第三十三章 砂漠での軽食
くそったれのアンデッドがしっかりと食いついてきた。状況さえなければ面白い言葉の組み合わせなんだが。俺はもう片方の足で骨の指を蹴り飛ばそうとしたが、無駄だった。ジョニーの方は貪欲に迫ってくる指から器用に避けながら、予測不能な軌道で素早く宙返りし、穴を飛び越えていた。
俺は無料の力の強化を発動させ、足を引っ張って骨ばった腕を床から引きはがした。すぐに他の手が俺に向かって伸びてきたが、俺は金属のブーツで勢いよく蹴り始め、骨を折り、手首をもぎ取った。
クスクス笑うスケルトンは少し離れたところに下がり、緑色に光る両手を振りかざすと、大量の鋭い骨片を俺に向けて放ってきた。盾で身を守った俺は無傷で済んだが、いくつかの骨片は金属すら貫通したところを見ると、これは本当に良い判断だった。
「兄貴、どうすりゃいいんだ?」息を切らしたジョニーが慌てて尋ねた。手に負えないアンデッドを撃とうとするのを諦め、今はウサギのようにホールを飛び跳ねているだけだ。
「手榴弾しかないな、まあ、洞窟の中だけど?」
「ああ、くそったれ、やってみるか」
兵隊崩れは迷わず安全ピンを引き抜き、手榴弾をメインのスケルトンに投げつけた。そいつはさっと頭を向け、新たな脅威を見定めると、下から上に両手を振り、目の前に骨の壁を作り出した。
爆発で壁が崩れ落ち、破片を四方八方にまき散らし、あたり一面を骨の粉で覆い尽くした。天井からいくつもの板が落下し、蠢く手足が詰まった穴の一部を潰していった。
アンデッドが両手を振ると、目の前に緑のポータルが現れ、そこから幅広で太い骨格を持つ二メートル超の巨大スケルトンが姿を現した。新たな敵は部分的に鋼鉄の鎧で防御され、両手剣で武装している。顎をカチカチ鳴らしながら、その大男が俺に向かって突進してくる。一方、スケルトン魔術師はテクガンの奴に向けて緑の炎の塊を投げ始め、床や壁に着弾すると消えない炎の源を残していった。
「ジョニー、もう一回試してみろ、あのクソ野郎に近づけ!」
「ああ、今すぐ全部放り出して突っ込むさ。お前がやってみろよ、なあ、俺はもうすぐローストチキンにされちまう!」
俺は兵士のところまで走り寄り、手榴弾を二個もらうと、ついでにそいつと鎧を着た大男に投げつけた。
魔術師に近づいた途端、そいつは全ての注意を俺に向けてきた。炎の塊が飛んでくる、次に骨片が、だが俺は無料の加速を発動させて前へ突っ込んだ。驚いたように顎をカチリと鳴らし、魔術師が何か別の呪文を唱えようとしたが、俺はもう目の前にいた。勢いに乗ったまま体当たりし、盾の一撃で地面に叩きつけた。力のボーナスはその時点で既に切れていたが、俺の体と鎧の合わせた重量だけで十分だった。脆い化け物は衝撃でバラバラになった。だが床に散らばった骨の欠片がゆっくりと寄り集まり始めたので、俺はピンを引き抜き、再生しようとする体の真ん中に爆弾を置いた。
距離を取って逃げると、爆発音と、石の床に骨が落ちて乾いた音を立てるのが聞こえた。
巨人は鎧もろとも轟音を立てて崩れ落ち、緑の火は消え、腕は穴の中へと這い戻っていった。
大きく息を吐いて、ジョニーはその場にどさりと尻餅をついて笑い出した。
「すげえよな、兄貴たちに話したら驚くぜ、なあ、ニコ?」
だが俺は答えなかった。目の前の空中に、滑らかで平たい丸い形の小石が現れた。それは様々な色に輝きながら、やがて紫色に変わった。
「神の石材を回収せよ――魂の吸収」
俺は慎重にそれを手に取り、ポーチにしまった。
「ああ、まったくだ」遅れて俺はジョニーに答えた。頭の中で、この石材にどんな能力があるのか考えを巡らせていた。
ガラスケースから手に入れた本は、ポケットノート程度の大きさに縮んでいた。だからそれも回収しておいた。
俺はジョニーのところへ行き、隣に腰を下ろした。
「腹減ったなあ。この辺の光るキノコとか、食えねえかな?」兵隊崩れが舌なめずりしながら、あの光る羊肚菌を思い出して言った。
「あの花も焼いて食うか? 何だか分からねえもん口にするより、先に進もうぜ」
「あー、ちくしょう、分かったよ。行くか。ところでよ、あの死んだ野郎から何か使えるもん出たか?」
「いや、本一冊取っただけだ。それだけ」
「マジかよ、詐欺じゃねえか。はあ」
ジョニーが軽々と跳ね起きて、出口へ向かった。またトンネルだ。今度は下り坂。空気が明らかに乾いてきた。苔やキノコもどんどん減っていく。そしてついに、俺たちはまた砂漠に出た。ただ、少し涼しくなっていた。それに太陽――拠点と同じ二つの太陽が、夕暮れ近くまで傾いていた。まだ同じ惑星にいるってことだろう。どこかのクソッタレな実験場、そう呼ぶしかない。
周りは岩と砂と貧相な植物ばかりだったが、遠くに建物が見えた。ジョニーが嬉しそうに叫んだ。
「拠点だ! くそったれ左に、ニコ、もうすぐだぞ、見ろよ、あそこに拠点がある!」
俺の返事を聞く気もなく、ジョニーは前へ走り出した。タンクトップを脱ぎ捨て、嬉しそうにそれを振り回している。俺の見立てでは建物まで優に二キロはある。つまり、とてつもなく長くて退屈なランニングが待っているわけだ。テクガンの奴がどれだけ無防備でも、俺は装甲を切るつもりはなかった。ここには何が潜んでいるか分からない。
永遠にも思える時間が過ぎ、汗でずぶ濡れになった俺は、ようやく軍事拠点のアスファルトを踏んだ。確か「ロートク」のテクガン拠点は砂地だったはずだから、ここはジョニーの知ってる特別な軍事拠点なんだろう。全体的には特に変わったところはない。平屋の建物が沢山並んでいて、住居用か、あるいは機能的な施設か。それと閉まった格納庫とガレージ。
ちなみに、当の兵士はとっくに先へ走っていて、窓がたくさんある建物の前に立っていた。
「ニコーーー!こっち来いよ、今から食うぞ!」ジョニーが叫びながら手を振っている。そして、よろよろと歩く俺が辿り着くまで、ちゃんと待っていてくれた。
中は食堂だった。テクガンの奴は厨房へ駆け込み、しきりにガチャガチャと音を立て始めた。
すぐに戻ってきた彼は配給食を持っていた。正直、厨房には普通の食材があると期待していたんだが、こういう食事でも全然悪くない。甘酸っぱいソースのかかった豆、煮込み肉、パンの切れ端。粉末飲料に、デザートまで何かあった。
たっぷり食べ終わり、俺たちは食堂を出た。
「ここには他にも誰かいるはずだと思わないか?それとも、ただの廃拠点だと思ってるのか?」俺は陽気な兵士に聞いてみることにした。
「俺としちゃどうでもいいけどな。行こうぜ、車を見に行って、うまくいきゃヘリも。それでここから逃げ出せて、しかも腹いっぱいなら、誰のもんだろうが何のためだろうが知ったこっちゃねえ」
俺は頷いて、ジョニーの後についていった。結局、すべての謎が解けるわけじゃない。
ガレージの中はがらんとしていた。いや、工具とか、パーツ棚とか、そういうのは置いてあったんだが、肝心の車が一台もなかった。
格納庫も似たような状況だった。だが、それよりも俺を困惑させたのは、ガラスケースの中にある端末だった。書類フォルダみたいな見た目で、「最高機密」と書かれている。
今回はジョニーが先に飛びついて、見慣れないものをじっくり眺めていた。俺はその間に周囲を見回して、こんな文字を見つけた。「ゾーン2。テクガン派閥領域」。ジョニーが何かボタンを押したらしい。無線越しのような歪んだ声が響いた。俺の知らない言語だったが、翻訳が目の前に文字で浮かび上がってきた。
「テクガン、認証……受理。写本を取得してください。注意!神々の試練につき、写本は1つまで!」
「おい、兄弟、ちょっと見てくれよ? そっちには何て書いてあった?」
「受け取りたい者が、だってさ」
「うっ、俺も同じだ。神がどうとか意味不明な話、そんなの信じてねえよ」
声が言った。「神の石材を得ますか? はい/いいえ」
ジョニーが驚いたように鼻を鳴らした。
「やべえ、ラッキー・ジョニーって呼ばれてるだけあるぜ。お前には何も出なかったのに、俺には何か転がり込んでくるんだ! 宝石だったら最高だな!」
「待てよ、ジョニー、やめといた方が……」
「受理。ゾーン2の石材の守護者、起動」
くそ。でも、何も起きてないみたいだ。
俺たちは黙って格納庫から出て行った。だが突然、近づいてくる音が聞こえた。エンジンの轟音。そして――長く引き伸ばされたギターのリフ。直後、ほとんどすぐ近くで耳をつんざくようなヘヴィメタルが鳴り響き始めた。
「何だと? レイダーか?」眉をひそめたジョニーは自動小銃を掴んで格納庫の出口へ駆け寄った。薄い金属が自動小銃の銃撃で穴だらけになったが、兵士はすんでのところで地面に身を投げた。
開け放たれたドアから爆音を立ててバイクが突っ込んできた。乗っていたのは汚れたボロ布をまとい、顔を覆う髑髏マスクをつけた何者かだった。招かれざる客はサブマシンガンを構え、俺に向けて一斉射撃をぶちかました。俺は部分的に撃ち抜かれた盾で身を守った。どうやら重騎士の装甲なら、拳銃弾なんて怖くないらしい。
自動小銃を構えて、俺は短い連射でその厚かましい野郎を仕留め、バイクは持ち主を失った。だが一人目の後にさらに二人が突っ込んできて、チェーンを振り回しながら銃を撃ってきた。
ここでジョニーも負けてはいなかった。最初の一発でレイダーの一人を始末したが、二人目は瞬く間に俺との距離を詰め、巧みにチェーンを俺に巻きつけて引っ張り、床を引きずり回そうとした。だが、どうやらパワーを見誤ったらしく、俺は床に倒れただけで、バイクは急激に勢いを失って乗り手を振り落とした。ジョニーがそいつも撃ち殺した。
「ニコ、逃げないとまずい。レイダーはゴキブリみたいなもんだ。全部は殺しきれねえ」
「やってみようぜ。バギーの運転できるか?」
「おう、当たり前だろ! ただ、ここでどこから持ってくるんだ?」と仲間は疑わしげな目で俺を見た。
俺はグレネードランチャー付きのバギーを召喚して、親切にもジョニーをハンドルに招いた。
「これってあのクソったれニューイヤーだぜ!」ジョニーが嬉しそうに叫びながら、運転席に飛び乗った。
射撃の腕前はたいしたことないが、グレネードランチャーなら当てられるはずだ。
格納庫の壁にグレネードをぶち込んで通り道を確保してから、俺たちは前へと突っ走った。
歓声を上げながら、爆音の音楽とともに、大量のバイクと数台のバギーが俺たちの後を追ってきた。
◇◇◇
額の汗を拭いながら、キューはネメシスの車体から飛び降りた。
「ふう、これで少しは持つわ。1分、それ以上は無理ね。それより長いと危険だから。回路を破片から組み立てたようなものだし」
「ありがとう、キュー」セフィーナが心から言った。
「ああ、気にしないで。あんたたちのためにやってるわけじゃないから」
「余計なおしゃべり抜きで試してみない?」ジェシーが不満げに聞くと、セフィーナの娘たちも同意するように頷いた。
アンネリは管理者の仕事をするため残った。
キューは肩をすくめると、再び歪んだ操縦席に入り込んだ。パネルで組み合わせを入力すると、目の前のスクリーンを注意深く調べ始めた。
全員が固まり、動くのを恐れるように息を潜めた。
「くそ、やっぱりね」キューが苛立たしげに言って、床を足で蹴った。
耳をぴくぴく動かしながら、クリスティーナが震える声で尋ねた。
「まさか、何があったの?」
「もう最悪よ。ナノ量子回路の教科書を保存したディスクの、よりによってその場所にバッドセクターがあるのよ」
「このバカ女!」ジェシーが運転席に向かって飛び出そうとしたが、エヴィナとアルビがなんとか押さえつけた。
「スキャンのこと?まだ読み込み中だから、そんなに急がないでよ」キューはシートにもたれかかったまま、無邪気に答えた。
とはいえ、それで雰囲気が和らぐわけもなく、全員がフレムテックの娘を注意深く見守っていた。そしてようやく彼女が言った。
「はい、完了。半径十キロ以内には確実にいないわ。生きてても死んでても」
「なんか、それ聞いても全然安心できないんだけど……」クリスティーナが小さく呟き、手に持った髪の毛を神経質にいじっていた。
「じゃあ、みんなで地下のテレポーターのところに行きましょうよ。他の手段じゃあんなに遠くまで行けないでしょ、なんたってニコは運転が下手だし」ジェシーが提案すると、全員が同意した。
家に戻ると、女たちは揃ってテレポーターのところへ向かった。
「誰か、使い方わかる人いる?」ためらいがちにセフィーナが尋ねた。
みんな黙ったままで、ジェシーだけが悲しそうに答えた。
「えっと、違うの。ニコはいつも全部自分でやっちゃうから」
ムッとして鼻を鳴らし、クリスティーナが前に出て端末を指でつつき始めた。
「おい、姉ちゃん、本当に何やってるか分かってんの?」エヴィナが不安そうに肩越しに覗き込みながら聞いた。
「うるさい」
本の形をした端末の白紙のページに、文字が浮かび上がってきた。
「ようこそ!この魔法のポータルは、シジルを見つけた場所ならどこへでもあなたを送ります。慎重にお選びください。戻るには別の魔法の書が必要となりますので」
「で、何て書いてあるの?」セフィーナがせっかちに聞いた。
「選択肢を引き出すことはできたんだけど、場所は二つだけ。テクガンの居住区と神々の荒野って……」クリスティーナは自信なさげに答えた。
「神々の荒野? それって何なんだ?」キューまで興味を示した。
「さあね。だってうちのパパ、すごい人だから。一筋縄じゃいかないのよ」エヴィナは誇らしげに答えた。「ねえクリス、その神々ってやつ、試してみなよ」
クリスティーナはインクで書かれた一行を指でなぞった。すると文字が変わり始めた。
「親愛なる友よ! 今、荒野では試練が行われているから、終わるまで待ってくれ。終わり次第、いつでも歓迎するぞ! 石は勝手に見つからないからな!」
書かれていた内容を全て声に出して読み上げると、クリスティーナは本から離れた。そして壁に背中を預け、つぶやいた。
「私たちには何もできない。パパはきっとどこかのバカみたいな試練に出てるんだわ」
「あんた、もう諦めたの!?」声を荒げて、エヴィナはクリスティーナに近づき、妹の視線を捉えようとした。
妹を挑むように見返して、クリスティーナははっきりと言った。
「いつもいつも馬鹿みたいな気合いだけで解決できるわけじゃないのよ。頭を使って考えなきゃ。私たちに何ができて、何ができないか」
眉をひそめて、エヴィナは耳をぴくぴく動かすと、返事もせずに離れていった。
「もしそうなら、ニコが戻ってくるまで今のままを保たないと……それとも、もし彼が全く……」セフィーナはゆっくりと話し始め、困惑したように床を見つめた。
「そうよ、お母さん。上に行きましょう。ここでやることはもうないわ」エヴィナは母の考えがおかしな方向に向かい始めるのを見て、急いで言った。
「でも彼女の言う通りよ。もしニコが五日目までに戻らなかったら、もう犠牲なしでは済まないわ」ジェシーは暗い顔でそう言いながら、ゆっくりと階段を上っていった。
全員が地下室を出ていったが、最後尾を歩いていたクリスティーナだけが、不意に振り返って戻っていった。大きな水晶に近づくと、彼女はボロボロになった本のページに手を滑らせた。白い紙にインクが浮かび上がってきた。
「こんにちは!魔法システム『ロートク』は守護者または管理者専用です。秘密を手に入れたい場合は、血で記されたものを濡らして出自を証明してください」
本の横から細い針が飛び出した。目を瞑り、耳を頭にぴったりと押しつけて、彼女は慎重に指先で針に触れた。
小さく「いた」と声を漏らして、クリスティーナは滲み出た血の滴を書かれた文字の上に這わせた。血はページの中に染み込み、紙面は白紙に戻った。数秒後、新しい文字が浮かび上がった。
「死すべき者の娘よ、システム『ロートク』の秘密の一部があなたに開かれた。すべての秘密は、あなたが成人を迎えた後にのみ明かされるだろう」




