第百十三章 じゃじゃ馬馴らし
この状況全体で妙に思えたのは、このお嬢さんたちの誰一人として、まだうちの娘たちに気づいていないことだった。もちろん、俺は身内の能力を少しも過小評価するつもりはないが、最低でもラズのオーラは影響を与えていたはずだ。それとも、彼女たちの奇妙な呼び方と何か関係があるのか? 何て呼んでたっけ、一なる多の者? 彼女たちの社会を見る限り、男なんて誰であろうと特別な愛情を持っているはずがないのに、こんな栄誉とはな。
奴隷たちは俺の前を駆け抜けていった。三人もの女監視員が近くにいることに明らかに怯えていて、あっという間だった。五分も経たないうちに、俺の繋がりに38人追加された。追加しながら計算してみたんだが、これ、うまくいけば労働力にもなるわけで、命だけじゃないんだよな。ほら来た、あの問題だ。管理者までいれば、拠点はあっという間に発展する。でもそれは先走りすぎだ。今はまだ妻すらいないんだから。
セレナの耳元で囁いて、俺は彼女の命令を待ち始めた。
「さあ、次はあなたたちよ」猫娘は威圧的に言い放ち、自分の部下たちをじっと見つめた。
狐娘たちは顔を見合わせ、不安そうに尻尾を壁にこすりつけながら、何も言い出せずにいた。
「私たちもあれに……触らなきゃいけないの? それは勅令違反だわ、やらないから」銀色の狐娘がきっぱりと言い切り、俺に近づこうとしていたルビーの腕を引っ張った。
「身の程を弁えなさい。伯爵夫人はどこか遠くにいるけど、私はここにいる。今の私に逆らうのは――とても悪い考えよ」セレナは挑戦的に言い放ち、一歩前に踏み出した。
身震いしたアーギはクナイを取り出し、不安そうに耳をぴくぴく動かして唾を飲み込んだ。
「ヴェスモルズ様、やはりやめた方が……」
その時何かが起こった。猫娘は素早く瞬きをして、頭を抱えると、呆然として他の者たちを見た。
「え、何これ? 私、どうしてたの? こんなゴミがよくも私にこんな近くまで来られたわね!」猫娘は俺を見て金切り声を上げた。手首の刃が揺れ、今にも俺に飛びかかろうとした瞬間、彼女のすぐ近くの壁に静かなカチッという音と共に弾丸が突き刺さった。
「てめぇ、私の旦那に手を出すことなんて考えるんじゃねえぞ」俺は上から怒りの叫び声を聞いた。
「エンディスおばさん、そんな言葉使わないで」ラズが爪に炎を灯しながら囁いた。
シャドマーの連中は凍りついた。いや、全員が凍りついた。
「キルハイヴ……」セレナが唾を飲み込んで後ずさりしながら、静かに囁いた。
突然目の前に狭い廊下の壁が現れると、少女は怯えた声を上げて障壁に身を寄せた。まるでそれが自分をあらゆる災難から守ってくれるとでも思っているかのように。
狐娘たちも不安そうにしていたが、責任の重圧を感じ取っているのか、後退することなくラズを真っ直ぐ見つめていた。
「えっと、俺たち伯爵夫人のところに行くんだよな? 案内してくれよ」と俺は陽気に言ったが、三人のシャドマーから焼き尽くすような視線を向けられた。
「黙れよ、クズが。お前は一なる多の者ですらないんだ、お前の命なんて何の価値もない。壁に頭ぶつけて死んで、その存在で空気を汚すんじゃねえ」とアーギが憎悪を込めて吐き捨てた。
「最悪。奥様がこいつに擦り寄ってたなんて……」とルビーが思い出したように言うと、セレナの顔が一気に青ざめた。
「私が……何ですって!?」猫娘は金切り声を上げ、激怒のあまり荒い息を吐いた。「アイゼンヴェルド家の名誉を汚した罪で、お前を切り刻んでやる。お前の汚い売女どもも助けにはならないわよ!」
叫び声とともに少女が突進してきて、俺は視界の端でエンディスの素早い動きを捉えたが、首を横に振って制止し、インセクトイドに意識を切り替えると、突っ込んでくる猫娘に向けて糸を放った。
さっきまで主人を助けようとしていた狐娘は、急に後ずさりして震え出し、自分のサイオニック能力を失った今、どうすればいいのかわからない様子だった。
縛られたセレナを触手で掴み上げ、俺は彼女を自分の顔に近づけた。少女の目に宿っていた怒りが、恐怖に変わる。
「お前、口が悪すぎると思わないか? ここにいる間、俺のことも、俺の家族のことも、それに後ろにいる鼻垂れ小僧どものことも――まあ、あいつらのことはどうでもいいが――散々ひでえことを言ってくれたよな」
少女の視線に宿る憎悪は凄まじかったが、立場を悪化させまいと歯を食いしばって堪えている。俺は触手をわずかに締め上げた。セレナが苦痛の呻き声を上げる。
「このまま死にたいのか? それとも、まともに振る舞ってみるか?」
セレナがうなずくのが、どれほど辛かったかは見て取れた。だが、俺の質問は二つあったんだ。俺はニヤリと笑って言った。
「一つ目に答えただけだよな? じゃあ、さよならだ」
荒い息を吐きながら、少女は激しく首を横に振って絞り出した。
「お願い……助けて」
「理由が見当たらないな」
憎しみは恐怖に取って代わられた。どれほど俺を憎んでいようと、死の脅威はあまりにも現実的すぎた。俺は脚の棘をほんの少しだけ出し、少女の露出した肌に痛みを伴う刺激を与えた。
「ああっ! 伯爵夫人のところへ連れて行くわ」セレナは慌てて口走り、俺の脚を警戒しながら見つめた。
「お嬢様、駄目です!」狐娘たちが声を上げたが、ただ眺めているだけに飽きた俺の仲間たちが飛び降りてシャドマーの娘たちを捕まえ、腕をねじり上げた。繋がりの下、しかも五位である彼女たちは、力を失ったサイオニックたちに対して明らかな優位を得ていた。
「ちょっと黙ってなさい」ジェシーが狐娘たちを叱りつけ、一人の腹に銃床を突き立てた。
ははっ、あいつらがこんな風になるのは初めて見た。どうやらここで見たものが完全に堪忍袋の緒を切らせたらしく、今や俺たち全員が役柄を演じているってわけだ。
猫を脚から離すと、俺はインセクトイドのモデルを解除した。荒い息をつきながら、セレナは蜘蛛の糸の拘束から這い出し、怯えた目で俺たち全員を見た。
「あなたたち……覚えてなさい!」少女は叫び、走り出した。ため息をついて、俺は加速を発動し、逃げる娘にすぐに追いつくと足払いをかけた。その後、力を発動させて彼女のドレスを掴み、立たせた。
「試してみる価値すらない。俺が今やお前の主人であり神なんだ。俺が言えば、お前は実行する。俺が思えば、お前は俺の考えを推し量り、俺の望みを寸分違わず叶えようと努める」
抵抗する娘を仲間のところへ押しやりながら、俺は捕虜たちを撫で回すふりをして狐娘たちを繋がりに加えた。まあ、実際触り甲斐のある体つきではあったが、妻たちと娘たちの非難がましい視線の下では落ち着かなかった。その目は明らかにこう言っていた。「おい、調子に乗るなよ!」 こういうことは男同士でやるべきだし、ついでに奴隷どもへの見せしめにもなるってもんだ。
「さて、セレノチカ、実験の準備はできたか?」
むっつりした猫娘は何も答えず、睨むように俺を見上げていた。
フンと鼻を鳴らして、俺は銀色の狐娘に近づき、表情がよく見えるようマスクを外してから、ぴったりと顔を近づけた。
「アーギ、俺のことをどう思ってるか言ってみろ」
「愚鈍な獣、屑、汚らわしい生き物」狐娘はほとんど俺の顔に吐き捨てるように言った。それから俺はセレナの方を向いた。
「ほら、これが間違った答えだ」
指を鳴らすと同時に、俺はアーギを見ずに繋がりのボタンを押した。目を閉じた少女は床に崩れ落ち、彼女を支えていたジェシーは死体を蹴り飛ばして離れた。
セレナの目が見開かれ、その瞳は多くを物語っていた。唾を飲み込み、彼女は助手の亡骸から視線を逸らせなかった。赤毛の狐娘は、俺が近づくと恐怖で悲鳴のような声を上げ始めた。
「どうして? どうして? どうして?」彼女は泣き言を並べ、まるでその問いで俺から身を守ろうとしているかのようだった。
「泣き言はいいから、答えろ。同じ質問だ」厳しい口調で俺は少女を真っ直ぐ見据えて言った。
「な、何の質問ですか?」頭に耳をぺたりと倒し、今にも泣きそうな様子でルビーは尋ねた。
「二度は繰り返さない。三つ数える。一、二……」
「あなた様は素晴らしい、慈悲深い、聡明なお方です。私はあなた様に心から感服しております」恐怖で目を瞑りながら、ルビーは急いで言った。
沈黙が落ちた。だが俺は更に近づき、手を伸ばして今まさに指を鳴らそうとする仕草を見せた。
片目をわずかに開けて、ルビーはそれを目にすると泣き崩れた。
「いやっ、お願い、死にたくなぁぁぁいぃぃぃ!」
もう少し手を伸ばして、俺は優しく少女の髪に触れ、頭を撫でながら耳を撫でつけた。
「いい子だ、狐娘」と俺は優しい声で少女の耳元で囁き、尻尾が石の上で神経質にざわめくのを見た。
少女は無意識に裏切りを待っていた。――このまま続ければ、今よりずっと良くなるからな。
「わ……わかりました、ご主人様」とルビーは囁き、エンディスが手を離したので頭を下げた。
その後、俺はセレナの方を向いた。少女はすぐに視線を逸らし、唇を噛んだ。相反する感情が戦っているのが見て取れたが、結局セレナは再び俺を見つめ、膝をついた。
「お許しください、ご主人様、もしあなた様とご家族に無礼を働いたのなら。もう二度と繰り返しません」と猫娘は早口で言い、自分の言葉に顔をしかめた。
「わかった、謝罪は受け入れる。ただ……まだ罰が残ってるよな?」
セレナはびくりと震えたが、顔は上げず、膝をついたままだった。俺は近づいて、彼女がその体勢から俺の意図を探ろうと盗み見しているのがわかった。
急に歩み寄ると、俺は力を発動させてセレナを抱え上げ、片膝をついて彼女を腹ばいに膝の上に乗せた。ドレスをめくり上げ、下着を引き下ろすと、奴隷たちとルビーが見ている前で、彼女の尻を派手に叩いた。家族のことは言うまでもない。
二発目、三発目。合計十発。俺には、彼女が小さくすすり泣きながら、長い間高い地位で贅沢をしてきた後のこんな屈辱的な扱いに耐えようとしているのが聞こえた。
折檻を終えると、俺はセレナを地面に放り出した。彼女は誰も見ずに、急いでパンティを履き直すと、壁際まで這って行って縮こまった。
「何ぼさっと突っ立ってんだ、伯爵夫人のところに行くぞ、さっさと」俺は大声で言って、漂っていた沈黙を破った。「そこのお前らも、仕事しろ。ショーなんか見てサボってる暇はねえぞ」
自分たちに言われたと理解した奴隷たちは、怯えた声を上げながらつるはしを倍の力で振り下ろし始めた。ルビーは泣きじゃくるセレナに高慢な視線を投げかけてから先に進んだ。それから俺たちも。ケイトは軽々とアーギの亡骸を肩に担いで、みんなと一緒に歩き出した。猫娘は行列の真ん中に配置した。
移動に集中して、シャドマーの女たちは静かになった。俺はこっそりと重いため息をついた。こんな役回りは俺にはきつすぎる。俺はどちらかというと家族の愛と相互理解を大事にする方なんだが、ここではそんなアプローチは通用しそうにない。
この側には階段などなく、俺たちはただ緩やかに上っていく通路(石で整備されたトンネルをそう呼べるならだが)を歩いていた。やがて前方に光が見え始め、俺たちは揃って外の新鮮な空気の中へ出た。ここは山が少なく、眺めは最高だった。遥か下には小川が流れ、森が緑に茂り、ただ平原には草花が豊富というわけではなく、貧弱な低木と小さな木々がまばらに生えた、かなり広い荒涼とした土地が広がっていた。この景色のほぼ中央に黒い石造りの大きな城があり、その背後、少し離れたところに二つのロートクが見えた。
どんだけステータスが大好きなんだよ、わざわざ昔ながらの建物を使って他の奴らに見せびらかすために。
「ほら、ご主人様、あれが伯爵夫人様のお城です。もうすぐですよ」と狐娘が囀った。どうやら自分がどう振る舞うべきか理解したらしい。砂糖をひとかけらやりたくなるくらいだった。特にセレナが重い視線を元信奉者の方へ向けた後では。
「ありがとう、ルビー」
近づいてきた狐娘は俺に身を寄せ、囁いた。
「もしかして、ご主人様、何か欲しいものは?」
彼女の提案にかなり真剣に悩んでいるふりをしながら、俺はこっそりとルビーの反応を追った。引きつった笑顔、お前、俺のこと大嫌いだろ、お嬢さん。じゃあ我慢しな。
「おっと、どうかな、とりあえずお前を犯すってのはどうだ?」
俺の努力も虚しく、ルビーの顔に浮かんだ嫌悪の表情を見逃すことはできなかった。
「ここはあまり都合のいい場所じゃないと思うんですけど……」ルビーが慎重に答え始めたが、俺は軽蔑的に鼻を鳴らし、握りしめた拳を上に掲げた。「いやいや、お願いします、勘弁してください、そんなに早くは無理です……分かってください」風向きが変わったのを見て、狐娘が言い訳を始めた。
「金で買える女だけど、売女じゃないってか?」セレナが彼女に向かって投げつけた。
「黙りなさい、馬鹿、二人とも殺されないうちに」ルビーがパニックで尻尾を地面に叩きつけながら、悪意を込めて言い返した。
「まあいい、これは試しだった。お前らは不合格だ。俺は芝居なんか求めてない、心から変われ。俺や俺の身内に対する態度に少しでも偽りを感じたら、その場で死ぬことになる。分かったか?」
「はい、ご主人様」シャドマーの二人が一斉に険しい顔で答え、力なく前へ歩き出した。
ゆっくりと山を下り、俺たちは城へと続くよく踏み固められた道を進んだ。この展開は俺にとってむしろ好都合だった。というのも、ロートクには自動防衛システムがある可能性があったが、ここならどんな優位性もラズのオーラで無効化できるからだ。
やがて城に近づいた。あの陰気な女主人を見つけたのか、門がすぐに閉じられ始めた。やはり思った通り、ここで砲弾の餌食になっているのは怯えた男たちで、彼らは女たちの行列をおっかなびっくり横目で見ながら、俺のことは心からの哀れみと同情の目で見ていた。
広大なホールは豪華さや富を感じさせるものではなく、ただの実用的な空間だった。絨毯すら節約したらしく、むき出しの石床がそのまま敷かれている。全体的に、試練で訪れたあの城にそっくりだ。
無数の廊下を案内されて、もう永遠に続くんじゃないかと思い始めた頃、ようやく別の棟に入った。その間、すれ違うのは使用人の男たちばかりで、警備兵や女の姿は一切なかった。
新しい棟には壁にタペストリーが掛けられ、床には暗紅色の絨毯が敷かれていて、それがかなり大きな両開きの扉まで続いている。扉の脇には、光る槍を持った兵士たちが直立不動で立っていた。鉱山の所有者がここにいるという事実だけで余計な質問を避けられるらしく、兵士たちは俺たちと一緒にキルハイヴがいることについて一言も訊いてこなかった。
ただ、扉は兄ちゃんたちが急いで開けてくれて、俺たちは巨大なホールに入った。色とりどりのランプで飾られたホールは、様々な光に満ちていて、まるであらゆる闇を追い払っているかのようだ。中央には長いテーブルが置かれ、料理が並んでいる。肉から立ち上る湯気を見るに、ついさっき用意されたばかりらしい。
巨大な玉座に、十人ほどの裸のマッチョな男たちに囲まれて、試練で会ったあの娘が座っていた。どうやら伯爵夫人はそんなに多くないらしい。偶然にもまた、フリーダに当たっちまった。
娘の傍らでは何かの装置から煙が立ち上っていて、そのホースを口にくわえて時々吸っている。水煙草に似ているが、容器の中で紫色に光っているのを見ると、どうやら単純なものじゃないらしい。
パイプから半分閉じた目を上げ、自分の足を舐めている男の頭を撫でながら、フリーダは来訪者たちを見渡した。視線はシャドマーの連中、俺の嫁たち、そしてラズへと流れ、最後に俺で止まった。
伯爵夫人の目が額まで這い上がり、むせ返った彼女は悲鳴を上げた――その声で皿の何枚かがひび割れるほどだった。
「警備いいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
◇◇◇
「現在の残存寿命――53+(296)。能力発動用ボーナス年数:148(126)(係数0.5)(捕虜――43)」




