第四十九章 最後の力を振り絞って
幸い、今のところはまだ唸り声だけで済んでいる。以前説明されたとおり、ポータルを抜けるのは簡単じゃないらしい。
だがそれ抜きでも問題は山積みだ!ネメシスたちが逃げるアルドとケルに機銃を浴びせた。
傭兵は被弾してよろめいたが、走り続けた。装甲が持ちこたえたようだ。ケルの背中からいくつか血飛沫が噴き出したが、彼女は痛みに野獣のような雄叫びを上げて、むしろ加速した。
戦車兵たちはまさにエースだった。メカとの戦闘に慣れているのがよくわかる。砲撃の轟音が収まるのを待ち、装甲車両は急発進した。ネメシスの斉射は空を切った。
「お前の名前がジョニー・メカ破壊者だといいんだけどな?」
「冗談がヘタだな、兄弟。でも教えといてやるよ。ネメシスは背面にシールドがない。それとタナトスは斉射の瞬間だけシールドが切れる」
重メカはさらに大きな轟音で応え、残りの砲台に向けて二連の光の槍を放った。同時に戦車も反撃し、ロケット砲台の一つに命中させた。いくつかの弾薬が誘爆したが、タナトスは損傷した砲台から残り二発のロケットを急いで発射した。誘導装置が戦車へまっすぐ導いていったが、接近した瞬間、ショットガンの鋭い音が響いた。戦車の砲塔に取り付けられた装置から散弾が飛び出し、ロケットを飛行中に撃ち落とした。
タナトスが肩部砲から発砲した。巨大な砲弾が戦車の間に着弾し、接近しようとしていた兵士たちを数名まとめて肉塊に変えたが、その一部は重メカに向けてロケット弾を発射することに成功し、二基目のバッテリーを破壊した。
この大混乱の最中、俺は少女たちのところまで辿り着いた。どうやって彼女たちがウィングを倒せたのかは知らないが、残りの連中に同じ手が通じるとは思えない。
「エヴィナたち、何やってんだ!逃げろ!」
「嫌よ!」エヴィナが断固として叫び、アルビと一緒に鋼鉄の壁の残骸を盾にして前方へ駆け出していった。
クリスティーナは無言で俺を見つめ、唇を噛み締めると、両手を振り始めた。一体何をやってるんだ……?
砂が空中に舞い上がり、3メートルほどの高さまで跳ね上がったが、落ちてこずに大きな人型――どことなく人間を思わせる姿を形成した。十体ほどのそんな人形が足早にメカたちの方へ向かっていく。その後、クリスティーナは破壊されたウィングの残骸まで駆け寄り、同じ動作を繰り返し始めた。メカの金属が見る見るうちに溶け、バラバラだった部品が結合していく。やがて、元のメカに似た何かに繋がると、その醜悪なウィングもまた敵に向かって歩き出した。
俺は何も言わなかった。頭を振って、ジェシーのところまで辿り着き、たった今思いついたばかりのくそったれな計画を説明した。バギーを呼び出すと、彼女が慌ててそこに爆薬を取り付けるのを眺めていた。大量のパックだ。多すぎるくらいに。時間がないから、俺はバギーに飛び乗ってエンジンを温め始めた。
手早く作業を終えた彼女は、俺に向かって何か叫んだ。「あなたが遠くまで逃げたら押すから!」みたいな内容だった。俺は前へと駆け出した。
機関銃の絶え間ない金切り声が響く。ネメシスたちは砂の人形を撃ちまくるのに夢中になっていた。ゴーレムから砂の塊が飛び散るが、それほど気にする様子もなく、依然として前進を続けている。第二の武器からの一斉射撃だけが大きな穴を開け、いくつかはすでに完全に崩れ落ちていた。金属製のゴーレムは異彩を放っていたが、それでもなかなか健闘し、弾丸の雨を引き受けることで、さもなければ他のゴーレムが倒れていたであろう攻撃を防いでいた。ゴーレムたちが上からメックに飛びかかり、ネメシスたちが白兵戦に移行せざるを得なくなったとき、俺はアクセルを踏み込み、近距離戦闘用の武器を装備していないタナトスの足元で停車した。素早く飛び降りて離れたが、振り返ると、ジェシーがパニック状態で首を横に振っているのが見えた。
「ジョニー?」
沈黙。電波妨害か?
ネメシスの一体がゴーレムを振り払い、重装の仲間に向き直ると、その巨大な手でバギーを掴んだ。
歯を食いしばり、俺は力のエンチャントを発動させ、地面から持ち上げられた車に飛び乗ると、ロケットランチャーに駆け寄って引き金を引いた。
車は見事に爆発し、俺は即死した。
「フレムテック派閥とのシナジー+10%(70/100)」
「死すべき者の心臓の新たな強化が利用可能:フレムテック最後のチャンス」
くそったれの高性能特攻野郎どもめ……
ネメシスは破壊されたが、もう一機は攻撃範囲から遠すぎた。爆発でタナトスの脚が損傷し、倒れかけたが、もう一本の脚を踏み出してなんとか持ちこたえた。
「治癒、寿命-2年」
タナトスの斉射を受けて戦車の一両が煙を上げた。だが二門の砲から放たれた反撃が脚を完全に破壊した。きしむ音を立てて巨大なメックが倒れ始め、轟音とともに基地に墜落し、壁といくつかの建物を押し潰した。
俺は騎士の姿で砂の造形物の間を駆け回り、最後のネメシスに見つからないようにしていたが、奴は着実に迫ってきた。エヴィナが俺に向かって走り出してきて、すれ違いざまに機体の真正面に立った。キーンと音を立てた機銃が掃射したが、弾丸はすべて彼女の体を貫通した。横から何か炎のようなものが滑り込み、剣のようなものが機体の側面に突き刺さって装甲を溶かし始めた。
ネメシスが音を立てて二門目の兵器を発射した。範囲攻撃か、あるいは単純にエネルギー兵器が娘の新しい能力に対して有効なのか……
エヴィナの体の残骸が砂の上に崩れ落ちた。
ポータルから金属製の腕が現れ、巨大な武器を握っていた。青い光を放つ複数のリブを備えた太い膨らみが、円筒形の土台の上に設置されている。たぶん、このクソは回転するんだろうな……
一体の敵に気を取られたメックは他の敵への注意を怠り、アルビがかなり大きな穴を装甲に溶かし込むことを許してしまった。セフィーナが狂乱の眼差しで真っ直ぐこちらへ走ってきて、走りながら弓を構え、半透明の矢を次々と放つ。だがシールドのない場所でさえ、矢は外装に突き刺さるだけだった。ネメシスは配線を壊す砂の生き物たちを意に介さず、新たな脅威に向き直って機銃を唸らせた。弾丸の一部は煙のような装甲に阻まれ、一部は外れたが、何発かはしっかりと食い込み、恐ろしく大きな傷を残した。それでも涙を流す少女は近づいて、穴の中へ矢を放ち込んだ。機銃の唸りが止み、ネメシスが動きを止めた。
「市民ステータス:-2。残存兵士10名」
鋭い勢いで天使がポータルから完全に飛び出した。俺の驚いたことに、タナトスより背は低いが、肩には翼のようなもの――飛行機の翼みたいだが上向きに取り付けられている――があった。力強い機体、細長い頭部、「目」の位置で青いダイオードが輝き、俺が既に見た武器以外の追加装備はない。それは両腕に搭載されていた。
唸りを上げてメックは急上昇し、その巨体にもかかわらず、轟音と共にテクガンの基地に着地して建物を破壊した。最後の戦車の砲弾が寂しく防御フィールドに潰され、空中で不発の花火みたいに弾けた。
「君たちは天使を倒したことがあるのか?」
ああ、くそ、タナトスはただ無力化されてるだけじゃないか。ジャマーは誰も切ってないんだ……
天使が片腕を上げた。武器が腕に装着された筒状の部分を中心に回転し始める。まるで籠手のようだ。回転はどんどん加速し、それに伴って音も大きくなっていく。長く、引き延ばされた唸り声、そして――大気圧が急激に変化したかのような、鋭い破裂音。
砲口から直径1メートルほどの青い球体が高速で飛び出し、ポータルに激突した。
建物が青いフィールドに包まれ、内側へと圧縮され始める。やがて金属と石灰と、他にも何が混ざってるのか分からないものが一塊になった。アルヴァーへと続くポータルが閉じた。
間を置かず、天使は二つ目の砲を回転させ、兵士たちの密集地帯へ向けて発射した。皆が散開しようとしたが、もう遅かった。戦車が宙へ放り上げられ、回転する。そこへ人間たちが吸い寄せられ、衝撃の力でミンチになっていく。フィールドが収縮し、内部にあったものすべてを金属と肉の塊に変えた。血が滴り落ちている。
フェブリモール、デリオ、イヴェット。
「市民ステータス:-3。残存兵士7名」
おそらく、テクガンの連中はジョニー率いる小さな兵士グループだけが残ったんだろう。それと、遠くにいて近づく勇気のないバギー一台。
俺の方は二人の娘たち、ジェシー、ケル、エンディス、それとアルドとそのエルフの女だ。
歩兵に興味を失った天使は、建物を破壊し始めた。
ジョニーが俺のところまで駆けてきて、首を振りながら言った。
「もう終わりだ、兄弟。戦いは終わった」
「つまり、お前らこんな化け物を倒したことは一度もないってことか?」
「ああ、ないな。あいつがずっとここにいるわけじゃない。暴れるだけ暴れたら消える。だから俺らはとっとと逃げるのが一番だと思う」
俺は心の中で悪態をついた。
「じゃあ、この虐殺に何の意味があったんだ?最初から姿を現さなければ、あいつらも『暴れるだけ暴れて消えた』だけだろ。ロートクは見つかったのか?」
ジョニーは荒い息をついていた。明らかに、こんな結末には不満だった。ギルドの中でどれだけ仲が良いのかは知らない。ジェシーとエンディスがあっさり希望を失ったのを見れば尚更だ。だが、こんな風に大勢の仲間を「無駄に」失えば……どんな状況だろうと復讐したくなるだろう。
「ロートクは最後のバギーにいる。回収して撤退できる」ジョニーは唇を噛みしめながら、自分の主張を曲げなかった。
俺は彼を呼んで、二人きりで話をすることにした。
「お前が部下の連中を心配してんなら、俺が手早く全員と『握手』してやるよ、どうだ? つうか、最初からそうすりゃよかったんだが……。そうすりゃお前らは何もリスクを負わなくて済む」
「よし、口の減らねえクソ野郎、最後までやってやるよ」ジョニーはニヤリと笑ってそう言うと、兵士たちに何かを手早く説明し始めた。
待ってる間、考え込んだ。天使の行動に意味はあるのか? まあ、テクガンが襲ってきたのは、他人の『ロートク』をかっぱらって、上手くいけば資源も奪い取るためだ。だがここは……。複雑な装備を大量に失って、人間のことなんか知ったこっちゃねえんだろうな、どうやら。で、結局、杖を探そうともせず、ただひたすら街を砲撃してる。どこに論理がある?
というわけで、プラス五人。合計八十八人だ。
「市民ステータス:+1」
え、まさかこれって……。ああ、アグネスか。
天使がこっちに……いや、俺の方に? 向き直った。ブレスレットが回り始めた。
「早く、散開しろ!」ジョニーが叫んだが、言われなくても全員、これが何を意味するか分かってた。
俺は「ボタン」を押してアグネスを殺したが、どうやら命令はもう下されていたらしい。メカが手を引いたような仕草をした。まるで見えない釣り竿を持っているかのように。そして俺は、猛スピードで空中を引き寄せられ、奴の手の中へと飛ばされていくのを感じた。マニピュレーターに激しくぶつかり、巨大な指に挟まれた。誰か助けてくれないかと期待してバギーを呼び出し、自分は力を発動させて抜け出そうともがいた。だがこのサイズのメカニズムを力ずくで抑え込むのは極めて困難だった。
天使が一気に跳躍し、ポータルに近い場所へ着地した。赤毛の運ちゃんが乗ったバギーがメカに向かって突進していくのが見えた。マシンは全速力で脚に激突し、強烈な爆発と共に消えた。
「市民ステータス:-1。残存兵士6名」
天使はよろめいたが、踏みとどまった。向きを変え、誰も逆らおうとしないよう武器の充填を始めた。
俺は挟まれたまま必死に指輪を切り替えようとした。この状態ではかなり難しかったが、なんとかキルハイヴのものに手が届いた。
確かに強くなった感覚はあるが、それだけじゃ足りない。力の上位エンチャントを発動させ、全身の筋肉を総動員して巨大な指をわずかに押し開く。息を吐き、牢獄から這い出して下へ飛び降りた。翼が感じられるようになり、本能的にその扱い方が理解できた。何度か羽ばたくと、メカの近くへ滑らかに滑空できた。
もう一発球体を撃ち出すと、メカニズムは再び武器を充填し始めた。俺を自分の方へ引き寄せるために。
ジョニーのグループから誰かが死んだらしい。アルドのエルフ娘も、それに崩れ落ちて敵と俺を追いかけようと無駄な足掻きを続けるゴーレムたちの様子から判断するに、クリスティーナも。
最後の加速を発動させて、俺は天使から距離を取ろうと駆け出した。だがすぐに気づいた――減速し始めている。メカのブレスレットがどんどん速く回転し、砂埃や小石、そして俺自身を吸い込んでいく。サポート解除を呼び出した――すると天使が弾薬と戦闘糧食に死の握力で食らいついた。確かあそこには手榴弾もあったはずだ。素早くテクノ歩兵に切り替えて、キューブに向けて弾丸を撃ち込み、備蓄を起爆させた。ブレスレットは回転を止めた――破片やらゴミやらが大量に詰まって動かなくなったんだ。もっとも、破片は俺にも突き刺さって、装甲プレートが体の全部を覆ってるわけじゃないことを証明してくれたけどな。ドラコニドに切り替えると、無数の傷が塞がり始めるのを感じた。ただし天使にはもう一つ武器があって、そいつも回転させ始めやがった。二度目に同じ手は通じないだろうな。
俺はまた走り出し、再び減速を感じた瞬間、壁を立てて爪を発動させ、キチン質に食い込ませて踏ん張った。天使は諦めず、じりじりと近づいてくる。奴の一歩ごとに爪がねじ切れそうになるのを感じる。何本か指が折れて再生し始めた。
メカのチャージが切れ、数秒後には爪も消えた。不自然な角度にねじ曲がった何本かの指の痛みに耐えようと、俺は歯を食いしばった。見ないようにしながらも傷を確かめ、視線が指輪に落ちた。くそったれ!効くかどうかは分からないが。
アイヴィは前回と変わらない様子だった。
「ぶーぶー、ずーっと呼んでくれなかったんだから、いじわるさん!」少女は舌を出しながら、ふざけた調子で言った。
「今はそんな場合じゃない」顔をしかめながら俺は答えた。もう少し後悔し始めていた。
「あー、もう、見れば分かるよ、ばか。で、なにがほしいのー?」
確かに、何だ? 俺たちが勝てなかったってのは一つの問題だが、天使が俺を連れ去ろうとしているってのは別の問題だ。
「このクソ野郎を倒す」
少女は俺の体をすり抜けて飛んでいき、近づいてくる天使を眺めながら額に皺を寄せた。
「だよねー、だよねー。こりゃまた困ったねー。あんたがアルヴァー側なら、ゴリアテしか出せないよー。ちょうどクリスタル持ってるしねー」
「頼む」
少女は高らかに笑った。
「んもー、いじわるさん。可愛いロボットに悪いから、ただで助けるのはずるいんだよねー。じゃあ、じゅーねん、ちょうだい、それで手を打ってあげるー」
少女は首を傾げて、好奇心たっぷりの目で俺を見つめた。
「だったらくそくらえだ」俺は囁いて、指輪に手を伸ばした。
「まってまってまって!わかったわかった、いじわるさん、じょ・う・だ・ん、だってば、じょ・う・だ・ん!」少女は明らかに生き生きとしてきた。「よんねんで、どう?」
蘇生二回分の値段か?まあ、一回は確実に必要になるだろうな、あいつらのところに行ったら。はぁ。
「わかった」俺は素早く言って、回転を始めたエンジェルのブレスレットを見つめた。
◇◇◇
「現在の残存寿命――29+(88)。能力発動用ボーナス年数:26(3)(係数0.3)」
「フレムテック派閥とのシナジー(70/100)」
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