第百四十章 謁見
船のエンジンが動き続ける中、横でシューッという音とともに扉が開き、小さなタラップが伸びてきた。明るく照らされた入り口を背景に、突然少女の姿が現れた。
エルフの女の子だ。かなり短めの髪は紫、ライラック、白と何色かのグラデーションになっている。体にぴったりフィットした白のコンビネゾンには様々な色の切り替えが入っていて、まるでバイクレーサーのスーツみたいだ。服は彼女のスレンダーな体型を完璧に引き立てていて、腰に巻かれた工具ベルトは、この子が船の操縦だけじゃなく整備もできることを物語っていた。マルチツールを見慣れた後だと、こういうクラシックなスタイルは妙に新鮮だったけど。
短いジャケットの襟を直すと、少女はタラップを使わずに飛び降り、素早い足取りで俺のところまで来て、黒い瞳でじっと俺を見つめた。左目の下に変わったタトゥーか、それともチップか? 判断がつかなかった。
「死すべき者、時間がないわ。今すぐ出発するから」エルフの少女が鼻をちょっとしかめながら、メロディアスな声で告げた。「私、ここまで来るのにも随分かかったんだから」
「ちょっと待って」俺は素早く言うと、後ろに駆け戻った。
「ニコ……すぐ戻ってくるんでしょ?」ジェシーが少し足を引きずりながら俺に近づいてきて、不安そうに尋ねた。
「多分な。向こうで質問に答えて、報酬もらって終わりだろ」元気そうに見せようとしながら答えた。まあ、実際のところ全く分かってないんだけど、そんなこと言えるわけないだろ?
「とにかく、パパ、早く帰ってきてね!」クリスティーナと妹たちが俺のところへ駆け寄ってきた。エンディス、セフィーナ、アンネリ、アイリーン、ヒルダ、ジェシー、ケル、ラズ、マハ、フロルガ、ソフィア――みんなが俺の体の一部でも抱きしめようと押し寄せてきて、小さなエヴァのためにわずかなスペースを残しただけだった。クリオシタとアマンディは興味深そうに眺めているだけで近づいてこなかったし、アキルズも照れくさそうに離れたところにいた。戦闘に参加しなかった者たちは安全のためにまだセンターに残っているから、軍用モデルを持たない子供たち全員には会えなかった。ロレインもテクガンの基地で訓練を受けているようで、姿が見えなかった。
「死すべき者!」エルフの娘が叫んだ。俺は目を閉じて、自分自身に頷いた。
「じゃあな、みんな。俺が戻るまで、無事でいてくれよ」
喉の奥の塊を飲み込んで、俺は抱擁から抜け出した。もう一度振り返ると、不安そうに俺を見つめる家族の姿があった。
「ソフィアは必要ないのか?」念のため、エルフの娘に確認すると、彼女は首を横に振った。
中に飛び込むと、娘がハッチを閉めて近くにあるパイロット席へと走っていくのが見えた。ヘルメットをかぶった娘は操縦桿を掴み、柔らかい衝撃とともに、俺たちは上昇し始めた。
「シートベルトを締めた方がいいわよ」娘が俺に声をかけたが、エルフの隣の横しか座る場所が見つからなかった。そこに座って、見た目は普通のシートベルトを締めた。
無数の様々な計器類が並んでいるのを想像していたから、ちょっと驚いた。目の前にあったのは、艦首からのほぼパノラマビューだったからだ。足元に普通の床がなければ、まるで空を飛んでいるような気分になれただろう。画面のあちこちに警告や情報を知らせる表示や数値が時々現れるけど、俺にはさっぱり意味が分からなかった。
下の村はもう小さな染みになっていた。船が姿勢を変え、機首を空へ向ける。少女がレバーを引き絞ると、俺はシートに押しつけられた。雨の筋が真正面から叩きつけてくる――が、次の瞬間、ぱったりと消えた。
やがて目の前には宇宙の漆黒が広がった。気分が最悪じゃなければ、こんな瞬間を心ゆくまで堪能できただろうに。だが今の俺には、それが当たり前の景色にしか見えなかった。
「繋がり喪失……」
何だこれは!? 焦った俺は少女に何か聞き出そうとしたが、彼女はぶっきらぼうに「そのうち分かる」と返すだけだった。
船の向きを変え、エルフの少女は俺たちを小さな点へと向かわせた。点は徐々に大きくなり、やがて巨大な金属製の円盤の姿を現した。
少女は完全な沈黙の中で船を操縦していたが、俺はそれでも何か聞いてみることにした。繋がりについては一応答えてくれたわけだし。発動させたい気持ちはあったが、明らかに準備万端の少女を怒らせるのは得策じゃない。
「名前は?」結局、俺はそう絞り出した。
「エスピー99」エルフの少女はこちらを見ずに短く言い放った。「質問は無用。私はただの運び屋、それ以上じゃない。終わるまで待って、あんたを連れ戻す。それで道は別れる」
どうやらおしゃべりは好きじゃないらしい。エスピの真剣な顔から目を逸らして、俺は心臓が跳ねるのを感じながら、どうやら軌道ステーションらしきものに近づいていくのを見守った。見た感じ、それほど大きくはない。少なくとも、俺たちが近づいているハンガーを見る限り、エルフ娘の船のようなものが四隻も入るかどうか怪しい。座標確認も着陸許可もなし――SFで見慣れたあれこれは一切なく、彼女はただ船を力場の中へと通過させた。もしかすると、よそ者が来たらそいつを弾くのかもしれないし、あるいは全員に通達が行っているのかもしれない。
「繋がり復旧」
落ち着いて、俺は現地のルールについて推測するのはやめて、彼女の真似をしてベルトを外した。パイロットは飛び降りると、ドアの方向へ手を振った。
「あっちに行って、あとはまっすぐ。間違えないわよ」
「ありがとう」
彼女は手を振って別のドアへと向かい、その向こうへ消えていった。
平凡な金属製の船内、装飾は一切なし。というか、たぶん平凡なんだろう。宇宙ステーションの工学的特徴への興味をすぐに失って、俺はドアに近づいた。シュッという音とともに、ドアが目の前で開いた。
ここは対照的だった。床には、長い廊下の全体にわたって、真っ白な絨毯が敷かれている。あまりにも真っ白で、明らかに汚れた俺の靴が跡を残さなかったのには驚いた。そんな不思議なことはどうでもよくて、俺は足早に前へ進んだ。両脇には時折ドアがあったが、まっすぐ行けと言われたんだ、時間を無駄にすることはない。
ドアの前に立つと、開くのを待ったが、その先には小さなホール――というよりむしろ物置のような空間しかなかった。だが中に入り、背後のドアが閉まると、目の前の壁が横にスライドし、眩しい光に思わず目を細めた。
金色に輝く巨大なホール。似たようなものは第二の試練で従僕の屋敷で見たことがあるが、ここの規模は桁違いだった。周囲のすべてが金でできているように見える――そして別の金属でできているものは、逆に装飾品なのだ。
たくさんの柱がホールをいくつかのセクションに緩やかに区切っているが、全体的にどこも同じような雰囲気だ。床には毛足の長い絨毯が敷き詰められ、あちこちに油灯のような金色の照明器具があり、その中で白い光球が明るく輝いている。天井からは大型の光球が吊り下げられ、ホールの中央には料理が並べられた大きな金のテーブルがあった。椅子は二脚だけ、向かい合わせに置かれている。
目を引いたのは、通常の二倍ほどもある大きなクリスタル――死すべき者の心臓だ。ホールの一角にある窪みに置かれ、柔らかな光を放っていた。
壁には、俺の知らない戦闘シーンを描いた絵画がかかっていた。画家独特の作風のせいで、はっきりした具体性はないんだが、ざっくりした筆致から読み取れるのは、地球の都市みたいな場所――高層ビルが立ち並ぶ現代的な街で、通りには血まみれの死体が転がっている光景だ。まだ立っている連中は、サイズがバラバラだった。よく見ると、背の低い人型もいれば、耳の長いのもいるし、尻尾の生えたのもいる。互いに様々な武器を向け合っていた全員が、頭上を見上げていた。そこには、両手を広げた顔のない男が描かれている。どうやら、最初にそいつを見た者たちは武器を下ろし、残りはまだ間に合っていないらしい。唯一神、ってやつか?
「なかなか良い絵だろう?」背後から声がした。
振り返ると、猫耳の生えた男が立っていた。ジャージとパーカーに身を包み、胸にプレーヤーをぶら下げた見知らぬ奴が、にこやかに笑いながら俺を見ている。
「んー、ああ、君にはこっちの方が馴染みやすいかと思ったんだが、反応を見る限り違ったみたいだな」耳をぴくりと動かした男が姿を変え始め、やがて金色に輝く鎧姿になった。「謁見の間へようこそ、ニコ。さあ、席へどうぞ」
俺を待たずに、男はテーブルの向こう側へ歩いていくと、軽やかな動作で椅子に飛び乗り、すぐさま皿の蓋を取って料理の香りをうっとりと吸い込んだ。
テーブルに近づいた俺も自分の席に着き、蓋を開けた。何かのスープだ。香りを吸い込んで、自分がどれだけ腹を空かせているか気づいた俺は、食事に取りかかった。
非常にボリュームのある食事を素早く平らげた。何が入っているのかさっぱり見当もつかなかった(水は除く。あれが水であってくれることを祈る)。スプーンを一口一口味わっている男をじっと見つめた。
「でさ」と彼は、まるでずっと前から何かを話していたかのように切り出した。「三連勝、しかも連続ってのは、マジで素晴らしいよ」
スープをすすると、相手は目を細めて椅子を揺らし始めた。
一口飲み込んでから、彼は続けた。
「まあ、マニュスクリプトは困ったもんだけどな。こんなに早く勝ちすぎたせいで、お前のは雀の涙程度だ、へへ」男はウインクしてそう告げた。「でもまあ、俺だってまだ全部は集めてないしな」
「あなたは?」と俺は驚いて尋ねた。すると、その男は俺を見て大笑いした。
「おいおい、タメ口でいいよ。なあ、もしかして俺のことそっち系だと思ったか? 違う違う。俺は神の代理人で、大陸の……ああ、まあどうでもいいか。くそったれの骨野郎、またややこしいこと言いやがって」と、男は苛立たしげに手を振った。
「わかった。で、結局、俺はなんでここにいるんだ?」と、俺はそろそろ本題に入ろうと決めた。このままだとこの代理人、飯だけで数時間潰しかねない。
「んー、まあ要するに、お前へのご褒美ってやつを選ぶんだよ。ポイントで買える品物ってのもいいけど、本当においしいものはカウンターの下に隠してあるんだ、わかるだろ?」と、また一度ウインクしながら猫が告げ、スープを味わい続けた。
突然、その耳がぴくりと動いた。
「ほう……これはまた珍しい」と、疑わしげな顔で男はつぶやき、椅子から立ち上がってドアの方を見た。
俺が通ってきたあの壁が再び開き、白髪で生気のない目をした若い男が現れた。その冠とマント、そして予想通りの計画から、俺はすぐに噂のアンだと推測した。
「死すべき者が二人、どちらもアルヴァー派閥の守護者で、全員ここに揃うとはな。おやおや、俺の負けか」と、金色の鎧を着た男はにやりと笑った。「さて、もう一つ椅子を探さないとな。飯なら全員分あるぜ」
突然、メッセージが現れた。
「発動確認――加速のエンチャント×10
発動確認――力のエンチャント×10」
淡い青の稲妻となってホールを駆け抜けたアネンクレトゥスは、総督に剣を突き刺した。巨大な傷口から血を噴き出しながら、男は吹き飛んで壁に激突した。
うめき声を上げながら立ち上がり、空中から剣を取り出そうとしたが、王はすでに再び彼のもとへ跳びかかり、腕を切り落とした。大きな音を立てて、武器は金色の床に落ちた。
「何やってんだ、気違い、結果がどうなるか分かってんのか!」血を吐きながら男は憎々しげに叫んだが、アンは目にも止まらぬ一振りで総督の首を斬り落とした。
「発動確認――元素魔法」
すべては数秒で起こった。炎の球が俺に向かって飛んできたが、俺は最上級加速を発動させて横に飛び退き、インセクトイドに切り替えた。
近くを通り過ぎた雷が金色の床に命中し、俺は跳び上がったが、充電されていた球体の一部が破裂した。どこかでサイレンが鳴り響いた。
蜘蛛を召喚、皇子たちを召喚、女王を召喚、フェラグを召喚。
小型のアラクニドたちがアンのいる場所へ殺到したが、奴は再び素早い閃光とともに消え、俺のすぐ傍に現れると、剣を俺の甲殻に突き刺した。その瞬間、俺は脚を振るってキングの首を切り落とした。
「発動確認――治癒」
「発動確認――加速のエンチャント×10
発動確認――力のエンチャント×10」
元の場所に戻ったアンはその場で回転し、周囲のアンデッドと飛びかかった蜘蛛たちを切り刻んだ。
「アイロール、エイラド――回復。ローラン――ダメージ」
フェラグは盾で身を固め、ローランは跳び退きながら剣で攻撃の一部を防いだ。
「死んでからあなたのもとに戻ってきたのに、嬉しくないの、あなた?」エルフの女は悪意を込めて囁き、血の雨を降らせた。血が集まって人型のシルエットを作り始め、女王の鎧の損傷が修復されていく。
指輪を回すと、アネンクレトゥスは四色に輝くマントを纏った姿になった。
両手を振り上げると、彼は三メートル近い石の巨人と、生きているかのような水、炎、渦巻く空気のようなものを召喚した。
指先に電気を発生させると、アンは俺に向かって稲妻を投げつけてきたが、俺は霊体に切り替えて電気の体でそれを吸収した。最高位のアクセラレーションをいくつか発動させ、前に飛び出して電気の斧でアンの頭を叩き潰した。血のシルエットたちが石の巨人に群がり、そこから塊を引き千切り始める。ローラン本人は後退し、水と空気の精霊の前に立たされていた。フェラグは刃を消し、震える手で炎の精霊の前に立っていたが、その体は少しずつ小さくなり、鋭い破裂音とともに消滅した。
「発動確認――治癒、寿命-1年」
「発動確認――加速のエンチャント×5、寿命-5年
発動確認――力のエンチャント×2、寿命-2年」
再び姿を現すと、アンは俺の真下に水の柱を作り出した。電気の体が水の塊に溶け込んでいくような感覚がして、何もできなくなった。
騎士に切り替えて機関銃を構えたが、王はホール中を飛び回りながら、あらゆる種類の魔法を次々と俺に放ってきた。グバー装甲が全ての攻撃を防いでいる間に軌道を読み、タイミングを見計らってグレネードランチャーを撃った。
王は両脚を吹き飛ばされて横に吹っ飛び、痛みで金切り声を上げた。ただ妙なことに、口は開けてなかったんだが……
指輪を回して、アンは這って逃げようとした。俺の背後に影が迫り、頭上から巨大な石の手が降ってきて、頭を潰した。
「アルヴァー派閥の自己犠牲――発動」
だが石の化け物は倒れている俺を掴むことに成功し、即座にまた潰してきた。
「治癒、寿命-1年」
復活後のエネルギーの爆発でゴーレムの脚が吹き飛び、奴は俺の後ろで地面に崩れ落ちた。オペレーターに切り替えて戦闘ドローンを8機呼び出し、それからネメシスを生成して中に飛び込んだ。
アネンクレトゥスは自分の前に石材の壁を作り出し、いくつかのバリスタを設置して、メックのシールドへ一斉射撃を行った。
ドローンが王の頭上を旋回し、彼が切り替えている間に、俺は光の槍でバリスタを撃ち抜いて瓦礫に変えた。前方へ駆け出し、勢いをつけてマニピュレーターで壁を曲げたが、壁の向こうから跳弾するリバーサイトディスクが飛んできて、ドローンの大半を破壊し、残りはファイアボールで焼き払われた。シールドに命中したディスクは何度も反射してジェネレーターを放電させたので、俺は急いで壁を回り込み、マシンガンを唸らせながらアネンクレトゥスに一斉射撃を浴びせた。奴はすでに石材のシールドを前に展開していた。炎のエレメンタルへの攻撃からリチャージを終えたフェラグが王に飛びかかり、背後から剣を突き刺した。死にゆく中、アンは鋭くハルバードを回転させて後方へ振り、フェラグを貫通させた。
「フェラグ――回復」
「発動確認――治癒」
再び現れたアネンクレトゥスは、憎々しげに俺を見た。首にかかった青い石材が点滅した。
「俺はカーリオンの住民のほぼ全員とリンクしている。どっちが先に命を使い果たすか、当ててみろよ、間抜け」
◇◇◇
「現在の残存寿命――26+(211)。能力発動用ボーナス年数:105(80)(係数0.5)




