第三十一章 試練
キューは相変わらず同じ部屋にいた。まあ、彼女は交配したいって意思を示したし、クリスタリットのことでも手を貸してくれたけど、俺たちの誰一人としてあの派閥のことを十分に知っているわけじゃない。だから彼らの行動の動機を判断するのは難しかった。
彼女はベッドに横になって、半分分解されたコンテナを物思わしげに眺めていた。相当考え込んでいたらしく、俺が入ってきたことにすぐには気づかなかった。
「あ、ニコ、こんにちは。困ったことになっちゃったの」少女は悲しげにため息をつきながら、装置の破片を脇に置いた。
「何があったんだ?動かないのか?」
「ううん。ネメシスから基板の一部を引っ張ってくる方法もあるにはあるけど、多分うまくいかないと思う。正直言って、これは私の訓練の範囲を超えてるのよ。ただ、色々な回路をいじるのが好きだっただけで」
クローンとは言え、ちゃんと個性があるんだな。しかも彼女は下級扱いされてるっていうのに。
「なるほどな。もしそれもダメだったら?お前の仲間がまた顔を出してくれるまで待つのか?」
女は浮かない笑みを浮かべた。
「そういうことになるわね。私、何も手伝えることないし、ここに座って毎日の配給を消費するだけなんだから」
ああ、そうだ、食料のことだ。人数が増えたんだから、備蓄がどうなってるか確認しといた方がいいな。それとも、アンネリに任せるか。今や一番重要な人物なんだし。
「なあ、お前、銃のことは詳しいんだろ?」
女は疑問の眼差しを俺に向けてから、答えた。
「まあ、完全にってわけじゃないけど。MK-10モデルはクトナイトコアのクロノトランスフォーム回路の仕組みがどうしても理解できなかったし、LAW タイプ2は遺伝子コード式だから、サンプルを入手できなかったのよ」
俺は頭を掻いて、完全な馬鹿だと思われないような返事を考えた。
「俺が知りたいのは、冷却器にクリスタリットがどれくらい入ってるかってことなんだ」
「あ、MK-5のことか。そうだな、二十丁くらいあるぞ。それにしても、どうして急にフレムテックの武器に興味を?」
「行くぞ」
もちろん、リスクはある。実質的に捕虜に、火力が未知数の武器を渡すわけだ。それに、どんな威力だろうと、どのみち俺の寿命を三年削る可能性がある。だが、賭けてみる価値はあるだろう。あそこには満杯の箱が二つある。クリスタリットもかなりの量があるはずだ。
セフィーナとジェシーの無言の視線を受けながら、俺は少女を地下室に案内し、その後テクガン基地にテレポートした。箱に近づくと、ライフルを取り出して少女に手渡した。
「分解して、クリスタリットを取り出せるか?」
「あ、楽勝だよ」
少女がボタンを押すと、ライフルの側面に小さなディスプレイが起動した。組み合わせを入力し、もう一度ボタンを押す。すると、冷却装置が外れた。
「はい、どうぞ!」キューはにっこり笑って、クリスタリット入りの小箱を俺に手渡した。「たくさん必要?」
「全部くれよ、五丁以外」
「オッケー」
十分ほどで彼女は全てのライフルを片付け、俺に二百八十クリスタリットをもたらしてくれた。
俺は心から彼女に感謝し、無傷のライフル五丁が入ったコンテナを手に取り、残りは基地に置いていくことにした。サンプルをキャンプに隠し、資源を倉庫に保管してから、キューにネメシスで運試ししてみないかと提案し、フェブリモールに彼女と一緒に兵士を派遣してくれるよう頼んだ。
その後、今や金があることを思い出し、俺は屋敷のコンバーターへと向かった。
暗闇の中に入り、扉が閉まるのを待った。機械的な声が無感情に告げた。
「モデルを選択してください。注意!バーサーカー、ジャガーノート、ウィンドアーチャーのモデルは発展の選択肢を閉ざします。やむを得ない場合のみ使用してください」
「了解、系統は『闘士』、モデルは『ガーディアン』で頼む」
「タクティカルナイトをヘビータクティカルナイトにアップグレード可能。実行しますか?」
「ああ」
「金貨100枚」
「やってくれ」
どうやら俺の体はもう適合しなくなっていたらしい。筋肉に力が満ちて、わずかに体積が増えていくのを感じた。変換装置から出ると、筋肉量が増えているのがわかった。すでに復元されていたナイトモデルのリングを回してみると、すぐには見分けがつかなかった。鎧はより重厚になっていたが、同時に、着用するのは難しくなかった。
「もう一度変換を実行しますか?」
ああ、攻撃力を強化してみるか。シューターとクロスボウマンは今のところ魅力的に見えないな。テクガンのやつを見てみよう。
「スナイパー」
「50ゴールドだ」
「行くぞ!」
変身で新しい指輪を手に入れた。照準のマークが刻まれている。だが、これがくれるのは迷彩服とスナイパーライフルだけ。あとはシューターみたいな視力の向上くらいか。
「変身その2を実行するか?ハンター/サイレントキラー」
「ああ。両方だ」
「150ゴールドだ」
体に変化はなく、すべてが終わった。
「新たな成長ルートが利用可能――死すべき者の兵科モデル、スナイパーアーチャー。75ゴールド、寿命-1年」
「ああ、わかった。やってくれ」
「変換完了」
スナイパーとアーチャーのリングが統合された。発動させてみると、軽い防弾ベストを身につけ、矢筒を背負い、光学照準器付きのコンポジットボウを手にし、サプレッサー付きのスナイパーライフルを背中に担いだ状態になった。しかも弓には一度に複数の矢を装填できるらしい。すげえな、これ。
まるでレゴラスじゃないか。
自分にはもう十分金をつぎ込んだと判断して、俺はすでにだいぶ体調が戻ってきたジェシーのところへ降りていった。
「行こう、ジェシー。ちょっと確かめたいことがあるんだ」
「あ、うん」
余計なことは言わず俺についてきた彼女だったが、最初は変換装置の中に入るのをあまり気が進まない様子だった。
「まあいいじゃないか。ほら、セフィーナなんかもう自分がどれだけすごいか自慢しまくってただろ。お前だって負けてないさ」
ジェシーは眉をひそめて考え込んだ。
「そうね、セフィーナったら呪文の助けなしでも頭が痛くなるくらいうるさかったわ。わかった、やってみましょう」
彼女を端末に追い込んで、機関銃手を注文した。何しろ彼女にはすでに突撃兵系統のランクが一つある。75ゴールド。
「ジェシー、新たなランクなし兵科モデルが利用可能――地雷兵。鉄70、クリスタリット30」機械音声が響いた。
「はい」
変換が完了し、すぐに続けて――
「ジェシー、新たなランクなし兵科モデル2が利用可能――爆破工作兵。鉄100、クリスタリット50」
「ああ!」
「変換完了。爆破リングを取得せよ。新たな成長ルート解放――ジェシーの兵科モデル、破壊工作員。高品質鋼材100、クリスタリット20」
だが鋼材はまだ足りない。まあいいか。ジェシーは自分の指輪を眺めていた。一つを回すと、服装は変わらず機関銃だけが追加された。もう一つの方を回すと、爆薬や地雷がじゃらじゃらと装備され、武器はサブマシンガンだけになった。どうやら最後のモデルで、この二つの欠点を解消する仕様らしい。
「で、どんな感じだ?」
「そうだな、ニコ、そこまで劇的に何かが変わったわけじゃないんだけど。でも驚いたよ。うちらで爆薬をちゃんと使える奴なんてほとんどいないじゃん。だって普通は事前に現場に仕込んでおかないといけないし。それか、もし突破できて爆薬持ち込みまで許されるような状況なら、破壊するより盗んだ方が早いわけで。まあ、そういうことなんだよね」ジェシーは自分の装備を眺めながらくすくす笑った。
「家の中で爆発させるなよ?その点じゃ、セフィーナの方が楽だな」
「ああ、もちろん」
とりあえずこれで一段落か。ケルの方はランクなしモデルの通知も、そもそもモデル自体も何も来ていない。まずは彼女たちの拠点を作らないとな。やることが山積みだ。
ジェシーとセフィーナに別れを告げて、俺は屋敷を出た。そして突然、メッセージを受け取った。
「警告!正午、七日目。神々の試練を検出。参加しますか?はい」
何だこれは一体?誰もそんな話、一言も言ってなかったぞ。それに、このメッセージ自体がおかしい。確認の選択肢が一つしかないじゃないか。
無視することにして、俺は先へ進んだ。訓練の様子を確認しようと思っていたんだ。突然、鋭い痛みが全身を貫き、俺は息ができなくなって膝をついた。まるで、あの病気がやっぱり戻ってきたみたいだ。必死に空気を吸い込もうとして立ち上がろうとしたが、踏ん張りきれず倒れて、石畳の上に転がった。
「パパ!どうしたの!?」クリスティーナの心配そうな声が聞こえた。
娘は姉妹たちと一緒に俺のところへ駆け寄ってきて、みんなで俺を仰向けにひっくり返した。
「ねえ、黙ってないで!パパ、パパ!」
どうしたらいいか分からず、三人の中で一番物知りなクリスティーナでさえ、涙を流すしかできなかった。
「ブレンの後を追うわ」エヴィナはきっぱりと言うと、キャンプの方へ勢いよく走っていった。
「出頭義務あり。拒否の場合、致死的な結果の可能性あり。お詫び申し上げます」
痛みが突然引いた。俺は慎重に立ち上がり、泣きじゃくるクリスティーナの頭を優しく撫で、それから彼女のもっと控えめな白髪の妹も撫でた。まあ、表情を見る限り、彼女の中でも同じことが起きていたんだろうけど。
「はは、無理だと思うよ。もう大丈夫だ、心配かけて悪かった」
「一体何だったのよ!? ねえ、あなたは指示だけ出してて。休んでて、いい?」クリスティーナは何とかして考えつこうとした。
「いや、よく分からん。遅くまで起きてたから、こうなったんだろ」
顔に出来るだけ誠実な笑みを貼り付けて、俺は足早に屋敷へ向かい、下へ降りた。
神々の荒野へのポータル。一歩踏み出して……
砂漠。本当に、荒れ地だ。他に言いようがない。
砂の他に、熱でひび割れた地面と疎らな低木が点在している。それと、様々な形の岩がかなりあった。だが、全体的に人を寄せ付けない景色だ。長居はしたくない場所だった。
「神々の試練へようこそ。最強の者に勝利を!」
「支援する派閥の神を選択してください:……」
今日の最初と同じリストだ。だが、三つに印が付いている。俺とシナジーがあるやつだ。そこには「あなたの神、報酬減少」と書かれていた。
もう良いものなんて選んでられない。とにかくここから逃げ出せれば御の字だ。
俺はアルヴァー派閥を選んだ。結果を待ったが、ただ「神が選択されました」というメッセージが表示されただけだった。
で、試練の内容は何なんだ?大量のメッセージを送りつける癖はあるくせに、こういう重要なことにはヒントを出さないんだな。
暑さに耐えきれず、俺は前へ進んだ。シャツを脱いで頭に巻きつける。少しでも日差しをしのげるようにするためだ。
どれだけ歩いても、何も変わらない。砂漠だからな、クソが。一番近くにあった大きな岩までたどり着いて、日陰に腰を下ろした。少し休もうってわけだ。本当に少しだけ休めたよ――顔面に自動小銃の銃口を突きつけられるまではな。
「おい、てめえは何者だ、観光客か?」低い声が響いた。
目の前に現れたのは、迷彩柄のノースリーブシャツと迷彩ズボンを着た、いかつい男だった。手には自動小銃、背中には使い捨てのグレネードランチャー。それに大量の手榴弾、弾薬ポーチ、その他諸々を身につけている。
「俺は、えっと、テクガンの者だ」
男は大声で笑い出した。あまりにデカい声だったんで、岩の下に座ってて大丈夫かと心配になった。このまま落石が始まるんじゃないかってな。
「証明できるぞ」
「ああ? じゃあやってみろ」
俺は騎士の指輪を回して、驚いている男の前で自動小銃をこれみよがしに振ってみせた。
「おおっ、マジかよ!すげえことやったな、兄弟。どこのギルドだ?」兵隊崩れは、俺の中に同類の魂を見つけて喜んだ。
「ああ、『夜明けの守護者』だ」
男は軽蔑するように口笛を吹いた。
「へえ、最前線からか?で、どうよ、何も反撃できない野蛮人どもを追い回すのって楽勝だろ?」
俺は歯を食いしばったが、ヘルメットの下では見えない。ありがたいことにな。
「ああ、数十人は失った。もしかしたら数百かもな。どこかのクソ野郎どもが最初に死すべき者の襲来を見逃して、その後フレムテックの連中を俺たちの後方に通しやがった。ただ口笛吹くことしかできねえ奴らのせいで、仲間が死んでいくのを見るのは最高だぜ」
「おっと、落ち着けよ、兄弟。悪かったって。誰が知るかよ、あの白ケツのホモどもがいつもと違う場所を通るなんてさ。誓うぜ、俺だってあのクソ野郎どもを自分の手でぶっ殺してやりたいんだ、俺にも晴らしたい恨みがあるんだからな!」男は感情を爆発させて、6位に向けた怒りを溜め込んでいった。それから息を吐いて、友好的に手を差し出した。
「ジョニー」
「ニコ」
握手を交わした後、俺たちはゆっくりと前に進み始めた。
「なあ、お前らのところって、みんなあんな鎧もらえんのか?」とジョニーが興味津々で聞いてきた。
「いや、全員ってわけじゃない。戦利品だよ。野蛮人は野蛮人だけど、腹に矢が刺さるのもごめんだしな」
「ははっ、確かにそうだな。俺たちには何にももらえねえよ。どうせあのクソ野郎どもの弾は何でも貫通するんだから、資源の無駄遣いだってさ」
「厳しいが、まあネメシスを見る限り正しいとは思うぜ」
「あ、ああ、見たのか? マジでクソだろ。お前、まだ『エンジェル』見てねえんだろ? あれ見たらマジで漏らして泣きながらママって叫ぶぞ」
「はは、そんな場面に出くわさないことを祈るよ。なあジョニー、ここって一体どこなんだ?お前、自信満々に見えるけど、前に来たことあるのか?」
「あ?いや、俺はいつもこんな感じだ。どこだか知るかよ。腹が痛くなって、仲間に医務室まで連れてってもらって、ベッドに横になって、うとうとしてたんだ。目が覚めたら、もうくそったれ砂漠の真ん中だよ。地面を見つけられたのがせめてもの救いだ、じゃなきゃ退屈で死んでたぜ」
なるほどな。面白いことに、地元の住民もここに送り込まれるってことは、これは召喚者専用の余興じゃないってわけだ。それに、こう考えると、次の召喚者は三週間後にしか来ないんだから、そもそも召喚者が集まりようがないんだ。
「静かに!」テクガンの男が大声の囁きで言い、その場で動きを止めた。
俺も立ち止まったが、最初は何も聞こえなかった。耳を澄ますと、遠くで聞き覚えのあるロータリー機関銃の甲高い音が響き、すぐに止んだ。
俺とジョニーはゆっくりと前に進み、周囲を見回した。だがどこもかしこもくそったれ岩ばかりで、本当にイライラする。
小さな崖のところまで出ると、十メートルほど下に平らな場所が見えた。そこでは人間よりちょっと大きい小型ロボットが素早く動き回っていて、腕に装備した回転式機関銃から、妙な生き物に向かって弾をばら撒いていた。蜘蛛と蟹と、あと悪魔が知るほかの何かを混ぜたような奇妙なハイブリッドだ。高さ三メートルほどのそいつは八本の脚で器用に走り回り、巨大な鋏をカチカチ鳴らしている。時々脚で体を持ち上げて腹を曲げ、糸を吐き出してくる。遠目には人間の胴体みたいに見える部分には粘液質の腫瘍がついていて、そこから定期的に腹の膨れた蝿の群れが飛び出してきては、ロボットに体当たりして軽く爆発し、機体を緑色のヘドロでべっとり覆っていた。
「で、ジョニー、どっちを助けるんだ?」 俺は訊いたが、もう答えは分かっていた。
「全員ぶっ殺してやる」
◇◇◇
「現在の残存寿命――15+(66)。能力発動用ボーナス年数:13(係数1.2)」
「倉庫。状態:
木材――75単位――採取中、収支+400(20単位/時×2);
石材――240単位――採取中、収支+200(40単位/時)(-200石工の工房);
加工石材――50単位――生産中、収支+200(20単位/時);
道具――595単位;
鉄――70単位――採取中、収支+600(20単位/時×3);
鋼――0単位。
高品質鋼――15単位。
クリスタリット――203単位――採掘中、収支+15(1.5単位/時)。
金――150単位――採掘中、収支+50。
アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。
テクガン派閥とのシナジー(60/100)。
キルハイヴ派閥とのシナジー(40/100)。
死すべき者の現在の兵科モデル:ヘビータクティカルナイト、スナイパーアーチャー。
現在建設中:石炭鉱山、アッペライト鉱山、クリスタライト鉱山、リクルートセンター、工兵兵舎。
軍隊:
ランク2:15体。シールダー、ロングボウ射手×3、戦士×4、闘士×3、スナイパー、セフィーナ、ジェシー、ケル。
ランク1:0体。
ランク0:7体。闘士×7。
訓練中:3体。
待機中:0体」




