それでも自分から話を切り出す勇気はなかったようだ。


二品ほど平らげたところで、俺は口を拭いて言った。


「ああ、全部うまくいったよ。これでロートクがもう一つ増えた」


わざとらしく喜んだ様子を見せたローランドは、俺を見つめて何か続きを待っていたが、俺が黙り込んだのを見て、ついに決心したようだ。


「すみません、お名前を聞き逃してしまいまして……」


見た目はリンゴで味はキュウリみたいな何かをかじりながら、俺は答えた。


「言ってないからな。ニコだ。女王の側近だ」


もちろん、リスクはあった。そんな役職が本当にあるとは思えない。でも、このバカ女の頭に何が浮かんだっていいじゃないか、ってことにしておこう。


「はあ……よろしくお願いします。何か指示はありますか?」


「街の現状、物資と要塞守備隊の状況が知りたい。明後日、攻撃がある。防衛戦になるから、戦力の再配置が必要になるだろう」


どうやら、攻撃の話はローランドの気に入らなかったらしい。こんなに臆病者なのに、どこで傷跡を稼いだんだ? ヒゲを剃るときにでも切ったのか。


「しかし、王が……」


「待て!」男のぶつぶつ言うのに、俺はきっぱりと応じた。「王は遠くにいる。女王はここにいる。現状を一番よく知っているのは彼女だ。それに、戦士たちはついにテクガンを打ち破って名を上げたくないのか?」


心の奥底で、ローランドの古い武人の誇りの弦が少し触れられたようだったが、その揺らぎはすぐに恐怖の圧力の下で消えていった。彼は生唾を飲み込んだが、頷いた。


「状況を確認します。現在の守備隊は、30人間。ランク4が3名、ランク3が23名、ランク2が4名です」


「よし」


思ったより弱くないな。てっきり戦闘員ばかりだと思ってたんだが。でも数は確かに少ないな。


それから俺たちは黙って食事を続けた。ローランドが意を決してもう一度俺に尋ねてくるまで。


「でも、俺たち全員が防衛に行ったら、町の人たちを『スティレット』から守る者がいなくなります」


彼がそう言うってことは、これは明白な事実なんだろう。誰なのか聞かないでおくことにした。


「問題ない。君たちの助けは必要ないかもしれない。重要なのは資源と手の空いてる作業員だ。だが、状況が悪化した時に備えて、俺は軍の様子を直接確認しておきたいんだ」


「はい、もちろんです!」ローランドははっきりと答えた。バギーの車輪の下に飛び込むより、暖かい場所でじっとしていられる可能性に喜んでいるようだった。


俺が食べ終わるまでに、相手はどこかへ走って行った。地位やその他について指示を出しに行ったんだろう。そして戻ってくると、俺たちは一緒に町の出口へ、要塞の方角へと歩き出した。


外に出ると、斧を打ち込む音が聞こえた。興味本位で普通の集落での木材調達がどう進んでいるか見てみようと思い、俺は固まった。木を切っていたのは骸骨だった。真っ白な骨を器用に操りながら、数回の打撃で幹を切り倒すと、倒れた木を拾い上げて製材所へと運んでいく。


ローランドが俺を不思議そうに見た。


「あ、ただこういう光景にどうしても慣れなくてさ」と俺は答えることにした。少しでも立ち止まった言い訳をしようと。


「確かに、頻繁に見ないなら変わった光景ですね」同行者は苦笑して、先へ進んだ。


砦の周りには小さいが高い柵があり、中庭を囲んでいた。その中庭には大量の訓練用マネキンが並べられている。砦自体は大きさとしては小さく、実質的には村のセンターより大きくない程度だが、高さは三十メートルほどに達していた。射手から守られた複雑な階段システムが、多数の扉へと続いている。


もっとも、そこを歩き回る必要はなかった。全軍がすでに整列していて、マネキンを隅に押しやっていた。


ランク4にはブレードダンサーが二人。このランクのランク3がローランドらしい。


「一人一人と話がしたい。変革が迫っている以上、俺は人間が信頼できるかどうか確信を持っていなきゃならない」


「お望み通りに」ローランドは少し驚いた様子で答えた。


その後は面倒な作業が続いた。一人一人と握手をしながら、俺は遠回しに自分の陣営に加わるよう勧めていった。うまくいく相手もいれば、そうでない相手もいた。だがいずれにせよかなりの時間を費やしたものの、おかげで今は+25になった。


あと四人は街に残った弓兵たちだ。それとローランド本人とも話をつけた。信頼を込めて手を取りながらな。


パラディン、ランク4。その派手な肩書きの割には臆病者だ。


守備隊との交渉を済ませ、俺たちは戻った。するとほぼ同時に若い男が駆け寄ってきて、ローランドに何か耳打ちした。


「身分の件は全て準備が整いました、ニコ。今すぐ行きますか、それとも弓兵たちと話をしますか?」


連中は待たせておけばいいだろう、先に残りの用を片付けた方がいい。今度は別の通りを進み、この街で二番目に高そうな建物の前に出た。


だが中に入ってみると、期待外れだった。家の中はかなり質素な作りで、掃除も明らかに滅多にしていない様子だ。そんなことは気にも留めず、ローランドは俺を二階へと案内し、革張りの扉をノックした。


「お入りなさい!」と、しわがれた老人の声が響いた。


ローランドは俺に先へ行くよう身振りで促すと、ドアを少し開けて自分は外に残った。


中は窓のカーテンが引かれていて薄暗く、白髪のエルフが赤い瞳で立っていた。あの声からすると意外だが、見た目は俺と変わらないくらい若い。


エルフは咳払いをして机から立ち上がり、俺をじっと見つめた後、怒鳴った。


「一体、娘に何をした?! 帰ってきたのに、なぜ私のところへ挨拶に来ないんだ?」


◇◇◇


「さあさあ、お金には未練を持たないでくださいね!」ケイトが陽気な声で言いながら、金貨の山をかき集めた。


一緒にカードゲームをしていたテクガンの連中が不満そうにうめいたが、ポケットを探って次の金貨を取り出した。


青髪の少女は爪楊枝を口の端から端へ転がしながら素早く金を数え、マントのポケットに流し込んだ。


「ケイティー、なあケイティー」その場にいた一人が大声で彼女を呼んだ。


不機嫌そうに顔をしかめて、ケイトは視線で話しかけてきた男を探し出し、顎をしゃくって続けろと促した。


「いつまでここで尻を温めてるつもりだ? こんな状況なら15日目に戻った方がマシだぜ」


何人かが賛成するように頷き、残りも小声で同調した。


「ジョニーは俺たちを放ったらかしで、あの遅れてる狐と遊んでやがる」別の声が聞こえた。


ケイトは目を細めて話していた男を睨み、電光石火の動きでナイフを投げつけた。モヒカンの髪が一筋削られた。


「おい、何しやがんだ、このアマ?」テクガンの男は台無しになった髪型を触りながら憤慨した。仲間たちはさっさと距離を取った。


さらに眉をひそめて、ケイトはテーブルに飛び乗り、その上を駆け抜けて飛び降りると、男のすぐそばに立ち、顎に銃口を突きつけた。テクガンの男の目を見つめながら、ケイトは甘ったるい声で話し始めた。


「なあ、あたしはお前を撃ち殺すことができる。ただパパが優しすぎて、お前を蘇らせちゃうんだよね。翌日また同じことを繰り返して、その次も、そして一、二ヶ月もすればどの死に方が一番面白かったか、アルヴァーについて悪く言わない方がいい理由を語ってくれるわけ。分かった?」


モヒカン野郎は頷こうとしたが、銃口に押し付けられていて、かろうじて聞こえる程度の声で謝罪をささやくしかできなかった。


微笑んで、少女は銃をしまい、尋ねた。


「で、ここじゃみんな怠けて暇を持て余してるってわけ?」


ばらばらの同意の声が聞こえた。にやりとして、ケイトはマントを翻して司令部を出て、バンカーへと向かった。死すべき者の館に移動すると、エンディスが子供たちと一緒にいるのを見つけた。


可愛らしく微笑んで、ケイトはエルフの女性に駆け寄り、頬にキスをすると、子供たちを見た。


「わあ、ついにパパがテクガンの人口を増やしたんだね。エンディス、随分引っ張ったじゃん、体見せりゃ一発だったのに」


エルフの女性は顔を赤らめて憤然と言い始めた。


「ケイト、あんたそんな下品な言葉遣い、誰から覚えたの!? ジェシーはそんなこと教えてないわよ!」


クスッと笑って、彼女はエンディスの髪を撫でた。


「まあいいじゃん。あたしを教育してくれたのはあんただけだよ。他の連中は誰も気にしちゃいなかった」


エンディスは首を横に振り、断固として否定した。


「違うわ、前にも言ったでしょ。ニコはいい人よ。自分の子供たち全員を愛してる。ただ、私たちの生活を少しでも安全にしようとして、いつも時間がないだけなの。チャンスをあげてよ」


唇を引き結んで、ケイトは顔を背け、どこか別の方向に向かって言った。


「ふーん。猫ちゃんたちってどこにいるの?」


ケイトが初めて姉妹たちと交流しようと決めたことに少し驚いて、エンディスは一瞬固まったが、すぐに答えた。


「ああ、キャンプで訓練してるんじゃないかな」


お礼を言って、彼女は早足でキャンプまで辿り着いた。クリスティーナがこちらに気づくのを待ってから、ケイトはゴーレムたちを警戒しながら近づいた。


「やっほー、クリスティーナ」


「あ、ケイトちゃん、にゃあ!?」半分驚いて、半分嬉しそうに猫娘が答えた。


一瞬ためらってから、彼女は勢いよく言った。


「建物の建て方、教えて」


◇◇◇


現在の残存寿命――16+(155)。能力発動用ボーナス年数:62(36)(係数0.4)(捕虜――13)

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