第百十二章 新たな旅
念のため、俺たちは一斉に車から飛び出して戦闘態勢を整えた。何が飛び出してくるか分かったもんじゃない。
30秒ほど経ったが、誰も現れなかった。そこで俺の中に複雑な感情が湧いてきた。一方では、デウスレギオへの遠征での嫌な経験がまだ記憶に新しい。だが他方では、タダで使えるポータルだし、俺の寿命のストックは山ほどあるし、巻き戻しも有効だし……
意を決して、俺は他の連中に近くで待っていろと叫び、自分は前に突っ込んだ。
中に飛び込むと、俺は下へ落下していった。曇り空のせいで視界が急激に悪化し、俺はどんどん加速しながら何かの裂け目の底へ真っ逆さまだ。テスラ歩兵にスイッチして推進力を起動し、落下を減速させて上へ飛び、それから戻って慎重に、一人ずつ素早く娘たちを向こう側の領域へ運んだ。
判明したことに、楕円は歪んで出現していて、崖の真上に浮いていたが、すぐ近くに山道があり、明らかに誰かが頻繁に通っている様子だった。砂埃をよく見てみたが、俺は追跡者としては全然ダメだと悟った。まあ、少なくとも車が通った形跡はなさそうだ。
どこを見ても岩だらけだった。幅が2メートルちょっとしかない曲がりくねった山道が無数にあり、明るい帯のように蛇行しながら下へ、這うような霧に包まれた山麓へと続いていた。
高さはかなりあった。辺りを見回してから、俺は上へ向かうことにした。まあ、誰かがわざわざこんなところに道を作ったんだ、無駄じゃないだろう。ラズは俺たちの隊列の真ん中を、ジェシーとエンディスは後ろを、そして俺とケイトは先頭を進んだ。何が待ち受けているか分からないので、テクノコマンドを起動したが、センサーは近くに生命反応を示さなかった。
登り始めて五分も経つと、俺は次第に疲労を感じ始めた。女の子たちは五位のおかげでピンピンしているようだ。景色そのものは憂鬱だった。同じような灰色の岩、埃っぽい道、貧弱な低木、そして葉もほとんどない曲がりくねった木が点在するばかり。
頂上まであと少しというところで、次の曲がり角を回ると、道の終点が見えた。岩壁に直接設置された、かなり重厚な石造りの門だ。観音開きの巨大な代物は、実用性というより威圧感を出すためのものだろう。俺たちが通ってきた道では、あんなでかいものを運び込めるとは思えない。
近づいて扉を調べた。よく見ると、もっと小さな扉が組み込まれているのが分かった。俺は慎重にそれを内側へ押した。扉の向こうは真っ暗闇だったが、センサーが反応しないなら、せっかく来たんだし入ってみるか。
ライフルのライトを点けて、俺は慎重に前進した。ジェシーも照明をつけ、ラズは爪に小さな紫色の炎を灯して、周囲の闇を柔らかく照らし出した。
「で、ここはどこなのか、何か考えはある?」ケイトが囁いた。こんな冒険を明らかに楽しんでいて、顔から笑みが消えない。
「じゃあ、考えてみようじゃないか。テクガンにはこんな景色はないだろう。そうだろう?」
誰かが頷いたが、俺たちはあまりよく見えていないことを忘れていたらしい。まあ、沈黙は同意の印だと受け取っておこう。
その間も、俺は話を続けた。
「デウスレギオも風景が違う。フレムテックとは似ていない。機械の痕跡がないからな。同じ理由で、エクスマッハも違うだろう」
「キルハイヴじゃない」ラズが短く言った。
「シャドマーだと思う」エンディスが推測し、俺も考えてから同意した。荒野の地形を考えれば、確かにそれっぽい。
その間に、曲がりくねった通路は石で舗装されたトンネルへと続き、そこを抜けると、岩を削り出して作られた螺旋階段が下へと伸びていた。真っ暗な下方に小さな明かりがちらついている。どうやらあそこには誰かいるらしい。
ゆっくりと降りながら武器を構え、俺はライトを消してナイトビジョンに頼った。娘たちは俺の後ろに並び、はぐれないようお互いと俺の肩を掴んでいた。
降りていくうちに、単調な打撃音が聞こえてきた。金属が金属を、あるいは石を叩いているような音だ。そんな音がいくつも重なって騒々しい響きになっていたので、俺たちはそれほど隠れることなく進んだ。
センサーに熱反応。階段を曲がると、平らな踊り場に出た。壁に取り付けられた小さな松明が、この場所と先にある短い通路をかなり明るく照らしている。その通路を抜けると、赤く煌めく鉱物が見えた。見た目はクリスタリットに似ている。それがあちこちで壁から大きな塊となって突き出ていて、石の下にほとんど隠れてわずかに輝いているだけの場所もあった。
この豊かな資源の採掘には、何十人もの人間、エルフ、ドワーフが働いていた。全員が揃いも揃って破れたズボン一枚だけで、靴も履いていない。両手には紫色に光る腕輪がはまっていて、そこから輝く糸がつるはしへと伸び、その先端は同じ色に煌めいていた。
「男ばっかりね」ジェシーが、目の前の光景にやや呆気に取られながら小声で呟いた。テクガンじゃこんなやり方はしてなかったんだろうな。それに、よく考えてみれば、ロートクでの最もきつい採掘作業だって比較的楽にこなせたし、資源を確保するのに必要な人数だって、せいぜい一人から三人程度で十分だった。
ケイトが興味を持って近くに突き出ている結晶に触れると、その結晶は触れた途端にチリンと音を立て、細かく震えながらバラバラと破片になって崩れ落ちた。一番近くにいた作業員が、それまでほんの三十秒ほどの休憩時間を確保していたのだが、額の汗を拭い、振り返って俺たちを目にした。その場に釘付けになったかのように固まり、怯えた目でケイトを見つめた後、突然膝をつき、石の床に額を打ちつけ始めた。皮膚が裂け、血が顔に滴り落ちる。それでもその作業員は狂ったように頭を下げ続けた。彼の行動を他の者たちが目にすると、たちまち作業が止まった。ガチャガチャという音が途絶え、全員が床に額を打ちつけ始めた。
「何とかしてやれよ」俺はショックを受けているケイトに小声で囁いた。
緊張しながら、娘が一歩前に踏み出すと、最も近くにいた人々から絶望的な叫び声が上がった。
「お、お願いします! や、やめてください!」という悲痛な呻き声があちこちから響いてきた。
ケイトはどうすればいいかわからず、途方に暮れた表情で俺を見た。俺はただ肩をすくめるだけだった。
エンディスは咳払いをすると、ゆっくりと前に出て、最初に俺たちに気づいた男のすぐ近くまで歩み寄った。
「どうか、そんな……立ち上がってください……」エルフの彼女が言いかけたが、血まみれの顔をした男はただ素早く這い寄ってきて、エンディスのブーツを一生懸命舐め始めた。恐怖と嫌悪が入り混じった表情で、エルフの彼女は後ずさりしようとしたが、男はさらに速く這い寄り、より丁寧に埃を舐め取っていく。
遠くで叫び声が聞こえた。群衆全体が合図でもあったかのように固まり、即座に反対側に向き直って、額を床に押し付けた。
エンディスはその隙を利用して、大きく息を吐き出すと、自分への興味を失った崇拝者から遠く離れた場所へと駆けていった。
俺は合図を送り、身を隠すことを提案した。状況を完全に把握するまでは、焦って動く必要はない。皆殺しにするのはいつだってできるんだからな。
岩盤を切り出して作られた通路を慎重に回り込み、俺たちはぼろい木製の階段を使って二階層目へと上った。赤い結晶を注意深く避けながら進む。
身をかがめ、二階層目の照明が一階よりずっと暗いのを利用して、俺たちは端まで近づいた。叫び声が近づいてくる。やがて、その源が見えてきた。
見た目は可愛らしい少女だったが、淡い黄色の瞳は冷たく、表情は無関心そのものだった。長い白髪と獣耳を持っているが、尻尾は見当たらない。彼女が着ているのは、非常に短い濃い灰色のワンピースで、歩くたびにスカートが揺れ、注意深い観察者には素晴らしい眺めを約束していた。少女の両腕には、肘のやや上まで伸びる金属製のプロテクターのようなものが装着されており、手首の部分には格納式の刃が取り付けられているようだった。足元は高いヒールのブーツを履いており、それで石材の床を律儀にコツコツと鳴らしながら、首には暗い色のスカーフを巻きつけていた。
「一体何が起きてるんだ!? てめえ、クズ、答えろ!」無表情を崩さないまま、少女は怒りで耳をピクリと動かし、格納式の刃の切っ先を近くにいた作業員の背中に突き立てた。男の露出した肌に血の筋が流れ落ちたが、彼は従順に床から立ち上がり、もごもごと呟いた。
「わ、わか、かりま、ませ、せん、奥、奥様」
まるで嫌な臭いでも嗅いだかのように顔をしかめ、少女は体を起こした。耳がピクピクと動き、刃が光を放った。鋭い一閃――そして、どもっていた男の首が床を転がり、胴体は石材の上にドサリと倒れ込み、血飛沫を周りの作業員たちに浴びせかけた。
「さっさとしろよ、チンポ野郎ども!」少女は叫びながら、次の男に近づいた。彼の背中にも刃を突き立てると、男は目も上げずに怯えた様子で首を横に振っているのが見えた。
「バカが」少女は言い放つと、また一つ首を切り落とした。「さっさと決めろ。生き残った奴は死んだ奴の分まで働くんだからな」
俺たちに最初に気づいた中で、一人の男が恐る恐る立ち上がり、彼女に声をかけた。
そんな図々しさに固まった少女は、素早く廊下をカツカツと進んでいく。その間、労働者たちは壁に張り付くように身を寄せ、ご主人様の邪魔にならないようにした。
「まともな理由があるんでしょうね?」脅すような口調で少女が訊いた。
「お、お嬢様、ここに他の女性たちがいて、最初はあなたからだと思ったので、それで作業を止めたんです……」
素早く言葉を吐き出すと、男は急に床を見つめた。女が近づいてきて、作業員の膝に足を乗せると、肉食的な笑みを浮かべた。
「よくやった。報酬をあげるわ。アーギ、ルビー、出口を塞いで」
男は耳まで裂けそうな笑みを浮かべながら、女のブーツを脱がせると、その指を口に含んで念入りに舐め始めた。
その様子を見下ろしながら、女は男の髪に手を這わせ、突然ぐいと掴んだ。
「いい犬ね。まあ、少しだけご褒美をあげるわ」
スカートをたくし上げると、女は下着を少しだけずらした。もっとも、それは数秒も続かなかった。
「ありがとうございます、お嬢様!」息を吐きながら、男は唾を飲み込んで言った。「あなたの美しい姿を一生忘れません」
恩着せがましく微笑むと、女はじれったそうに足を揺らし、男がブーツを元に戻すと、後ろへ歩いていった。
「なんて悪夢!」ジェシーが驚いて囁き、他のみんなも揃って頷いた。「ニコ、あのクソ女から彼らを救い出しましょうよ?」
「なあ、多分だけど、あいつらは別の生き方に慣れてないんだよ。たとえこの環境から引っ張り出したとしても、大半は新しい靴を見つけて舐め始めるだけさ。ほら、エンディスももう乗り気じゃないか。あいつらの女主人にでもなってもらおうぜ」
エルフ娘は思わず息を詰まらせ、奇跡的に咳き込まずに済んだ。
「ニコ、勝手なこと言わないで、聞いてるの!」彼女は激しく囁いた。「あいつらは最低だけど、それでもこんな扱いを受ける謂れはないわ!」
まあ、妻の激しい説教はもう耳に入ってこなかった。俺は会話を分析していた。どうやらここには少なくとももう二人、姿の見えない娘たちがいるらしい。サーモビジョンでも見えない。モーションセンサーも役に立たない。ドラゴノイドの感知能力を起動させ、入ってくる情報を注意深く分析し始めた。いた! 余分な気配が一つ。今は俺たちが来た方向にいる。かなり遠い。もう一つは、あの長耳の「女主人様」が行った方向だ。
手を振って、俺はゆっくりと二階を歩き始め、二つ目の気配を追った。平和的に解決して、余分な命をかっさらえたら面白いんだがな。
どうやらラズのオーラのおかげで、テレパシーで感知されずに済んでいるようだ――もちろん、全員がテレパシーを持っているならの話だが。だから俺たちは障害なく、長耳のクソ女が壁に寄りかかって奴隷たち(やっぱりどう見ても労働者じゃねえよな)が作業を再開するのを眺めている場所まで這い寄ることができた。少し考えて、俺は脳寄生体を呼び出した。
小さな幼虫が壁を素早く這い、気づかれずに少女の髪に飛び移った。少女は怯えて耳をぴくりと動かし、壁から飛びのいたが、幼虫はすでに器用に耳の中へと潜り込んでいた。
呻き声を上げて、少女は固まった。
「で、次は?」俺はラズに素早く尋ねたが、彼女は肩をすくめただけだった。
「ごめん、パパ。あたし、そんなの見たことない。たぶん、かなり高位のものだと思う」
少し考えてから、俺はインセクトイドに切り替えた。暗闇から注意を引かないよう天井に這い上がり、カチカチと音を鳴らした。
「今からお前の主人は俺だ。俺に全て従え。逆らうな。俺が命じるまで、誰も殺すな」
少女の目に理性的な表情が宿り、俺はモデルを切り替えて、かなり音を立てながら慎重に下に飛び降りた。
奴隷たちはまた固まり、俺を自殺志願者でも見るかのように呆然と見つめた。だが彼らをさらに唖然とさせたのは、次に起こったことだった。
「あっ、ご主人様、にゃ、やっとここに来てくれたんですね!」少女は甘ったるく囀り、頭を俺にすり寄せてきた。「ご命令は?」
「全員、俺のところに来て俺に加わることに同意しろ。お前が最初だ」
頷いた少女は全員に向かって激しく怒鳴り、ちゃんとした列を作るよう指示してから、自分は俺のところへ向かってきた。その華奢な手を俺の手に取った瞬間、メッセージが表示された。
「市民ステータス+1(256)」
「繋がり:市民の統計情報。
名前:セレナ・ヴェスモルズ・ボス・アイゼンヴェルド。
種族:獣人、猫娘。
年齢:22(70)。
役職:プシライト鉱山のオーナー
兵科モデル:スライシングサイオニック。
婚姻状況:未婚。
派閥:シャドマー、アルヴァー」
その間に奴隷たちが列を作り、一人ずつ近づいてきたんだが、察知の時間が切れちまったせいで、残り二人の女が現れた瞬間を見逃しちまった。まあ、ラズが近くにいたおかげで予定より早くバレたわけで、今は俺とセレナの前に立って、疑いと嫌悪の眼差しでこっちを見てやがる。
少し似た感じの狐娘が二人、一人は鮮やかな赤い毛並み、もう一人は銀色。どちらもステラと似たような服を着ていた。体にぴったりと張り付いた生地が、ワンピース水着みたいな形(毛並みの色に合わせた色)になっていて、胸の形を強調している。しかも前面だけを覆っていて、脇と背中は目の粗いネットで覆われている。二人とも肘より少し長い手袋をつけていて、太ももと尻を露出させたタイトなストッキングを履いていた。
銀色の狐娘、たぶんアーギだが、クナイで武装していて、赤い方、ルビーはトンファーを持っていた。
アーギの片方の肩には、エンブレム付きの小さなマントがかかっていて、さらに顔の半分をマスクで隠している。どうやら二人のうちではこっちがリーダーらしい。
「失礼ながら、お嬢様、こちらのチン……コホン、男性は?」銀色の狐娘が断固とした口調で尋ねてきた。俺を疑わしげに見ながら。
「あ、こちらは私のご主人様です」尻尾のない猫娘が素早く答え、俺に擦り寄り続けた。
「一なる多の者?」ルビーが疑わしげに尋ね、俺を頭のてっぺんからつま先まで見回した。「もしそうなら、伯爵夫人様だけがその方に触れることを許されているはずよ」
牙を剥き出しにして、セレナが凶暴に吠えた。
「ここで決めるのは私よ! 私がそう言ったんだから、そうなのよ」
顔を見合わせた狐娘たちは明らかに動揺した。
「申し訳ございません、お嬢様。しかし伯爵夫人様の勅令違反の疑いがある場合、私たちは内部調査を行う義務がございます。このクソ野……げほん、ご・主・人・様と共に、私たちに同行していただけますか」最後の言葉を軽蔑的に引き延ばしながら、アーギは武器に手をかけ俺たちを見た。
俺は素早くセレナの耳元に命令を囁いた。彼女はほぼ即座に答えた。
「わかったわ。一なる多の者の計画を実行した直後に、あなたたちと一緒に行くわ。そんなに時間はかからないから」
了承すると、狐耳娘たちは俺が全ての奴隷を覚醒させるのを待ち始めた。
◇◇◇
「現在の残存寿命――53+(256)。能力発動用ボーナス年数:128(106)(係数0.5)(捕虜――43)」




