第百十八章 リッチと王家の子供たちの問題
ランク8か、一体どこで手に入れるんだ? 別大陸なら問題ないんだろうな。例えばアイビスがランク15なんだし。ただ……うーん、ネクロマンシーの石材って複数の大陸を経由して発展していくのか?
屋敷へ向かいながら、俺は考えていた。よし、カオスポータルは誰かの悪ふざけみたいなもので、襲撃の日以外でも派閥間のバランスを変えるために必要なんだろう。だが、大陸間ポータルが突然現れる理由なんてあるのか? その答えは俺にはなかった。
コンバーターまで辿り着くと、俺はリッチのモデルを選んだ。
「金貨500枚、クリスタリット200」
素晴らしい値段だな。まあ、ランク5のモデルとしては悪くないのかもしれないが。
確定すると、光が収まるまで待った。そして、ネクロマンシーの指輪を回した。
胸に重厚な鎧、ごつい肩当て、巨大なベルト、そして下半身を隠す何やらぼろ布がひらひらと揺れている。一歩踏み出そうとして気づいた――俺は地面の上を浮遊していた。
足に何が起きてるのか確認しようと思って見てみたら、思わず身震いした。骨ばった手で、指の骨が一本一本まで見える。しかも、動いてやがる。
指を開いたり閉じたりして、手首を回してみた。まるで『ターミネーター2』のアーニーが皮膚を剥いだ後みたいだ。ボロ布の下を覗き込むと、ああ、足は問題なかった。ただ、浮遊魔法がずっと発動してるだけだ。
顔を触ってみると、こっちも肉が消えてた。壁の方を向くと、紫色の光が反射して見えた。つまり、目まで光ってやがるってことか。頭蓋骨にフードを被せて、エネルギーが脈打つ長い杖をじっくり見つめた。
「モデル・リッチの利用料金――1日につき寿命-8年」
「モデル・リッチのボーナス」
「スロット拡張:アクティブ+5、リザーブ+10。
フレッシャーの強化(生存力向上、クリスタライト武器;全モデルで使用可能)
下級アンデッドの生成(モデル維持)(リッチモデルのみ)。注意:下級アンデッドはポータル転移に耐えられません。
下級アンデッドの召喚。(全モデルで使用可能)
巨人スケルトンの召喚。(全モデルで使用可能)
幻影魔法
浮遊魔法
死の魔法
元素魔法
魂の吸収(1日4回まで)。効果:寿命1年回復、ドラコリッチの結晶を入手。
ドラコリッチの創造(ドラコリッチの結晶20個必要)
上位アンデッドへの昇格可能性。
パッシブ浮遊。
通常の肉体ダメージへの耐性(魔法とエンチャントされた金属を除く)――60%
通常のフィラクテリー損傷への耐性(魔法とエンチャントされた金属を除く)――80%
スタミナ消費削減――80%」
ショックを受けながら、俺は特典の数々を読んでいた。確かに寿命もそれなりに要求されるが、どうやら吸収機能が内蔵されているみたいだ。
興味本位で、俺はアンデッドのメニューを開いた。訓練ボタンが表示された。イシラを選んで、ランク5まで24時間の訓練に送り出した。おお、これはなかなかいいじゃないか。変換までできたら、もう文句なしなんだけどな。
もう一つ気になったのは、上級ネクロマンサーの後でさえアンデッドがずっと賢くなったのに、今度はどうなるんだ?
女王を呼び出して、俺は観察することにした。
普段は無表情な彼女が微笑んで、俺の方へ歩み寄ってきた。
「ご主人様は何をお望みですか?」ロランは優しく囁きながら、俺の前に膝をついた。
「お前は誰だ?」
眉を上げて、彼女は素早く答えた。
「女王ロラン、ランク5、ブラッドクイーン。愛しいご主人様の上位アンデッドです」
「何か覚えているか?」
胸に手を当てて、彼女は息を呑むように言った。
「俺は全て覚えている。惨めな生き様から、あなた様がご慈悲をもって永遠の命を授けてくださったあの瞬間まで」
どうやら本心らしい。でなければ相当な女優だ。死の演劇、ったくもう。まあ、死人には全然見えなくなったけどな。どうやら上位アンデッドってのは、生の裏返しらしい。死ぬ心配がなくなる代わりに、永遠に自由意志を失う。
「お前、アネンクレトゥスが何を隠してるか知ってるか?」
目を固く閉じて、ロランは床に額を叩きつけた。
「申し訳ございません、ご主人様、私は彼の企みについて何も存じません! どのような罰でもお受けいたします」
考えながら、俺はギルを呼び出した。
「おお、親愛なる友よ……ってすげえ、リッチじゃねえか! 俺のダークアルヴァー語が下手で申し訳ない」吸血鬼は手で口を覆い、恥ずかしそうに謝りながら俺の周りを飛び回った。
「えっと、何がそんなに驚きなんだ?」
壁を指先でコツコツ叩きながら、吸血鬼は何かを考え込んでいた。
「どう説明したらいいかな、相棒……リッチってのは生きた魔法使いから生まれるんだが、俺たちには普通の生きた人間が不足してるんだ。もっと正確に言えば、リッチになるまで生き延びられる普通の人間がな。ランク5とはいえ、ポテンシャルは計り知れないんだ」
「なるほどな。じゃあ上位アンデッドについてはどうだ?」
ギルは床を見つめるロランに視線を向けた。
「何を教えるかって? 基本的には人間とそう変わらないさ。自分で試してみればいいだろ、相棒。普通のゾンビみたいに冷たくもないんだぜ」
ギルが「お前」呼びに変えたことに気づいて、俺はロランに触れてみた。ん、温かくはないが、氷のように冷たいわけでもない。まあ、前の個体には比較のために触ってなかったんだけどな。
目を細めて、ギルは言った。
「つまり、ムラムラしたらヤっちまってもいいってことさ、俺の好色な友よ。もっと美人の死体を探せよ」
「ネクロフィリアのアドバイスなんて御免だ、俺には生きてる女がいくらでもいる。もういい、ありがとうよ、じゃあな」
ギルは申し訳なさそうに肩をすくめて消え、俺はロランを引き揚げた。
捕虜の一部を寿命に変えに行くべきか? まあ、今日もまたどこかに出かける予定だし、急ぐ必要はないな。
モデルを終了させて、俺はセンターへ向かい、そこで金の延べ棒を回収した。その途中で、アンネリがさらに二つの工房を建設したことに気づいた。屋敷に戻ってから、伯爵夫人の基地へ転移した。
◇◇◇
早朝から、シアディンは部屋を行ったり来たりしていたが、ついに我慢できなくなって大声で叫んだ。その瞬間、王族らしい気品は跡形もなく消えた。
「いい加減にしてよ!?」
イソルトゥルとアラランという、彼女の愛しい息子たちは、まったくベッドから出てくる気配がなかった。
少女は一人、また一人と近づき、彼らを強く押したり揺さぶったりしたが、二人の若者は母親のあらゆる試みを無視し続けた。
「母さん、朝っぱらから何の用だよ。姉貴たちを起こしに行けよ」あくびをしながら、水晶の皇子は寝返りを打った。
「怠け者のクソガキども! 一体誰に似たんだか……」女王は憤然と毒づくと、椅子に歩み寄って腰を下ろし、休むことにした。「あんたたち、本当に何も分かってないんじゃないの」
「何の話だ?」眠気が少し覚めた長兄の皇子が、ベッドから起き上がりながら尋ねた。指輪を回すと、すぐにマラカイトの鎧に身を包み、今は剣の鈍い光沢を見つめている。
「あんたたち、こんなに長くここにいるのに、あの娘たちの誰一人として口説き落としてないじゃない。一体全体、どうなってるのよ?」
「俺、恥ずかしいんだよ」アラランは枕に顔を埋めたまま言った。毛布から出る気はさらさらないようだ。「それに、雨降ってるし」
イソルトゥルは首を振りながら立ち上がった。
「いや、マジで母さん、そんなの簡単だと思ってるの? 俺たち、姉貴たち以外の女性なんて見たことなかったんだぞ。それなのに魔性の口説きテクニックを期待されても」
シアディンは両手で顔を覆い、大きくため息をついた。
「分かった、娘たちに話しかけてみるか。お前たち、明後日が攻撃だって分かってるよな? アレックスが手間取ってくれりゃ儲けもんだが、そうじゃなかったら……アンはもう容赦しねえぞ。ここを焼け野原にするだろう。死すべき者からも逃げられねえだろうな」
「だったらさっさとここから逃げるべきだろ。恋だの愛だのやってる場合じゃねえだろ?」とアララン。ベッドから立ち上がり、兄に倣って軍用モデルの鎧を身につけ始めた。
シアディンは顔をしかめて言った。
「あんたたち、誰が今、二人の死すべき者の血を引く子供を身ごもってるか思い出す? あの白い雌犬よ。アンが本当に何を企んでたのか、もっと早く知ってたら、あんな結婚許しやしなかったわ。でも今となっちゃ手遅れ。だから、こっち側に有利になるようにしとくのが絶対必要なの。さっさと行って、あの娘たちの誰かとヤっちまいなさい!」
母親に急かされ、王子たちは部屋を出て身支度を整えに向かった。
「で、どう思う?」兄が聞いてきた。アラランが顔を洗っている間に。
「母さんは大げさに言ってると思うけどな。それにここの娘たちは可愛いし、裏工作の道具に使う気にはなれねえよ。結局、シアディンはいつも何か企んでたけど、俺たちにとっちゃ碌なことにならなかったしな」
イソルトゥルは微笑んで賛成するように頷いた。それから何か考え込んで、言った。
「なあ、その角、やっぱり削っといたほうがいいんじゃないか? 女の子たち、怖がらせちまうぞ」
「ああ、それから尻尾も切り落とせってか。まったく、それ、一度も面白くなかったからな。最初の十回くらいは、ほんのちょっとだけ可笑しかったかもしれねえけど」アラランは不満げにそう言って、自分の小さな角に触れた。「クソみたいな遺伝だ」
「悪かったよ、もうやらねえ。今日はな」兄は笑いながらそう言って、弟の後頭部を軽く叩いた。
二人がだらだらと言い合いをしているうちに、妹たちがやって来た。
「あら、ようやくお出ましね」ウィトナ――紅玉の皇女――が手で口を覆いながらぼそぼそと言った。だが、彼女の盛大なあくびは、その場にいた全員に伝染した。
「なあ、妹よ、お前もその角、やっぱり削っといたほうがいいんじゃないか?」イソルトゥルが笑みを浮かべて訊いた。
少女は口を歪めて鏡を覗き込み、無関心な口調で答えた。
「いや、このままでいい。ほら、後ろからヤられるとき、掴むのに都合いいだろ。それにフェラするときも、まあ、そういうことだ……」
角の生えた兄が、口をすすいでいた水で咽た。慌てて振り返ると、心配そうに妹の顔を見つめて、その手を取った。
「妹よ、何を言ってるんだ?」
「あら、シアディンは兄さんたちの頭を洗ってくれなかったの? 私が連れてこられたのは、母親が孫を手に入れるために誰かの娼婦にするためだって、そう理解したんだけど」ウィトナは不機嫌そうに言い、兄の目を見つめた。
シェフィカは黙って頷き、妹の言葉を肯定した。
「いや、君たちの勘違いじゃないか」アラランが自信なさげに口を開いたが、彼の兄が遮った。
「本気で言ってるのか? ここの息子たち、結婚してるザラの娘婿以外、全員18にもなってないぞ」
ウィトナは両手を広げた。
「未成年を誘惑しろって言われたのよ。狼の子なんてもう13歳で、あそこも大きくなってきたから、目の前で裸になれば済む話だって」
聞いた話を呆然と消化しながら、兄弟たちは女の子たちが身なりを整えるのを待った。
「それで、どうするつもりなんだ?」
「別に何もしないわよ。無理に事を進める必要はないと思う。誰か気に入った人ができるかもしれないけど、母親の妄想のために子供たちと遊ぶつもりはないわ」ウィトナは洗面台の端に腰かけながら言った。
目を細めて、イソルトゥルが訊いた。
「お前、死すべき者の前でケツを見せびらかしてなかったか?」
ため息をついて、少女は洗面台から立ち上がり、その場でくるりと回りながら答えた。
「気づいてないみたいだけど、あたしってこういう見た目だから、好むと好まざるとにかかわらず目立っちゃうのよ。でも正直なところ、あれだけ奥さんがいる人にあたしが印象を残せるかどうか、ただ興味があっただけ。あの場ではシェフィカの方が向いてると思うわ。ほら、こんなおっぱい育てちゃって」
不意を突かれた少女の胸を揉みしだきながら、ウィトナは満足げに笑った。シェフィカは顔を赤らめ、帽子を直して小さな声で言った。
「誰も頼んでないわよ、勝手に育ったんだから!」
「まあまあ、お嬢さん方。せめて形だけでも行ってみましょうよ」
「大勢の中じゃ誰とも知り合えないわ。それなら男子は右、女子は左よ」ウィトナはきっぱりと言い放つと、妹の手を掴んで家を出た。
皇子たちは少し遅れて出てきて、野営地へと向かった。
「はは、兄貴、俺たちもう出遅れたぜ」アラランは笑いながら、野営地の方を顎で示した。
アルビは唇を噛みしめながら、クロスボウの照準を的に慎重に合わせていた。マルコが何かを丁寧に説明しながら、片手でクロスボウを支え、もう片方の手で彼女の腰を抱いていた。
「まあ、女の子はたくさんいるんだ、気にすんなよ。それとも、もうあの猫ちゃんが気に入ったのか?」イソルトゥルは兄の脇腹を突きながら、厚かましい弩兵を眺めて尋ねた。
「いや、そういうわけじゃ。まだ他にも猫ちゃんがいるだろ。おっ、ほら!」
息を荒げながら、エヴィナは透明なマントを纏ったまま、マネキンをズタズタに刻んでいった。傍から見ると、マネキンが勝手にバラバラになっていくように見え、その周りを黒い耳の頭部だけが飛び回っているようだった。
エヴィナがとどめの一撃を放った時、彼女の剣は金属にぶつかった。驚いて顔を上げると、透明な剣を集中して握り締める水晶の皇子の姿があった。
にゃっと鳴いて、少女は何度か突きを繰り出したが、すべて意外なほど器用な男に防がれた。目を細めてにやりと笑うと、エヴィナはフェイントをかけ、横に転がった。素早く距離を詰めた猫娘は、上から飛びかかり、後ろから男にしがみついて背中にぶら下がり、刃を喉に押し当てた。
ニヤリと笑って、アラランは剣を投げ捨てた。
「はいはい、降参だ。エヴィナ、だよな?」
不意を突かれた少女は危うく落ちそうになったが、最後の瞬間、鎧の突起に掴まった。
「おっ、そうだ。アラランさま?」
「そんな堅苦しいのはよしてくれ。まあ、君のことも姫って呼ばせてくれるなら別だけど……」
イソルトゥルは少し離れた場所に立ち、黙って観察していた。驚いたように会話に耳を傾けながら。
「くそ、あいつただのお人好しを演じてただけか、このペテン師が!」
エヴィナの楽しそうな笑い声が聞こえると、皇子は舌打ちして先へ進んだ。おっと、もう一人猫ちゃんがいるじゃないか。名前はなんだっけ?
結局思い出せないまま、皇子は近づいていった。少女はゴーレムの操作訓練に夢中だった。今まさに、ゴーレムたちが自分たちの体を使って生きた梯子を作ろうとしている。お互いにゆっくりと這い上がりながら――あの粗削りな体つきと、こんな作業には向いていない四肢を考えると、実に驚くべき光景だった。
「おお、これは見事だ!」イソルトゥルは近づきながら声を上げた。
突然の声にクリスティーナはびくっと震え、制御を失ったゴーレムたちが次々と崩れ落ちた。
イラついたように小さく唸り声を上げて、少女は振り返ると、なんとか笑顔を絞り出そうとした。
「おはようございます。何かご用ですか?」
「う、うーん、ただ近くを通りかかっただけで……」
「お手伝いしましょう、皇子殿下。迷われたのでは?」後ろから声がした。振り返ると、重装鎧に身を包み、背中に巨大な盾と手に長いハルバードを持ったエルフが立っていた。
「あなたは、失礼ですが……」
「フェブリモールだ。指揮官ではあるが、殿下の世話をする時間ぐらいは作れる」エルフはきびきびと言い放ち、クリスティーナをちらりと見た。
「いや、俺は別に……」イソルトゥルは再び口を挟もうとしたが、またしても遮られた。
「さあ、ご覧ください。ここが兵舎で、あちらも兵舎です。まあ、宮殿のふかふかベッドでジュースをすすっていた殿下は兵舎なんて見たこともないでしょうがね」フェブリモールはわざとらしく大声で語り始め、皇子の腕を掴んで野営地から遠ざけていった。
フンと鼻を鳴らし、クリスティーナは髪を撫でつけると訓練を続けた。
◇◇◇
「現在の残存寿命――53+(295)。能力発動用ボーナス年数:147(147)(係数0.5)(捕虜――41)」




