第五十五章 禍福は糾える縄の如し
戦車の操縦は大体わかったが、砲塔が壊れているせいで、戦闘力はあまり期待できない。向きを変えて、がらくただらけの「路地」に装甲車を突っ込ませ、敵の動きをある程度制限した。もちろん、爆破を試みることはできるだろうが、正面装甲を考えれば、この辺りの武器の明らかな劣化具合からして、そう簡単にはいかないだろう。
全体的に、どうやら敵の士気は尽きたようだ。「あいつらは失敗したが、俺の方が強い」みたいな、気の抜けた攻撃が何度かあったが、俺とケルですぐに撃退した。
緊張した待機時間が過ぎ、ついに端末がピッと鳴り、新しい画像を表示した。
「所有者変更完了。変更のロールバック読み込み完了。解体手順を開始しますか? はい/いいえ」
こういう表現、あまり好きじゃないんだよな。俺のトラックもあるし、何より俺自身もここにいるんだぞ。
だが他に選択肢はない。確認ボタンを押した。
見えない隙間からナノロボットが現れ、周囲の建物をすべて解体し始めた。一片また一片と、まるでシロアリのように建物を食い尽くしていく。数分も経たないうちに、がらくたと戦車以外、俺たちの周りには何も残らなくなった。それまでどこかに隠れていたテクガンの連中が見えるようになった。一部がトラックに向かって走り出したので、またライフルを使わざるを得なくなった。
他のテクガンの連中の熱も冷めたようで、多くはそのまま空いてるバギーやオフロード車に乗り込んで、それぞれ好き勝手に散っていった。
俺はもう一度ターミナルに視線を向けた。
「解体後に残った資源と金庫の中身は第2システム『ロートク』に転送されました」
なるほどな。俺としては、拠点丸ごと奪うのってそんなに難しくないのかと思ってたんだが、まあ中央ターミナルからそこまで激しく追い払われなかったことや、リーダーを即座に始末できたってのもあるか。資源に関しちゃクソほども手に入らなかったわけだが、どうやら所有者を完全に叩きのめさないと、全部かっさらうことはできないらしい。でもこれは良いニュースでもある。つまり、俺の拠点の一つが奪われたとしても、失うのは復旧にかかる時間だけってことだ。まあ、ロッドは当然取られるが。
『ロートク』を地面から引き抜くと、俺はヴァイとケルと一緒にトラックまで戻り、荷台をチェックして何も盗まれてないことを確認してから、この場所を離れた。
道らしきものから外れて、砂漠の平原を二十分ほど走り、小さな岩場に辿り着いた。ロッドを地面に突き立て、プラットフォームの形成が終わるのを待ってから、死すべき者のバンカーを発注した。
さて、じっくり考えないとな。この拠点をどうするか?『ロートク』は失いたくないし、ポータル付きの家を他人の領土に放置しておくのも嫌だ。選択肢は?自分で持って帰るのは無理、他の奴らについては分からない。ってことは、連中がここまで来て死んでもらって、俺が復活させることで拠点ごとロッドを回収するしかないのか。装備と一緒に転送されるはずだが、ただ……わざわざ実験したわけじゃないしな。もしかしたら、兵科モデルに含まれる装備だけがカウントされて、それ以外は持ち越せないのかもしれない。
まだカオス・ポータルという手もあるが、あれは完全にルーレットだ。八つも派閥がある中で、よりによってアルヴァーに、しかも狙った場所に辿り着けるなんて――ファンタジーもいいところだろう。
それ以上にアイデアは浮かばなかった。途切れることのない問題の数々にいくらか疲れ果てた俺は、岩まで歩いていって日陰に座り込んだ――とはいえ、そこでさえ暑すぎるくらいだったが。一体何なんだこのおかしな天気は? ここの一日は24時間だが、季節については確認していなかった。
ケルは暗色の甲殻が熱を吸収するせいで、さらに暑そうだった。だから彼女も急いで日陰に逃げ込んだ。そう、砂漠のサソリじゃないんだ、それは明らかだった。
ヴァイも色白の肌のせいで、日陰に隠れようとした。結局、二人は俺の両脇に腰を下ろした。
「腹減ったか?」
「いや、暑すぎてやばい」シャザがだるそうに言いながら、髪を後ろでまとめて、ブラジャーの生地を引きちぎった布切れで結んだ。
「いいえ」ヴァイが無関心に答え、せっせと働く建設者たちを見つめた。
「じゃあ、休憩がてら俺に基礎知識を教えてくれるか?」
ヴァイが可愛らしく首を傾げ、指を顎に当てた。
「知識のレクチャーか?」
「要するに、話してくれよ。世界のこととか、昔はどうだったかとか、派閥同士の騒ぎがどこから始まったのかとか、そういうの全部」
二人の少女は考え込み、その後ほぼ同時に首を横に振った。
「パイロットにはそうした情報は入れられていないの、ごめんなさい」とヴァイがわずかに頭を傾け、再び遠くを見つめた。「コンピューターに聞いてみることはできるかも」
「私たちは今日を生きてるんだから」とケルが胸を張った。歴史の知識がないことへの言い訳としては悪くないと思ってるのか?
「お前らのことはよく分かった。じゃあ、季節についてはどうだ? 寒くなるのか、それともずっと暑いままなのか?」
「もちろん、寒くなるわよ! でもすぐじゃないから、心配しないで」とケルが笑顔で答え、俺の肩を撫でた。役に立てて嬉しいのか?
要するに、専門家を見つけて一気に何がどうなってるのか聞いた方が早いってことだ。立ち上がると、ケルを刺激しないよう少し離れた場所へ移動し、ドラゴニドに変身した。
「ふう、パパ! どこに行ってたの!?」ラズの喜びに満ちた声。心配と安堵が入り交じっている。
「ちょっと問題が起きてね。ジョニーにいい具合にゲンコツかましてやってくれ」
「大丈夫なの? ママは?」今度はもう少し落ち着いた声だ。
「ああ、問題ない。死すべき者のバンカーが完成して、ポータルが使えるようになるのを待ってる。またなにか起きなければ、あと数時間だ」
「ああ、早く来て欲しいな。もうみんなに情報をねだられて大変なんだから……」
「面倒かけてすまん、はは。そっちは大丈夫か?」
「あ、えっと、うん」
なんだか歯切れが悪い。
「間違いないか?」と俺は念を押した。
「はいはい」
「分かった、待ってるぞ。じゃあな」
「じゃあね!」
ドラゴニドとの通信を切って、俺は女の子たちのところへ戻った。ラズは一体何を隠してるんだ?
◇◇◇
11日目の朝。クリスティーナはベッドから何とか起き上がり、川で顔を洗うために外へふらふらと歩いていった。
ターミナルでの訓練は部分的な睡眠のようなものだが、本物の睡眠には到底及ばない。
身だしなみを整えた彼女は、あくびをしながら戻り始めた。そのあくびの最中、目の前に突然現れたフェブリモールのせいで固まってしまった。慌てて口を手で覆うと、彼女はエルフに疑問の眼差しを向けた。
「おはよう、クリスティーナ」隊長は喜びと好意に満ち溢れた様子で、少女に花を手渡した。
「おはよう……って、何これ?」 まばたきをしながら、クリスティーナは紫のバラのような何かをじっくりと眺めた。
「だって、昨日君の成人の日だっただろう!」
少女の表情が曇り、フェブリモールは垂れ下がった耳を見て、言わなければよかったと後悔した。
「そうね、成人の日だった。でもあまりいい終わり方じゃなかったわ。もちろん、みんな生きてはいるけど、父さんとケルが行方不明になっちゃったし。それに、なんだか嫌な後味が残ってる気がするの」 クリスティーナはゆっくりと言葉を選びながら話した。 「それにクリスタリットも……父さんが貯めてたのに、ほとんど全部使っちゃって、しかも無駄になっちゃった……」
エルフは近づいて、クリスティーナをそっと抱きしめた。
「自分を責めることないよ。あのジョニーの話を聞いただろう、あんなこと前例がなかったんだ。もし死すべき者が一緒にいなかったら、どうなっていたか誰にもわからない。僕は全て悪くない結末だったと思うよ。それに資源のことだけど、まあ、君たちが何を持っていたかは完全には知らないけど、また貯められるはずさ。死だけが取り返しのつかないもので、それだって僕たちの場合は議論の余地があるだろう!」 エルフはできる限り優しく微笑んで、柔らかく穏やかな口調で少女を励まそうとした。
クリスティーナは一瞬だけ微笑んだ。
私、昨日初めて死んだんだ。そして、パパが何度これを経験してきたのか、想像すらできない。それなのに、パパはあんなに落ち着いて見えて、私たちを余計に心配させないようにしてくれている。でも、本当は何度も何度もこれを経験するのは、すごく辛いはずなのに……
フェブリモールはニコが毒に苦しんでいたのに、それでも苦痛を見せまいとしていたことを思い出した。ため息をついて、彼はもう一度励ますように微笑んだ。
少女はエルフの肩に顔を埋め、彼は優しく彼女の頭を撫で始めた。
その穏やかな光景を、聞き覚えのある声が遮った。
「あー、ここにいたのね。フェブリモール、あんたセフィーナか、せめて私ともう少し親しくなればいいのに。いきなりクリスティーナに色目使うなんてさ」
エルフは素早く離れて気をつけの姿勢を取り、管理官を見ないようにした。
「アンネリおばさん、何もそんなんじゃないから」クリスティーナは指揮官を庇おうとしたが、緑の瞳の娘は手を振ってそれを制した。
「あんたはまだ若すぎるのよ。男なんて、ちょっと隙を見せただけでね。善意で舗装された道は、あんたのスカートの中まで続いてるんだから」
エルフは顔を赤らめたが、ただこう答えただけだった。
「すみません、仲間が待っているので」
「ああ、ああ、行っていいぞ」
「ありがとうございます!」クリスティーナが足早に去っていくエルフに向かって叫んだ。
アンネリが近づいてきて尋ねた。
「ねえ、テクガンの基地のこと、あなた何とかできる? ジョニーから連絡があったんだけど、彼が送った民間人たち、司令部に落ち着いて備蓄の豆を食べたりしてるらしいんだけど、建物がないから何も生産できないみたいなの」
「うーん、どうだろう。試してみることはできるけど、約束はできないな」
「頼んだわよ!」
クリスティーナは頷いてから尋ねた。
「パパのこと、何か聞いた?」
「みんながラズを問い詰めて、休む暇も与えてないみたいだな。でも、彼女がどうこうできる問題じゃない。ニコが連絡できるようになれば連絡してくるさ。今のところ、二人はジョニーからもらった情報を頼りに動いてるんだ」
「そっか。何か分かったら教えてね」
「もちろん!」
別れを告げて、クリスティーナは屋敷に向かった。中では本当に、ラズがソファに座って目を閉じており、その周りにセフィーナ、ジェシー、キュー、エンディス、フロルガ、それにアルビとエヴィナが集まっていた。
全員があまりにも集中した様子で、ラズの返事を待っているというより、集団精神で交信しようとしているかのように見えた。全員の邪魔をしないよう、クリスティーナは姉妹たちに手を振った。
地下室に降りると、少女たちはポータルの前に立った。クリスティーナは頼まれたことを手短に話し、一緒に来ないかと誘った。
「なあ、私たちにも使い方教えてよ、ここにいる間に」エヴィナがさりげなく頼んだ。
「うん、いいよ。見てて。ここを押すと場所のリストが出るから、指で選べばそれで終わり」
場所は大きな文字で書かれていて、ページごとに広く配置されている。間違った場所を誤タップしないための配慮だろう。リスト全体に目を通したエヴィナは、「神々の荒野」という表示で視線を止めた。
「何か気になるの?」すでに全部確認し終えたアルビが念のため尋ねた。
「ああ、大丈夫」エヴィナは機械的にそう答えながら、何かを考え込んでいた。
クリスティーナは、解析完了後に姉妹全員が本へのアクセス権を得たことを確認すると、指でテクガンの基地をタップした。
バンカーには誰もおらず、新人たちは全員センターに集まっていた。中央ターミナルまで辿り着いたクリスティーナは、操作方法を調べ始めた。いつもの本ではなく、ここには意味不明な画面があり、彼女が触れた途端に突然光り出した。
「解析中――テクガン派閥への所属が確認されず。基地の再構築のみ可能。イニシエーションについては守護者にお問い合わせください」
「ふむ、全部は理解できなかったけど、私には無理ってことはわかったわ」クリスティーナは最終的にそう答え、物思いに耽りながら尻尾を撫でた。
「無駄足だったわね。じゃあ、行きましょ」アルビはそう言って踵を返した。
「じゃあ誰に頼めばいいのかしら。ジェシーかケイトに頼むべきか……まあいいわ、とりあえずアンネリに報告して、あとは彼女に決めてもらおう」二人が屋敷に戻るまで、クリスティーナは独り言を呟き続けた。
アルビとクリスティーナは階段を上り始めたが、エヴィナはその場に留まった。
妹の奇妙な行動を見て、白い子猫は眉をひそめた。
「ねえ、どうしたの。行くわよ」
「いいえ、私は自分にも何かできるって証明してみせる」エヴィナは首を横に振り、転移装置の方へ向き直った。
「待って待って待って!何するつもりなの!?」
答えずに、青い目の彼女は本から「荒野」を選び、ポータルの中へと入っていった。
大きく鳴いて溜息をついて、アルビは装置へと歩み寄り、同じくポータルの中へ入った。クリスティーナは呆然とした目でそれを見つめていたが、すぐに我に返って上へと駆け出し、いつも通りに振る舞おうとした。
女の子たちはラズに自分たちとの交流から休憩を与えることにして、キッチンへ軽食を作りに行った。ラズは苦しげな様子でソファに寝そべった。
「あ、クリスティーナちゃん、こんにちは」リカが手を振った。「気づかなかったわ」
「うん、そう。ねえ、ちょっといい?」
渋々ながら、ラズは立ち上がってクリスティーナの後を追い、下へと降りていった。状況を手短に説明すると、猫娘は注意深くリカを見つめた。
「ふむ、そうね……。まあ、すぐには気づかれないと思うけど、後始末については保証できないわよ」ラズが真面目に答えた。「まったく、じっとしていられないのね、あなたたちは……」
肩をすくめて、クリスティーナは姉に礼を言い、ポータルへと入った。
ラズを目で見送った後、首を振りながら戻ってきて、まるで最初からそこにいたかのようにソファに寝そべった。残りの女の子たちは十分ほどしてつまみを持ってきたので、しばらくみんな静かに軽食を楽しんでいた。
「ラズって今日で18になるんだよね?」とセフィーナが突然聞いてきた。
少し驚いた様子で、ラズは一口飲み込んでから頷いた。
「うん。でも祝う気はないけどね、ははっ」
「そしたら、誰と番えるかとか、何か分かるの?」とキューがカナッペをあちこちから眺めながら尋ねた。
「たぶんね。相手もドラコニドならだけど」とラズは答えて、気づかれないようにため息をついた。
フロルガが目を輝かせた。
「へぇ、誰でもありえるってこと? めっちゃ面白いじゃん。もしかしたらうちの村の誰かかもよ?」
「ああそうだ、誰でもいい」
話題が変わったことに完全には満足していないようだったが、ラズは精神リンクに集中した。他の面々はといえば、むしろ気が紛れて喜んでいるようだった。それも男女関係という永遠のテーマでだ。
ラズは体を震わせ、父親からの信号をキャッチした。会話が終わると、ニコに関する情報をその場にいる全員に伝えた。
ニコが無事だと分かって安心した少女たちは黙り込み、それぞれ自分のことを考え始めた。だが夢想に浸っていた彼女たちを現実に引き戻したのは、上の階から聞こえてくる打撃音だった。
ジェシーとセフィーナは指輪を回し、兵科モデルに移行した。二人が先頭に立って上へ向かい、残りは恐怖と好奇心が入り混じった表情で後に続いた。
音のする方へ進んでいくと、少女たちはすぐに客室の寝室の扉の前にたどり着いた。ラズは額を叩くと、前に押し出された。
「待て、止まれ!リカ!」ジェシーが止めようとしたが、少女はもう扉を開けていた。
二つに分割された金属製コンテナが開かれ、繭の残骸がすぐそばに転がっていた。
「やあ、お姉ちゃん」ラズは愛想よくそう言って、微笑んだ。
◇◇◇
「現在の残存寿命――20+(91)。能力発動用ボーナス年数:27(2)(係数0.3)」




