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第二十章 家族の事情

俺はケルを抱き寄せた。肩は硬かったけど。何か着せてやらないとな、こんな格好で帰るのはさすがにまずい。


俺自身はリングを解除して、普通の服装に戻った。ケルの方は、精液の処理を終えると、尻尾に絡まっていたくしゃくしゃの外皮を引き剥がし、静かな擦れる音とともに体表に「下着」を復元させた。なるほど、これは布じゃなくて変異の一部なんだな。便利じゃないか。


俺たちは家に向かって歩き出した。


「ケル、お前は今やアルヴァー派閥の一員になったって、分かってるよな?」念のため確認しておくことにした。


何か考え事をしていたケルが、驚いたように俺を見た。


「まず第一に、私はあなたのものよ、ニコ。あなたがどの派閥に属してるかなんて、私には関係ない」


「分かった。村の住人には誰にも危害を加えるな。俺が特別に命令した場合を除いてな」


「好きにしろって言うなら、そうするわ」と、女はあっけらかんと答えて、俺に微笑みかけた。


面白いことに、今まで彼女から見たのは生意気な歯むき出しの笑いとニヤニヤ顔ばかりだった。今は背中で揺れるサソリの尾さえなければ、可愛らしくさえ見える。


拠点に着いて中に入ると、戸惑った視線を浴びた。すぐに釘を刺しておくため、俺は我らが隊長兼噂好きを呼んだ。


エルフは喜んで駆けつけてきた。命令よりも話を期待しているのは明らかだった。ついさっき、今俺の隣にいるこの女の尾で俺が死ぬのを許してしまったと嘆いていたのが同じ奴とは思えないほどだ。


「いいか、フェブリモール。こいつは俺の新しい嫁だ」


「ケル・シャザ・イスト・ニコ」と、女は軽く頷いて名乗った。


「敬意を持って接してやってくれ。みんなに伝えといてくれ、頼む」


よし、これでもう心配ない。すぐに全員が知ることになるだろう。


俺は少女を彼女のコンテナまで案内した。コンテナは一時的に兵士たちの監視下で、訓練所の保管場所に移されていた。


慎重にそれを牢獄として使われている住宅に運び込むと、俺は少女を観察し始めた。


丁寧に箱を開けると、ケルは繭を撫でた。変異した腕を変形させ、注射器のようなものを作り出すと、慎重に繭の上部へ針を刺した。「管」を通って白い液体が流れ込んでいく。何の液体かは想像がついた。


注射を終えると、ケルは卵の方へ向き直った。あの大きさなら殻も頑丈だろうと思っていたが、俺の妻の針はあっさりと内部へ侵入した。注射が繰り返された。


「これで終わり」満足そうにケルがそう言って、腕を普通の手に戻した。


「悪いんだけど、君の遺伝子はどうするんだ?」


「あ、あなた何も知らないのね。私の遺伝子はもう最初に入れてあるの。キルハイヴが母親の遺伝子をもとに実を形成するのよ。それから強い雄を探して、その遺伝子で子孫を強化するの。全部準備できたから、もうすぐ私たちに子供ができるわ!」ケルは嬉しそうに叫んで俺を抱きしめた。


俺はただ恐ろしかった。子供たちが誰に似るのか。願わくば、害虫駆除業者の悪夢だった彼女の亡き婚約者には似ていませんように。


「まあ、嬉しいんだけどさ、『もうすぐ』って、具体的にはどれくらいなんだ?」


シャザが繭を優しく撫でた。


「インセクトイドは一週間くらいね。でももう大人だから心配しないで。それでもう一匹の方は、そうねえ……」


まるで彼女の問いに答えるかのように、卵にひびが走った。


「あ、今よ!」シャザが子供みたいに飛び跳ねた。どうやら母性本能がすごく発達してるらしい。見た目じゃ全然そう見えないけど。


殻は割れ続け、ついには破裂した。上の方の殻が剥がれ落ち、頭が顔を出した。


女の子だ、ケルが言った通り。尖った耳(亡くなった婚約者、元エルフのことを思い出して……まあやめとこう。どんな突然変異があるか分かったもんじゃない)、紫の瞳。頭には少しだけ真っ白な髪、頭頂部から後頭部に向かって小さな湾曲した濃い紫色の平たい突起が二本生えている。側面には奇妙な虹色の模様がある。角かな?白いほっぺたから別の模様が始まっていて、奇妙な刺青みたいに見えて、首から下へと続いている。


ケルが慎重に赤ん坊を卵から取り出すと、その「刺青」が体の半分くらいを覆っていることが分かった。背中、太ももからお尻、脛まで。腕は肘まで硬い素材で覆われていて、キチン質なのか、それとも鱗なのか。指は母親と同じように爪が鋭い。そして全体像を完成させたのは、濃い紫色の鱗に覆われた短いトカゲのような尻尾だった。


「薄暮のドラコニドだって、なんて可愛いんだ!名前はどうする?」


あの子自身の風変わりな名前を考えると、俺は少し迷ってしまう。


「えっと、ラズ・リカってのはどうだ?」


ケルの目が丸くなった。


「黄昏の支配者?素晴らしい名前だわ、ニコ」


「ステータス更新中……完了。


新たな子供が登録されました:ラズ・リカ、派閥キルハイヴ/アルヴァー。


市民ステータス:+1(37)」


「キルハイヴ派閥とのシナジー+25%(40/100)」。


赤ん坊を手渡された。俺は慎重に彼女を腕に抱き上げると、彼女はじっと俺を見つめてきた。尻尾も手もまだ柔らかい感触で、不快感も嫌悪感も特に感じることなく、俺はただ少し女の子を抱きしめた。


子供を母親に返してから、俺は尋ねた。


「で、もう一人の方は?何か特別な条件とかあるのか?」


「いいえ、コンテナを一つのセクションに繋げて一週間そのままにしておけば大丈夫です。できれば、いつも人がいる場所がいいですね」


「じゃあ、屋敷に引っ越してこい」


コンテナを持って、俺は家に向かった。中に入ると、居間でファリンと娘たちを見つけた。


女の子たちはさらに成長していて、今では身長が一メートルを超えていた。爺さんがどこからか調達してきたのか、また新しいドレスを着ていた。今度は濃紺に白いリボンがついたやつだ。それに青い靴も。


クリスティーナはソファに座って色鮮やかな絵本を広げ、真剣な顔で唇を動かしていた。どうやら、そこに書かれている文字を読もうと頑張っているらしい。アルビは姉の隣にちょこんと座って黙っていた。ただ絵を眺めているだけなのか、それとも心の中で読んでいるのか? 正直言って、俺はひどい父親だ。


エヴィナはどこからか縄を見つけてきて、縄跳びみたいに飛び跳ねていた。完全に自分の遊びに没頭している。


ファリンは立ち上がると、俺がコンテナを床に置いたのを見て嬉しそうに抱きついてきた。


「ニコ、無事で良かった。お前があの娘と一緒にポータルゾーンに行ったって聞いてたからな……」


「ああ、その通りだ。今は俺の妻だよ」


ファリンは笑顔を保ったが、気持ちが少し変わったのが分かった。とはいえ、表立って見せるつもりはないようだった。


「ああ、そうか。家族が増えれば賑やかで楽しいだろう?」


俺たちが喋っている間に、クリスティーナが絵本を引きずりながら俺のところへやってきた。


「パパ、私たち何か悪いことした?」少女が悲しそうな瞳で俺を見つめながら、寂しげに尋ねてきた。


俺は彼女に向かってかがみ込み、頭を撫でた。


「何言ってるんだ、そんなわけないだろ。お前たちは素晴らしい娘たちだよ」


「じゃあどうして私たちのところに来てくれないの?……だから私、おじいちゃんにパパのところへ行ってもらうようお願いしたんだよ!」


クリスティーナが俺に抱きついてきて、小さくしゃくり上げ始めた。俺も彼女を抱き返し、自分も何とか堪えた。


たった四日でこの人たちが家族同然になるなんて、あり得ない、そんなはずがないんだ……なのに、どうして俺は罪悪感を感じているんだろう?


アルビも近づいてきて、無言で俺を抱きしめた。


「ごめんな、お前たち。今日は一緒に過ごすようにするよ」


「明日にはもう死んでるかもしれないから」と心の中で思ったが、口には出さなかった。


「じゃあ許してあげる」エヴィナが図々しく宣言し、紐を放り投げると、俺のそばに近寄って背中をバンバン叩いた。


「パパ、箱の中には何が入ってるの?」クリスティーナが興味津々で近づき、中を覗き込んだ。「わあ、イモムシだ!大きなイモムシ、ら~ら~ら~!」


「いや、クリスティーナ、正確には違う。まあ、お前たちの将来の義理の妹ってところかな」


赤い瞳の猫娘の顔に、驚きと喜びが入り混じった表情が浮かんだ。彼女は繭を目を丸くして見つめ、そうすれば妹が早く出てくるとでも思っているかのようだった。


そこへケルが娘を連れて屋敷に入ってきて、全員が固まった。


「ようこそ」ファリンがどこか虚ろな様子で言い、力なく手を振った。


「ありがとう」シャザが答え、俺の方へ歩いてきた。


「娘たち、こいつは俺の新しい、ゴホン、妻だ。ケル・シャザ」


「わぁ、ジェシーおばさんみたい!」エヴィナが大声で言いながら近づいてきた。


「変なの……」アルビが小声でつぶやきながら、俺の後ろに隠れた。


クリスティーナが好奇心に駆られながら、慎重に近づいてきた。


「ケルおばさん、その赤ちゃんは誰?」


「あなたの娘たちね、ニコ?」シャザが尋ねた。


「ああ」


「じゃあ、この子はあなたたちの義理の妹よ。ラズ・リカ」


クリスティーナが喜んで飛び跳ねた。


「ねえ、ケルおばさん、抱っこしてもいい?」


見知らぬ小さな女の子たちがこんなに大勢いることに少し戸惑ったシャザは、渋々と赤ん坊を手渡した。


エヴィナとアルビがクリスティーナを囲んで、新しい親戚を眺めながら驚いたように声を上げた。


「わあ、しっぽだ! 比べてみよう!」


エヴィナが振り返って、赤ん坊に自分のしっぽを見せた。ラズは喜んでふわふわのしっぽを掴むと、自分の口に引き寄せた。


「だめだめだめ、食べちゃだめ、考えて!」しっぽの持ち主が怯えたように叫んで、慌ててしっぽを取り返した。


キッチンからセフィーナとジェシーが軽食を載せたトレイを運んできた。


「あら、あなた、お客様よ。一言くらい言ってくれてもいいのに」セフィーナが咎めるような口調で俺に声をかけながら、エプロンを外した。


「まあ、客ってわけじゃなくて、住人かな……新しい妻と子供ってやつだ」


もうちょっと言い方ってものがあったかもしれない。だがセフィーナは何でも喜んで受け入れてくれる。第一夫人という立場が心の支えになっているんだろう。


ジェシーが小さく「子供……?」と呟いて、唇を噛んだ。


「じゃあ、適当に座っててくれ。すぐ戻る」そう言って、俺は地下室へ向かった。


「それじゃあ私、人数も増えたことだし何か追加で作ってくるわね。遠慮しないで座ってちょうだい」セフィーナが明るく言って、俺の後を追ってきた。


足音が聞こえたので、俺は立ち止まった。


「何してるのよ、あなた、にゃ!?」セフィーナが不満そうな顔で俺を見た。


「どういう意味だ?」


「ああ、別に反対してるわけじゃないから、勘違いしないでにゃ。でもジェシーのことも少しは考えてあげたら? 私の方があんたよりあの子のこと心配してるくらいだにゃ」


「なあ、今この話は始めないでくれ。まずは明日の襲撃を撃退してから、誰がどう間違ってたとか、そういうのは後で話そう。俺はただ、役に立つと思ったことを全部やっただけだ」


黙り込んで、セフィーナは耳を垂らした。


「ごめん。明日のことを考えないようにしてたから、つい言い争いを始めちゃった」


俺は妻を抱き寄せて、頬にキスをして、頭を撫でた。


「心配するな。きっと上手くいく」


セフィーナは俺の目を見つめて、本当に自信があるのか、それとも単に励まそうとしているだけなのかを読み取ろうとした。俺は彼女の視線に耐えた。彼女はただ溜息をついた。


「分かった。じゃあ、何か他のものでも作ってくるよ」


俺はテレポートへ向かい、中に踏み込んだ。もう建物は完成しているはずだ。


「建設完了。


建設完了:集落本部、死すべき者の地下壕。


利用可能建築物リスト更新中……完了。


新規基本建造物:木製の柵、監視塔、訓練所、歩兵兵舎、軽車両ガレージ(石油掘削施設が必要)、製錬所、鉄鉱山、機銃座、武器商人、ホップ農場」。


「訓練所を1箇所検知……モデルリスト更新。テクガンおよびアルヴァーのランクアップが全訓練所で利用可能」。


「新規兵科モデル数:5――重機関銃兵、ハンター、サイレントキラー、軽車両スペシャリスト、砲手オペレーター」。


ああ、色々あったな。そろそろ戻るか。俺は地下壕に向かい、ずっと下まで降りていった。分厚い金属製の扉を開けると、中に入ることができた。内装はなかなか悪くない。ソファがいくつか、テーブル、カウンター付きのバー。いい地下壕じゃないか、こういう場所ならやり過ごせる。


階段を見つけて更に下へ降りると、屋敷の地下室に似た空間があった。四百クリスタリットでもう一つの「死すべき者の心臓」を設置できるらしい。それだけの価値があるかまだ分からないから、とりあえずテレポートに入って、一瞬で屋敷の地下室に戻った。


軽食を食べている客たちに手を振って、俺は上の階へ、変換装置のところまで駆け上がった。


「機関銃手、金貨75枚」


武器以外、突撃兵との大きな違いはない。だが、この先が面白い。


「新たな成長ルートが利用可能――死すべき者の兵科モデル、タクティカルナイト。金貨75枚、寿命-1年」


「いくぜ!」


「変換完了。闘士と突撃兵のリングが統合され、タクティカルナイトのリングとなった」


更新されたリングを起動した。俺の身体を覆うのは騎士の鎧で、闘士のリングに入っていたものより明らかに頑丈だ。密閉式の兜、手には内側に拳銃が取り付けられた大きな長方形の盾。腰のベルトには弾薬ポーチが固定され、背中にはアサルトライフルが装備されている。


リングを解除して、俺は家族のもとへ向かった。


◇◇◇


「現在の残存寿命――25+(37)」


「倉庫№1。状態:


木材――525単位――採取中、収支+200(10個/時×2);


石材――850単位――採取中、収支+200(20個/時);


道具――770単位


鉄――90単位――採取中、収支+100(10個/時);


鋼――40単位。


高品質鋼――75単位。


クリスタリット――36単位――採掘中、バランス+5(0.5単位/時)。


金――0。


アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。


テクガン派閥とのシナジー(35/100)。


キルハイヴ派閥とのシナジー(40/100)。


死すべき者の現在の兵科モデル:タクティカルナイト、マスター・シューター(回復中)。


現在の建設:なし。


軍隊:


ランク2:12体。シールダー、ロングボウ射手×3、戦士×2、闘士×5、セフィーナ。


ランク1:0体。


ランク0:3体。ジェシー、スナイパー、ケル。


訓練中:0。


待機中:0」。

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