第二十四章 当然の休息
少女は怯えた目で俺を見つめ、操縦桿にしがみついていた。美人とは言えないが、それでも可愛らしい容姿だった。卵型の輪郭に尖った顎、ボブカットに切り揃えられたくしゃくしゃのダークシルバーの髪、大きく見開かれたグレーの瞳、小ぶりな鼻と口。左の頬骨にバーコードのような、あるいは何か識別コードのようなタトゥーが入っている。少女が身につけているのは黒い水着のようなものだったが、大きな違いがあった。鎖骨から腹の上部まで大きく開いており、巨大な胸の谷間が露わになっていて、Dカップからさらに大きな胸が丸見えだった。もっとも、乳首と胸の半分は布で覆われているので、まあほぼまともな格好と言えなくもない。脚には太ももの上部が見えるストッキングのようなぴったりした布が貼り付いており、おそらく尻も見えているんだろう。腕には肘まである指なしの長手袋をしていた。手袋の布地には青いLEDが点滅していた。
あいつらが全員イカれた自殺志願者なのかどうか分からなかったので、俺はセフィーナに囁いて、もうちょっとこの見知らぬ少女を怯えさせたままにしておくよう頼んだ。そして自分は、可能な限り最高の笑顔を顔に貼り付け、ゆっくりと少女に手を差し伸べながら、優しく静かに言った。
「怖がらないで、大丈夫だから。何もしないよ」
唾を飲み込んで、少女はゆっくりと手を俺の方へ伸ばし、慎重に掴んできた。俺は彼女を支えながら、転倒によって斜めになったロボットのコックピットから這い出してくるのを手伝った。
少女を落ち着かせ続けながら、俺は1分待った。
「市民ステータス:+1(39)」
目を細めて、俺はステータスを確認した。
「繋がり:市民の統計情報。
名前:キュー138。
種族:人間。
年齢:19(60)。
役割:軍人。
兵科モデル:軽量メカのパイロット。
婚姻状況:未婚。
派閥:フレムテック、アルヴァー」
セフィーナにウインクして呪文を解いていいと合図し、フェブリモールを呼んで彼女の護衛を頼んだ。できるだけ丁寧に接するようにとも言い添えた。落ち着きを取り戻した彼女が兵士たちと一緒に歩き出すと、ほぼ丸出しの尻が目に入る。俺はブレンとフロルガを探し出した。二人は死体から使えそうな装備を漁っている最中だった。
「よし、お前ら、頼むぞ。あの娘の名前はキュー138だ。意味は分からんが。あいつのこと、所属派閥のこと、特にどうやって俺たちのところまで来られたのかを詳しく聞き出してくれ。それと、できればあのロボットにクリスタリットが入ってるかどうかも確認してくれ」
狼たちは真剣に俺の話を聞くと、無駄口を叩かずに拠点へと向かった。
まあ、突然の訪問者については、俺にもいくつか仮説がある。第一に、例の赤いポータルだ。一度は俺たちがあっちに行ったんだから、今度はあいつらがこっちに来ても不思議じゃない。もう一つの可能性としては、テクガンの連中が予想もしなかった場所で襲撃を受けたってことだ。つまり、俺たちとフレムテックに挟み撃ちにされたテクガン派閥の軍勢が、あっという間に壊滅したってわけだ。まあ、このキューってやつが何か話してくれれば、はっきりするだろう。
戦利品の回収を終えると、俺たちは徐々に荷物を拠点に運び始めた。武器は兵舎に下ろしたが、自動小銃だけは余りすぎてるから、余剰分は溶かして再利用することにした。
ロートクは俺が持って、センターに向かった。金庫があるんだから、とりあえずそこに隠しておくのがいい。今すぐあちこち駆けずり回って適当な場所を探す気にはならないし、そもそも今は誰も作業できる人間がいない。
センターに着くと、少し早く戻っていたセフィーナが娘たちに囲まれていた。ああ、まる一日会えなかっただけなのに、もう背が伸びて少し大人びて見える。まあ、これはじいさんがリボン付きのワンピースをやめて、普通の白いブラウスと色とりどりのスカートを着せたせいかもしれないが。
俺を見つけた娘たちが、バラバラに「パパ!」と叫んで駆け寄ってきた。俺はしゃがみ込んで三人をそっと抱きしめた。頬やら耳やらを俺に擦り付けて、それから離れていった。エヴィナはすぐに走り去ったが、残りの二人は何かを待っているように側に残った。クリスティーナが手招きして近づくよう合図してきた。訝しみながらさらに身をかがめて耳を近づけると、少女はぴょんと跳ねて俺の頬にチュッとキスをして逃げていった。
一人残されたアルビが、俺の服を掴んで小さな声で言った。
「ありがとう、パパ。遅くならないで帰ってきてくれて」
「もちろんだよ、娘」
俺は少女の頭を撫でながら、気づかれないようにため息をついた。まあ、17日――そう悪くない。せめて娘たちが成長するのを見届けられるだろう。あるいは、もう少し長く持ちこたえる方法が見つかるかもしれない。
少女が他の娘たちのところへ戻ると、ファリンが近づいてきて肩を叩きながら静かに礼を言った。
「ありがとう、ニコ。お前は村を二度も救ってくれただけでなく、誰も失わずに戻ってきてくれた。何でも言ってくれ、俺にできることなら何でもしよう!」長老はどうやら感極まってしまったらしい。おそらく今日一日の不安な待ち時間のせいだろう、そんな言葉の後で声を震わせ、目に涙を浮かべていた。
「正直に言うと、お願いが二つあるんだ。まず、ロートクをしっかり隠してくれ。金庫室がいいと思う」
「ああ、もちろんだよ、ニコ、もちろん!」ファリンは布に包まれた杖を俺から受け取りながら、慌てて言った。
「それと二つ目なんだが、アンネリがもう待ちきれなくてさ。俺も約束したし、急いで結婚式を挙げられないか?ついでに民衆の気晴らしにもなるだろ」
「ああ、そうだな、もちろん、すぐに手配しよう!正直なところ、勝利の祝宴のための料理はもう準備を始めていたんだ。それと一緒にやれば、悪くないだろう?」ファリンは嬉しそうに言った。どうやらアルヴァー派閥の花嫁の話なら、基本的に反対はないらしい。
「頼んだぞ」
セフィーナを娘たちと遊ばせ、長老には準備を任せて、俺は川のそばで物思いに沈んでいるアンネリを見つけた。
「どうした?元気ないのか?」俺は明るく尋ねながら、彼女の隣に腰を下ろした。
「ああ、ううん。たぶん、心配しすぎただけ。だって、ここからでも銃声とか爆発音とか全部聞こえてたから。それにあの恐ろしい悲鳴も」
「ああ、仕方ないよな。戦争なんていつだって醜いもんだ」
「はっ、慣れてきたじゃないか、見たところ」
「ん? 何のことだ?」
アンネリがエメラルド色の瞳で俺をじっと見つめてきた。
「あんたが最初に現れた時、びっくりしたもんよ。救世主には見えなかった。ただの頼りない少年で、きょとんとした顔してさ。でも今は逞しくなったし、目つきも変わった。それに優しくて、みんなを救ってくれた。要するに、すっごく素敵。ここで今すぐあんたに抱かれてもいいくらい」
俺は悪戯っぽく微笑む彼女を見て、苦笑した。
「ありがとう、そりゃ光栄だが、結婚式が終わるまで待ってくれ」
「え、何?」アンネリがびくっと震えた。
「ファリンが儀式の準備をしてる。たぶん2時間後くらいには始められると思う」
「やだ、ニコったら、バカ! 今頃言うなんて! 行かなきゃ!」
アンネリは飛び上がって駆け出した。「ドレス、ベール!」とぶつぶつ呟きながら。
まあ、確かにジェシーには申し訳ない気もするけどな。でも今は最初の約束通りに進めて、後で調整すればいい。
正装を探しに屋敷に戻ると、ケルがラズを抱いているのを見つけた。もっとも、もう前に会った時の赤ん坊じゃなかったけど。ファリンが他の娘たちがサイズアウトしたドレスの一つを貸してくれたらしい。ラズ・リカは髪が伸びて、頭の平たい角みたいなものも長くなり、さらに後ろに反り返っていた。その表面の模様も増えていた。
シャザが恐ろしい戦士には全然見えない姿なのが面白かった。
女の子の鱗のある尻尾で遊びながら、彼女が俺を手招きした。俺は隣にどかっと座り、じっと見つめてくる紫の瞳を覗き込んだ。
「お父さん」
ああ、「パパ」じゃないのか? 随分厳しいな。
少女はそれ以上俺に言葉をかけることはなく、俺たちはしばらく静かに座っていた。
「あたし、間違ってた、ニコ」突然ケルがそう言った。俺の方は見ずに。
「どうしたんだ急に?」
「あたしはあんたたちのことを腰抜けって呼んでた。でも今日分かったの。あんたたちはとても強い。キルハイヴより強いかもしれない。あんたたちには勝利への意志がある。強敵を前にしても退かない。あたしはあんたの女であることを誇りに思う」ケルは落ち着いた、はっきりした口調でそう言った。表情はほとんど変えずに。
「ああ、まあ、ありがとう。俺も、お前が俺たちの側にいて、俺の妻でいてくれることを嬉しく思ってる」
シャザが微笑んだ。
「可愛いわね。こういうの、慣れてないのよ」
「じゃあ、始めろよ。お前が俺と一緒なんだから」
女の子を残して、俺は前の祭りの時のスーツを探し出して着替えた。まあ、誰も俺にファッションショーなんて期待してないだろうし、毎回違う服で来いとも思ってないはずだ。
もう出ようとしていたら、ケルの声が聞こえてきた。
「あ、ニコ、正装に着替えたんだね。正解だよ」
「ああ」
「私も少しずつこの文化に慣れてきたわ」シャザが言い訳するように、照れくさそうに頭を掻きながら言った。「それで、何かあるの?」
「今日、アンネリと結婚式なんだ」
「結婚式?」
「まあ、女を自分のものだって宣言するプロセスというか、そういうやつだよ」
「へえ、面白そうだね。うん、あんたは強い男だから、きっとたくさんの女がいるんでしょ」少女はそう褒めてくれたようだが、なんだか少し奇妙な響きだった。
というわけで、俺はセンターへ向かった。今回はもうほとんど全員が集まっていた。どうやらこの緊張した空気を発散させたくてたまらなかったらしい。セフィーナと娘たちも来ていて、目をまん丸にして周りを見回している。ジェシーとエンディスもいたし、ケルもいた。娘は家に置いてきたんだろう。スコーピオン女は相変わらず一番避けられていたが、みんなと一緒に戦ったおかげで、疎外の壁は多少崩れた感じだった。
ファリンは前回と同じように、ホールの中央に進み出た。
「みんな! 今日は大変な一日だった。多くの者が辛い思いをしたが、何より大事なことは、俺たち全員が生きて無事でいるってことだ。そしてそれもこれも、俺たちの素晴らしいニコのおかげだ!」
全体から拍手が湧き起こった。何人かが俺の方を振り返り、俺は控えめに手を振った。その間、ファリンは続けた。
「だが、それだけが俺たちが集まった理由じゃない。俺たちの親愛なるニコが、みんなもよく知ってるアンネリを妻に迎えるんだ! さあ、ニコ、こっちに来い!」
俺は男性陣の賛同の声を浴びながら長老のところへ歩いて行った。あの特殊な性格にもかかわらず、少女はかなり人気があるようだった。
「アンネリ、頼む!」
開いた扉から花嫁が出てきた。ドレスは短いスカートで膝上、半透明のふんわりした生地で覆われていて、バレリーナのチュチュみたいだった。
それ以外の部分は、真っ白な生地が豊満な体にぴったりと張り付いて、魅力を余すところなく強調している。特にコルセットがきつく締められていて、胸がかなり上に押し出されていた。可哀想なアンネリ。
半透明のヴェールで顔を隠した彼女は、ヒールをコツコツ鳴らしながら自信たっぷりに俺のもとへ歩いてきた。ファリンが始めた。
「ニコ、アンネリを妻として迎えることに同意するか?」
「同意する」
もう慣れちまった。畜生、全然何も感じない。
「アンネリ、ニコを夫として迎えるか?」
少女はハッと我に返り、憧れを込めた声で大きく言った。
「はい、もちろんです!」
ファリンはこの指輪の件でも手を貸してくれたおかげで、俺たちは問題なく結婚の証を交換できた。正直、最初は照れくさかったが、アンネリは平然と自分の指輪をセフィーナの指輪の隣にはめた。だからスロットが三つもあるわけだ。でないと指のスペースが足りなくなる。
ファリンが口づけを宣言し、俺はアンネリの顔からヴェールをそっと払いのけ、彼女と唇を重ねた。結婚式でディープキスをするのが相応しいかどうかは自信がないが、せっかく教えたんだし……
ファリンは俺たちが舌を絡ませ合う様子を少し驚いた様子で見ていたが、我に返って大きな声で言った。
「お二人を夫婦と宣言します!」
「ステータス更新中……完了」
「新たな配偶者が登録されました:アンネリ、アルヴァー派閥」
「アルヴァー派閥の妻スロット:2/3使用中」
「アンネリ、新たな民間職業が利用可能:管理者」
そして、その後は宴会と大食いの始まりだった。住民たちは溜まっていたものを全部食べて飲んで消化しようと決めたが、節度は守っていて、酔っ払いの顔は一人も見なかった。まあ、一人だけヒゲ面の例外がいたが、あいつは結婚式の前からああだった。
プレゼントは期待していなかった。どう考えても、ここで何か特別なものを手に入れたり、節約したりするのは無理だろう。ファリンには式の準備だけでも感謝していたし、指輪のことを言うまでもない。だがデフールは、どこから手に入れたのか知らないが、俺に矢を一本くれた。彼の言葉では、リバーサイトの矢じりが付いているとのことだったが、それが何を意味するのかは分からない。まあ、あいつがくだらないものを作るはずはないだろう。ライフルが爆発した件を思い出さなければの話だが。
俺とアンネリはかなり早く帰った。だって、彼女はドレスだとあんまり動きやすくないからな。
屋敷の扉を閉めた途端、彼女が俺に飛びついてきて、激しくキスをしながら俺の服を脱がし始めた。
◇◇◇
「現在の残存寿命――17+(39)」
「倉庫1号。状態:
木材――825単位――採取中、収支+200(10単位/時×2);
石材――1150単位――採取中、収支+200(20単位/時);
道具――740単位
鉄――140単位――採取中、収支+100(10単位/時);
鋼――0単位。
高品質鋼――115単位。
クリスタリット――44単位――採掘中、収支+5(0.5単位/時)。
金――0。
アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。
テクガン派閥とのシナジー(35/100)。
キルハイヴ派閥とのシナジー(40/100)。
死すべき者の現在の兵科モデル:タクティカルナイト、マスター・シューター。
現在の建設:なし。
軍隊:
ランク2:15体。シールダー、ロングボウ射手×3、戦士×4、闘士×3、スナイパー、セフィーナ、ジェシー、ケル。
ランク1:0体。
ランク0:0体。
訓練中:0。
待機中:0」




