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第百二十四章 男爵夫人の戦い

「先見の明があるわね……」ジェシーはそう言って、首を横に振るだけだった。


「娘たちにも何か考えるから」俺は慌てて言葉を継いだ。ケイトの虚ろな視線が目に入ったからだ。「とりあえず今は、もう寝る時間だろう」


女の子たちが寝支度をしている間、俺は再び他のメンバーと連絡を取り、状況を説明した。


「じゃあ、俺たちなしで夜を過ごして、明日は試合会場に来てくれ。多分、目立つ場所になると思う」


「了解、にゃ!」セフィーナが言うと、向こうで騒がしい音がした。みんなが次々におやすみを言ってきて、俺は笑いながら応えた。


この小さな通信が終わると、俺はなかなか快適なベッドに横になり、いつの間にか眠りに落ちていた。


◇◇◇


十九日目、朝。


ロートクの外からはまともなメッセージは届かず、利用料金の引き落としだけだった。ああ、吸収による俺の計画は裏目に出たってわけで、まるまる九年も飛んじまった。どうやら変換を急ぎすぎたらしい。二十日目の朝一でやるべきだったんだ。


二年と七人の捕虜を選び、俺はギルのためにもう一人追加した。


娘たちももう目を覚ましていて、車内での移動は直接制限されていなかったから、俺たちは身支度を整えに行った。


とはいえ、顔を洗っている最中に車体が揺れ、車体の振動から俺たちが動き出したことが分かった。どうやら試合はもうすぐらしい。


男爵夫人はすっかり着飾って現れた。俺にウインクすると、彼女は胸の前で腕を組み、手にはリボルバーと筒状に丸めた契約書を持っていた。


「おはよう、ニコ。あなたが何かやらかすと思っていたけど、どうやら正々堂々勝負するつもりね?」


俺はただ無邪気な顔で肩をすくめた。


少し興奮気味のオフェリアは俺とこれ以上話をせず、どこか下の方へ降りて行った。彼女が行ってしまった間に、俺はさっと彼女の部屋に忍び込んで石を回収した。


食事まで出してくれた。しかもかなり美味い。そして俺が目を覚ましてから一時間ほどして、ようやく俺たちは外に出た。


もっとも、到着自体はかなり前だったんだが、何やら段取りの都合で遅れていたらしい。辿り着いたのは、ありとあらゆる車両が詰め込まれた巨大な空き地だった。あちこちで人々が慌ただしく行き交い、巨大な観客席へと急いでいる。高い位置に設置された大量の座席もあれば、ただの立ち見エリアもあって、そこでは観客たちがより良い場所を確保しようと押し合いへし合いしていた。


そこら中をテクガンの連中が警備と一緒に走り回っている。全員キャップにサングラスという出で立ちだ。手には大量の書類が挟まれたファイルを持っていて、賭けのデータを記入しながらその場で金を集めている。


黄金の男爵夫人の馬車には特別な場所が用意されていて、俺、ジェシー、ケイト、オフェリア、それから数名の護衛という一行を、「スタジアム」のスタッフが案内してくれた。


高い場所まで登ると、会場全体が見渡せた。エリアはいくつかのセクションに分かれている。中央には普通のステージがあって、マイクが並んでいる。脇には結構大きな「断面図の家」があった。映画の撮影セットみたいだ。反対側には、分厚い防弾ガラスらしき板で囲まれた一番広いセクションがあって、そこはでこぼこや起伏だらけのダートトラックみたいになっている。


VIP席に近づくと、オフェリアが俺を呼んだ。


「さあて、手伝う準備はできてる?」


「なあ、俺は考えたんだ。一晩中考えて決めた。死すべき者の力は、最も弱い派閥を守るという偉大な目的のために天から授けられたものだってな。だから日常的な問題解決にこの力を濫用する権利は俺にはない」


なぜか授与式のことを思い出した。


「馬鹿! バカ男に時間を無駄にしただけだった!」


オフェリアは怒りを抑えきれず、取り巻きの一人を呼びつけた。


「これに男爵夫人の印章よ。すぐにペインの部下のところへ行って、この書類を無効にして!」


「は、はい、もちろん!」――男は明らかに怯えていたが、すぐさま命令を実行するために走り出した。


黄金の男爵夫人は、もう一度俺の方を睨みつけてから、出口へと降りていった。とはいえ、あの一件にもかかわらず、俺から高級席を取り上げることはなかった。どうやらここはもっと大勢の人間のために用意された場所らしい。そこで俺はセフィーナに連絡して、どこへ来ればいいか教えた。


間もなく俺の家族全員が快適に座り、ショーが始まるのを待ち始めた。ラズは串に刺さった肉団子をむしゃむしゃ食べていて、ウェンディとロレインはアイスクリームを頬張っていた。


「悪いんだけどさ、そのお金、どこで手に入れたんだ?」


全員がアイリーンに視線を向けると、彼女は顔を赤らめて座席に身を縮めた。


「あの、皆がいない間に、私がバギーを変形装甲板で少し改造したんです」と娘が説明し始めた。「キューブを見せてくれて、ボタンを押すと大きな金属板に広がるやつ」俺の目の前で、アイリーンはマルチツールを起動させて、その板を柵にリベット留めした。


「いや、それはすごいけど、ショーのために金を払ったわけじゃないだろ?」


「私たちの車を三倍の値段で売ったんだにゃ!」とセフィーナが金の延べ棒をチャリチャリ鳴らしながら誇らしげに宣言した。「どうせあれに乗って帰る予定じゃなかったんだし、そうでしょ?」


「父さん、もしかして残念だった?」とアイリーンが心配そうに俺の手を取って尋ねた。


どうやら俺は表情を抑えきれなかったらしい。


「いや、ただ複雑な気分なんだ。でも、バギーってそんなに高く売れるものなのか?」


「その……」とセフィーナが言いかけたが、口をつぐんだ。


「あたし、商人を色仕掛けで籠絡して、金額を二倍にさせたのよ」マハが落ち着いた口調で言った。「まあ、その後あの人が急に疲れて寝ちゃったから、期待してたものは手に入れられなかったけどね。あたしの桜んぼはパパのために育ってたんだから!」


「なあ、それ同じくらい凄いし酷いし、最後のくだりなんか特にそうなんだけど」俺は首を振りながら言った。


マハは肩をすくめ、マントに身を包んだ。


「それで服を手に入れたのはフロルガおばさんなの」ワッフルコーンをかじりながらウェンディが言った。「なんか治療施設があって、怪我した人たちが殺到したんだけど、全員分の場所がなくて、それであたしたちの治療師が他派閥の健康のために戦闘に突入したってわけ!」


「そうそう、なんて呼ばれてたっけ?」ケルが笑いながら聞いた。「『女神様もふもふしっぽ』?」


「もういいでしょ! あたしはただ可哀想だと思っただけなのよ……だってあの人たち、あたしたちに何も悪いことしてないんだもん」狼娘は傷ついた様子でしっぽを掴んだ。まるでその言及だけでしっぽに何かが起こるかのように。


「あ、ニコ、これ持ってて、にゃ!」セフィーナが俺にいくつかの石を手渡した。


「これどこから……ありがとな、まあ」


アマンディはマントの下で羽をぴくぴくと動かしながら、無邪気に微笑んだ。


「ある若い男の人が私に近づいてきて、ママに婿さん、パパに飲み仲間は要らないかって聞いてきたの! それで私、お父様には家族の名誉を守ってくれる強い仲間が必要だって言ったの!」


「つまり、うちの天使ちゃんが腕相撲でその可哀想な男をもう少しで腕を折るところだったってわけ。それで、他の連中がこれは何かのトリックだって思って挑んできて、まあ、その結果がこれよ」ロレインはため息をつきながら、アイスの棒を舐めた。


「おーい、そこの!」ラズが誰かに向かって鉤爪のついた小さな手を振りながら叫んだ。「肉のやつ、あと五つ!」


食べ物の売り子が元気よく駆け寄ってきて、値段を告げた。ラズはセフィーナにインゴットを借りると、爪で削って、呆気に取られた商人に重みのある金の塊を投げた。商人はそれを見ると、娘にトレイごと渡して逃げていった。


リカはくすっと笑って、肉団子を一度に二つ口に詰め込み、頬を膨らませながら他のみんなの方を向いた。


全員が吹き出して笑い、彼女は肩をすくめると、両方を飲み込んで次のに取りかかった。


その間に、ショーが始まろうとしているようだった。俺たちのところにはもう誰も来なかったから、ここは結構居心地が良かった。


両方の男爵夫人が盛大な拍手喝采の中ステージに現れた。観客席の俺を見つけて、イザベラがウインクしてきた。ステージに上がった女の子たちのところへ、見知らぬタキシード姿のテクガン派閥の男が進み出た。


「月例ショーへようこそ、レディース&ジェントルメン! 紅対黄金! 今回はどちらが勝つのでしょうか?」


激しい拍手が響き渡り、声援が飛び交い、誰かは応援メッセージを書いたプラカードまで掲げていた。どうやら俺たちは中立地帯にいるようだが、大半はイザベラを応援しているみたいだった。とはいえ、小さな黄色い旗を振っている連中もかなりいた。


「それでは、恒例により、まずは参加者の紹介から始めましょう!」


後ろに下がった司会者が、小さなテーブルを持った二人の若い男を呼び寄せた。女の子たちは順番に小さな花瓶から紙を一枚ずつ取り出し、司会者に手渡すと待機した。


「まずは我らが無双のオフェリアから!」


軽く頷いて、黄金の彼女は歩き方まで計算し尽くした様子で三つ編みを揺らし、マイクの前まで歩いてきた。


「みなさん、こんにちは!」


群衆が賛同するようにざわめいた。その間、女は何かを落としたふりをした。手で口を覆い、くるりと振り返ると、魅惑的に腰を折って落とし物を拾おうとした。


「安っぽいわね」ジェシーがぶつくさ言った。「ニコ、本気で息子にあんな尻軽女を選ぶつもり?」


「ただのパフォーマンスだよ。まさか村の男どもがお前たちを見てないとでも思ってるのか? めちゃくちゃ見てるぞ、お前たちに相手がいるのにな。頭の中で脱がせて、俺たちならこうするのに、ってな!」


「なんて恐ろしいの!」ロレインが頬を押さえた。


「何が恐ろしいのよ、あんたなんか想像する必要もないでしょ、ほぼ尻丸出しで歩いてるんだから」ウェンディが笑い転げながら、ラズからミートボールを奪い取った。


「ニコ、ってことはあなたもいつも他の女を見てるってこと、にゃ?」セフィーナが疑わしそうに尋ねた。


「いやいや、俺は別だって」


「ええ、そうね。男なんてみんな同じなんだから、にゃ!」セフィーナは食い下がらなかった。


「まあいいじゃない。他の子たちを見るだけで、ストレス解消に来るのは結局うちなんだから。何をそんなに騒いでるのよ」ケルが不満そうな口調で言った。彼女にとっては珍しい見世物に、明らかに興味津々のようだった。


オフェリアが布に包まれた魅力を披露し終えると、次はイザベラの番だった。彼女はただシンプルに、みんなを愛していること、将来はもっと頻繁に奇跡を行えるようになりたいと願っていることを語った。でも今はとても疲れているので、治癒だけを目当てに来た人たちには申し訳ないと謝罪した。


そんな素朴な言葉さえ、盛大な拍手喝采で迎えられた。どうやらこれで第一段階は終了らしい。列の間を少年たちが駆け回り、みんなが黄色か赤の紙片を入れる小皿を配っていった。俺たちは全員そろって赤に投票し、次の段階を待つことにした。


今度は男爵夫人たちに、それぞれ五人ずつの兵士グループが加わった。彼らが装備していたのは、間違いなければ本物のライフルだ!


切り開かれた家の両側に配置につくと、少女たちは合図を待った。ヘッドセットを装着し、リボルバーで武装した男爵夫人たちは、建物内を進み始めた。


先には大きな部屋があり、両側から入り口があった。そこから二つの階段が二階へと続いている。二階はもっと入り組んだ間取りで、少なくとも六つの部屋が様々な順序で繋がっていた。三人の兵士を上階へ送り込むと、イザベラは大部屋の近くに陣取った。残った二人が慎重にドアを開ける。一人が中へ入り、敵側への唯一のドアと向かい合う階段の脇に身を潜めた。もう一人は上階を監視する位置についた。


オフェリアは全員を率いて上階ルートを選んだ。部屋から部屋へと素早く進み、兵士たちは互いをカバーしながら、あっという間に紅の居住区へと辿り着いた。


勝負の分かれ目だった。両チームが上階の同じ部屋で鉢合わせた。最初の一秒で、赤チームは三人全員が、金チームは二人が倒れた。


勢いに乗って、黄金の残った兵士たちが前へ飛び出し、すぐに階段の近くまで辿り着いた。その先頭を、二階を警戒していたイザベラの兵士が撃ち倒したが、残りの者たちに撃ち殺されてしまった。結果、紅側に残っているのは一人、黄金側は二人だ。


数で優位に立っているにもかかわらず、黄金の連中は下へ突撃する気配を見せなかった。男爵夫人が近づいてきて、大部屋がある場所を見当づけると、リボルバーを床に向けた。


床に向けて発砲すると、かなりの大穴が開いた。弾丸は下の階の床に命中して発火し、ほんの一瞬で黒い炎が大部屋全体を満たした。紅の最後の兵士は、何もできないまま火災の中で死んだ。


咳き込みながら、イザベラが中へ駆け込み、狙いを定めてロケット弾の一斉射撃を呼び出し、天井を崩落させた。ドレスの裾が恐ろしい熱気で燃え上がり、彼女は慌てて後ろへ飛び退いた。


脆い構造はそんな一撃に耐えられず崩れ落ち、黄金チームの兵士二人を巻き込んだ。


オフェリアも踏ん張りきれずに落ちたが、鉤爪の手袋で床を引っ掛けてぶら下がった。


職員たちが消火器を持って駆けつけ、救助隊もやってきて、黄金の男爵夫人を引っ張り上げ、紅の炎とドレスを消火した。


余計なアナウンスもなく、また係の連中が各列を回ったが、今度は少し離れた別のテーブルに何人かの人間、おそらく審判たちがペインの制服を着て座っているのに気づいた。黙って何かを記録すると、彼らは司会者に頷き、司会者は三番目のアリーナへ向かった。


男爵夫人たちは身支度を整えるために去っていったようだ。その間にコースには数台のバギーが登場した。赤が三台、金が三台。それぞれのチームの一台には旗が描かれており、全車両に機銃が装備されていた。


やがて主役たちが新しいドレスに着替えて姿を現した。彼女たちと一緒に各車両のドライバーと射手の二人一組のチームがいた。


全員が配置につくと、司会者の合図を待った。


「スタート!」


エンジンを唸らせて、車両が勢いよく飛び出した。どうやらほぼ同じ性能らしく、最初の一周はほとんど横並びで進んでいたが、ホームストレートに入ったところで司会者がメガホンで嬉しそうに叫んだ。


「武器の使用を許可する!」


機銃が火を噴き、すぐに両陣営から一台ずつバギーがコースアウトした。メインの車両をカバーしていたためだ。金色チームの前方に地面へロケット弾が着弾し、土塊が舞い上がった。だが紅チームにも高い炎の壁という障害が現れた。


金色の一台が凹凸で失敗したジャンプをして遅れ、先頭車両だけが前を走ることになった。紅チームの射手がイザベラのもとへ駆け寄り、轟音を上げる炎から彼女を庇った。全員が目にしたのは、男の制服が燃え上がり、彼が男爵夫人の無事を確認してから車を飛び降り、地面を転がり始めた姿だけだった。


エンジンの咆哮が響き、オフロードバイク五台がフラッグ付きのバギーを取り囲んだ。ガンナーが次々とライダーを撃ち落としていったが、そのうちの一人がチェーンを振るってガンナーをマシンから引きずり落とした。オフェリアが前方に装甲兵員輸送車を召喚し、紅のマシンに一斉射撃を浴びせた。だが紅チームの二台目のマシンの運転手が割り込んで、自分の車体で先頭車を庇った。


イザベラが飛び上がり、狙いを定めてリングを回した。巨大な鷲が飛び出し、強烈な一撃で黄金チームの装甲車を転覆させ、コースの大半を塞いだ。


紅チームの運転手は器用にその障害物を避けたが、前方に突然メタルゴーレムが現れた。そいつが接近するマシンのボンネットを思いっきりぶん殴り、マシンはエンジン音を轟かせて吹っ飛び、空中で何度も回転してゴーレムの後方に屋根から着地した。血まみれの運転手は、不自然に曲がった腕のまま助手席側へ急ぎ、痛みに叫びながら、泥だらけだがどうやら無事なイザベラを引きずり出した。


もう一発のロケット攻撃がゴーレムを直撃し、粉々に吹き飛ばした。


残りのライダーたちが先頭を追う二台目のマシンに突っ込み、車輪に巻き込まれて車を走行不能にした。紅が召喚した最後のレーサーが運転手を無力化しようとしたが、オフェリアがリボルバーで鮮やかに撃ち抜いた。


やっとの思いで動くイザベラを追い抜き、オフェリアはゴールラインを越えて停止した。


司会者が終了を告げ、審判たちが協議を始めた。そこへ突然、赤いリボンをつけた制服姿の少年が駆け寄り、一枚の書類を手渡した。


書類を見て驚いた様子の審判たちは、さらに活発に議論し始めた。司会者を呼び寄せると、長々と何かを説明し始めたものだから、観客席がざわつき始めた。


「では、今回の競技の勝者は……黄金の男爵夫人!」先ほどまでの勢いもなく、司会者が告げた。


ボロボロになりながらも幸せそうなオフェリアが、みんなに向かって一礼した。一方、イザベラは用意された椅子に座り、力なく微笑んでいた。


「メインの賭けの品、合計126両の軍用車両は……紅の男爵夫人に!」


オフェリアの無言の問いかけに、司会者は急いで言った。


「これが締結された契約、誓約の条件です」


唖然として口を開けたままの黄金の男爵夫人を残し、司会者は急いで舞台から去っていった。観客たちは少しずつ帰り始め、オフェリアへの賭けの配当金をすぐさま受け取っていた――こちらには契約が適用されなかったからだ。


俺たちの観客席のところに小さな少年が駆け寄ってきて尋ねた。


「ニコ様はこちらにいらっしゃいますか?」


女の子たちと目を合わせて書類を受け取ると、俺は観客席から降りて、その男と一緒に「舞台裏」へと向かった。


そこには不機嫌なオフェリアが立っていて、ペインの手下たちの前ではとりあえず黙っていることにしたらしい。それと嬉しそうなイザベラもいた。書類を提示すると、承認の頷きをもらって、俺は話を聞き始めた。


「全員揃ったので、さらに二つの誓約契約を発表します。オフェリア、黄金の男爵夫人は、この瞬間から、ポータルゾーンに拠点を維持し、外敵及び内敵からポータルゾーンを守るための防衛活動を実施することを誓約します。毎週、ロートクが稼いだ資源の50%を支払うこと。ただしクリスタリットは90%をニコに支払うこと。我々のサービス手数料を差し引いた上で。また、この瞬間から、オフェリアはニコ、もしくは彼の親族から申し込みがあった場合、結婚することを誓約します」


「これは何かの間違い……」男爵夫人が小さく呟いた。「契約は無効になったはずなのに!」


「ええ、その通りです。一つは無効になり、新しいものが締結されました。信用できないなら、もちろんそんなことは考えられませんが、ご覧ください」


全てが本物だと確認したオフェリアは、ただ手で口を覆って黙り込み、睨むような視線を俺に向けてきた。


「これに何か問題があるなら、然るべき部署を呼びます。誰もあなたに契約を結ばせたわけではありません。違反がどんな結果を招くか、あなたもご存知でしょう」裁定者の一人が嫌悪の表情を浮かべて言い聞かせた。「では、義務の履行を開始してください。ニコ、何か異議はありますか?」


「いいえ、ありがとうございます」と俺は言った。


イザベラの契約は実質的に同じだった。ただ、パーセンテージが少し低いだけだ。


手続きが終わると、イザベラが足を引きずりながら俺のところに駆け寄ってきた。


「待ってよ、ニコ。『親族』ってどういうこと? 結婚する気はないの?」


「するかもしれない。でも今は、家に帰らないと」


◇◇◇


「現在の残存寿命――48+(310)。能力発動用ボーナス年数:155(136)(係数0.5)(捕虜――33)」

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