第四十七章 夜の訪問者
幸い、ゲフールは期待を裏切らなかった。薬草師は薬草だけでなく他の分野の専門家でもあったし、ファリンも手伝ってくれることにした。
普段はかなり落ち着いているキューだが、今はとても怯えているように見えた。そういえば、あいつらの派閥ではクローン以外に新しい人間が生まれたりするんだろうか?もしないなら、こんなパニックになるのも無理はない。
俺は少女に近づいた。キューは俺の姿を見て少し落ち着いたようだった。彼女は俺の手にしがみつき、自分の方へ引き寄せた。すぐ近くまで来ると、急いた小さな声が聞こえてきた。
「ニコ、お願い、行かないで。すごく怖いの」
少女を抱きしめ、俺は彼女の手のひらを探り当てて自分の手で握った。キューは指をぎゅっと握りしめ、感謝の眼差しを俺に向けた。
「ニコ、外に出てくれないか?」とファリンが尋ねた。
「嫌だ」
長老は俺の答えに少し面食らったようだったが、反論してくることはなかった。
それからは、ファリンが彼女にアドバイスを与える時を除いて、できる限りキューの気を引こうと努め、処置そのものには注意を向けなかった。こういう時になって初めてわかるんだ、たとえ本人が計画していたことだとしても、どれほどのストレスか……
赤ん坊の泣き声が響いた時、キューは俺の汗ばんだ手を離し、顔を俺に押し付けて泣き出した。喜びなのか、安堵なのか。少女の頭を撫でながら、俺は慎重に子供を受け取って母親に手渡した。
女の子だ。鮮やかな青い目――ああ、俺には青い目の子が多いな。遺伝子ってやつは面白いことをする。頭には少し黒い産毛。それ以外はまだなんとも言えない。
ただ不思議なのは、アルヴァーがこんなに子沢山なのか、それとも他の派閥からは一人ずつしか子供がいないのはたまたまなのか? キルハイヴは、もちろん別だが。
「もう名前は考えてあるのか?」
「あ、正直なところ、あなたにお願いしたいと思ってたの」とキューは娘を見つめながら答えた。
ふむ。そういえば、昔、青い目をした優しい女性がいて、俺を助けてくれたことがあったな。
「アイリーン」
「あ、いいじゃん!」
キューは気に入ったようだ。名前が短いからだろう。まあ、それならよかった。
「市民ステータス:+1(84)」
「ステータス更新中……完了。
新たな子供が登録されました:アイリーン・ヴィノグラードヴァ、フレムテック/アルヴァー派閥。
フレムテック派閥とのシナジー+25%(60/100)」
母子ともに無事なのを確かめて、ファリンと薬草師は礼を言う俺の言葉を聞いてから帰っていった。俺はキューと赤ん坊にキスをして、そろそろ行こうとしたんだが、彼女がまた俺の手を掴んだ。
「明日は気をつけて、いいわね?あいつらが何か欲しがってる時は、死んでも止まらないんだから」キューは明らかに沈んだ様子で、心配そうに俺を見つめた。
「その点じゃ、俺たちは似てるな。俺も止まらないから」微笑みながら答えた。彼女は俺の目に何か迷いや不安を読み取ろうとしたが、どうやら見つからなかったらしく、安心した様子だった。俺の手を離すと、キューは視線で見送り、それから赤ん坊に意識を向けた。
訓練が終わるのを待ってから、さらに12時間セットするのはリスキーだと判断した。前回みたいになったら、攻撃開始が早すぎる。だから、第二の村の女性三人――すでにランク1を取得した者たちを訓練にセットした。
あとはモデルのアップグレードをどうするかだ。他に何を選ぶ?射手は無理だ、剣士と同じく。ヒーラー、アルケミスト、エンジニア?サポート役をやってる暇はなさそうだ。フレムテックのパイロット――メカがない。ドローン操縦士――ドローン本体が必要だろう。これもなしだ。テクガンに残ってるのは、運転と据え置き武器射撃の上級バリアントだけ。うーん。改めて考えると、あまり効果的じゃないかもしれないが、試してみる価値はあるか。
二つのアップグレードで金貨150枚。軽車両スペシャリスト、砲手オペレーター。全モデルに適用された。
残るはキルハイヴだ。だがこっちは突然変異にムタゲン5個以上必要で、これもなしだ。
ため息をついて、俺は寝に向かった。手持ちのリソースから最大限引き出せたことを願うばかりだ。
ベッドにはもうセフィーナとジェシーが横になっていた。一日中顔を見なかったことを考えると、まるで一歩も出ていなかったような気がする。でも、さすがにそれはないだろう。アンネリはどこにいるんだ? センターで子供たちと一緒に寝てるのか?
セフィーナのベッドの上で派手に広がっている尻尾を整えてから、俺は横になった。二人が寝返りを打って、俺の方を向く。目を薄く開けたジェシーが俺を見て微笑むと、俺を抱きしめて再び眠りに落ちていった。
頭の中で起きた出来事を反芻しているうちに、いつの間にか俺も意識を失っていた。
◇◇◇
村は眠りについていた。弱い風が基地の傍の森の木々の枝をそっと揺らし、葉擦れのかすかな音と、壁を構築するナノロボットの微かな音だけが、絶対的な静寂を破っていた。見張り塔の射手たちのまばらな動きだけが、まだ誰かが周囲を監視していることを示していた。
この静けさの中、センターから三つの人影が離れた。暗い布に身を包んだ彼女たちは、素早い移動を繰り返して中央ターミナルにたどり着いた。その一人が本に触れ、白く光る紙に浮かび上がる文字を注意深く読み始めた。
「死すべき者の娘……データ更新。おやすみ、友よ!成人したことで、すべての秘密が開示されました!」
「クリスティーナ、何て書いてあるの?」黒猫ちゃんの小さな囁きが聞こえたが、すぐに弱々しい「あっ」と途切れた。白猫ちゃんが首を振りながら、妹の尻尾を手から離した。
クリスティーナはページをめくり、指で名前を辿った。
「エヴィナ、新しいランクなし兵科モデルが利用可能:(???)。開放には『剣士』系統でランク2の取得が必要」
「クリスティーナ、新しいランクなし兵科モデルが利用可能:(???)。開放には『錬金術師』系統でランク2の取得が必要」
「アルビゲイル、新しいランクなし兵科モデルが利用可能:(???)。開放には『剣士』系統でランク2の取得が必要」
「行きましょう」少女は短く答え、本から離れた。
屋敷に着くと、姉妹は慎重に中へ入り、上階へと向かった。そして真っ先に客用寝室の扉へと近づいた。
クリスティーナは静かにノックし、大きな声で囁いた。
「ラズ!」
静寂。
「リカ!」
眉をひそめて、少女はドアノブを回すと、近づいてきたラズの頭にドアを思いっきり叩きつけた。
「痛っ! 何すんのよ、こんな時間に!」リカは額をさすりながら、大声で不満げに囁いた。
「ごめん、にゃ!」クリスティーナが慌てて喋り出した。「助けて欲しいの、お願いお願い!」
首を振って、ラズは外に出ると、背後のドアを閉めた。一行は慎重に最上階まで上がり、家族用端末の前で立ち止まった。
「それで?」
クリスティーナはラズの腕を掴むと、その手のひらを本に押し付けた。死すべき者との血縁確認の手続きを全て済ませると、猫娘は必要な作業を素早く説明し始めた。
「じゃあ、何でパパを起こさないの?」ラズが欠伸をしながら尋ねた。
「だって、明日一緒に行かせてくれるわけないじゃん」エヴィナがイライラした様子で言った。
「ふむ、お前の言う通りだ。よし、サクッと終わらせよう」
猫耳姉妹は揃って横になり、ラズは二人に順番にランク1までの学習を選択した。
下から椅子を運んできて、リカは姉妹の向かいに座り込み、うとうとし始めた。喜びに満ちたクリスティーナに揺すられて目を覚ますまで。ため息をついて、ラズは同じ操作を繰り返した。今度はランク2までだ。その後、眠りに就いた。
「何か感じる?」姉妹がランク2を得た後、エヴィナが確認した。
「まあ、なんか強くなった気がする」アルビが自信なさげに言った。
「そうね、きっとそうよ。後で試してみましょう。さあ、次はコンバーター!」しかめっ面で、クリスティーナはエヴィナを暗い窪みへと押し込んだ。
戦士+剣士、金貨125枚。
エヴィナは宙に浮かぶ指輪を手に取り、満足そうな顔で指にはめた。くるりと回して、嬉しそうに剣を振り回し始めた。
「おいおい、姉ちゃん、気をつけてくれよ!」アルビが身を屈めて声を上げた。
その間に、機械的な声がアナウンスした。
「変換完了。エヴィナ、ランクなし兵科モデル――精霊使いが利用可能。クリスタリット50」
邪魔されたことに不満げな様子で、彼女は剣を鞘に収め、再び変換装置の中に入った。
光が消える間もなく、新たなフレーズが響いた。
「変換完了。ランクなし兵科モデル2の選択:上位精霊使い。クリスタリット100」
「はいはい!」クリスティーナが素早く言って、エヴィナに我に返る隙を与えなかった。
「変換完了。精霊の指輪を受け取ってください。新たな成長ルートが開放されました:エヴィナの兵科モデル――ゴーストブレード。クリスタライト75、クリスタリット50」
耳を興奮で震わせながら、クリスティーナはエヴィナが指輪を受け取った後で確認した。
拳を握りしめて、妹は白い光が変換器の隙間を這っていくのを見守った。そしてついに全てが終わると、エヴィナが出てきた。
「最大兵科モデル。これ以上の発展は不可能」
首を振って、クリスティーナは試してみることを提案した。エヴィナは指輪を回すと、短い灰色のドレス姿になった。白い腕当て以外に鎧はない。少女の手には灰色の煙が渦巻く長剣があり、実際にどんな形や長さなのかすぐには分かりにくかった。
姉妹たちから離れて、少女は武器を振るった。彼女の背後でどこからともなく現れた青いマントがざわめき、彼女の体を包み込んで半透明にした。アルビが近づいて、無表情のままエヴィナがいる場所を指で突いたが、指は彼女をすり抜けた。普段よりさらに青ざめた白猫ちゃんは実験を繰り返したが、結果は同じだった。エヴィナが剣を横に逸らして柄を回すと――アルビの手を見えない力が弾き飛ばし、その後、すっかり元に戻った彼女は満足げに実体化した妹を抱きしめた。
「うわ、すごいと思う!」エヴィナは煙を上げる刃を眺めながらそう言っただけだった。「次は誰?」
「まあ、錬金術師がそこまで役立つとは思わないから、アルビ、行きなよ」
「なんでそう思うの?」エヴィナが驚いた。「あんた私たちの中で一番頭いいのに、戦闘で役立たずだなんて思ってるの?」
クリスティーナは気まずそうにくすくす笑った。自分のモデルが弱すぎて、他人の期待に応えられないんじゃないかとちょっと怖がっているのを隠そうとしていた。
不満げにうなずきながら、クリスティーナはアルビをコンバーターに押し込んだ。
戦士は成功したが、剣士は――金貨が足りなかった。少女の注意を引いたのは、最寄りのターミナルに表示された文字だった。
「金貨不足です、親愛なる友よ!錬金術の石材は既に再充電され、稼働準備完了です。変換するリソースを選択してください」
リストを見て、クリスティーナは唇を噛んだ。安いリソースはない、でも……変換も必要だ。目を閉じて、少女は鉄をタップした。
深呼吸して、戦士への変換を承認した。合計――こっちも金貨125枚。
アルビはニッチから出てきたが、指輪で遊ぶことはせず、ただそれを受け取ってポケットに突っ込んだ。
「変換完了。アルビゲイル、ランクなし兵科モデルが利用可能――炎の巫女。クリスタリット50」
妹に促されるまでもなく、白い猫ちゃんは再び中へ入っていった。
「変換完了。ランクなし兵科モデル2:炎の大巫女を選択。クリスタリット100」
今度は姉妹揃って、一体どうなるのかと待ち構えていた。
「変換完了。炎の指輪を取得。新たな成長ルートが開放:アルビゲイル兵科モデル――スライシングフェニックス。クリスタライト35、リバーサイト35、クリスタリット50」
飄々とした様子のアルビが新しい指輪を掴んで回すまで、苦しいほど長い数秒が流れた。
「最大兵科モデル。これ以上の発展は不可能」
短いショートパンツとタンクトップ、ブーツと腕輪だけの姿になった彼女は、赤い光を放つ小剣を両手で握りしめていた。アルビが眉をひそめると、足元で炎の舌が踊り出し、彼女の体を赤いマントが包み込んだ。炎が完全に少女を覆い尽くし、剣の形を取って横へ飛んだかと思うと、また戻ってきた。それとも、これが剣そのものなのか?
やがて炎は消えた。
「家まで燃やさなかっただけマシね」エヴィナが苦笑いを浮かべた。
「ちゃんとコントロールしてたのよ。まあ、そう見えなかったかもしれないけど……」
今度は姉妹二人ともクリスティーナを見つめた。当の本人はもう全部終わったことにしようとしていたが。
「いやいやいや!」姉妹は声を揃えて言うと、クリスティーナを変換装置へ引きずっていった。
「にゃあ! 待って! ああもう」彼女は抵抗しようとしたが無駄だった。「わかったわよ。錬金術師の弟子、錬金術師」
「金貨75枚+100枚」
変換が完了すると、クリスティーナは次の言葉を判決のように待ちながら目をぎゅっと閉じた。
「変換完了。クリスティーナ、ランクなし兵科モデル――ゴーレム創造者が利用可能。クリスタリット50、アッペライト50」
ビクッと震えて、尻尾を掴んだ少女は、変換を承認した。
「変換完了。ランクなし兵科モデル2選択――上位ゴーレム創造者。クリスタリット100、アッペライト100、クリスタライト50」
身を縮こまらせて、クリスティーナはこれも承認した。
「変換完了。ゴーレムの指輪を受け取れ。新たな発展ラインが開放された――クリスティーナの兵科モデル、アルヴァーのアバターの女主。クリスタリット500、アッペライト250、クリスタライト200」
「え、何? 何がそんなに高いの、クリスティ?!」エヴィナが驚いて叫び、すぐさま自分の口を押さえた。
「わ、わからない」喜びと落胆が入り混じった様子で、少女は自信なさげに言った。「でも、もう行かないと。これ以上やることはないし」
少女たちは静かに屋敷を出て、センターへと向かった。
◇◇◇
少し早く目が覚めて、俺はどうしても眠れなかった。頭の中で警告メッセージがピコピコ鳴り出すのを待っていたんだ。だが、一向に現れやしない!気を紛らわせようと、セフィーナのふわふわした耳をいじくり回していたら、ようやく待ち望んでいたものが届いた。
「攻撃の日。現在の統計:……」
リストは相変わらずだ。そして、また月額料金のせいでアグネスが来る。復活させるのにそんなに早く間に合うとは思えないんだが。新しい村にもボーナスが配られたみたいだけど、タイマーを待ってる間そのメニューには目もくれなかった。
「注意! 連結ポータルは01:29:57後に開放されます」
「新しい『ロートク』が01:29:55後に各ポータルゾーンに追加されます」
時間は少し多めだが、『ロートク』を探すのにたったの数秒しかない!
「兵士6名がランク2に昇格」
ちょっと待て、俺は三人残したはずだ。何だこのバグは?
「市民3名が成人に達しました。職業選択が可能です」
ああ、娘たちが成長したのか。だが、そいつらは戦闘の後で対処しよう。ただ、確か普通は職業についても何か表示されるはずだったような……
「建設完了。
建設済み:石壁、薬草農場、石炭鉱山、射手工房、防具工房。
利用可能な建築物リストを更新中……完了。
新規基本施設:強化石壁」
おお、これも後で対処する時間はある。もしくはアンネリが新しい住民たちを配置してくれるだろう。
全員を起こした後、俺はセンターに走り、管理者に指示を出してから、キャンプに向かってフェブリモールに最後の指示を伝えた。居合わせた全員に指示を出している間にちょうど一時間が経ち、俺は技術者レジナルドのモデルを防衛スペシャリストに昇格させた:木材110、鋼100、高品質鋼30。さらにベルトラムから見習い錬金術師を獲得した。木材25、鉄25、クリスタリット10、アッペライト10、石炭10だった。
これを片付けた後、俺はジェシーと一緒に予備から最後のグレネードランチャーを手に取り、これから戦場となる場所へと向かった。
時間を無駄にしないよう、俺たちはもっと近くに陣取った。ジョニーに期待しすぎかもしれないが、たとえテクガンが襲ってきても蘇生のチャンスはある。だが協力体制になった場合、集合に時間がかかりすぎるんだ。
「『ロートク』設置完了!」
俺の号令でランク0たちが捜索に飛び出し、数秒後にはポータルが現れ始めた。今回は最初のポータルから左に200メートルほどの位置だ。
息を殺して、俺は広がっていく楕円を見つめた。兵士たちは全員緊張し、陽気な口笛が聞こえてきた瞬間、びくっと震えた。
ポータルからジョニーが出てきて、にっこり笑うとこう言った。
「よう、兄弟、フレムどもをぶちのめしに行こうぜ」
◇◇◇
「現在の残存寿命――31+(83)。能力発動用ボーナス年数:24(24)(係数0.3)」
「フレムテック派閥とのシナジー(60/100)。
死すべき者の現在の兵科モデル:ヘビータクティカルナイト、スナイパーアーチャー、テクノ歩兵、ドラコニド。
現在の建設:なし。
軍隊:
ランク4:1体。ブレードダンサー。
ランク3:11体。シールダー、エリートマークスマン×3、セフィーナ、ジェシー、ケル、エンジニア、バーサーカー、ウィンドアーチャー、ソードマスター。
ランク2:12体。戦士×6、闘士×2、スナイパー、エヴィナ、クリスティーナ、アルビ。
ランク1:1体。キュー。
ランク0:4体。闘士×4。
訓練中:0」




