第三章 建設
長老が呆気に取られた様子だったと言っても、まだ控えめな表現だろう。まあ、俺も驚いてはいた。ただ、目の前の出来事そのものじゃなくて、何というか、設定との食い違いみたいなものにだ。インターフェースは使いやすいし、こんなプラットフォームを一つ作るのにどれだけ時間がかかるか想像したら、そりゃあどんな敵だって生き残るチャンスすら与えないだろうな。
視界の端で、テントから興味津々の連中が集まってくるのが見えた。まあ、あれだけ騒ぎになったんだから当然か。
一番近くまで来たのはファリンの娘だったが、彼女でさえプラットフォームに足を踏み入れる勇気はなく、少し離れたところで不安そうに自分の尻尾を手で弄っているだけだった。
「長老、こういうの、初めて見るんですか?」
「え?! ああ。思い出してみれば、首都といくつかの都市が似たような、えーと、地形の上に建っているんだが。まさかこんな風に始まるとは思いもしなかったよ」
俺は肯定的に頷いて、パネルに戻ろうとした。すると突然、長老が俺の袖を引っ張って、熱っぽく囁いてきた。
「ニコ、あなた、これがどう機能するか理解してますよね? 正直言って、私はただ衝撃を受けているだけなんですが、住民の前で恥をかきたくないんです。お願いします、何とかしてください!」
「ああ、そうだな、分かった。だが、俺の指示には絶対に従ってもらうし、質問があれば答えてもらう。それと、当然だが、村人たちからも全面的な協力が必要だ」
こんな言い方をするのは少し気が引けたが、誰が誰なのか理解してもらわなきゃならない。どれだけ助けたいと思っても、結局こっちは連中の我儘のせいで日に日に死に近づいてるんだ。だから、これはもう善意の問題じゃない。生き残りの問題なんだ。
最初は少し呆然としていたファリンが、突然深く頭を下げて、希望の光を宿した目で静かに言った。
「もちろんです、ニコさん」
よし、いい感じだ。俺はパネルの調査に没頭した。「ヘルプ」ボタンを押すと、数行だけ表示された。
「基礎建物に関する注記:
――労働者不要。
――資源不要な建物:死すべき者の館、村の中心、倉庫、食料貯蔵庫。
建設するには、選択した建設現場に向かい、ローカルターミナルを使用してください」
よく見ると、確かにリストアップされた建物には「建設」ボタンが表示されているだけだった。他の建物には資源と時間が記載されている。一番気になったのは時間の方だったが、どうやらここでの建設は加速されているらしい。家が建つまで何日も待たされることはなさそうだ。
じゃあ、始めようか? まずは無料の倉庫と貯蔵庫から取りかかるのが妥当だろう。でも、「ローカルターミナル」って何だ?
俺は建設現地を歩き回った。現地自体が円形になっているだけでなく、等間隔で同じサイズの円がたくさん描かれていて、時計の文字盤のように配置されている。統一感があるというか、カジュアルな感じだな。まあ、それはそれでいいか。
一番近い円に近づいて、じっくり観察してみた。すると、敷石の間に小さな押しボタンを見つけた。見た目はゴミ箱についているやつみたいだ。押してみたが、何も反応しない。まあそうだよな、ここを人が歩き回るなら、頻繁にこんなボタンを踏んじゃって、碌なことにならないだろう。指のトリックを試してみるか。
「チップ」を触れさせると、地面から最初のものと似た柱が伸びてきて、文字が書かれた本のように開いた。
「建設ローカルターミナル。利用可能な建物:」
ああ、リストは同じだ。ただし小屋と採石場はない。でも工房はある。どうやら採掘系の建物は別の方法で建てる必要があるみたいだな。
倉庫を建てるには向いていない場所だったから、俺は「閉じる」ボタンを見つけて押した。パネルは素直に地面の下へ引っ込んだ。
さて、俺は円の端の方へ向かった。敷地の中でも森と山がちな地形に近い側だ。運搬距離が短い方が稼げるからな。
円の端には、大きな円と同じような配置で小さな円がたくさん並んでいた。もしかして、ここが資源採掘施設を建てる場所か? 小屋くらいなら十分置けるスペースだ。面白いことに、ファリンはずっと熱心なファンみたいに俺の後をついて回っていたし、セフィーナの周りの見物人は何倍にも増えていた。
よし、ここがちょうどいい。例の手順でパネルを地面から引き出して、建設リストの中から「倉庫」を押した。
「建設エリアから離れてください」
俺が円の外に出ると、ドスンという音と共に地面が沈み込み、大きな建物の木と石で組まれた骨組みを載せて戻ってきた。小さな黒い虫としか言いようがないものが這い回り始め、板の上をうごめいている。見る見るうちに骨組みに壁が張られ、屋根や窓、それに幅の広い扉が現れた。数分後にはすべてが静まり返り、目の前にはピカピカの新築が建っていた。
「建設完了」
「メッセージを受信しました。開きますか? はい/いいえ」
俺の頭の中なんだから、開いたっていいだろ。今まで悪いことなんて起きなかったんだし。
「あなたの派閥は後れを取っています! 諦めないでください、すべての基礎村は基礎資源セットを受け取ります」×365
え、三百六十五通も同じメールが?! なんでもっと来なかったんだよ?
でもその先には新しい表示が出てきた。
「添付ファイルから資源を追加しますか? はい/いいえ。一年以上前に受信したメールは自動的に削除されます」
あ、そういうことか。追加する、もちろん。
倉庫から轟音が響いてきたが、すぐに止んだ。再び文字が現れた。
「倉庫が満杯です。余剰資源はシステム『ロートク』の内部ストレージに保管されました」
「食料資源にアクセスするには、対応する倉庫を建設してください」
「さあ、見てみるか?」
長老はまだ倉庫に見入っていたが、我に返ると馬鹿みたいにこくこく頷いた。
俺は近づいてドアを開けた。中はとても整頓されていて、床には浸水を避けるためだろうか、石のパレットが敷かれている。それ以外では、建築用に規格化されたらしいサイズの板材が綺麗に積み上げられていた。切り出された石材も反対側に整然と並べられている。棚には様々な工具や作業道具が並んでいる。ツルハシ、シャベル、鍬、ハンマー、のこぎり。原始的な斧や弓までもあった。どうやら武器ではなく、狩猟や伐採用の道具というカテゴリーに入るらしい。
そして何より俺の興味を引いたのは、金属の箱に丁寧に収められた、青く淡く光る結晶だった。どうやらファリンも興味を持ったようで、目を輝かせると満足げに手を叩いた。
「おお、こんなにクリスタリットが!」
「で、それは何なんだ?」
「ああ、これは最もありふれた魔法鉱物なんだ。でも、まあ、最もありふれてるって言っても、どこにでもあるわけじゃない。魔法使いが引っ張りだこだよ!」
そういうことか。でも、基礎資源にただ付属してただけってことは、そこまで貴重なものじゃないらしい。
実際、倉庫にはまだたっぷり余裕があった。すぐに中の表示パネルを見つけて、確認してみることにした。
「倉庫№1。状態:
木材――最大値。
石材――最大値。
工具――最大値。
クリスタリット――365単位」
謎が解けた。資源ごとに決まった場所が割り当てられてるんだ。クリスタリットが大量にあるのは、単に一年間蓄積されてきたからってだけだ。
倉庫を出て、円の反対側まで歩き、川に近いところまで来た。食料は色々なところから来るだろうし、少なくとも一つには近い方がいいだろう。
「食料貯蔵庫」は倉庫と同じように現れた。造りも似たようなもので、ただ少し小さくて、窓は小さく天井近くにしかなかった。
中はかなり涼しかった。壁に小さな青い結晶が埋め込まれていて、微かに光っている。まさかこの結晶が冷蔵装置の役割を果たしているのか? まあ、これなら安心だし、最初から食料のことで頭を悩ませなくて済む。
だが基本食料の品揃えには失望した。ここにあったのは果物だけだ。ただし、量は多い。肉を吊るすフックや、魚用の水槽まであって、排水もできるようになっている。一体どこからそこに魚が入ってくるんだ? 自分たちで運ぶしかないんだろうな。
りんごをだるそうにかじりながら、ファリンは主人のように施設内を見回して、「いやあ、信じられるか!」みたいなことをぶつぶつ言っていた。
俺は外に出て中心に向かった。村の中心を建てるなら、ここだろう?
今回の骨組みはとても大きかった。その前に時計マークが浮かび上がり、「0:59」と表示された。どうやら一時間かかるようだな?
残りは一つだな? 丘の端に近い場所を選んで、「死すべき者の館」を注文した。骨組みはこれもなかなか立派だったが、制限時間は三十分だった。
ファリンが村の中心部の建設を見つめているのを引き離して、俺は質問を投げた。
「住民はどうなんだ、全部で何人いる?」
「ふむ、今数えてみるぞ。まあ、お前を除いて29人だ」
「ああ、サンキュー」
屋敷の隣の円に近づいて、俺は「家」を選んだ。木材が50単位、石材が30単位消費された。さらに工具が10単位。どこに使われるのかいまいちよく分からないが、まあ後で考えよう。
倉庫の方からガタガタと音がするのを聞くに、資源はもう補充されたらしい。そしてその間に、家はもう完成していた。
「アルヴァー派閥とのシナジー+2%(22/100)」
おお、普通の建物でももらえるのか? 彼女が何をしようと、それは覚えておこう。
感じのいい西洋風の小さな家で、三角屋根が可愛らしい二階建てだ。中に入ってみると、家具まで揃っていた。共用の居間、大きなキッチンには暖炉と直火を起こせる場所もある。嬉しかったのはトイレがあったことだ――こいつは本当に予想外だった! どうやら文明的なバイオトイレ(魔法トイレ?)らしく、床に穴が開いてるだけの代物じゃない。
全部で十部屋、かなり広めで各階に五つずつ。内装はシンプルだ。木製のベッド、クローゼット、タンス、それに小さなテーブルと椅子。そういえば家族のことを聞いてなかったな。まあ、一緒に住む方法は自分たちで考えるだろう。
さらに二軒の家を発注して、俺は屋敷の建設が終わるのを待った。長老には新しい住宅へ引っ越す人たちを集めてもらい、全員が落ち着いたら屋敷の前に集まるよう頼んでから、俺は自分の新しい三階建ての家へと向かった。
スタイルは同じだが、内装は豪華だ。居間には獣の毛皮が敷かれ、柔らかくて大きなL字型のソファ、暖炉もある。キッチンは小さめだが、ここに十人も住むわけじゃないしな。二階には巨大なダブルベッドのある寝室があって、どうやら死すべき者がインポでもなければ誰にも相手にされない童貞野郎でもないという前提らしい。
二階にはもう一つ、大きな木製の机のある書斎があった。机の上にはインク、羊皮紙、羽ペンといった筆記用具が並んでいる。空の本棚もここにあった。
一階には客用の寝室があって、質素な造りで普通の家と同じだ。
三階には空っぽの部屋がいくつもあって、それぞれに端末が一台ずつ置かれていた。だがどれも「派閥とのシナジーレベル不足」と表示されている。あとは効率よくシナジーを上げる方法を考えるだけだな。
そしてついに、俺は地下室へ降りた。予想以上に広く、丁寧に石が敷き詰められていた。床から柔らかな白い光が溢れ出ているので、照明は必要なかった。
中央には床から少し高くなった台座があり、そこに端末が置かれていた。起動ボタンを押すと、こう表示された。
「テレポート:アクティブなシジルが存在しません。転送は不可能です」
へえ、そういうことか? ロートクってのは本当にいろんなことができるんだな。みんながあれを血眼になって追いかけるのも無理はない。
地下室の奥で、床に魔法陣が描かれているのが見えた。その傍らにも本型の端末があった。指で触れた瞬間、表示された内容に思わず身震いした。
「死すべき者の生命管理:『死すべき者の心臓』の設置が必要です。設置を実行しますか? はい/いいえ」
俺は少し迷ってから、「はい」を押した。
「リソース不足:クリスタリット。365/400」




