第十六章 三日目が終わりに近づく
死んだ。くそったれのシステムめ、どうしてこんなに時間がかかるんだ?一体どれくらい経ったんだ?
「致命傷。治癒(繋がり):コスト選択:寿命-4年/市民の命0~4」
心の奥底では「アルヴァー派閥の自己犠牲」が俺にも適用されることを期待していたんだが、駄目だった。まあ、ハートによる市民への二重強化も俺には効かなかったんだから、驚くことじゃないか。
でも別の考えが浮かんだ。このアビリティは1日1回どの住人にも発動するんだから、彼らの命で支払ってから、アビリティで蘇生させてみることもできるんじゃないか。それに、苦痛が伴うとも思えないし、時間的にもせいぜい数秒、選択している間だけだろう。
もしうまくいかなかったら、自分で行って蘇生させればいい。年数で言えば同じことだ。
ただ、誰で試すか?最初に思い浮かんだのは兵士たちだったが、今誰が警備についているか分からないと気づいた。あの尻尾のお嬢さんと何かあったらまずい。残りの連中はリスクが少ないから、適当に補給係を4人選んだ。
「アルヴァー派閥の自己犠牲(無料、1回/日・1人につき):拠点へ帰還させて蘇生/その場で蘇生」
ああ、くそっ! うまくいった!
その場で4人を蘇生させてから、俺は目を開けた。デジャヴュだ。こうやって膝枕されるのはもう何度目だろう。視線を上げると、涙で腫れぼったくなった目と垂れ下がった耳のセフィーナが見えた。
俺が意識を取り戻したことに気づくと、彼女は微笑み、目を閉じてからもう一度開けた。まるで自分自身が信じられないみたいに。
「ニコ、私の可愛い人、大切な人!」
セフィーナは慎重に俺の頭を持ち上げ、枕を敷いてから俺の隣に横たわった。俺をしっかりと抱きしめて、まるでこれが最後のキスになるかのように、長い長い口づけを交わした。
唇を離すと、俺たちは息を整え、ただ抱き合ったまま横たわって、お互いの目を見つめ合った。
「ニコ、馬鹿ね。何を考えていたの?」セフィーナは優しく言いながら、俺の頬を撫でた。
「俺たちのことを考えていたんだよ。ただ、死ぬまでにこんなに時間がかかるとは計算外だった。俺は伊達に死すべき者と呼ばれているわけじゃないんだ」
妻の耳がぴくりと震え、彼女は不安そうに俺を見つめた。
「つまり、これが初めてじゃないってこと?私たち、あなたは無敵だと思ってたのに。あの蜘蛛に貫かれた時だって、何事もなかったみたいにそこに立ってたじゃない……」
「ああ、毎回死んでるんだ。すぐに話さなくて、ごめん」
セフィーナは悲しげな表情を浮かべ、俺の唇に軽くキスをした。
「きっと辛いわよね、愛しい人」
「いや、辛いのは今日だけだ。それも多分、お前にこんなに心配をかけちまったからだと思う」
この言葉は本心だったと思う。この娘の温かさと献身を目の当たりにして、偽善的な態度なんて取れるはずがない。
「馬鹿ね、いつも生きて無事に帰ってきてくれればいいの。私のことは心配しないで」セフィーナは静かにそう言って、俺の胸に顔を埋めた。
俺は短く「わかった」とだけ答えて、彼女を抱きしめ、髪と耳を撫でてやった。
考え込みながら周囲を見回すと、どうやらセンターの部屋のどこかにいるらしいことがわかった。内装はかなり質素だが、快適だ。ベッド、テーブル、椅子、ソファ、えっと、ジェシーが居眠りしているソファ?
「セフィーナ、なあ、なんであいつがここにいるんだ?」
彼女は少し身を離し、俺が指差す方を見ると、表情を引き締めて俺を睨みつけた。
「誰ですって、私に話してなかったあなたの第二夫人のこと?」
早いな、おい。ここで言い逃れする意味はない。俺が眉間に皺を寄せて答えを考えていると、セフィーナは堪えきれずにクスクスと笑い出した。
「ああ、今のあなたの顔、最高だったわ! でもね、最初から話しておくべきだったんじゃない? だって私たち、一つの家族でしょ」
「いや、そういうわけじゃなくて、あいつには何も求めてないって説明したんだよ」
「だけど見ての通り、彼女も心配して待っていたんだ。その珍しい姿で野次馬を全員追い払ってくれてさ、結局誰にも邪魔されず静かに過ごせたよ」
まさか、彼女まで心配してくれていたとは思わなかった。やっぱり妻として考えるべきなのかな?
「ねえあなた、どうして彼女とは子供を作らなかったの?私たちの娘たちも、もっと賑やかで楽しかったでしょうに」
おいおい、とんでもないことを言い出すな!一夫多妻制が花盛りじゃないか。
「いや、なんというかタイミングがなくてさ、へへ。それで娘たちはどうだ、元気にしてるか?」――今さら気の利いた父親を演じても遅いけど、聞かないよりはマシだろう。
「ええ、おじいちゃんが遊んでくれてるわ。行きましょうか、様子を見に?」
セフィーナが立ち上がって、俺の手を引いた。
長老が自分の居室に充てている部屋に入ると、そこには楽しげで、俺にとっては信じられない光景が広がっていた。念のため「繋がり」を発動して確認してみる。ああ、本当だ。娘たちはもう3歳になっているんだな。
三人とも可愛らしい白いワンピースに赤いリボン、白いタイツに赤い靴を履いていた。娘たちは明らかに大きくなり、髪も少し伸びていたが、それ以外は相変わらず小さな子供のままだった。ソファには黒と白が並んでいる。クリスティーナとアルビが真剣な顔でピラミッドを組み立てていた。エヴィナはファリンを追いかけ回し、小さな木剣を振り回している。爺さんは負荷で汗びっしょりなのに、嬉しそうに逃げ回っていた。
俺たちに気づくと、爺さんは立ち止まって孫娘を腕に抱き上げた。
「ニコ! 神々に感謝だ、無事だったんだな!」
俺はただニヤリと笑った。俺に何かあるわけないだろ、って感じで。
セフィーナが娘たちに駆け寄り、抱きしめてから俺を指差した。
「ほら、誰が来たと思う?」
クリスティーナとアルビがじっと俺を見つめた。それからソファからそっと降りて、ゆっくりと俺に近づいてきた。俺の足に抱きつくと、小さな声で言った。「パパ!」
この世界の子供は本当に不思議だ。俺は思わず涙が出そうになった。しゃがみ込んで娘たちを抱きしめ、頭を撫でてやると、満足そうな喉の音が聞こえた。
エヴィナが暴れ出したので、ファリンは少女を床に下ろした。俺に駆け寄ると、青い瞳の子が剣を突きつけてきて、可愛らしくも威嚇的に言った。
「どこに行ってたの?!」
「戦ってたんだ」
どうやらその答えは少女の興味を引いたらしい。おもちゃを下ろすと、姉たちの横を通り抜けて俺に抱きついてきた。
「じゃあ、いいや」という声が聞こえた。
俺もその子の頭を撫でてやった。
「みんな、パパはここで一番強いから、とっても忙しいのよ!」セフィーナが娘たちに近づき、大きな声で誇らしげに語った。
少女たちは少し離れて、憧れの眼差しで俺を見上げた。「パパが一番強いんだ!」という嬉しそうな囁きが聞こえてきた。
俺は半歩下がって戦士の指輪を発動させた。すると周囲から歓声が上がり、少しばかり拍手まで起こった。一番興味を示したのはエヴィナで、真っ先に俺のところへ駆け寄ってきた。
「剣!」
俺は鞘から武器を抜いて、柄を娘の方に向けて見せてやった。エヴィナはすぐに掴みついて、嬉しそうな声を上げた。どうやらもう戦っている自分を想像し始めているらしい。
娘たちともう少し遊んでから、俺たちは妻と一緒に帰った。まあ、よくある爺ちゃんに育児を押し付けるパターンだ。
セフィーナには屋敷に戻るよう提案して、俺はまだ事務的な件を片付けなきゃならないと伝えた。なにせほぼ一日潰しちまったからな。
訓練所に着くと、大きな歓声で迎えられた。フェブリモールだけは悲しそうな顔をしていた。きっと俺を守れなかったことを責めているんだろう。小声で大したことじゃないと伝えてから、狐娘をランク2まで訓練に送り出し、俺は兵士たちのところへ戻った。
「さあ、教えてくれ。捕虜の女はどうなってる?」
「デフールがしっかり鎖で繋いだんで、問題ないはずです。例の家に収容しました」隊長が報告した。
「わかった。で、コンテナは?」
「あなたたちが来るまで開けずに待っていました」
「じゃあ行こう」
コンテナは拠点の奥の角に置かれ、警備が付いていた。俺はもう一度注意深く観察した。特別な識別マークもコード式ロックも、その他の防御機構も何もない。かんぬきみたいなものがあるだけだ。念のため全員を下がらせてから、コンテナを開けた。
外から見えた通り、二つの区画に分かれている。片方には、ぬめぬめした何かの上に大きな半透明の繭が置かれていた。中には暗い色をした、かなりでかい芋虫がいる。繭は動かず、生命の気配も感じられない。普通の昆虫みたいに、さなぎの段階なんだろう。そっと指で触れてみたが、期待していた動物知識の発動は起きなかった。代わりに別のメッセージが表示された。
「胎児への遺伝子刷り込み不可――キルハイヴ派閥の妻が必要」
ってことは、これ――子供なのか? 化け物じゃなくて?
もう一つの区画には、頭より大きい巨大な卵があった。普通じゃない。灰色で紫の斑点がある。メッセージは同じものが表示された。
アルヴァー派閥はこの派閥と接触したことがないから、何とも言えない。彼らの間では子供は親にどう接するんだろう? いっそ始末した方が正解なんじゃないか?
今この状況で何か聞き出せるとしたら、一人だけだ。
俺はフェブリモールとイヴェットと一緒に、即席の牢獄に向かった。部屋の中で、キルハイヴの女は手足を鎖で繋がれ、尻尾まで別に固定されていた。どうやら食事はスプーンで食べさせてやる必要がありそうだ。
俺を見るなり、シューッと威嚇音を上げて、憎々しげに睨みつけてきた。そして拘束を外そうともがいた。傷はもう全部治っているようだな。
「やあ、俺は死すべき者だ」
女は首を傾げて、意外にも普通の声で答えた。
「それが何を意味するのか、私は知らない」
ああ、そうだろうな。そもそもこれは弱者の特権なんだから。
「この辺りじゃ、殺せない地元のヒーローみたいなもんだと思ってくれ」
獰猛に微笑むと、少女は答えた。
「誰だって殺せるわ」
「そう言うなら好きにしろ。だが俺には通用しなかったがな」
目を細めて、捕虜は何も答えなかった。
「名前は?」俺は続けることにした。
「ケル・シャザ」
「お前らの派閥は何位だ?」
「四番目だ、この腰抜けども!」
なんだか急におしゃべりになったな。
「いきなり腰抜け扱いかよ?ここで鎖に繋がれてるのは俺じゃないんだけど」
ケルは高笑いして、嫌味たらしく言い出した。
「背後から襲うなど、戦士の風上にも置けない。お前は男じゃない」
「そうやって男らしさにこだわって、結局お前の仲間みたいに血と糞の水たまりで死ぬわけか?」
女は金切り声を上げて暴れ始め、俺に飛びかかろうとした。俺は肩をすくめて外に出て、落ち着いたらブレンとフロルガに任せることにした。
屋敷に戻ると、セフィーナを上の階に誘って端末を見せた。そしてもちろん、家族用の部屋へと案内した。
「ねえ、本当に大丈夫なの? 私なんかがプロフェッショナルになれるとは思えないんだけど……」不安そうに少女が寝台に横たわりながら言った。
「普通の女だったら結婚なんかしてない。お前は特別なんだ、だから絶対うまくいく」
妻の頬にキスをして、俺はパネルを起動した。基本的には訓練所と同じ仕組みだが、学習速度は三倍速い。つまり、3時間ほど仮眠を取れば、セフィーナがランク2になるのを待つだけだった。
「わあ、すごく調子がいい。山だって動かせそう!」処置後、少女が嬉しそうに叫んだ。
「そのうち本当に動かすさ、心配すんな」
次に俺は彼女をコンバーターに送り込んだ。射手とロングボウ射手。金貨125枚。
少女が出てくると、彼女にも射手の指輪が渡された。
そしてここから新しい展開が始まった。
「セフィーナ、新たなランクなし兵科モデルが利用可能――精霊使い。クリスタリット50」機械的な声が響いた。
俺と彼女は顔を見合わせ、彼女は黙って変換装置へと向かった。
◇◇◇
「現在の残存寿命――26+(33)」
「倉庫№1。状態:
木材――475単位――採取中、収支+200(10単位/時×2);
石材――650単位――採取中、収支+200(20単位/時);
道具――750単位。
鉄――210単位――採取中、収支+100(10単位/時);
鋼――110単位。
高品質鋼――95単位。
クリスタリット――227単位――採掘中、収支+5(0.5単位/時)。
金――200。
アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。
テクガン派閥とのシナジー(35/100)。
死すべき者の現在の兵科モデル:剣と盾の達人、マスター・シューター(回復中)。
現在の建設:なし。
軍隊:
ランク2:11体。シールダー、ロングボウ射手×2、射手×2、闘士×6。
ランク1:1体。闘士。
ランク0:1体。突撃兵。
訓練中:1。
待機中:0」




