第二十一章 最後の準備
俺は他のみんなのところに戻ると、思わぬ光景に嬉しい驚きを覚えた。ファリンを除けば、みんな結構うまくやっていて、和気藹々と話していたんだ。まあ、彼のことは理解できる。あの年齢で、ずっとアルヴァー派閥の環境で生きてきたなら、よそ者、特にケルみたいな相手を見るのは、相当奇妙に感じるだろうからな。
そのスコーピオン娘の方はというと、俺の娘たちに大人気だった。彼女を四方八方から取り囲んで、図々しくも彼女の甲殻部分を触りまくっている。少し心配そうなシャザは、万が一にも誰かに当たらないよう、尾をできるだけ高く上げていた。俺の慣れ親しんだ社会からすれば野蛮な習慣があるのかもしれないが、全体的に見れば、キルハイヴ派閥の連中はなかなか好ましい奴らだったようだ。もっとも、ケル一人で判断するのは早計かもしれないが。
ジェシーは悲しげな様子で、時折相槌を打つ程度だったが、セフィーナは誰一人として放っておかないよう気を配っていた。
俺は端っこに腰を下ろし、美味いカナッペを口に放り込んでから、新しい妻に気になっていた質問を投げかけた。
「なあ、ケル。お前たちの近くにはどんな派閥があるんだ? すごく興味があるんだが、一体どんな連中なんだ?」
子供を腕に抱いてあやしていた彼女は、しばし考え込んでから答えた。
「私たちより弱いのは、遠目にはあなたたちに似ている人間たちね。でも、似ているのは服装や装備の選び方くらいよ。あなたたちは弱いから背後から襲うしかなかったけど、あいつらは自分たちの卑劣さに酔いしれているの。陰湿な連中よ!」
ケルは唾を吐きたくなったが、自分が今どこにいるかを思い出して我慢した。ため息をついて、彼女は続けた。
「まあ、余計な用がなければ関わらないようにしてるわ。あいつらは不名誉で嘘つきな化け物だからね。それに対して、上の場所にはもっと立派な敵がいる。半人半機械。常に前進して、損失を厭わない。俺たちの中でも最高の戦士は、あいつらと戦うのを名誉だと思ってる。でも、私は戦ったことがないから、詳しくは話せないけど」
娘たちは口を開けて話を聞いていた。ケルが話し終えると、クリスティーナがソファから飛び上がって嬉しそうに叫んだ。
「でも、うちのパパが一番強いにゃ!パパは全員に勝つよね、ね?」
可愛すぎる。感情が溢れてにゃんこ言葉まで出てきた。
「ああ、もちろんだ」俺は微笑んで答えた。「さて、娘たち、面白いものを見せてやろうか?」
「やった!」娘たちは叫んで、俺の後を追って地下室へ走っていった。
一瞬で俺たちは地下壕にいた。にゃんこ言葉と歓声が収まると、俺は簡単な見学ツアーをしながら、ついでに俺のここでの住処をもっとよく見て回った。
全体的に間取りは似たようなものだった。端末を置く場所があって、寝室がいくつかあって、キッチンがある。ただ、家具はもっと現代的な(地球に近い)スタイルで揃えられていた。実用的な家具。機能的なコモードやロッカー、快適なベッド、折りたたみテーブル。全体的に、かなり居心地が良さそうだ。
外に出ると、俺は少女たちに拠点の周辺を案内したんだが、彼女たちが興味を示したのは地面を覆っている砂の方だった。というわけで、遊ばせておいて、俺は未来的なライフルが入った箱を運ぼうとしたんだが、そのとき誰かに服を引っ張られた。
下を見ると、アルビが俺にしがみついていた。少女の視線は下に向けられていて、小さな声で話し始めた。
「ママが言ってた。あなたとママは明日出て行くって」
「ああ、俺たちはいくつか用事を片付けなきゃならないんだ」
俺の返事には構わず、アルビは続けた。
「それで、もしかしたらすごく長い間帰ってこないかもしれないから、私たちは寂しがらないように頑張って、ファリンおじいちゃんの言うことをちゃんと聞かなきゃいけないって」
俺は顔を背けた。深く何度か息を吸い込んで、唾を飲み込んでから、顔に笑みを貼り付けて少女の方に向き直り、その髪を撫でた。
「心配しないで、アルビ。ママはすぐに戻れるようにするから。俺は……そうだな、ちょっと遅れるかもしれない」
少女は不機嫌そうに顔をしかめ、俺の服をぎゅっと強く握りしめた。
ため息をついて、俺は彼女を抱き上げてシスターたちのところへ運んだ。もう少しみんなで遊んでから、俺たちは戻ることにした。
少女たちが疲れていたので、俺は彼女たちをファリンと一緒にセンターへ送った。そして自分はジェシーを呼んで上へ連れて行った。今まで何やってたんだ俺は。だって彼女は妻なんだから、家族用ターミナルで訓練させることもできたじゃないか……
訓練用ターミナルにたどり着くと、俺は少し情報を確認することにした。
「ジェシー、教えてくれ。テクガンっていつも同じ規模の戦力で攻めてくるのか?」
「いいえ、どれだけのギルドが集まるかによります。前回は、私たちの計算では死すべき者が現れるはずだったので、かなり長い時間をかけて集結していました。彼らが死すべき者が生き延びたことを知らない可能性があるので、今回は少ない人数を送ってくるチャンスがあります」
少しは希望が持てる話だ。
「――で、誰一人として戻ってこなかったっていう事実は、連中を警戒させないのか?」
彼女は肩をすくめた。
「前にもあったことだからね。なんたって、あんたみたいなのは強すぎるから。でも襲撃者と一緒に全員死んでたから、その月の残りは安心して略奪できてたんだよ」
「戦術はどうなんだ? いつも同じか、それとも何か要因次第で変わるのか?」
「大体似たようなもんだね。軽車両、ヒット・アンド・アウェイ、歩兵。戦車とヘリコプターまでいくことは滅多にないけど、あったとしても最後の方だよ。ポータル通過に時間かかるからね」
そうだ、あの時引っかかったのはこれだ。
「なあ、何でヘリコプターをトレーラーで運んでたんだ? 最初から空から襲撃した方が楽じゃないか? それとも燃料が足りないとか?」
ジェシーは驚いた様子で俺を見た。
「ニコ、あんたはこの世界の歴史を読んだ方がいい。空中移動手段は派閥の領域を隔てる山脈を越えられない。ポータルだけだ」
なるほどな。確かに、ちゃんと調べておく価値はありそうだ。とりあえず今は――ランク上げだ。
訓練時間はセフィーナのときと変わらなかったから、俺はジェシーをランク1への昇格訓練に入れて、自分はケルを迎えに行った。この短い間だけ子供をセフィーナに預けるよう説得して、彼女も訓練に送り込んだ。
家を出て訓練所まで来ると、みんなどことなく緊張している様子だった。戦術について話し合うからすぐに合流すると約束して、俺はエンディスを見つけて彼女も訓練に入れた。幸い、今はテクガンとアルヴァーの共通アクセスが開放されている。
唯一注目すべきは、ジェシーとエンディスのモデルが実質的にランク1相当だということだ。スカウトの前段階だからな。だが、システムのデータ上ではランク0になっている。バグなのか、それともこの派閥の特性で、ランクに縛られずモデルを昇格できるのか。軍事建造物を建てるまでは、どうやら分からないらしい。
そんなことを考えながら、デフールのところまで辿り着いた。彼は熱心にバギーの残骸を解体しようとしているところだった。どうやら、俺の溶解再生のアイデアが気に入ったらしいが、実現はまだ上手くいっていないようだ。
「こんばんは、デフールさん」
「おお、死すべき者の旦那。いいねえいいねえ。お話かい、それとも年寄りデフールと一杯やるかい?」
「本題だ。大きな棘がたくさん突き出た長い金属の板を作れないか? 二人で持ち運べる程度に軽くて、しかも頑丈なやつ」
「へえ、そりゃまた。何も考えんでも、最高の出来で作りますがね。けんど、何に使うんで?」
「テクガンの車両を見ただろう。あれは車輪で動いてる。中には空気が入ってる。棘が刺さればそれで終わりだ」
デフールは感心したように俺を見た。
「なるほど! わしゃ思いつかんかった。すぐ作りますけん、死すべき者の旦那!」
ドワーフは慌てて道具を放り出すと、製錬所へ走っていった。
妻たちのところへ戻ると、俺は訓練をランク2に引き上げた。
資源的には、鋼がネックだった。正直なところ、制限なしで使える者たちを、既知の兵科モデルに今すぐ投入したくはなかった。だがそれでも、今は最大限搾り取るべきだと判断して、ブレンとサユリを連れて兵舎へ向かい、鉄を100と残りの鋼を全部使って彼女たちを戦士に転職させた。フロルガの方が論理的には適任だったが、彼女は治療師になれる。だったら今は戦闘職に押し込まない方がいいだろう。
全員を集めて――もちろん、訓練中の連中を除いて――俺は作戦の説明を始めた。この点では運が良かった。サユリを除いて、アルヴァー派閥の兵士たちは全員が実戦経験者で、何と戦うことになるのか理解していた。狐娘は、まあ、その場で適応してもらうしかない。
もちろん、俺を軍事戦略家なんて呼ぶのは無理があるが、テクガンの戦術だって優雅さとは無縁だ――装備の優位性で力押しするだけの単純なやり方。やつらの油断につけ込むしかないだろう。
作戦を何度か確認してから、俺たちは解散した。嬉しかったのは、明日を処刑台のように待っていた連中の目に希望の光が灯ったことだ。
訓練を終えたばかりのエンディスに彼女の役割を説明してから、俺は彼女をランク2まで六時間の訓練に残した。
家に戻ると、ジェシーとケルと話をした。すべてが決まったところで、早めに寝ようと提案した。
雨が降り始めた。雨粒が屋根を激しく叩き、通りを流れる水が石畳に積もった埃を洗い流していく。水の壁をしばらく眺めてから、俺は上の階へ向かった。端末の一つをまだ建設していなかったことを思い出したのだ。
「死すべき者の工房。木材100、石材100、道具50」
何もない場所に扉が現れた。
「死すべき者の全ターミナルが構築された! 神々の荒野へのアクセスが開放された。
テレポートのシジルを受け取れ」
俺は目の前に浮かんでいた小石を手に取った。もちろん興味はあったが、こんな名前の場所に準備なしで行くのは賢くないだろう。とりあえず今は新しいターミナルだけにしておくことにした。
出現した部屋には作業台があった。正直なところ、俺は器用な方じゃないから、本当に役に立つのか怪しいもんだ。だが作業台の端には小さな画面があったので、とりあえず見てみることにした。
「死すべき者の作業台――武器か装備品を設置せよ」
デフールからの贈り物を思い出して、俺はクリスタライトの短剣を取り出し、くぼみに置いた。
「解析中……完了。
神の石の適用が可能。実行するか?」
ええと、そうなの?
「エラー!神の石が検出されませんでした」
まあ、そうだろうと思ってたけどな。
地下室に行ってシジルを起動させてから、俺は寝ることにした。
◇◇◇
不安な気持ちで目が覚めた。あ、違う、頭の中でピーピー鳴ってるんだ。まあ、どっちにしろ気分が良くなるわけじゃないが。
「攻撃日。現在の統計:」
派閥リストに変更はなし。ボーナスも前のまま。
さて、契約料か。今回の注釈は……
「注意! アルヴァー派閥の自己犠牲による蘇生は、月額料金による市民殺害時には利用できません。ご不便をおかけして申し訳ございません」
まあ、料金の選択肢自体は残ったわけか。よし。
「寿命-1年。残存寿命24+(37)年」
「兵士1名がランク2に昇格」
そして新しいメッセージが二つ。
「注意! 連結ポータルは00:59:57後に開放されます」
「新たなロートクが各ポータルゾーンに00:58:00後に追加されます」
俺はすぐに意識を取り戻した。
妻たちを起こして、俺はフェブリモールのところへ駆けた。素早く準備を整え、デフールが作った棘を手にした兵士たちは、ポータルゾーンへと向かった。俺とジェシーは使い捨てのグレネードランチャーを手に取り、全員と一緒に向かった。
現地で合流した。軽装備で棘を持った兵士たちをゾーンの端に配置し、俺とセフィーナはロングボウ射手にクラスチェンジして、他の弓兵たちと共に少し離れた場所に陣取った。エンディスは遠く離れた遮蔽物の中に位置し、ジェシーとケルは壊れた装備の残骸の陰に身を隠した。フェブリモールと戦士たちは援護に回った。
「ロートク設置完了!」
だが、直接見える範囲には見当たらなかった。深く息を吸い込み、俺は現れた黄色い点が楕円形に広がり始めるのを見つめていた。
◇◇◇
「現在の残存寿命――24+(37)」
「倉庫№1。状態:
木材――625単位――採取中、収支+200(10個/時×2);
石材――950単位――採取中、収支+200(20個/時);
道具――740単位
鉄――40単位――採掘中、収支+100(10個/時);
鋼――0単位。
高品質鋼――75単位。
クリスタリット――39単位――採掘中、収支+5(0.5個/時)。
金――0。
アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。
テクガン派閥とのシナジー(35/100)。
キルハイヴ派閥とのシナジー(40/100)。
死すべき者の現在の兵科モデル:タクティカルナイト、マスター・シューター。
現在の建設:なし。
軍隊:
ランク2:15体。シールダー、ロングボウ射手×3、戦士×4、闘士×3、スナイパー、セフィーナ、ジェシー、ケル。
ランク1:0体。
ランク0:0体。
訓練中:0。
「ウィザード。治癒中。完了まで後:0」




