第三十二章 ニコはどこに?
そう言うと、ジョニーは獰猛な笑みを浮かべ、肩からグレネードランチャーを引き抜き始めた。
「二体まとめてやるんだろうな」俺は念のため確認しておいた。下手なところに撃ち込まれたらたまらない。
「教えなくていいんだよ、兄弟」
ロボットのもう片方の腕には見たことのない武器が装着されていたが、おそらくネメシスに搭載されていたものと同類だろう。そしてこのロボット自体、フレムテック製に違いない。どう見てもそれっぽい。
得体の知れない化け物はハエを吐き続け、その粘液で機体のあちこちに明らかに腐食した金属部分が現れ始めていた。再び機銃が唸りを上げ、キルハイヴの怪物に無数の穴を開け、脚の一本を吹き飛ばした。だが怪物は咆哮を上げただけで、ロボットの武器が沈黙した瞬間を狙って飛びかかり、鋏で機体の腕に食らいついた。
ロボットは振りほどこうとしたが無駄だった。すでに鋏に締め上げられた金属が軋む音が聞こえている。そこで機体はもう一方の腕の武器を怪物の腹に押し当て、高まる音から察するに、派手な爆発が来るぞ。
「やれ!」
ジョニーがグレネードランチャーを撃つと同時に、フレムテックの奴の武器から光線が飛び出し、モンスターを貫いた。轟音と共に爆発、巨大な砂塵の雲。岩が亀裂だらけになり崩れ始め、俺とテクガンの奴を下へと引きずり込んだ。くそ、こんなに脆いなんて誰が知るかよ!
数秒の落下、岩への痛い衝撃は装甲に多少和らげられた。ジョニーは最後の瞬間に身を丸め、無傷のようだった。もう自動小銃を抜いて周囲を見回している。
俺も立ち上がって武器を構えた。近くの岩の山の下にキルハイヴの奴が見つかった。粘液質のバイオマス、悪臭を放つ肉と甲殻、脚、うごめく蛆虫の塊で、奴らはまだカミカゼ蝿に変わる時間がなかったらしい。ミュータントがまた蠢き出したので、俺は頭らしき場所に数発撃ち込んだ。
「もう一匹はどこだ?」と俺は仲間に小声で尋ねたが、ジョニーは黙って岩を脇へ放り投げるだけだった。ついに彼は歓声を上げ、嬉しそうに岩の下から何かを引っ張り出し始めた。
「逃げやがったな、あの野郎。だが長くは持たねえぜ」とテクガンの奴は勝ち誇った様子で言い、得意げにロボットの腕を空中に掲げた。そこから血が大量に流れ出ていた。どうやらあれはエクゾスケルトンだったらしい。
「ああ、そうだといいな。グレネードランチャーはもうないんだから」
「でも手榴弾はあるぜ!」満足そうにジョニーは腰をぽんぽん叩いて前へ進んだ。
ああ、彼の楽観主義が欲しいものだ。ここに既に四つの派閥が現れた以上、ケルが言っていた透明な仲間と強力な人間機械を覚悟しておくべきだろう。第一位と第二位については何も分かっていないが、あれだけ上位にいるのには理由があるはずだ。
ジョニーは嬉しそうに声を上げ、砂についた血痕を指差した。敵が勝手に死ぬんじゃないかって言ってたのは、ついさっきこいつじゃなかったか?
頷いて、俺は血痕を追う落ち着きのない兵隊の後を追った。まるで猟犬みたいに。
エクゾスケルトンのおかげでかなりスピードが出るらしい。フレムテックの奴、ここまで逃げやがった。速足で移動しながら、鎧の下で汗だくになって、俺は神々とその試練全部を呪った。何が目的なのかさっぱり分からない。特に、俺たちが必死になってる理由がな。もし連中の「自発的強制」な呼び出しで死なないためだけだとしたら、ちょっと腹が立つ。
ジョニーが何か合図を送ってきたが、意味は分からなかった。でも速度を落としたから、俺も同じようにした。
前方には大きな岩があり、そこにかなりデカい洞窟の入口が見えた。血痕がそこに続いているってことは……
「マジかよ? 絶対待ち伏せしてるだろ!」俺はテクガンの奴に疑わしげに言った。
「ああ、まあまあ。あいつは怪我してショック状態だぞ。待ち伏せなんてできるわけないだろ? へっ。行こうぜ、ビビるなって。パパのジョニーがついてるからさ」
重いため息をついて、俺は自動小銃を握り直し、暗闇の中へ足を踏み入れた。
ああ、外のクソ暑さに比べたら、ここは天国みたいなもんだ。最初の方だけ暗かったが、四十メートルほど進むと洞窟内が明るくなり始め、同時に空気の湿度が上がってくるのを感じた。さらに少し進むと、照明の正体が分かった。壁から直接生えている、モリーユみたいな大きなキノコが、周囲を均一な白っぽい光で照らしていた。足元には、不思議にきらめくコケの柔らかい表面が広がっていた。俺はしゃがんで、緑の絨毯に触れてみた。
「薬草知識、進捗1/5」
少し採取してポーチに仕舞い込むと、俺は先に進んでいた兵隊野郎の後を急いで追った。
その先で洞窟は徐々に広がっていき、水音が聞こえてきた。やがて、俺たちは巨大な――そう、大広間と呼ぶべき場所に出た。ここには巨大な鍾乳石と石筍があり、本物の柱を形成していた。石でできた小道が、俺たちがいるレベルから上へと続いており、明らかに人工的に作られたものだった。広間の奥では、天井の大きな穴から水が下へと流れ落ち、かなり広い湖を形成していた。その周りの岩だらけの地面からは、もう見慣れたキノコやコケ、それから俺の知らない大きな植物も生えていた。太い茎、巨大な花――直径一メートルくらいある。植物そのものの高さはゆうに三メートルはあった。
「こんなの見たことあるか?」
「まさか、あるわけないでしょ。あんたらは野蛮人のとこにまで行くかもしれないけど、俺たちにそんなバリエーションがどこから来るってんだよ」ジョニーは、目にしたものすべてに驚いて首を振りながら鼻で笑った。
まあいい、観光してる場合じゃない。この辺のどこかに、エクゾスケルトンを着た奴がいるはずだ。
「血痕がどこにあるか見えるか、ジョニー?」
「ふむ、どうやら水辺に向かったようだな。傷を洗うつもりか? あの化け物の毒が残ってるかもしれんし」
俺たちは慎重に前へ進み、あらゆる音に耳を澄ませた。だが、周囲は静まり返っていた。水辺に近づくと、俺は少し身をかがめて水中に何かないか目を凝らした。湖は透明だが、光が足りないせいで何も見えやしない。一分ほど睨めっこした末、俺は諦めて振り返り、立ち去ろうとした――その時、誰かに思い切り蹴飛ばされて水の中へ突き落とされた。
「危ない!」ジョニーの警告は遅すぎた。彼は発砲し始めた……花に向かって?
水中では細かいことなど見えやしない。鎧が俺を湖底へ引きずり込んでいく。指輪の石を回して騎士を解除し、必死に泳ごうとしたが、湖底から伸びる奇妙な蔓が俺の体に絡みついてきた。手で払いのけようとしたが、触手のような蔓は硬く、俺の抵抗などまるで意味がなかった。
血中の二酸化炭素濃度が限界に達し、反射的に息を吸い込みそうになって、肺に水を吸い込むところだった。必死にもがきながら服のあちこちを探り、思い出した――あのプレゼントを! クリスタライトの短剣だ。
命綱にすがるように柄を掴み、蔓の表面を一閃した。あっさりと切断できた。解放された俺は、残りわずかな酸素で水面まで泳ぎ切り、貪るように息を吸い込んだ。
ジョニーは連射で茎から果肉と緑色のヘドロみたいな汁を吹き飛ばしていたが、花の方も針を吐き出して応戦し、根っこで兵士を捕まえようとしてきた。俺は岸に這い上がって騎士にスイッチし、この忌々しいクソ野郎を撃ちまくった。
花は死にかけの動物みたいに金切り声を上げて、葉っぱをだらしなく震わせた後、静かになった。太い茎が裂けて、中から壊れた白いエクゾスケルトンが転がり出てきた。中には半分腐った人間が入っていた。
「おいおい、マジかよ、兄弟! うちの畑にこいつを植えといたらどうだ? フレムテックの野郎が来たらタンポポの餌にしてやるんだ、アハハハハ!」
「ああ、確かに面白いな」
周囲を見回して他に何も見当たらなかったので、俺たちは先に進むことにして、人工的な坂道を登っていった。上の方も同じホールで特に面白いものはなかったから、休まずに次のトンネルへ入った。
洞窟は明るく照らされたホールへと続いていた。壁には現代的なランプが取り付けられ、床も壁も天井も石のタイルで覆われていた。壁には白いペンキで「ゾーン1。アルヴァー派閥領域」と書かれていた。
「おい、兄弟、笑えるだろ? お前が戦ってた相手のところに突っ込んじまったってわけだ、ハハハハ!」
「ああ、皮肉なもんだ。とりあえず見てみよう」
先へ進むと、んー、石棺? が目に入った。その前にはガラスケースに収められた、古い本の形をした端末があった。俺は急いでジョニーより先に端末の前に立ち、光る指でボタンを押した。
「アルヴァー、認証……受理。マニュスクリプトを入手せよ。注意!神々の試練一回につき、マニュスクリプトは一つまで!」
ガラスが開いて、冊子が俺の手に滑り込んできた。その表面にゆっくりと文字が浮かび上がる。
「求める者には与えられん……」
簡潔すぎるだろ。いっそフォーチュンクッキーでも入れといてくれた方がマシだった。
新たな文字が現れた。
「神の石材を入手しますか? はい/いいえ」
ああ、もらえるものはもらっとくか。
「承認。ゾーン1――石材の守護者、起動」
石棺が開き、中から腐りかけた骸骨が這い出してきた。ローブを纏い、両目が緑色に光っている。素早く辺りを見回すと、顎を開いて気味の悪い笑い声を上げやがった。
ジョニーが骸骨の頭蓋骨に弾丸を撃ち込み、穴を開けた。だが骸骨は頭蓋骨をカタカタ揺らして、口から弾丸を吐き出した。アンデッドの両手が緑色の炎に包まれ、床が震えて亀裂が走り始めた。床に穴が開き、そこから骨ばった手が次々と姿を現し、その一つが俺の脚に力強く食いついて装甲を少しへこませた。
◇◇◇
「ジェシー、ニコを見なかった?」セフィーナが屋敷中を探し回った後、心配そうに尋ねた。
「え? 見てないわ。たぶんまた、みんなのために何かやってるんじゃない? ははっ」赤毛の女が、気を揉む猫娘を落ち着かせようとした。
「まあ、そうなんだけどね、大抵の場合は。でも、こんな風にいきなり消えて、誰にも何も言わずに……なんだか心配なのよ」
少女の耳がしょんぼりと垂れ、彼女は唇を噛みしめると、通りへ飛び出してクリスティーナとぶつかった。どうにか倒れずに踏み留まったセフィーナは、驚いて声を上げた。
「きゃっ!」
「ごめんなさい。ママ、どこか急いでるの?」
「パパを見なかった?」
クリスティーナは青ざめた。
「わ、私、パパは休みに行ったんだと思ってた。家にいないの!?」
セフィーナは更に白くなった娘を疑わしげに見た。赤い目のせいで、今やアルビノみたいだ。
「何か知ってるのね?さあ、話しなさい!」
そこへ、どこかで手間取っていた他の娘たちが妹の援護に駆けつけた。クリスティーナの腕を抱えて家に入ると、全員でソファにどさっと腰を下ろした。
姉妹たちは口々に、昼間の出来事を語った。
「ニコの具合が悪くなったのに、あんたたちそのまま放っておいて誰にも言わなかったの!?どういうことなの、あの人はあんたたちのお父さんでしょう!」セフィーナが聞いたことにショックを受けすぎて何も言えないでいるのを見て、ジェシーが声を張り上げた。
「ごめんなさい、ジェシーおばさん。でも、パパが良くなったって、大丈夫だって言ったのに、どうして信じちゃいけなかったの……」クリスティーナは泣きそうになりながら答えた。
エヴィナは動揺する姉の肩を叩いて言った。
「やらなかったことを嘆くより、探した方がいいんじゃない? 村にいないなら、もう一つのロートクにいるかもしれないでしょ? あの人、よく地下室に行くし、もしかしたら今回もテレポートを使って、すぐ戻るつもりだったとか」
「そこで倒れて、助けを待ってるか、もっと悪いことに……」アルビが暗い声で続けた。それまで黙っていた彼女が。
セフィーナは小さく悲鳴を上げて椅子から飛び上がった。
「そんなこと言わないで! きっと大丈夫よ、だってあの人は英雄なんだから! 死すべき者なのよ! 忘れたの? あなたたちのパパは最強なんだから、ね、みんな?」セフィーナは早口でまくし立て、最後は涙声になっていた。
「あんた自身が信じてないくせに……」アルビが小さく呟き、みんなから顔を背けた。
ドアが突然開いて、女性陣は全員びくりと震えた。
「あ、私、タイミング悪かったかな?」キューが戸惑いながら尋ねた。金属製のコンテナを胸に抱えながら。
その後ろからデリオ、射撃手の一人が駆け込んできて、申し訳なさそうに手を振った。
「すみません、このクソ女を止めるのが間に合わなくて」
「まあいいわ、ありがとう、デリオ、もう行っていいわよ」セフィーナは無関心な口調で兵士を見送り、新参者に疑問の視線を向けた。
「あ、用事があって。ニコはどこ?」キューは尋ねたが、周囲の者たちは皆、顔を曇らせた。
「知らないわ」エヴィナが厳しく答えた。その言葉には「だから消えて」という意味も込められていた。
気まずそうに笑いながら、キューは続けた。
「まあいいや、じゃあ彼のベッドはどこ?」
「何考えてんのよ、あんた!?」ジェシーが激昂し、フレムテックの技術者に詰め寄った。「ニコは消えたのよ、分かる? 分からないの?」
「髪の毛一本でいいのよ。ニコとは検査をするって約束してたじゃない」
「うっとうしい、いい加減にしろ」ジェシーは堪えきれず、キューの腕を掴んで寝室に連れて行き、枕から髪の毛を探すという喜びに浸らせたまま、そこに置き去りにした。
残りのメンバーのもとに戻ったジェシーは席に腰を下ろすと、アンネリにすぐ気づかず、新しい声に驚いてびくりと身を震わせた。
「他の人たちには言えないわ。みんなはその信仰だけで持ちこたえているんだから」管理人は悲しげに言いながら、エメラルドグリーンの瞳で窓の外を見つめた。「ニコは私たちにとって、導きを与えてくれて、ポータルゾーンで生き延びることを可能にしてくれた象徴なの」
「へえ、偉くなったら随分と立派な口を利くようになったわね。昔はあんなに無茶苦茶で、男たちが鼻を背けるほど、あんたのしつこさと金切り声に耐えられなかったくせに」セフィーナは悪意を込めて言い、アンネリを敵意に満ちた目で睨みつけた。「私の愛する人がかかってるのよ。誰かの意見なんか知ったこっちゃないわ!」
「八つ当たりはやめて、セフィーナ。それより、みんなでテレポートのところに行って探してみましょう」ジェシーが場の雰囲気を和らげようとした。
返事をする間もなく、歓喜の叫び声が響いた。十秒ほど経ってから、キューがリビングルームに駆け込んできた。
「あったわ!あったのよ、ほら!」
女の子は踊るように体を揺らしながら、ディスプレイをみんなに見せびらかしていた。そこには――
「遺伝子適合率――92.8%」
「それ、どういう意味なの?」興味を示したクリスティーナが尋ねた。
「つまり、あたしたち、もうニコと結婚したってこと!」
沈黙が流れた。
「あー、えっと、おめでとう、ってことでいいのかな? キューおばさん、なんて。ははっ」エヴィナが陽気に言った。
「そうそう。じゃあ、あんたもニコを探すの手伝ってくれるよね? ほら、なんかそういう便利な機能とか持ってたりするんでしょ?」セフィーナが期待を込めて訊いた。
キューは困惑したようにみんなを見回してから答えた。
「あ、何のために?私に必要なのは精液だけだし……ああ、でもそうね、どこから手に入れるのよ?まあいいわ、ネメシスのスキャナーを調べてみましょう、まだ無事かもしれないし」
最初の一言には全員が戸惑ったが、最後の言葉には希望が持てたので、女性たちはほっと息をついた。
「あ、そういえば」キューが続けた。「ニコがこんなに酷い状態だって、どうして教えてくれなかったの?組織の劣化、DNAの崩壊、幸い生殖細胞は無事だけど。このままじゃ、あと二週間も生きられないわよ」
呆然とした他の者たちの顔を見て、キューは頭を掻いた。
「あ、知らなかったの?ごめんなさい。でも、家族なら知っておくべきだと思うけど」
「パパ……死んじゃうの?」アルビの言葉が響いたが、誰も答えなかった。静寂の中で聞こえてきたのは、耐えきれなくなったクリスティーナのすすり泣きだけだった。




