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第十五章 新たな問題

挿絵(By みてみん)

どうやら俺が計画していた、拠点を蜘蛛の襲撃から守るための散歩は、思ったより厄介になりそうだ。だが、いずれにせよ、この節足動物どもの巣窟を、連中が俺のところへ這ってくる前に見つけられたのは幸運だった。


俺はエルフに小声で聞いた。


「で、どうなんだ? 一体何なんだよ、これ? お前、この手のモンスター知ってるか?」


エルフは首を横に振り、同じように静かに答えた。


「クモには色んな種類がいる。ハンター、スコーピオンスパイダー、レッドデス。どいつもデカいし、俺も若い頃は色んなやつを狩ったもんさ、巣の駆除もやった。だが、拠点に来たやつとか、これとか……明らかに何か不自然なんだ。こんなの初めて見る」


繭がまだ生命の兆しを見せていない以上、この場所を少し探ってみることにした。もしかしたら、こんな風に生態系が変わった原因が見つかるかもしれない。火炎放射器は邪魔なので脇に置いた。慎重に足を進めながら、強化された射撃視力を使って地面を注意深く観察し、蜘蛛の糸を丁寧に避けつつ、開けた場所の少し奥まで進んでいった。


ここで俺の目を引いたのは小さな柱だった。見た目は高さ二十センチくらいのピラミッドで、えーと、サルノコシカケか何かで出来ているように見えた。まあ、要するに木の幹に生えるあのキノコだ。時々静かにシューッと音を立てて、小さなガスの雲か、もしかしたら胞子かもしれないものを吐き出していた。


小声でエルフを呼び、遠くから奇妙な物体を指差してみせた。残念なことに、これに対してもフェブリモールは首を横に振るだけだった。何だよこれは? 定期的な襲撃だけでも十分なのに、こんな訳の分からないことまで起きるのかよ。


でも近づいて指で触ってみようなんて気にはならなかった。だって、『プロメテウス』を観た奴なら分かるだろう、異星のよく分からないモノには手を出さないって。


それ以上、変わったものは見つからなかった。開けた場所はそれなりに広いが、見渡せば一目瞭然だ。


突然、強い風が吹き始め、木々が揺れた……開けた場所の中心に向かって。まったく普通じゃない風だ。俺は急いで戻った、フェブリモールが潜んでいる倒木の陰へ。


急いでいたが、同時に慎重に、俺は蜘蛛の巣のトラップを全て飛び越え、木々の陰へと跳び込んだ。空き地の中央に、まず鮮やかな赤い点が現れた。それから膨らみ始め、やがて縦に引き伸ばされた楕円形の、濁った赤色になった。


「あー、フェブリモール、今起きてることって、これ、普通なのか? まだ襲撃には早いだろ」


だがエルフはただ後ずさり、尻もちをついて「そんなはずはない」とぶつぶつ呟いている。装甲越しに正気に戻すのはかなり無意味だと理解しつつも、俺は籠手で彼のヘルメットを軽く叩いた。


「あ、そうだ、死すべき者。もし俺が思っている通りなら、これはカオティック・ポータルだ。歴史書でしか読んだことがないけどな」


「解説は後だ。手短に頼む」


「あそこからは何が出てくるか分からない。スケジュールや場所に関係なく、短時間だけランダムに現れるポータルだからな」


これは俺の運が悪いのか、それとも状況がクソなのか? 待っていると、ポータルから誰かが出てくるのが見えた。


最初に這い出してきたのは、何種類もの虫をめちゃくちゃにミックスして、さらに粘液とブレンダーで混ぜ合わせたような代物だった。その成果物が俺たちの前に姿を現した。人間の胴体、いや、その輪郭のようなもので、どこかに顔らしきものがあって、長く尖った耳が生えている。まさかこれがエルフなのか? その体は虫っぽい胴体の上に乗っかっていて、胸部と腹部から成り立っている。つまり、普通の蜂なら頭があるはずの場所に、いきなり人間の上半身がニョキッと生えているわけだ。遠目にはドラウクを連想させるが、余分な脚やら顎やら鋏角やらが山ほど生えているせいで全然違う。三メートル近い高さのこの化け物が這い出してきて、ポータルの中に向かって何か不満げにカチカチと音を鳴らした。それから離れて、キノコのピラミッドに這い寄った。触手めいた脚の一本を中に差し込むと、化け物はグチュグチュという音を立てて何かを注入し、胞子と霧の流れを一気に強めた。


その間にポータルから新たな客が姿を現した。というか、客――女の子だ。彼女は明らかに女だった。しなやかな体、丸みを帯びた腰、胸のサイズは多分Dカップ。ただし膝からは鋏みたいな何かが生えてて、半裸の体は部分的にギザギザの甲殻で覆われてる――具体的には背中と脇腹、腹は露出してる。肩、手首、それに普通の手の代わりに爪の生えた甲殻質の指。少女は長い黒髪を持っていて、それが穏やかで何の表情も浮かべていない可愛らしい卵形の顔を縁取っていた。半円形の眉、真っ直ぐな鼻、ふっくらした唇。瞳孔の見えない赤い目、そして額には二つの突起――まるでファンタジーの悪魔みたいだ。少女の背後には長いサソリの尾が見えていて、いや長すぎるくらいだ――本人の身長を超える長さで、絶え間なく威嚇するように蠢いていた。


見知らぬ女の手には大きなコンテナがあった。驚くべきことに、彼女はそれを軽々と運んでいた。大きさは一メートル四方ほどで、見た目は金属製、二つに分かれていて、まるで奇妙な冷蔵庫のようだった。


ポータルが明滅して消えた。どうやら侵入者たちは戻ってくる気がないらしい。それとも、あの装置が繭に反応しないってことは、ここに来るのはこれが初めてじゃないのか?


でかいエルフもどきの化け物が少女に向かって何かカチカチと音を立てた。少女は不機嫌そうに言い返し、尻尾を振った。モンスターは笑うような音を立て、ガラガラとかすれた声でカチカチ鳴らすと、ぐちゃりという音とともに触手の一本を自分の体内に突っ込み、小さな物体を引きずり出した。金属製のレバーで、キチンと粘液にまみれている。待てよ、まさかこれって……


モンスターはレバーを地面に突き刺し、先端に膨らみが現れるまで待った。奴が何かしゃがれた声でさえずると、俺は返答を耳にした。どうやらシステムメッセージらしく、俺のためにも翻訳されたようだ。


「守護者/主人のチップをかざしてください」


モンスターは触手の一本を伸ばして、杖の先端に触れた。


「スキャン:キルハイヴ派閥。プラットフォーム準備中」


草原の地面が震え、変化し始めた。草が消え、胞子の霧に包まれた黒いぬめぬめした物質に取って代わられていく。


「いいか、フェブリモール。奴らを止めなきゃ、とんでもない隣人を抱えることになる。準備はいいな」


「いつでも準備はできている、死すべき者」


「じゃあ行こう。でかい奴と女を引きつけてくれ。俺は後ろに回り込む」


フェブリモールが横に動き、俺は反対側へ移動した。滑りやすい床のせいで動くのがどんどん難しくなってきた。


俺は待機の構えを取った。重装鎧を着ているとは思えないほど素早く、フェブリモールは巨体の怪物に突っ込み、ハルバードで数本の脚を切り落とした。怪物が咆哮を上げ、エルフに向かって緑色の何かを吐き出したが、彼は盾で見事に防いだ。だが盾から煙が上がり始めた。くそ、もしあれが俺が最初の戦闘で食らったのと同じ代物なら、装甲どころか戦車だって溶かすシロモノだ。一方、少女は敵に一切反応せず、ただコンテナを地面に置いた。


俺は背後から飛び込み、火炎放射器を起動させて、キルハイヴの奴らも繭も全部ひっくるめて、うごめいている塊に炎を浴びせた。化け物は咆哮を上げて燃え上がり、女もヒステリックな悲鳴を上げながら地面に転がって火を消そうともがいた。繭がグロテスクに破裂して、周囲に体液を撒き散らし、中から未成熟な蜘蛛の体が転がり出た。


火炎放射器のボンベは無事に空になったので、俺は自動小銃に切り替えた。撃つのは悪くなかったが、大半は外れていた。それなのに、ジェシーは言っていたのに……


隙を突いて、フェブリモールは化け物の脚を今度は反対側から何本かぶった斬った。奴はイコルか血か、あのおぞましい血管を流れてる何かをだらだら垂れ流し始めた。蜘蛛の時と同じ戦法だ。


機動性を失った亜エルフは、再び酸を吐き出してフェブリモールの穴だらけの盾に浴びせたが、エルフは再び薙刀を振るってその吐き出し器官を切断した。俺は化け物の人型の胴体に向けて連射し、距離を詰めたが、この野郎の傷の一部はすぐに塞がってしまう。俺は急いで隊長のもとへ向かい、拠点の表面を勢いよく滑り込んだ。


「さあ、そいつの胴体を殴れ。俺は続けるから」


フェブリモールは亜エルフの腹にハルバードを突き刺し、刃を捻って血まみれのギザギザな傷を残した。俺は駆け寄り、エルフが武器を引き抜いた瞬間、傷口にライフルの銃口を突っ込んでマガジンを全弾撃ち込んだ。化け物は悲鳴を上げて痙攣し、触手という触手を四方八方に振り回した。


「死すべき者、気をつけて!」


フェブリモールが俺の前に飛び出し、猛スピードで飛んできたスコーピオンの尾を庇った。焼け焦げた盾は持ちこたえられず砕け、一撃が兜を直撃した。尾は持ち主の元へ戻り、隊長はゆっくりと地面に崩れ落ちた。穴の空いた兜から血を滴らせながら。


巨大な化け物がついに動かなくなり、地面に転がって体液を垂れ流している。


「アルヴァー派閥の自己犠牲(無料、1回/日・1人につき):拠点へ帰還させて蘇生/その場で蘇生」


今すぐやってくれ!ふう、畜生、なんていい強化なんだ。


隊長の装甲とシールドが復旧し、彼は飛び起きた。


「ありがとうございます、死すべき者。死を乗り越えるなんて、信じられない経験でした」


フェブリモールは盾で尾の突きをもう一度防いだ。完全には貫通しなかったが、凹みは残った。少女の腕が変化し始め、手首の代わりに口を持つ蠢く何かに変わっていく。チャージを溜めると、エルフに向かって吐き出した。また見事だ。再び盾が溶け始めた。


俺は何発か撃ち込んだが、当たった弾もあまり効果はなかった。傷口がすぐに塞がってしまったからだ。


「さあ、エルフ、前と同じ技をもう一度やるぞ」


「分かった」


俺たちは前進を開始した。女がまた酸を吐いてきた。だが、糞が、土壇場で標的を変えやがって、俺に全部浴びせてきた。鎧の継ぎ目のあたりがヒリヒリし始めたので、急いで射手のリングを解除した。そして戦士のリングを起動させた。


「マスター・シューター――装備損傷。復旧……開始。11:59:58」


長いな。フェブリモールは盾で身を守りながら突進し、少女は横から彼を打とうとしたが、エルフは間に合うように全身で向きを変えて攻撃を受け止めた。間を置かず、彼は鉾槍で少女を薙ぎ払い、痛みで彼女を叫ばせた。傷は深かったが塞がり始めていたので、俺は急いで、まるでロックスターのように膝で滑り込み、すぐ近くまで来て最後のマガジンを少女の腹に撃ち込んだ。悲鳴を上げると、彼女は俺を掴んで頭上に持ち上げ、同時に尻尾を俺に突き刺してきた。


フェブリモールが飛び出して盾で力任せに叩きつけ、彼女に俺を放させた。


俺は下に倒れ込み、容赦なく痛む腹を押さえた。血が流れ出し、穴の開いた鎧と、身につけていた白い布地の服を濡らしていく。


俺は銃に手をついて身体を起こした。少女は、どうやら盾で頭を強打されて意識を失ったようだ。フェブリモールが俺のところへ駆け寄り、ヘルメットを脱ぎ、心配そうに話しかけてきた。


「死すべき者?! 死すべき者?! ニコ! 大丈夫か?」


「あ、俺か? 絶好調だぜ」


視界がぼやけて二重に見え始めたが、俺は自動小銃と剣を杖代わりにして、なんとか標柱まで這うように進んだ。


「守護者/主人のチップを当ててください」


俺は戦士の指輪を解除して、剣もセットに含まれていることをうっかり忘れて転びそうになった。手を見て、俺はようやく気づいた――二つ目のチップが出現していた。紋章の形をしたそれには、背景に二丁のオートマチック・ライフルと弾薬が描かれていた。


中指を突き立ててやった。


「スキャン:テクガン派閥。拠点再建」


スライムはさっさと消え、代わりに砂の地面が現れた。


「拠点建設を開始しますか? はい/いいえ」


はい。


「基本建造物リストをロード完了。


新たな建造物:集落本部、死すべき者の地下壕、テント、住宅、製材所、養豚場、豆農場、船着き場、石灰岩破砕機、レンガ工房、炭鉱、倉庫、食料貯蔵庫、クリスタリット鉱山、石油採掘塔。


新たな兵科モデル:突撃兵、スナイパー、メカニック運転手。


テクガン派閥とのシナジー+20%(35/100)。


警告! 二つ目のロートク・システムを検出。倉庫の統合……完了」


「テレポートのシジルを受け取ってくれ」


俺は小さな楕円形の石を拾い上げ、ポケットに入れた。それから咳き込み、血を吐いた。


フェブリモールが俺のところに駆け寄ろうとしたが、俺は彼を止めた。


「なあ、俺はもうダメだ。この女をしっかり縛っといてくれ。それとコンテナを回収しないとな、わざわざ運んできたんだから。拠点はまだ当てにできない、建設を待ってる時間はない」


だが見知らぬ女を縛るものが何もないことが判明した。仕方ない、このまま行くしかない。フェブリモールが先頭を進み、女を両手で抱えていた。何かあればすぐに対処できるようにするためだ。俺はコンテナを運んだ。確かに、かなり軽い。


もう俺には重すぎた。拠点が見え始めた頃、俺は無料の筋力強化を発動し、大きく跳躍しながら距離を詰めた。


中に入ると、また血の塊を吐き出してしまった。目の前が霞んで、足に力が入らない。俺はコンテナを置いて、その横に倒れ込んだ。


くそ、耳が変な響き方してる。目もぼやけて二重に見える。涙目のセフィーナ、動揺してる長老。どうやらフェブリモールの奴、全部しゃべっちまったらしい。くそったれのおしゃべり野郎め。こんな姿、見られたくなかったのに。


ブレンにもフロルガにも怒鳴ってしまった。俺を治す方法も知らないなんて役立たずだって。はは、悪かったな。


だが、毒と出血がめちゃくちゃ厄介だってことは分かるだろう。まあ、自殺を試すのはごめんだけどな、何が起こるか分かったもんじゃない。でも、誰かに殺してくれって頼むのか?それもなあ、こんなシステム、一体どういう仕組みなんだか。


痛みに身を縮めながら、どうしていいか分からない住民たちに囲まれて、俺はようやく死ねるときを待っていた。


◇◇◇


「現在の残存寿命――26+(33)」


「倉庫1号。状態:


木材――375単位――採取中、収支+200(10個/時×2);


石材――550単位――採取中、収支+200(20個/時);


道具――750単位


鉄――160単位――採取中、収支+100(10個/時);


鋼――110単位。


高品質鋼――95単位。


クリスタリット――275単位――採掘中、収支+5(0.5個/時)。


金――325。


アルヴァー派閥とのシナジー(100/100)。


テクガン派閥とのシナジー(35/100)。


死すべき者の現在の兵科モデル:剣と盾の達人、マスター・シューター(回復中)。


現在の建設:なし。


軍隊:


ランク2:10体。シールダー、ロングボウ射手、射手×2、闘士×6。


ランク1:1体。闘士。


ランク0:1体。突撃兵。


訓練中:0。


待機中:0」

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