第五十六章 猫の問題と帰還
ポータルから出てきたクリスティーナは足を滑らせ、尻もちをついた。すぐに針で刺されたように跳ね上がり、短いスカートの下から雪を払い落としながら、驚いた様子で辺りを見回した。
暗く鬱蒼とした針葉樹の森、力強い木々がまるで天空へと突き刺さるように聳え立ち、凍てついた地面へ差し込もうとする光の欠片すら遮っている。溶けかけの雪が輝く層となって覆う針葉、新鮮さと樹脂の心地よい香り。だが季節外れの服装のせいで、周囲の美しさから受ける印象が台無しになっていた。
足跡を見つけた彼女は走り出し、露出した肌を絶え間なく叩き続けた。やがてアルビに追いつくと、クリスティーナは彼女が炎を纏った短剣を手にしており、タンクトップとショートパンツ姿であることをあまり気にしていないのを発見した。
「えっと、エヴィナはまだ見つからない?」クリスティーナは熱を帯びた武器に近づきながら尋ねた。
「ううん」
「パパはこんなこと話してくれなかったんだけど……」
「あの人はここを旅したことないんだから、知るわけないでしょ」
溜息をついて、少女たちは少し足を速めると、すぐに開けた場所に出た。古く、手つかずに見える森の中に、何かの技術施設の残骸が横たわっている。錆びついた壁、傾いたアンテナ、引きちぎられた金属片が風に揺られて力なく軋んでいた。建物の一階には不揃いな縁の大きな穴が開いていて、そこにエヴィナが立ち、ガラスパネルの向こうにある奇妙な物を眺めていた。小さな緑色の基板に、変わった明るい模様が刻まれている。基板の上には様々なサイズの金属製の円筒形の突起物が配置されていた。
「エヴィナ!」姉妹たちが静かに少女を呼んだが、彼女は黙って手を振って二人を手招きした。
近づくと、クリスティーナは物思いに耽る猫に後頭部を叩き、そのあと怒って「にゃあ」と鳴いてから叫んだ。
「一体どういうつもりなのよ!問題が足りないとでも言うの!普通に訓練だけして帰ればよかったのに」
すぐに叫び疲れた姉の長口上を黙って聞いていたエヴィナは、落ち着いた声で答えた。
「私だって、価値があって役に立つってことを証明したいの。うちの才女で美人なお姉ちゃんだけが注目を独占するわけにはいかないでしょ」
クリスティーナは言葉を失い、まるで魚のように口をパクパクさせるだけだった。
「私のせいだって言うの?あんた、本当にバカね!」
「まあ、こんなもんだろ」エヴィナがそう吐き捨てて、パネルを押した。が、何も起こらない。数秒後、電子音声が響いた。「アクセス拒否」
「ねえ、エクスマッハって何?」アルビが尋ねた。
「ん? 何の話?」クリスティーナが聞き返したが、白い子猫は木の一本を指差しただけだった。そこには「ゾーン12:エクスマッハ領域」と書かれていた。
「たぶん、パパが戦った相手の一つよ。もう行きましょう、ほら、どうにもならないじゃない。どうやら、来るタイミングを間違えたみたい」クリスティーナが皆を説得しようとした。
アルビが付け加えた。
「あんた、ポータル見たの? 私は見てないけど」
「無駄じゃないわよ。見て」イライラした様子でエヴィナがそう言いながら、ノートほどの大きさの小さな本を取り出した。ほぼ空白のページには、ただこう書かれていた。「手に入れようとする者は……」
「それで? それどこで手に入れたの?」
「ポータルから出た瞬間、勝手に手の中に現れたの」
しばらく黙って考え込んでいたが、少女たちはやがてアルビのそばを離れず、先へと進んだ。
森の端から抜け出し、二十分ほど歩くと、雪に覆われた山が見えてきた。すぐ近くに洞窟の入り口がある。
ためらうことなく、エヴィナはその中へと入っていった。残りの者たちは慌てて後を追う。
短剣で道を照らしながら、少女たちはトンネルを抜けて小さな広間へと出た。そこからさらに三つのトンネルが伸びている。
分かれて行こうとしたエヴィナだったが、尻尾を引っ張られ、真ん中の道を進むことになった。
腸のように曲がりくねったトンネルをしばらく進むと、姉妹たちは大広間へと出た。整然と敷き詰められた石畳の床、壁には「19」という数字と「アルヴァー領」と書かれた巨大な垂れ幕。近くには小さな階段でできたピラミッドのようなものがあり、その頂上には台座が置かれ、ガラスケースの中に本が横たわっている。ピラミッドの周りには、二メートルはあろうかという巨人用の巨大な鎧が並んでいた。剣と盾で武装したもの、斧を持ったもの。中央には最も大きな鎧が立ち、肩に大きなハンマーを担いでいる。
名所を眺めている時間など惜しんで、エヴィナはガラスに近づき、端末の役割を果たすもう一冊の本に指で触れた。
「アルヴァー、認証……承認。写本を取ってください。注意!荒野への一度の訪問につき、一人一冊までです」
ガラスがゆっくりと開き、本が開かれると、それと同時にエヴィナのポケットから「手帳」が滑り出し、同じく開いた。鮮やかな筆跡で紙の上に新しい言葉が現れ、文章を続けた。今ではこう書かれている。「神の力を得ようとする者は必ず……」
端末の本にインクが新しい文字を描き出した。
「親愛なる友よ、あなたは自分を試し、報酬として神の石材を手に入れたいですか?」
エヴィナは「はい」という文字を指でなぞった。
「ゾーン19の石材の守護者が、友よ、あなたを歓迎します!」
鎧が動き出し、周囲に埃を撒き散らした。最も近くにいた一体が剣を大きく振りかぶり、エヴィナは慌てて飛び退き、怯えた声を上げた。
指輪を回すと、少女は剣を振り上げ、幽霊モードに移行した。別の鎧が近づき、エヴィナがさっきまで立っていた場所に斧を叩きつけた。
自分の行動の結果を見届けることなく、その存在は辺りを見回し、クリスティーナに視線を固定すると、ゆっくりと彼女に向かって歩き始めた。だが突然立ち止まり、倒れ込み始める――脚が膝の高さでぴったりと切断されていたんだ。
アルビは自身を炎で包み込むと前方へと突進し、倒れた巨体に飛び乗ると、その金属の頭部にまるでバターにナイフを突き刺すかのように剣を突き立てた。そのまま武器を抜かずに脚の方へと体を駆け抜け、存在を真っ二つにした。
クリスティーナは素早く両手を振り始め、近くの石板が細かく砕け、人間の形を取り始めた。数体の石像が鎧たちへと向かっていく――サイズは鎧に引けを取らない。
最も近い鎧がゴーレムと接近戦を始めたが、気を取られている間にエヴィナが四肢を切り裂いた。アルビは二体目の脚を溶かし、床に倒れ込ませて無力に蠢かせるだけにすると、少女は頭部を溶かし切った。
結局、数分後には槌を持った主力の鎧だけが残った――それまで戦いに参加することを急いでいなかったやつだ。
ゴーレムたちが接近し、再び肉弾戦を挑もうとしたが、鎧はハンマーを一振りしただけで襲撃者たちを粉砕した。それでも、その隙を突いてエヴィナが敵の股下をすり抜け、脚を切り刻み始めた。片膝をついた鎧は、力の限りハンマーを床に叩きつけ、洞窟の壁を揺らした。上から石が降り注ぎ、少女たちは急いでトンネル内に避難場所を探さなければならなかった。落石をやり過ごしている間に、鎧はハンマーを杖代わりに立ち上がり、姉妹に近づいてきた。クリスティーナは破壊された鎧の破片から金属製のゴーレムを数体召喚し、彼らは即座にかつての仲間に飛びかかり、両腕を掴んで武器を振るわせないようにした。
エヴィナとアルビは前に飛び出し、鎧をバラバラに切り刻み始めた。敵は脱出しようと絶え間なくもがいたが、やがて動ける部分が残らなくなった。
汗だくのエヴィナとアルビが中央に集まると、彼女たちの前に石が現れた。
クリスティーナは自分のも受け取ると、端末の本に近づいた。
「神の石を回収――コミュニケーション、ネクロマンシー、ラーニング」
「親愛なる友よ、ゾーンクリア!ホームへの帰還が可能です。ランダムな石を2つ犠牲にすれば帰還できます」
「さあ、みんな、行きましょう!」クリスティーナは叫んだが、不満そうなエヴィナに気づいた。「どうしたの?」
「こんな楽勝なのに、なんで石を失ってまで帰るわけ?」青い目の子猫ちゃんは、石ころを眺めながら得意げに言った。
「アルビ、せめてあんたは何か言ってよ!」クリスティーナは自分の耳を疑い、ほとんど懇願するように言った。
「私はどっちでもいいわ。実際、そんなに難しくなかったし。もう一つクリアしてから帰ればいいじゃない」白い子猫ちゃんは無関心に言い放ち、見つけたものをポケットに入れた。
「あんたたち……何やってるのよ!」
クリスティーナの瞳が潤んだ。悔しさと、自分には何もできないという現実に打ちのめされて。
歯を食いしばり、彼女は洞窟から出ていく姉妹たちの後を追った。
またトンネルを抜けると、少女たちは分かれ道のある小さな洞窟に出た。遠くの通路の一つが明るかったので、そっちを選んで進み、最終的には岩山の反対側に抜け出した。こちら側には雪はなかったが、冷たく突き刺すような風が吹いていた。急いで山から伸びる広い曲がりくねった道を下り、少女たちは麓にある大きな像へと向かった。
この記念碑が一体誰に捧げられたものなのか、判断するのは難しかった。見た目はただの普通の人間で、顔の特徴もない。両腕を大きく広げ、世界全体を抱きしめようとしているかのような像だった。唯一の奇妙な点は、像が作られている石材に、細かく光る模様が刻まれ、一定の間隔で脈動していることだった。
記念碑を囲む低い柵をまたいで、少女たちは辺りを見回した。ガラスのケースがあり、その中には煌めく金属の球体が収められていた。エヴィナが急いで駆け寄ったが、すぐに不満げな声を漏らした。クリスティーナが周囲を見渡すと、ある銘板に震え上がった。そこには「ゾーン21:デウスレギオ領域」と書かれていた。
背後で軋む音と、長く引き伸ばされたモデムのような音が響いた。
歪んだ機械音声が告げた。
「対象を解析。対象種別:下等動物。危険度評価:マイナス無限大」
少女たちが振り返ると、筋肉質な体の輪郭に沿った鎧を纏った人影が見えた。灰色で、所々黒ずんだ金属は、欠けや引っかき傷、弾痕だらけだった。ヘルメットは完全に閉じられており、目の部分にだけ青い光を放つ細い二本の線があった。口の位置にも似たような線が何本かあり、見知らぬ者が喋ると点滅した。
背中には細い棒状の突起がいくつかあり、その先端には青いダイオードが付いていた。
「えっと、何か用ですか?」クリスティーナが不安そうな声で尋ね、尻尾を握りしめた。
「可能性のある要求を分析中。最適な選択肢を選定中……完了。神の石」見知らぬ者はその場から動かず、機械的に告げた。
「嫌よ!」エヴィナが怒りの声を上げ、指輪を回した。
「提案変更の可能性を分析中……却下! 貴様らの命に対する最適な価格が算出済み。タイマー作成中……完了! 5、4……」
ニャッと鳴いて、エヴィナは前に飛び出し、彼女と敵の間の距離を素早く詰めると、何度も刃を振るい、相手の鎧を切り刻んだ。
カウントダウンを止めて、見知らぬ者は地面に崩れ落ちた。
「ふう、見たか? あんたら、こんな弱っちい奴に石を渡すつもりだったのか!」半透明モードのまま、猫娘はけたけたと笑い転げた。
鎧の上で青白い稲妻が火花を散らし、細かなパーツが次々と外れては再び繋がっていく。
数秒後、敵は既に元通りの姿で立っていた。
「結果分析……完了。極めて否定的。応答準備……完了。ハハハ、死ね」
唸り声を上げ、エヴィナは振り返って再び剣を振るった。敵の腕がバラバラに分解して刃をやり過ごし、その後火花を散らす刃の形に再構成された。
「兵科モデル分析……ゴースト形態。軌道計算……完了」
少女は飛び退いたが、敵は稲妻のように滑るように前に出ると、形状を変えた腕を空中で鋭く振った。
静寂を切り裂いたのはエヴィナの大きな悲鳴だった。地面に静かに転がり落ちた、剣を握ったままの切断された腕の音をかき消して。
◇◇◇
この砂漠でも弱い風が吹いた。驚くほど涼しかった。俺は今、顔面に熱い砂が飛んでくると思っていたのに、そんなことはなかった。信じられない気候だ。風を楽しんでいるうちに、いつの間にか居眠りしていた。
目を覚ましたのは、ケルが俺を揺さぶっていたからだ。ああ、そうだ、建物が完成したんだ!
本当に全部うまくいったのか? 驚くべき出来事が続いた後では、ただ信じられなかった。
バンカーに駆け込んで下へ向かい、ポータルを見た瞬間、嬉しさで叫びそうになった。念のため目的地を確認して、全部問題ないことを確かめてから、俺は走って上へ戻った。ケルと一緒にクリスタリットのコンテナを引きずり、それから俺はもう一度、今度はライフルとグレネードランチャーを取りに走った。燃料も持ってきた。せっかくの物資を無駄にするわけにはいかない。
俺たちが荷物と一緒にプラットフォームに集まったとき、俺はボタンを押した。
そして邸宅に辿り着いた!
振り返って上へ上がろうとしたが、ふと階段に座っている見知らぬ女を見つけた。
無関心な仮面をかぶっているにもかかわらず魅力的な顔に、明るい黄色の瞳、小さな鼻と口。長く、雑に整えられた白髪には、額に七つの歪んだひし形の模様がある。中央に三つの大きな黄色いもの、そして四つの小さな黒いもの。女は体型を隠すゆったりとした黒い服を着ており、首には豪華でふわふわした襟かマフラーか、すぐには判断しづらいものを巻いていた。
でも、もちろんそれがメインじゃなかった。彼女の頭のてっぺんには白い触角が二本生えていて、背中には大きくて模様の入った蝶の羽――オレンジと黒の配色――が広がっていた。
「ケル、これってまさか……」
「そうよ、娘が成長したの!」サソリ女は嬉しそうに叫ぶと、少女に駆け寄った。
少女は表情を変えずに、でも拒むこともなく、その抱擁を受け入れた。
「で、名前は?」俺は確認することにした。娘がもう18歳なのに、今さら名前を付けるってのも妙な話だ。だがケルは俺の不安を裏付けるように、考えるのは俺の役目だと匂わせてきた。
えーと……こいつらの名前は変わりすぎてて、即興で考えるのは無理がある。頭に浮かぶのはマハオンくらいしか……
「マハ……」
「ザシャよ」ケルが言い放った。気のせいか、それって自分の「シャザ」をひっくり返しただけじゃないのか?
「わかった」と俺は微笑み、視線の端で少女の反応を観察していた。
マハはただ首を傾げ、俺たちをじっと見つめていた。
「ステータス更新……完了。
新しい子供が登録されました:マハ・ザシャ、派閥キルハイヴ/アルヴァー」
「市民ステータス:+1(92)」
ゆっくりと立ち上がると、蝶は俺たちに近づいてきた。かすかに微笑むと、彼女は大きく一歩踏み出し、あっという間に俺のすぐ近くに来た。俺が我に返る間もなく、彼女の唇が俺の唇に触れていた。
ケルが後ろから少女を掴み、俺から引き離した。
「マハ、いったい何してんのよ!?」
少女は理解できないという様子で母親を見つめていた。そして、俺は初めて彼女の声を聞いた。柔らかく、歌うような、まるで魂の奥底まで染み込んでくるような声だった。
「あらあら、強い遺伝子を持っているのね。いいんじゃない?」
少女が羽をはためかせると、俺は突然体が火照るのを感じた。説明のつかない、抑えきれないほどの性的衝動が湧き上がってきた。
ケルが俺を一瞥し、それから娘を見て、憤怒に満ちた声で威嚇した。
「お父さんに花粉を使うんじゃないわよ、わかった?」
「あらあら、わかったわ。あなたがいない時にでも……」彼女は小さな声で続けた。俺にしか聞こえないような声で。もう一度羽をはためかせると、俺を襲っていた耐え難い衝動が消えていった。
下の騒ぎに引き寄せられて、セフィーナとジェシーが降りてきた。少し離れたところからキューも降りてきていた。
セフィーナは嬉しそうに鳴き声を上げると、俺の首に飛びついてキスの雨を降らせてきた。ジェシーは遠慮がちに傍らに立ち、猫娘が落ち着いてから、俺の頬に軽くキスをした。キューも近づこうとしたが、突然その場に釘付けになったように固まった。
「ヴァイ?! あんた?」
「あら、138、私だってわかった? そう、まだ生きてるわよ」フレムテックの女が微笑みながら答えた。どうやら二人は知り合いらしい。それもシリアル番号だけの関係じゃなく、個人として。
俺のことなんかすっかり忘れて、二人は近寄って話し始めた。
残りのメンバーと一緒に俺たちは上の階へ上がった。そこでラズに出会い、彼女も俺に抱きついてきた。
せめてこの子は……。まあ、アンネリとケイトの子供たちはいいとして、セフィーナの娘たちまで俺を出迎えてくれないなんて。どうやら教育をかなりサボってしまったらしい。
全員がソファに座ったところで俺は話を始めようとしたが、ドアを激しく叩く音に遮られた。ジェシーがドアに飛びつき、開けるとフェブリモールが入ってきた。周りを見回したエルフは俺を見つけて喜んだが、すぐに表情を引き締めた。
「大変です、死すべき者! 村の近くに軍隊が集結しています!」




