第六十五章 夜の厄介事
着替えを済ませると、俺とエンディスは屋敷に戻った。妻たちか子供たちの誰かをランクアップに送ろうかと思ったが、アキルズの頼みを思い出して、彼と妹に任せることにした。まあ、もちろん、まだ一枠空いてはいたんだが……うーん。
客室を覗くと、ラズはまだ起きていた。
「邪魔したか?」
「ああ、いや、ただ精神リンクの残響に耳を傾けてたの。なかなか面白いわ、ちゃんとは何も聞き取れないけどね」と、ベッドに横になって天井を眺めながら、彼女は話してくれた。「パパ、何か用?」
「ああ、ソフィアとアキルズを手伝ってやってくれないかと思ってな。二人とも今夜は集中的に勉強するつもりらしい。それに、ついでにお前もランクを上げられるし」
微笑んで、リカは頷いた。
「わかった、それじゃあ仕方ないわね。二人を見守ってあげる」
微笑んで、俺はただこう答えた。
「ありがとう!おやすみ」
「おやすみ、パパ」
ああ、すぐに察したな。まあいい、早く寝れば早く残りの問題も片付けられる。ああ、くそ、旅の娘のことを忘れてた。
地下室まで走って戻り、俺はフレムテックの基地に転移した。彼女はまだ意識を取り戻していなかった。慎重に彼女を腕に抱き上げ、転送装置まで運んでから、リビングのソファに寝かせた。
「にゃ!娘を気絶させちゃったんだ?」背後から眠そうな声が聞こえた。「あれ、羽があるの?」
セフィーナはソファに駆け寄ると、眠気も忘れて見知らぬ娘をじっくり観察し始めた。それから俺の方に振り返り、目を細めてにやりと笑った。
「ねえニコ、何人妻を娶るつもりなの?」
いい質問だな。本当は派閥ごとに一人ずつで十分だと思ってたんだ、基地の発展に必要だからってだけで。でも、アンネリ、フロルガ、エンディスはその枠から外れちまった。まあ、エンディスには強力な兵科モデルがいるはずだし、アンネリは管理職だから別枠ってことなんだろう。ワイに至っては言うまでもない、あいつは勝手にやってるし俺に聞いてもこなかった。まあ、いくらでも理屈をつけられるけど、要するに可愛い子たちだってのも大きいんだよな。
結局、俺はただ間抜けな笑みを浮かべて後頭部を掻いた。
「ん~、わかったにゃ。でも、あたしがいつでも一番だよね、にゃ?」
セフィーナが近づいてきて、唇にちゅっとキスをした。
「じゃあ、新入りの子を見ててくれるか?」少女が帰ろうとした時、何気なく聞いてみた。
嫁さんの耳がピクリと動いた。それまでぶらぶらしていた尻尾が止まった。
「えっと、まあ、うん、もちろんにゃ」セフィーナはエルフの娘をちらちら見ながら、やや自信なさげに言った。
かなり卑怯なやり方だし、計画してたわけでもないんだが、まあ、目を覚ました時にあの子がセフィーナの監視下にいるようにしとこう。
「ありがとう、お日様!おやすみなさい」
「うん、にゃあ……」セフィーナが近くの椅子にどさっと座ると、長く悲しげな鳴き声が聞こえた。
励ますように微笑んで、俺は寝室に向かい、かなり早く眠りについた。
◇◇◇
「ソフィア、ちょっと、居眠りしてるの?約束したじゃないか!」明らかに不満そうなアキルズが、枕にしがみついている妹を揺さぶった。
「うん、お兄ちゃん、すぐ行くから……」
「じゃあパジャマのまま外に連れて行くぞ!」男は意地悪く微笑みながら宣言した。
悲鳴を上げて、ソフィアは急いで支度を始め、もう数分後には兄の前に服を着て立ち、ぼさぼさの髪を整えようとしていた。
不満げなぶつぶつ言いを無視して、アキルズは妹の手を掴み、中央ターミナルへと引っ張っていった。かなり暗かったが、「魔法の本」の柔らかな輝きが、遠くから猫耳の暗いシルエットを照らし出した。その手には尻尾が握られていた。
「クリスティーナ、よう」と、陽気に手を振りながら男が言った。
「ふう、遅かったわね。早くして、すごく疲れてるんだから……」猫耳娘がそう告げると、あくびが止まらない。尻尾をぎゅっと握りしめることで、何とか居眠りしないように耐えていた。
認証のあれこれを済ませると、クリスティーナは男がページをめくって必要な項目を選んでいくのを見守った。
「アキルズ、新たなランクなし兵科モデルが利用可能:(???)開放には『剣士』系統でランク2の取得が必要」
「ソフィア、新たなランクなし兵科モデルが利用可能:(???)開放には『魔術師』系統でランク2の取得が必要」
「あとは自分たちでやってにゃ、いい?」クリスティーナは否定的な返事を期待せずそう告げると、手を振って中央センターの方へ向かった。
姉に礼を言うと、男と女は屋敷へ向かった。ソファで横になっている見知らぬ女や、肘掛け椅子で気持ちよさそうに眠るセフィーナに少し驚きながらも、兄と妹はできるだけ静かに階段を上がり、誰も起こさないようにした。
「やっほー!」すでに椅子を引っ張ってきていたラズが、明るく二人に声をかけた。
「あ、えーと、やあ、リカ。こんなところで何してるんだ?」
ラズは獰猛な笑みを浮かべ、鋭い爪を生やした両手をアキルズに向かって伸ばした。
「真夜中を過ぎると、いつも誰かを……喰いたくなるのよね!」
ソフィアが悲鳴を上げ、アキルズは顔を青ざめさせて一歩後ずさった。
自分が起こした効果を満喫しながら、ラズは静かにくすくすと笑い始めた。
落ち着きを取り戻したソフィアが兄の背中を小突くと、彼は肩をすくめた。その間にリカは悪ふざけをやめて言った。
「成人おめでとう! さあ、こっちに来なさい」
猫娘の姉妹の後、ラズはいつもの手つきでランク1への昇格を起動させた。それから2ランクまで上げ、今回は父親に頼まれていたので、そのまま傍で眠りについた。
四時間半後、仲間たちが訓練を終えると、アキルズはラズを起こした。
彼を変換装置へと案内しながら、少女はどのランクが必要か確認した。
戦士+剣士、金貨125枚。
アップグレードが完了すると、機械音声が告げた。
「変換完了。アキルズ、ランクなし兵科モデル――フェイズランナーが利用可能。クリスタリット25」
この変換も終えると、アキルズは抵抗する妹を急いで装置の中へ押し込もうとした。
ところが、彼女は今のところ何もできないことが判明した。ランク3が必要だったのだ。
がっかりしたアキルズは、ソフィアをランク3へのアップグレードに送り出し、自分は再び変換装置へと戻った。
「変換完了。ランクなし兵科モデル2:フェイズランナーを選択? クリスタリット75」
確認すると、彼は結果がどうなるのか待ちきれない様子だった。
「変換完了。フェイズリングを受け取れ。新たな発展ラインが開放された:アキルズの兵科モデル――フェイズハンター クリスタライト150、クリスタリット25」
唇を噛んで、アキルズは高すぎないかと考えた。だが、一方でソフィアにはまだ何も使ってない。つまり、試してみる価値はあるってことだ。
ラズがまた舟を漕ぎ始めた頃、彼は変換を終えてメッセージを受け取った。「最大兵科モデル。これ以上の発展は不可能」
リングを回すと、彼は軽装の鎧に包まれた。胸当て、籠手、脛当てで構成され、武器は小さく煌めく三角形のダガー。集中して、彼はラズの方へ一歩踏み出した――そして突然、彼女の背後に現れた。肩への予期せぬ接触に、少女はビクッと震えて素早く振り返り、残っていた眠気を吹き飛ばした。
「ふぅ、そんなことしないでよ!」ラズは不満そうに呟き、爪の間に灯りかけていた炎を消した。
「お互い様だろ、1対1だ」ニヤリと笑って、彼は煌めく刃を眺めながら言った。
ラズは伸びをして、兄の言葉を手で払いのけると、急いでこう言った。
「はいはい、分かった。もう解散していい?」
「お前を訓練に入れる必要がないなら、な」
あとどれくらい寝られるか頭の中で計算して、ラズは後回しにすることに決めた。何も言わずに、もう一度手を振ると階下へ向かい、疲れた様子で尻尾を引きずっていった。男はその後に続いた。
数段降りたところで、アキルズは顔をしかめて心配そうに言った。
「変だな、うちで誰か音楽やってたっけ」
ラズは振り返って兄を見た。彼は緊張した様子で耳を澄ませていた。
「音楽? 本気で言ってんの?」
「お前、聞こえてないのか?」アキルズはイライラした様子で、質問に質問で返した。
男が本気だと見て取ったラズは、急いで階下へ降りた。静寂。外へ飛び出したが、何も見つからず、何も聞こえなかった。
イライラと疲労を募らせたラズは屋敷に戻り、どこにも男の姿が見えなかったため、結局くだらない冗談だったのだと判断した。
ベッドにどすんと腰を下ろしたラズは、近くに横たわるケルを見た。スコーピオンの彼女はとっくに夢の中だろう。穏やかな寝息を立てる恐るべき母親を眺めながら、ラズもとにかく眠ろうと決めた。
突然、扉が勢いよく開く音がした。リビングで慌ただしく、かなり大きな足音。それから階段を上る音。
何事かと分からないまま、ラズは立ち上がってドアへ向かったが、その前に扉が開け放たれた。見たこともない二人の剣士が部屋に飛び込んできた。剣の鋭い突きから飛びのいたラズは横に跳び、手に炎を灯した。火球が最も近い男の顔面に飛び、皮膚を肉まで焼いた。部屋中に吐き気を催す焦げた臭いが広がり、激痛の叫び声がケルを目覚めさせた。
二人目の剣士は躊躇せず、気を取られた少女に襲いかかり、腕に傷を負わせた。悲鳴を上げたリカは爪で薙ぎ払ったが、兵士は身をかがめ、もう一撃を繰り出そうとした瞬間――その頭がスコーピオンの毒針に貫かれた。
娘を確認し、傷が大したことないと判断したケルは、外へと飛び出した。
ラズは自分の体を確かめるのに少し手間取ったが、すぐに母親の後を追いかけた。そして母親が出口まで駆けつけたところで、誰もいないのに突然ふらついて倒れるのを目にした。
「音楽……」シャザの小さな声が聞こえた。
◇◇◇
殺されて目が覚めた。得体の知れない剣士ども、くそったれのランク2が、俺の家で暴れ回ってやがる。
寿命-1年、くそ野郎ども。
エリートヘビータクティカルナイト。マシンガンを引き抜いて引き金を握りしめ、貧弱な装甲が大口径弾に貫かれる光景を堪能した。近くの兵士が剣で俺を斬りつけようとしたが、装甲に傷をつけただけだった。
マシンガンでもう一人の客を撃ち続けながら、もう片方の手で剣を引き抜き、大振りで熱心な奴を巻き込んで首を刎ねた。
システム全体が復活の通知で溢れ返っている。それと、俺が発注していた強化の研究完了の通知も届いた。
そういや俺、復活の通知を時間的にどれだけ保持できるか確かめたことなかったな。まだ全員危険な状態なら、これじゃまた全員殺すのと同じじゃないか。
とりあえず気にしないでおこうと決めて、俺は隣に横たわっている死んだエンディスだけを蘇生させた。
理解できないといった様子で少女は俺を見たが、俺の戦闘装備を見て事態の深刻さを悟ると、すぐに集中した。ただ、彼女には装備がない。
少女の手を掴んで、俺は上へと駆け出した。階段でまた一人、剣士が飛び出してきた。唸り声を上げながら、俺はそいつの頭を撃ち抜き、通路の邪魔にならないよう足で死体を蹴飛ばした。
急いで少女を変換装置に押し込み、俺は「サイレントキラー」を選んだ。
「金貨75枚」
「よし!」
ふう、幸い子供たちは全部使い切ってなかったようだ。
寝台に駆け寄ると、ソフィアが訓練中だったが、無事だった。彼女に指輪がついていないのを確認して、俺はここに残していくことにした。
その間にエンディスは変換を終え、指輪を回すと迷彩姿になった。今や彼女の手にはサプレッサー付きのスナイパーライフルがあった。
「変換完了。エンディス、ランクなし兵科モデル――ゴースト戦士。高品質鋼100」
うーん、今時間を無駄にしていいのか?だが考えをまとめる間もなく、突然素晴らしい音楽が聞こえてきた。それはまるで俺の魂に染み込んでくるようで、すべてを忘れて聴き入らせようとしてきた。
俺とエンディスは顔を見合わせ、何も言わずに床に倒れ込んだ。信じられないほどの眠気に襲われたんだ。
◇◇◇
ラズが母親のところに駆け寄り、揺さぶり始めた。しぶしぶながら、シャザはようやく我に返り、怯えた様子で周囲を見回した。
「何なんだ、一体?」
「お母さん、音楽のこと何か言ってたでしょ!アキルズも消える前に音楽について話してた!」
頭を振ったケルが、突然何かに気づいたように笑みを浮かべた。
「ハッ、ドラコニドの耐性ってのはそういうことか……急いでニコのところに行け。ドラコニドになってもらえ。じゃないと、とんでもないことになるぞ」
よく理解できないまま、リカは言われた通り上の階へと駆け出した。ケルは自分のざわめく布から小さな切れ端を引きちぎると、耳に詰め込んだ。
◇◇◇
気がついたとき、俺はすでにドラコニドになっていて、どうしてそうなったのかよく分からなかった。まあ、ラズの姿を見れば、誰がやったのかは想像がついたが。エンディスも意識を取り戻し始めていた。
「早く、お父さん!ケルが言ってたの。そうすれば耐性で奴らを止められるって」娘が慌てた様子でまくし立てた。
ふむ、そういえば確かに、あれはシャドマーに対抗するオーラだったな。ってことは、アルヴァーも脳への干渉能力を持ってるってことか?
急いで階下へ降りると、ケルと合流した。ラズとエンディスも俺たちの後に続いた。
基地の中庭へ慎重に顔を出すと、敵がもう周辺を好き勝手に荒らし回っているのが見えた。幸い、ここにいるのは大半が低ランクの兵士だったが、それでも数はかなりいた。
居間に戻ると、俺は殺されたセフィーナを蘇生させ、手短に状況を説明した。音に警戒しなければならないと理解した彼女は、身を隠して鎧を召喚した。
アンジュヘルのエルフの娘も殺されたが、この状況で蘇生させるのは……味方と敵を間違えられたら困る。最後の手段として取っておこう。
窓際に陣取り、ラズのオーラに守られながら、エンディスは静かに敵を一人ずつ仕留めていった。
俺はケルと、通路をぶち抜いたセフィーナの鎧と共に中庭へと突入した。
爪の一閃、尾の一撃、鎧の豪快な突進――あっという間に道が少し開けた。
他の全ての拠点への襲撃の報告が入ってきた。くそったれめ!
だが、まずはここで演奏している奴を見つけなければ。
飛び上がって辺りを見渡すと、明らかに重要人物を囲んでいる人間の一団が見えた。
赤髪のエルフの女が、確かチェロだったか、それを夢中になって弾いている。彼女の周りには、見覚えのあるバランスの悪い体格の屈強な男たちが集まっていた。
ハイヴの守護者、安上がりで手荒い。寿命-3年。
巨大なムカデが音もなく地中から飛び出し、チェロ奏者を真っ二つに噛み切った。
筋肉ダルマどもが巨大な拳で虫を殴りつけ、キチンを凹ませていたが、俺はすでに近くに着地していて、テスラ歩兵銃を使い、異形どもに稲妻を浴びせた。あの巨体に似合わない甲高い悲鳴を上げて、戦士たちは震え、焦げた肉の悪臭を放ちながら地面に崩れ落ちた。
白い鳥の群れが俺に襲いかかってきた。鳩か?羽毛の化け物どもが俺にまとわりついてきた。何だこのクソったれ鳥どもは?!推力[→推力]を起動して図々しい獣どもを焼き払い、「罠」から抜け出すと稲妻を放った。チェーンはごく少数の標的にしか伝わらなかった。どうやら電気の力は一定で、少数の標的に制限されているらしい。つまり、この代物は大きいか強力な敵にしか効果がないってことだ。まあいい、俺はライフルを手に取り、増していく風切り音とともに化け物どもを撃ち砕き始めた。が、その群れから白髪で赤い目をした、重厚な黒と赤の鎧を纏ったエルフが俺に飛びかかってきた。
大剣を振りかざして、敵は俺の手袋を破損させたが、手までは届かなかった。歯を剥き出しにして、奴は言った。
「貴様は鳥の餌になるのだ、殺し屋め!」
大げさすぎるだろ。
思い出し、そして奴がもう引き下がらないと見て、俺は緑のポータルを召喚した。そこからイシラ、ユリウス、アイロールが現れた。ユリウスは騎兵ではあったが、新しい獣は手に入れていなかったため、槍だけを装備していた。
俺は「殺せ」と命じた。そして虚空から現れた黒い鳥たちが白い鳥を引き裂く光景を見て、心が温まった。
エルフの女の死体に駆け寄ると、俺はネクロマンサーに切り替えて、彼女に向かって塊を吐き出した。
少女は素直に立ち上がった。完璧に無傷で、まるでさっきムカデに食われたのが彼女じゃなかったみたいに。
「新たなアンデッド生成。
皇女リネル(5)。魅惑のチェロ(ランクなしモデル)。
残りスロット:0」
少女は俺を忠実な目で見つめると、俺の命令に頷いた。
「客人たちのために演奏してやれ」
◇◇◇
「現在の残存寿命――18+(113)。能力発動用ボーナス年数:45(42)(係数0.4)」




