第百二十五章 準備の始まり
もちろん、家に帰る方法は他にもあったが、死すべき者の地下壕を建てるのが一番簡単に思えたし、この案ならイザベラも国境の基地整備にすぐ取りかかれる。とはいえ、どうやら彼女は少しがっかりしているようだった。
「まあ、怒るなよ。明日が攻撃の日なんだ、準備しなきゃならない。準備以外のことに一日使ったら、フレムテックの攻撃をすぐには撃退できないだろう?」
イザベラは頷いたが、機嫌は良くならなかった。指示を出した彼女は俺たちに輸送車両を手配してくれて、全員で集まってすぐに出発した。
快適とは言えないが、騒々しく速いスピードで俺たちは「デッドリー・ビューティー」と名付けられたロートクの複合施設へと向かった。会話するのは難しかったから、ただ窓の外を眺めたり、時々後ろを振り返って俺たちの後ろを進む車両の列を見たりしていた。どうやらこの金持ち連中は燃料代なんて気にしないらしい……
二時間ほどかけてようやく目的地に着いた。正直、もっと早く着くと思っていたんだが。まあ、見たものはその価値があった。これまで見てきた基地が半分放棄された前哨基地みたいだったのに比べて(夜明けの守護者たちのところでさえ)、ここは本当に強力だった。高い高いコンクリートの壁には無数の銃眼があり、機関銃、ロケット発射装置、防空システム、迫撃砲が並んでいる。どうやら地雷原もあるようで、俺たちは厳密に決められた場所を通っていた。つまり、あの標識は脅しじゃなかったってことだ。
門をくぐると、たくさんの建物が目に入った。見覚えのあるもの以外に、煙突から煙を吐き出している工場もあった。ヘリポートはさまざまなタイプの回転翼機で埋まっている。ただ、飛行機は見当たらなかった。ロートク内部では作られていないのか、それともそもそも存在しないのか? とはいえ、アルヴァー派閥の船やあの発動を見た後じゃ、後者はないだろうと思った。
もちろん、正確な用途が推測できるだけの建物もたくさんあった。おそらく、さまざまな種類の機械を作る工場なんだろう。だが、俺たちはすぐに空き地に到着した。
「ここでお待ちください。男爵夫人がすぐにいらっしゃいます」俺たちを乗せてきたバンの運ちゃんが丁寧に告げた。
「すごい!」ウェンディが車の窓ガラスに張り付きながら、感嘆の声を上げた。「これで今回の旅は完全に満足よ!」
俺は微笑んだ。かなりバタバタしちゃったけど、娘たちの思い出には十分なったんじゃないかな。
「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」突然、ジェシーが運ちゃんに話しかけた。
帽子を直しながら、テクガン派閥の男はバックミラー越しに視線を向けて頷いた。
「男爵夫人って、その……特殊な能力を使えるようになってから、どのくらい経つんでしょうか?」
うなずいて、テクガンの男は言った。
「黄金の男爵夫人はかなり前からだ。実際、あの手を使って長い間勝ち続けてきた。残念ながら、我らが愛しいイザベラが最後の試練の後に手に入れた鷲も、勝利には結びつかなかった。まあ、利益的にはプラスなんだが、紅の男爵夫人は勝つまで諦めないだろうな」
なるほど、ここでは試練のことを知ってる人が結構いるんだな。まあ、アルヴァー派閥にもいるかもしれないが、強い戦闘員が特殊な配置についてるせいで、一般市民が何か知る機会はほとんどなかっただろう。それなのにここではショーまで開催してやがる。気になるのは、オフェリアが持ってた石は一体何だったんだ? あれを使わなかったのはなぜだ? それに、賭けで負けたあの若造もだ。
「そういえば、その石を賭けで負けた奴ってどんな見た目だった?」
「ええと、すごいマッチョで、バンダナ巻いてたわ」とロレインが話し始めた。「軍用のタンクトップにズボン姿で、ずっとバカみたいに笑ってたの」
もちろん勘違いかもしれないが、何となくあれはドルフだったんじゃないかって気がする。面白いことに、もう一週間近く経つのに、まだあの石を売りさばけてないんだな。
イザベラを待って、俺たちは車から降りると運ちゃんに礼を言った。
「ニコ、建物の権利はもう譲渡したわ。あとは承認するだけよ」と彼女が言って、俺を呼んだ。「そんなに時間はかからないと思うわ」
女の子たちを残して、俺は男爵夫人と一緒に中央ターミナルへ向かった。
「それで、あなたの計画は?」と彼女が尋ねてきた。ずっと気になってたんだろうな。「まさか攻撃を撃退したら、それで帰るつもりじゃないでしょう?」
「いや。二十一日目に試練があるだろ。もう一度召喚される可能性は十分ある」
「ん……私もそうなるといいんだけど」と少女は俺から顔を背け、髪を揺らしながら言った。「戦闘でアンタに八つ当たりできるし」
少女を見ると、彼女は笑っていた。
「怒るなよ。でもそうだな、俺もそこで会えるといいと思ってる」
イザベラは頷くと、俺を端末まで連れて行き、俺は針で指を刺して権利の受け取りを承認した。
用事があると言ってイザベラは去り、俺は女の子たちのところに戻って、最寄りの周回軌道に死すべき者の地下壕を発注した。加速を使うべきか考えたが、本拠地でもっと緊急性の高いものが必要になるかもしれないと判断し、このまま待つことにした。
とりあえず明日のことを考えないとな。攻撃してくる奴はいないはずだが、最初はやはり攻撃の機会を待つ必要がある。うまくいけば、部隊がシャドマーのフレムテック攻撃を手伝うことになる。それで俺は何を達成したいんだ? 最低限、防衛を探ることはできる。防衛側は全部クローンだろうから、そいつらを倒しても具体的な成果はない。さらなる攻撃のために自分の基地をそこに配置する? まだ早い気がする。奴らが大挙して攻めてくる可能性もあるし、俺にはまだランク5のモデルすらない。つまり、様子見だ。要するに、奴らを潰せば、アルヴァーにとってかなり平穏な生活を手に入れられる。
キルハイヴの領域にも行きたかった。わざとドラコニド形態に変身せずにいたから、俺はかなり突然の来訪者になるだろう。まあ、もしかしたら単に無意識のうちに、レギのところに行けない言い訳を何度も探したくなかっただけかもしれない。実際のところ、少し残酷だが、その方が良いんだろう。俺は指輪を回すだけで、この恋愛感情と孤独から逃げられる。でも彼女はそれと一緒に生きているんだ。
「ニコ、にゃ、何を考え込んでるの? すごく悲しそうな顔してるよ!」近づいてきたセフィーナが尋ねてきた。黙って彼女を抱きしめ、耳の間を撫でてやると、驚いたようなにゃあという声が漏れた。
「そんな手もあったのか!」フロルガが頭を振りながら呟くのが聞こえた。
もっとも、他の連中は猫娘の真似をするつもりはないらしい。二番煎じに見られたくないんだろう。これは覚えておかないとな……
「それで、何が気になってるの、にゃ?」セフィーナが俺に寄り添いながら小声で囁いた。移動中はかなり暑かったが、イザベラの基地内は快適で、俺はただセフィーナの心地よい温もりを楽しんでいた。
「結局、同じことだよ。何もかも抱え込もうとしてる気がして、でも何か見落としてるんじゃないかって不安なんだ」
「だったら一人で全部やろうとしなければいいのに、にゃ。もう何度も言われてる気がするけど。いつになったら私たちを信頼してくれるの?」セフィーナは言ったが、その声には不満ではなく、ほんの少しの寂しさが滲んでいた。
「わかった。じゃあ、明日を最大限効率的に動けるように計画を立てよう。でも、それなら俺は一度戻った方がいいと思う。怒らないよな?」
どうやらみんな、自分のことをしてるふりをしながら、俺とセフィーナの会話を聞いていたらしい。
「いや、もちろん、行ってきな」と猫ちゃんが他のみんなを見ながら言った。「私たちだって分かってるから……」
「でも、だからって悲しくなくなるわけじゃないけどね」とセフィーナが続けたが、俺はもうブレスレットの石を押していた。
再び屋敷に戻ってきた。下に降りても誰も見当たらなかったので、さっさと伯爵夫人の基地へ向かった。
エルフの管理人は、またしても俺を見て身震いした。だが、俺は冗談を言う気分じゃなかった。さっさと城まで辿り着き、面会を申し込んだ。
指と指を打ち合わせながら、従者が取り次ぎを終えるのを待ち、そいつと一緒に向かった。
「あら、ニコ、また何か頼みに来たの?」と伯爵夫人が玉座の間に座りながら尋ねた。明らかに退屈そうだ。例の男どもの舐め犬すらいない。退屈だから追い払ったのか、それとも俺が来たからなのか、それは謎のままだろう。
「そうじゃない。明日のことについて確認したくてな。フレムテックを攻撃するんだろ?」
頷いて、伯爵夫人は伸びをすると玉座に横たわり、肘掛けに脚を乗せた。
「ええ、基地の一つがポータルゾーンにあるから、もう部隊の移動を始めたわ。あなたも参加したいって言ってたわよね?」
「ああ、でも俺自身じゃなくて、兵を送ろうと思ってる。フレムテックの防衛はどれくらい強固なんだ?」
指に髪を巻きつけながら、フリーダは少し考え込んでから言った。
「評価するのは難しいわね、うちの戦闘員は全員不可視だから。それがうちの強みなんだけど、敵の部隊『希望』はもう長いこと私たちと戦ってて、時々すごく早く私たちを見つけられるようになってきたの。だから、あなたの兵士で不意打ちの要素を加えたいのよ」
「わかった。それでも、守備兵力は何人なんだ?」
「三人とエクゾスケルトンが一体。時々メカを援軍に呼ぶこともあるけど、たぶんあなたのせいか何かの問題で、前回の攻撃ではそういうのがなかったから、うちの戦力だけでかなり余裕で対処できてたわ」
「なるほど、だいたいわかった。じゃあ今日中に兵士を送るよ」
少女は肩をすくめた。どうやら「好きにすれば」という意味らしい。
「それで、キルハイヴは? 攻撃してきてるのか?」
フリーダは天井を見上げて、手を振った。
「それは私の管轄じゃないわ。モルクソルネド家がそういうのを担当してるの。まあ、評議会から危険手当みたいなものが出てるらしいけど、能力なしで戦いたがる人なんてそうそういないものね。そういえば、あなたも自分の子たちを連れて向こうに入って、私たちを手伝ってくれたらどう? ついでに資源も要求できるわよ。家族からばっかり搾り取ってないでさ」フリーダはあっという間に長々と喋り終えた。本当に退屈なんだろうな。
キルハイヴとは戦うより交渉する方が簡単そうだ。だが、フリーダは俺の考えを読もうとしなかったのか、それとも読んだふりをしなかっただけか。
「わかった、ありがとう」
「ええ」伯爵夫人はそう答えると、別れの合図に手を振った。どうやら儀式の時みたいな温かい態度は、もう期待できないらしい。
戻ってから、俺は自分の拠点にある塔を出た。
外に出ると、メッセージが届いた。
「建造完了:監視塔×4、木製柵、石工工房、訓練所」
利用可能な建造物リストを更新中……完了
新規基本建造物:強化壁」
シャドマー派閥とのシナジー+4%(70/100)」
思い出して、俺は製錬所を発注し、プシライトの備蓄を確認した。その量があまりにも少なくて、セレナのところに行って一言物申したくなったが、とりあえずドクトリンを選ぶことにした。爪が近接戦闘系だとすれば、それは今のところ後回しだ。針を試してみよう。
ここにはもう他に何もなかったので、俺は屋敷に戻った。上の階に行って、六つの石を取り出し、確認し始めた。
通信石が二つ、錬金術:クリスタリット、錬金術:ウラン、それと建設加速石がもう二つ。色を覚えておくべきだったな。大半はもう持ってたのに、いちいち確認してたんだから。
まあ、特別すごいものじゃないが、全体的には役に立つはずだ。すぐに通信石を自分の通信リングに接続して、リングが手に入るまでそれらは保管しておくことにし、残りは持っていくことにした。
アルヴァー派閥の基地を確認しようと決めたところで、門の建設完了を知らせるメッセージが届いた。
「出発モジュールの設置場所を選択してください」
目の前に突然現れた幽霊のような小さな模型――上部が少し丸みを帯びた二本の柱を描いたもの――を手に持ちながら、俺は急いでロートクの外に出て、基地から少し離れた場所にモジュールを設置した。この配置なら何でも問題なく運び込めるし、いざという時はロートクの防衛施設も守りに役立つだろう。
小さな模型だった門は、あっという間に高さ約4メートルの二本の柱にまで成長した。その間には空間があり、下には石造りの台座が置かれていた。
端末に近づいてボタンをいくつか押してみたが、メッセージが表示された。
「門は非アクティブです。襲撃の日をお待ちください」
無理に突破することはできないか。戻ってみると、明らかに不機嫌そうなシアディンがこっちに走ってくるのが見えた。彼女はずっと大人しくしていたから、時々ここに住んでいることすら忘れそうになるほどだった。
「ニコ! やっと戻ってきたのね!」息を整えながら彼女は言ったが、俺が戻ってきた喜びは声にまったく感じられなかった。どうやら何か用があるらしい。
「ああ、よう」
「パーティーを開いてよ! あんたがいないと、ここの連中は何もできないみたい! というか、やる気がないのよ! ファリンもアンネリも、この私――女王――を、あんたが戻ってくるまで待ってろって追い返したんだから!」シアディンは苛立ちを隠そうともせず、声を張り上げて宣言した。
「いや、まあ、言いたいことは分かるけど……なんでそんなに急ぐんだ? 何を祝うって?」
「え、子供たちの結婚でしょ? 説明したじゃない……」
「で、誰か決心したのか?」俺は単純な質問を投げたが、彼女は口ごもった。
「まだ……まだよ。だからこそ頼んでるんじゃない」女王はすぐに持ち直し、俺を問い詰めるように見つめた。
「ふーん。明日は襲撃の日だぞ。今日お祭り騒ぎするのはどうかと思うけどな。無事に乗り切ったら、そのとき盛大に祝おうじゃないか。それと、お前、俺の村のために指一本動かしてないだろ? 約束の傭兵は? 魔術師は?」
唇を一文字に引き結んで、彼女は隠しきれない怒りを込めて俺を見た。
「あるよ」
「いつ?」
「三日後くらいだな」女王はぶっきらぼうに、適当に言ったような感じで答えた。
「で、何が問題なんだよ、そんなに待たなきゃいけないのは?」
「問題は問題なの。私が言ったんだから、あるって言ってるでしょ」シアディンは鼻を鳴らしてそう宣言すると、くるりと向きを変えて立ち去ろうとした。
「光の戦士たちはどうなんだ? そういえば、最近全然見かけないんだけど」
「あんたこそ基地に顔出すこと、全然ないじゃない」女王は振り返りもせずにそう言うと、足早に俺から離れていった。
確かめてみることにして、俺はキャンプに向かった。
「おお、死すべき者よ、ついに来てくれたか!」フェブリモールは俺が入ってくるなりそう叫んだ。「旅はどうだった? うまくいったか? 狙った相手を落とせたか?」エルフはそう言ってウインクした。
「ああ、まあ、ほぼな。とにかく心配すんな。それよりも聞きたいんだが、女王の子供たちはどこをうろついてる?」
明らかに自分に満足している様子で、隊長は近寄ってきて俺の耳元で囁いた。
「ここだけの話ですが、あの怪しい連中の一人が、あなたの娘さんに言い寄ってるんですよ。そうなんです。一番美人で可愛いクリスティーナちゃんにです!」
「お前も言い寄ってただろうが。別に耳元で囁く話じゃねえだろ」
「失礼な、死すべき者よ、何をおっしゃいますか」フェブリモールはわざとらしく驚いた様子で言った。「私は純粋な気持ちで接しているだけです」
「みんなそう言うんだよ。それで?」
「まあ、なんというか、この二日ばかり、あいつらがあまりにも娘さんたちにつきまとっていましてね。それはもう、目を離さないように必死でして」エルフは不安げに報告した。
「それで、皇女たちは?」
「ピッチリしたズボン履いてる方が、あんたの息子としょっちゅう顔を合わせてるぜ。まあ、ヴィクももう16だし、ほとんど大人だけどよ、それにしても妙な話だよな」隊長は声に羨望の色を滲ませながら報告してきた。
確かにその通りだ。若者同士の交流を後押しすべきだと言ったのは、女王自身じゃなかったか?
「そういえば、シアディンと一緒に来たランク5の兵士たちはどこだ?」
フェブリモールは明らかに驚いた様子だった。
「いや、女王がほとんどすぐに帰しちまいましたよ」
◇◇◇
「現在の残存寿命――48+(310)。能力発動用ボーナス年数:155(136)(係数0.5)(捕虜――33)」




