第百二十一章 小休止とイベント
いや、まあこういう状況じゃスムーズにいくとは思ってなかったけど、やけに早いな。近くには誰も見えなかったはずなのに。
一体誰なんだと考えながら、もうモデルを切り替えて飛び立とうとしていた。音は森の向こうから聞こえてくるようだったからな。そこへアマンディが俺の肩に手を置き、無言で翼を羽ばたかせると、数秒後には木の一本のてっぺん近くに到達していた。細めの枝に慎重にしがみついている。木から木へと飛び移りながら、彼女は視界から消えた。
戻ってきたのはすぐだった。その間ずっと、銃声、爆発、車両のエンジン音が響いていた。
ふわりと着地すると、彼女は言った。
「パパ、あちらで色違いの車両が戦闘を繰り広げています。緑色と黄色です。おそらく、私たちのことは知らないでしょう。彼らの争いに介入するのは不誠実だと思います」
ってことは、近くにあの時話に出ていたロートクがあるんだろうな。忠誠がどっちかわからないギルドだ。俺たちが男爵夫人のところに向かってるって知ったら、味方になるか襲ってくるか、五分五分ってところか。
騒音に耳を澄ませながら、数分後には俺は調理に戻っていた。炭はまだ温かいし、問題ない。今は煙も出てないしな。
すべてが静まり返った。女の子たちはもうすっかり慣れっこなのか、顔に不安の影なんてこれっぽっちも見えない。俺のそばにいるときこんなに安心してくれるのは嬉しいことだ。まあ、もちろん俺自身、自分にどれだけ発動の余裕があるかは理解しているんだが、それでも心のどこかで「これまで遭遇したことのない何かがあるんじゃないか」という疑念が引っかかっている。
そんな考えを振り払おうと、俺は肉に集中した。まあ、別にずっと見張ってなきゃいけないわけでもないんだが。やがて最初の一群が焼き上がり、俺たちは休憩を取ることにした。
「で、どう? テクガンの気候は気に入った?」ジェシーが歯で串から肉片を引きちぎりながら尋ねてきた。
何かの段ボールで作った扇子みたいなもので絶え間なく扇いでいたロレインが不満そうに顔をしかめた。
「正直言って、もっと快適な天気を期待してたんだけど」彼女は不満げな口調で言った。「お母さんにあんなに文句言われたこの軽い服を着てても、もうベタベタで汚れた気分よ」
「あたしは平気だけどね」ウェンディがにやりと笑って言った。「まあ、集落に寄らないのは残念だけど、だからこそパパの愛人候補の町には期待してるわ」
どうやらこの一言が、何人かの胸の中で何かを掻き立てたらしい。
「ニコ、にゃ。ねえ、別に三人も奥さん持たなきゃいけないわけじゃないよね?」セフィーナがかつて中断された会話を切り出した。正確には、あのとき俺が答えなかっただけなんだが。
「で、お前は離婚したいのか?」
全員がセフィーナを見た。両手を顔の前でぶんぶん振りながら、彼女は今にも泣きそうな声で言った。
「違う違う、にゃ! ニコのバカ! 何にも分かってない!」
微笑みながら、俺は慌てて彼女の困惑した叫びを遮った。
「いや、分かってるさ。嫁が増えれば増えるほど、最初から俺と一緒に歩んできた者たち――辛い時に支えてくれて、嬉しい時に喜びを分かち合ってくれた者たちに使える時間が減る。肩を並べて戦ってくれたり、夜も寝ずに補給を整えたり、命令を正確に実行してくれたりした者たちにな」
誰も何も言わず、俺の話を聞いていた。どうやら皆、この言葉の中に自分を探し、見つけては思い出に浸っているようだった。まだ三週間足らずしか経っていないのに、本当に色々なことがあった。
「俺はまだ望んでるんだ。いつか俺たちの日常を完全に安全なものにできるって。世界中がそれに反対してるように見えるけどな。そしてそんな日が来たら、明日のことなんか心配せずに、ただ一緒に時間を過ごしたい。馬鹿げてるかもしれないけど……」
「いいえ、ニコ、それは素敵なことよ」フロルガが微笑みながら言った。尻尾を地面でさらさらと揺らしながら。
「俺たちに力を貸すよ。それと、お願いだから心配しないで。俺たちがあんたの身内だからって。思うんだけど、これ以上忠実で有能な戦士なんてそうそう見つからないはずだから」ジェシーはそう言って、顔を背けた。
他の者たちも同意するように頷いた。
「で、妻のことなんだけど」俺は先ほどの質問に戻った。「お前たちじゃ足りないって意味じゃないぞ。でも、それで俺の夢に、いや、もしかしたらお前たちの夢にも近づけるなら、迷う理由はないだろ」
「分かった、にゃ……ありがとう」セフィーナが小さく言って、尻尾の先を手で握りしめた。
ジェシーは話題を変えようと決めたのか、今度は他の「新入り」たちに話しかけた。
「あんたたち、どうなの? 向こう側はどんな感じだった?」
アイリーンは注目の的になって少し恥ずかしそうにしながらも、ジェシーが興味を持ってくれたことが嬉しかったのか、急いで答えた。
「すごくいいと思います。正直、母は私の派閥のことを何も話してくれなかったし、ネメシスのデータベースにも地図も写真も説明も――何もなかったんです。だから、私にとって何が『故郷』なのか全然分からなくて。でも、アルヴァーと比べるなら、私は暖かい方が好きです。それに雨にもうんざりしてて……ごめんなさい、もし失礼なこと言ってたら」少女はそう締めくくると、怯えたように周囲を見回した。
セフィーナとフロルガが笑った。
「アイリーンちゃん、そんなに心配しないで。私たち、もう何年も生きてるんだから。それでもアルヴァーの雨にはうんざりしてるのよ。でも、あなたまだ雪を見たことないでしょう……」と狼娘が楽しそうに答えた。
「ん、雪?」アイリーンが驚いた。「ええ、きっと面白いわね!」
俺は冬場に雪かきのバイトをよくやらされてたから、そんな熱意は共有できなかった。まあ、ここの冬がロシアレベルじゃないことを祈るしかない。子供たちは楽しむだろうけどな。
話が終わるのを待って、アマンディも答えることにした。
「私は、どの派閥にもそれぞれ良さがあると思うわ。アンジュヘル出身だからって、他の派閥より気候が好きってわけじゃないもの。アルヴァーの緑の芝生、テクガンの熱い砂、んー! 全体的に賛成ね。自分の故郷を愛して、他の場所も尊重しないと」
「いい考え方だ」ケイトが少し考えてから言った。
最近、彼女はもうテクガンの文化にそこまで夢中じゃないみたいだ。期待外れだったんだろう、その結果がこれだ。
全員がマハの方を見た。咳払いをして、蝶々が言った。
「あたしは、パパがいる所ならどこでもいいの」
ケルが残念そうにため息をつき、ラズは額に手を当てた。
コメントするのはやめておこうと決めて、全員が食事に戻り、すぐに出発の準備を始めた。燃料を補給してから、森を慎重に迂回した。俺は先行すると言って、他のメンバーには少し離れてついて来るよう伝えた。
広い平原には、爆破されたバギーの残骸が煙を上げていた。一部の塗装がまだ残っていたので、敵同士がほぼ同じ数の車両を失ったことがわかった。
価値のあるものを見つけられる可能性は低いし、燃料も全部燃え尽きている。だから、開けた場所で見つかる前に、さっさと先に進むことにした。
二時間ほどで小さな川に辿り着いた。あちこちでかなり浅くなっていたから、車で渡ることについては心配していなかった。もう夕暮れだ。あと二時間もすれば、移動を続けるには暗すぎるだろう。
女の子たちの何人かが冷たい水で顔を洗っている間に、俺はジェシーのところへ行って、道を確認することにした。
「うーん、正直に言うとニコ、私もこの辺りには来たことがないの。でも、男爵夫人の拠点はもうすぐ近くだと思う。まだ東へ……それか南東へ進まないと。ちくしょう、ごめん」
彼女は明らかに落ち込んでいた。そりゃそうだ、結局俺たちは当てずっぽうで走ってるわけで、それならいっそリスクを冒して道を聞いた方がいいかもしれないな。まあ、そんな感じのことだ。
「わかった、何とかするさ。とりあえず真っ直ぐ東へ進もう。一時間か一時間半くらいで何も見つからなかったら、その時また考えよう。それ以上行くと中心部から離れすぎちまう」
素早く頷くと、ジェシーは急いで運転席に向かった。全員が席に着くと、俺たちは慎重に川を渡り、一気に前へ突っ走った。
暑さはすっかり引いて、猛スピードで走る車の中はかなり冷え込んできた。
セフィーナが俺に寄り添おうとしてきたが、ちょっと邪魔だったので、結局彼女は不機嫌そうにそっぽを向いた。アマンディの方は、恥ずかしそうなフロルガのふわふわの尻尾にくるまって眠り込んでいた。どうやら狼娘はこういう扱いがあまり好きじゃないようだが、可愛らしい天使ちゃんに怒るなんて不可能だった。
やがて遠くに明かりが見えた。減速して車から降りると、俺はスナイパーアーチャーのモデルを起動した。目を凝らして耳を澄ますと、バイクの車列が丸ごと動いているのがわかった。
もちろん、こんな大群と張り合うのは避けたいところだが、襲撃や戦闘準備をしているようには見えなかった。どちらかというと、ただどこかへこの車両を自走で移動させているだけのようだ。もしかして、トレーラーが足りないのか?
決断を下した俺は、バギー同士の距離を広げることを提案した。俺が先行し、他の連中は少し離れた位置から、いざという時に不意打ちを仕掛ける。
誰かを刺激しないよう、ゆっくりと前進していくと、やがて車列に近づいた。先頭には装甲兵員輸送車が走っており、その上に大勢の歩兵が乗っかっている。ちなみに、全員真っ赤な色をしていた。
たった一台のバギーでこれだけの兵力に襲いかかろうなんて馬鹿がいるとは思わなかったらしく、やがて俺の前に赤く塗装されたオフロード車が停車した。
中から出てきたのは、ジョニーや他の多くの連中とは違って、きっちりとした制服を着たテクガンの兵士だった。長袖の軍用シャツにズボン、迷彩柄のキャップ。
俺も車を降りて近づき、先に声をかけた。
「こんばんは」
顔をしかめながら、俺と同じくらいか、少し年上に見えるテクガンの兵士が答えた。
「それはどうかな。お前、夜明けの守護者の奴か?」彼はバギーをちらりと見てそう尋ねた。
ふむ、確かに。この旅に出るまで、ギルドがカモフラージュなんて無視して、好き勝手に車両を塗装できるなんて考えもしなかった。そういえばジョニーのは普通の砂漠色だったし、夜明けの守護者のは黄色に斑点模様だった。イカレ野郎どものはただのボロだったけど。新品のバギーは普通の金属色、グレーだった。
夜明けの守護者のバギーがどこから来たのか説明するより、最初から目的を言った方がいいと判断した。彼らの死はもう知られているかもしれないし。俺は言った。
「俺はただ男爵夫人を探してるんだ。試練で一緒だったし、彼女が訪ねて来いって誘ってくれたんでね」
兵士の顔に疑念が浮かんだ。一方で、俺の言うことが本当なら、邪魔をすれば自分がやばいことになる。おそらく、こいつは彼女の派閥出身なんだろう。
他方で、もし俺が嘘をついているなら、どんな目的があるんだ? こんな少ない戦力で攻撃するわけないだろう。
「ふむ、仮にそれが本当だとしても、今はいいタイミングじゃないな。どうやらお前は地元の人間じゃないようだ、そうなら知ってるはずだからな」顎を撫でながら、テクガンの男が言った。「まあ、野次馬は時々遠い辺境からもやって来るからな……そういうことなら、お前が観光客だろうと本当に紅の男爵夫人に用があろうと、大差ないがね」
「じゃあ、どこへ行けばいいか教えてもらえないか?」
テクガンの男は笑った。
「俺たちの後を追って来い。いや、並走する方がいいな。お前が後ろにぴったりくっついたら、仲間が神経質になる。一人か?」
「いや、あと二台いる」
兵士は帽子を上げて頭を掻きながら、また額に皺を寄せた。
「それなら、遠回りの道を強く勧めるぜ。男爵夫人たちの競技会に行くのを止めはしないが、ピリピリしてる俺たちの邪魔をしないように忠告しとく」
別れ際に手を振ると、テクガンの男はSUVに乗り込み、車列と並走し始めた。遠くでは既に戦車がキャタピラを軋ませていた。
物思わしげに首を振ってから、俺はハンドルの前に飛び乗り、娘たちに状況を説明しながら、残りの連中には合図で俺に続くよう命じた。十分な距離を保ちながら、俺たちは車列と並走し始めた。やがて、様々な色をした他のバギーが目に入るようになった。普通の乗用車もいれば、バンもいる。窓から人懐っこく手を振ってくる奴もいれば、ただ通り過ぎていく奴もいた。
全体的に、驚くほど平和な雰囲気だった。なんというか、一体感みたいなもの? 多分、俺はテクガンのこういう一面を知れて嬉しかったんだと思う。
やがて、俺たちは小さな町に近づいた。大きな看板には「緋色の槍」と書かれていた。
広大な平原には様々な車が駐車していて、もうテントを張り始めている者もいた。少し先には、赤い車両が巻き上げた土煙の柱が見えた。どうやら、みんなさらに遠くへ向かっているらしい。
車を停めると、俺は一番テクガンっぽいジェシーとケイトを連れて行くことにした。自分は弓を置いて、スナイパーの格好に着替えた。人が多いからな、刺激しない方がいい。
町は小さいくせに、見た目はちゃんとしていて裕福そうだった。泥だらけの悪路なんかじゃなく、通りにはアスファルトが敷かれている。たくさんのホテルやバーが、夕暮れの中で看板を点滅させていた。
適当にいくつか入ってみたが、どこも満室だった。残りも同じだろうと判断して、俺たちはこの試みを諦めた。
「ジェシー、お前、こんなの聞いたことなかったのか?」人だかりができている大きな建物の方へ歩きながら、俺は訊いてみた。
「う~ん、ないわね。夜明けの守護者たちは、楽に稼げること以外、ほとんど何にも興味なかったんじゃないかしら……」
「まあ、片付けて正解だったってことね」ケイトが無関心な口調で言った。
ジェシーは少し考えてから、力強く頷いた。
実を言うと全員じゃない。一部はまだ捕虜のままだった。だが、わざわざそこまで訂正する気にはなれなかった。
列の端まで歩いて行くと、俺は包帯を巻いた腕を持つ、比較的年配の男に尋ねた。汚れた包帯からは血の染みが滲んでいる。
「ここは何なんです?」
まるで宇宙人でも見るような目で俺を見た見知らぬ男は、最初不機嫌そうに顔をしかめてから、こう言った。
「ここまで来ておいて男爵夫人の奇跡を知らないのか? 彼女は本当に素晴らしいんだ。まだ二度しか見たことがないが、一生見ていたいよ!」答えるにつれて、男の目はどんどん恍惚とした表情を帯びていき、最後にはまるで馬鹿みたいに笑っていた。
よく見てみると、ここにいるのは大半が負傷者か身体に障害を持つ者たちだった。人数の割に列はかなり速く前へ進んでいたので、俺は残って宣伝されている奇跡とやらを待つことにした。
建物は大きかったが、中には椅子が一脚もなかった。だからこそ、これだけ多くの人が一度に入れるのも不思議ではない。ゾンビのように、彼らは少し傾斜した床を大きなステージへ向かってゆっくりと登っていく。押し合いはなく、すべてが落ち着いていた。静かな囁き、期待の呟き、感嘆の声だけが、足を引きずる音を遮っていた。
群衆に混じって、俺たちはすぐに巨大なステージのかなり近くまで来た。その背後の壁が突然開き、後ろから溢れる眩い光が全員の目を眩ませた。
光を背景に暗い影が浮かび上がり、やがてイザベラの姿が見えてきた。今回は前よりも豪華で肌を覆った赤いドレスを着ていた。長い真紅の髪を揺らして、彼女はステージの縁まで歩いてくると、片手にリボルバーを持ち、手袋をはめたもう片方の手のひらをテクガンの連中に向けて差し出した。
「皆さん、ようこそ! 奇跡を目にする準備はできて?」
焦れったそうな叫び声や歓声が上がり、近くにいた者たちはみんな手を伸ばした。まるでそうすれば、自分たちの憧れの人にもっと近づけるとでも思っているかのように。
誇らしげに顎を上げて、イザベラはゆっくりと注意深く周囲を見渡していたが、やがて俺と視線が合った。




